教員免許更新制度の改善に係る検討会議(第7回) 議事要旨

1.日時

平成26年2月18日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館5階5F3会議室

3.議事要旨

【出席者】内田委員、◎小川委員、片平委員、後藤委員、鈴木委員、中庭委員、橋本委員、濱本委員、本郷委員、松宮委員、森山委員 (欠席:原之園委員)
※◎印は主査 
(文部科学省関係者)
藤原大臣官房審議官、髙口教職員課長、小谷教員免許企画室長 他

【議題】
・教員免許更新制度に係る制度面・運用面での改善策について
・必修領域の見直しと選択必修領域の導入について
・その他

【議事】
○事務局から資料2「教員免許更新制度の改善に係る制度面・運用面での改善策について」の説明の後、意見交換を行った。続いて、事務局から資料3「必修領域の見直しと選択必修領域の導入について」説明の後、必修領域と選択必修領域の内容について意見交換を行った。

各委員の主な発言は以下のとおり。

<意見交換>
【教員免許更新制度の改善に係る制度面・運用面での改善策について】(資料2-1)
・資料2-1 4~7ページ「3.具体的な改善方策(案)」について、各委員からの御意見を伺いたい。

・運転免許証は身分証明書として使用されるケースがあるが、「教員免許証」についても身分証明書のような効力を有するものとなるのか。
・「教員免許証」に顔写真を付けないとすると証明書としての一般的な活用力は落ちると思う。一方で、顔写真を付けると運転免許証のように身分証明書としての効力を持つ可能性があり、一般的に身分証明書として使われることもあると考える。
・一方、今起こっている問題は、非行があり免許状が失効している者を誤って教員として採用する場合があるということである。非行により免許状が失効している場合、「教員免許証」を見ただけでは失効していることが確認できない。そのため、教員採用時に第三者も免許状の状況を確認できる簡易な検索システムを導入することを検討している。これを併せて行わないと、非行による失効者の採用を完全に防ぐことは無理だと考える。

・本県の場合、免許状の授与に関しては窓口で手続を行い、本籍や氏名の書き換えについては郵送で受け付けることを認めている。資料2-1には本籍や氏名が変わった時の届出を義務付けるという記述があるが、これは申請者にとってかなりの負担になるのではないか。「教員免許証」に顔写真を付けることにすると、本籍地や氏名の書き換え時やさらに授与権者側が写真を撮る必要があるとなれば、申請者は必ず窓口に来なければいけない。

・「教員免許証」に顔写真を付ける場合、どの程度の経費がかかるのか。
・業者の話では、最近はシステムが非常に向上しており、写真をスキャナーで取り込む場合、それほど手間はかからないとのことである。「教員免許証」の場合、申請書に写真を添付して都道府県教育委員会へ送ることを想定しており、運転免許証のように運転免許センターに行き、その場で写真を撮影するというようなことは想定していない。
 また、写真を付けることに関連し、御検討いただきたいのは、所有する免許状の情報を証明するために、教育委員会が「教員免許状情報証明書」を発行することを検討しているが、顔写真を付けない場合、「教員免許証」を窓口に持ってきても、本人確認できない。そのため、例えば友人から「教員免許証」を借りて教育委員会が証明書を発行し、これを使って別人が採用されるようなケースが想定される。このような問題も含めて御検討いただきたい。

・本学におけるeラーニングでの免許状更新講習受講の際は、現職教員については校長の割印で本人確認ができるが、現職教員でない者や過去に教員であった者、これから採用される見込みのある者は受講申込書では本人確認ができないため、運転免許証やパスポート等の写真付きの身分証明書のコピーを添付してもらう。「教員免許証」に顔写真が付けば、本人確認の業務にとっては大変有り難い。

・教員免許状の取得者数は増えていると思うが、文部科学省ではどのくらい増えると見込んでいるのか。今までは小学校の免許状等取得に制限がかかっていたが、一般学部に開放されてかなり増えているのではないか。
・免許状を授与した実数というのは6年に1回しか調査がないため、古いデータとなるが平成20年頃だと実数で4万人程度となっており、過去から大きく増加している状況ではない。ただし、平成20~26年の間の状況についてはよく分からない。
・取得者数がかなり増えているようなら、事務の簡素化、管理のしやすい方法を検討しておく必要があると考える。
・個人的には顔写真を付けた方がよいと考える。更新するたびに写真を貼り換えていけばよい。その方が本人確認もしやすく、後々の事務作業も楽ではないか。
・金銭的な問題を挙げていたが、更新した本人が使う物であるので、受益者負担で十分やっていけるのではないか。
・このシステムを全体的に統括する組織については、イメージが十分できていないが、この機会にこれからの教員免許の管理・運営がしやすいシステムを充実させていく必要があるのではないか。

・既に免許状を授与した者については、従来の免許状を「教員免許証」に取り換える必要があると思うが、全てを同時に取り換えることは現実的ではないと考える。「教員免許証」の制度の移行のために必要な期間は何年ぐらいと考えているのか。
・事務的な検討段階ではあるが、既に教員免許管理システムがあり、それを基に「教員免許証」を発行する体制整備に関する委託調査を1年程度、その後2年目に実際に各都道府県でテストを行い、早ければ3年目から「教員免許証」の発行が行えるのではないかと考えている。
・対象者については、新しく大学を卒業し免許状を授与される者と免許状更新講習の受講期間に当たる者、若しくは更新時期が分かりにくいため、免許状更新講習の受講期間に入る直前の新免許状所持者を優先し、可能であれば5年かけて発行・取り換えを行って、合計7年で完了できればと思っている。
・免許状更新講習を受講しない者は紙の免許状を所有することになる。ただし本人が変更したいと希望すれば、教育委員会で取り換えを行っていただくこととなる。

・「教員免許証」に顔写真を付けた方がよいとする意見が多かったが、ほかの委員の御意見を伺いたい。

・資料2-2 2ページの保育士について、具体的に説明してほしい。
・保育士証というものがあり、教員免許状と同じ紙である。教員免許状と大きく異なるのは、保育士資格は一つしかないが、教員免許状には種類があり、普通免許状だけで二百数十種類、また特別免許状や臨時免許状が同数程度あるため、八百近い種類があるというのが現状である。

・教員免許状は都道府県教育委員会で発行しているが、カード化した際も都道府県教育委員会で発行するのか。例えば、保育士の資格は県が委託をして、委託先が発行している。発行についてどのように考えているのか。
・具体的には、都道府県教育委員会と相談をする必要があると考えている。やり方としては、今はカードの発行が容易になっており、机上タイプのプリンターから打ち出せるようである。各教育委員会にプリンターを設置すればカード自体は簡単に発行することができる。ただし、導入時は余りにも発行数が膨大であるために一括して業者に依頼をするということも考えられるし、導入後に各教育委員会の判断で、作業を外注するということもあり得る。

・前提としてカード化と免許状更新講習を一体化、連動化する方向がよいと考えている。免許状更新講習でも当然本人確認を行っているが、本人確認の方法が大学によって違うと受講者から指摘を受けることがある。受講申込書に顔写真を添付する大学もあれば、本人確認の作業を簡素化している大学もあり、本人確認の方法について大学によって温度差がある。よって本人確認については顔写真で確認する等のルールを統一した方がスムーズにいくのではないか。

・資料2-1 6~7ページの「(2)教員免許状情報の学校関係者による確認システムの整備」について御意見を伺いたい。

・この簡易システムを使う場合、各学校関係者に対しシステムに入るためのIDの発行が必要になると思う。発行を行う機関は何千か所もあると思うが、ID等の管理はどのように考えているのか。
・このシステムはあくまでも簡易なものと考えており、資料2-3で示している「医師等資格確認検索」を参考に、特段パスワード等は付与せずに検索・確認できるものがよいのではないかと考えている。ただ、「教員免許証」は個人情報という側面もあるため、氏名だけで教員の情報が検索できるようなシステムは今のところ考えていない。また同姓同名の方がかなり存在するので、氏名だけで検索できるシステムはあまり意味がないと考える。

・カードは簡単に作ることができるとの説明であるが、一方で簡単に偽造ができるということでもあるので、教員免許状について全体的なシステムを作らなければいけないのではないか。
・情報検索については、誰でも見られる部分があってもよいのではないか。保護者からすれば自分たちの子供の教育のためであるし、教員がきちんと免許状を持っているかどうかの確認は誰でも行えるべきではないか。そこから先の個人情報については、制限をかけて要件を満たせば見られるようにすればよい。

・教員免許状のカード化は賛成である。写真も組み込むべきと考える。学校現場としては免許状の失効者を任用することは、信頼を失うことにつながる。チェックを行う機関が十分にチェックできないようでは制度として不備がある。
・カードは一枚になると思うが、昔の保険証のように三つ折りにして、資料2-1 11ページの要点説明資料と一つにまとめて、常に一緒に見られる状態にした方が免許所持者にとっても有効ではないか。カードと別に要点説明資料を渡すことにすると、紛失につながり、講習を受けられないとか、有効期限を忘れてしまう等、現在と同じような問題が起こる。「教員免許証」と制度の要点説明資料は一つのまとまった形にした方が保管しやすく、制度の確認もしやすくよいのではないか。
・先ほどの御意見のイメージについて確認したい。今提案している教員免許証は、カード自体はプラスチック製で、カードと同じサイズに折り畳むことのできる紙の要点説明資料をケース等に入れて渡すことを想定している。
・導入時には昔の保険証のような三つ折りの形でデータの読み込みができるものがよいのではないか。そもそもの目的が紛失の防止、不意の失効の防止を考えているので、煩雑にならない形で、一体化した状態のものを示す必要があるのではないか。
・この辺りは実務的に詰めていく必要がある。

・「教員免許証」の情報は最新のものでなければならないと考えるが、本籍地や氏名が変わった場合は随時情報を更新することになるのか。また、非行により免許状が失効した場合、本人へ通知をして免許状を返納していただくが、カードの場合も同様の取り扱いと考えてよいか。
・資料には教員免許状情報証明書と同内容の書類について、各学校の事情等に応じて、保護者等が閲覧できるようにすることが望まれると書かれている。この辺りは個人情報との関係もあるが、国としてガイドラインを示すのか、学校の裁量に委ねるのか、現時点での考えを伺いたい。
・本籍地情報については、教員免許証には表示させないため、変更があってもカードの書き換えは行う必要がないが、氏名の変更については行っていただく必要がある。免許状の返納については、現行制度と同様に返納していただくことになる。
・簡易検索システム上の情報の表示は、資料2-1 8ページにある「教員免許状情報証明書」のイメージから教育委員会証明印等がないものとイメージしていただければよい。
・教員免許状情報照合番号が重要であり、これがあることにより、検索や本人確認が可能となる。保護者等の閲覧において「教員免許状情報照合番号」を見られるようにするかどうかは検討の余地があると考える。
・ガイドラインについてはどのように考えるのか。
・学校教育法には学校に関する情報について積極的に提供することと規定されており、ガイドラインの中の「提供する情報」の例示に、免許状の情報も含まれている。ただし、各学校の状況によって判断するものであるため、国としてはこれ以上申し上げていない。学校が毎年作成するパンフレット等には、教員の氏名とともに所有する免許状が記載されている場合もあるが、全く書かれていない場合もあり学校により様々である。
・それは都道府県教育委員会の判断ということか。
・都道府県教育委員会の判断、あるいは学校の判断である。別の方向を示した方がよいというのであれば、御検討いただければと思う。
・すぐに答えを出すのは難しい。例えば、特別支援学校の教員というのは最初基礎免許状で教壇に立った後、免許状認定講習の受講等により後から特別支援学校の免許状を取得する者が多数いると思う。特別支援学校教諭の免許状を持つ者と持たない者が混在する中で、情報を出し過ぎてしまうと、保護者から様々な意見が寄せられることを懸念しており、免許状情報の閲覧は慎重にすべきと考える。

・「教員免許証」の再発行についてはどのように考えているのか。
・紛失した場合にどう処理するのかは技術的に検討しなければいけないが、「教員免許証」には電子チップを付けて、その中に情報を格納することを考えている。最初の発行及び紛失時の再発行に係る費用は本人が負担する必要があると考える。市場価格では500円から数千円の範囲内であり、写真を付けるか、どの偽造防止技術をどこまで付けるかにより価格に差ができる。希望としては2,000円~3,000円の範囲内で、可能な限り低価格でということを考えている。
・悪用する者はいないと考えるが、再発行もある程度システム的に行う必要があるのではないか。

・「教員免許状情報証明書」については、教育委員会の発行する免許状の授与証明書に代わるものと考えてよいのか。
・「教員免許状情報照合番号」について、複数の都道府県教育委員会で免許状が授与された場合、同一の番号が付与されると考えてよいのか。
・免許状の授与証明書は法定事項ではなく都道府県教育委員会が独自に実施しているものであるので、「教員免許状情報証明書」のシステムが導入されれば、こちらの証明書に切り替わっていくのではないかと考える。
・「教員免許状情報照合番号」について、1人一つの番号を持つことになるが、情報格納の方法として全ての免許状情報に番号を付与するのか、若しくは本人情報の確認をする画面があるので、こちらに番号を付与することにより管理するのか、検討の余地があると考える。

・免許状の根拠規定、取得した単位等も全て格納できるようになると、以前取得した単位を基にして新たな免許状を取得する場合に、大学が発行する学力に関する証明書を提出する必要がないため、次の免許状の授与がしやすくなる。
・免許管理者としては正しい原簿情報ができていないと免許状の正しい有効期限が分からなくなるが、こうなった場合の責任の所在が不明確である。間違ったケースが発生した場合はどうしたらよいのか不安がある。
・免許状のデータをカードに格納すると申し上げたが、御指摘のとおり、免許状の情報がきちんと整備されていないのが現実であるため、その整備を教育委員会にお願いしつつ、仮免許証のようなものを発行し、必要な免許状が全て揃っていることを確認した上で、正式な「教員免許証」を発行することを考えている。

・保護者は正規の免許状を持っている教員に子供たちを学ばせたいという思いがあるので、より適正な方向に向けて努力していく必要があるのではないか。そうなると免許状情報の閲覧を学校の判断に任せるのではなく、公開を原則としていくべきではないか。


【2.新免許状制度・旧免許状制度の相違を踏まえた周知方策の充実について】(資料2-1)
・資料2-1「2.新免許状制度・旧免許状制度の相違を踏まえた周知方策の充実」について、委員の御意見を伺いたい。

・新規採用者については、かなり周知に取り組んでいる。問題なのは複数の免許状所持者であり、旧免許状所持者が最近取得した免許状を新免許状だと勘違いして、修了確認期限を誤るケースが多く、各教育委員会も力を入れて周知に取り組んでいる。課題としては私立学校ではどの程度周知が行われているのか分からないため、私立学校への周知方法を検討する必要がある。

【必修領域の見直しと選択必修領域の導入について】(資料3-1、2)
・必修領域の内容及び選択必修領域の内容・考え方の二つに分けて議論をしたい。まずは必修領域からであるが、従来の12時間から6時間に減らすため、内容をかなり絞り込んだものになると思う。中間取りまとめの際の議論においても、「B:教員としての子ども観、教育観等についての省察」、「C:子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」、「D:子どもの生活の変化を踏まえた課題」などは必修領域として重要な内容であるという意見が出ており、その意見が今回のアンケート結果によって裏付けされたようなものであるが、おおよそこのような内容でよいか意見を伺いたい。

・難しい問題である。アンケート結果において必修領域に入れるべきものとして実践に生かせるような項目が挙がっているが、「E:学習指導要領の改訂の動向等」が必修領域から外れてしまうと、日本の教育がどこに向かっているのかという将来像について免許状更新講習で掴めるのか懸念がある。将来の日本の教育の方向性・あるべき姿のような内容を必修領域に入れるべきではないか。教員も10年後の日本の教育を念頭に入れて自身の教育方針等を作って行くと思う。確かに都道府県教育委員会の行政研修において、学習指導要領の改訂の理由や方向性については学べると思うが、歴史を踏まえて将来日本の教育がどのようになるのかというような内容を、自身が大学生だった頃と比較して学び直すことができるのは免許状更新講習の価値であると思う。

・先ほどの意見は非現職教員に対しては必要な事かと思うが、毎年現職教員は、日々国の状況の変化等を学んでいるため、免許状更新講習ではその内容を振り返り考え直す機会になるとは思うが、行政研修を行う側からするとEは必要ないと思う。

・教員養成についてはそのために必要な情報を与えているが、大学教員が免許状更新講習を行う場合に、日本の教育は今後どうなるのかというような視点を今までは盛り込んでいなかったのではないかという反省をアンケート結果から感じている。行政と大学が同じ内容をやっているのであれば含める必要はないが、世界の状況を踏まえて将来こういう子供たちを育てていくべきというようなことはどこかで議論しなければならず、それは唯一大学が行えることであると思う。

・必修領域にはこれからの日本がどういう子供を育てていくかというような視点を含めてほしい。都道府県教育委員会も伝達講習を行っているが、大学においても違う切り口で講習を行ってほしいと思う。

・大学関係者の方に伺いたい。大学の教員は研究者であり、それぞれの立場や理論、価値観で様々な意見があると思うが、それは将来の日本の教育の方向性と異なるようなことはないのか。

・現在、必修領域に学習指導要領の改訂の動向等が含まれており、それを踏まえて講習を行っているため、持論を講義するということにはなっていない。それゆえに行政研修と免許状更新講習が似通ってしまったのかなと思う。しかし世界の教育の流れを踏まえ、このように子供を育てるのだということは、どこかで誰かが論じなければいけない。教育の根幹はそう大きくはぶれないので、大学教員をもっと信用してほしい。

・研究者は考え方等が違ってくるのが当然であるため、講習を行う際にどのような論点・争点があるのかを示しながら講習内容を組み立てればよい。受講生は現場経験で色々な知識を持っているため、よく考えて理解してくれると思う。研究者としての考え・価値観の違いは余り気にする必要はないと思う。

・確かに研究者によって色々な意見があるが、10年目20年目の教員はそれを読み取れる目があるし、大学教員も哲学のある教育実践と自分自身は考えているが、どこが幹でどこが枝葉かということを踏まえつつ、今の時代、文部科学省の意向、世界の流れを散りばめながら講習を行っている。

・学習指導要領の改訂の動向等を含めた形で、教員としての子ども観、教育観等についての省察等、その他の事項についても考えられるべきだと思う。

・BCDの前提として、当然ながら国内外の教育改革や教育制度に関する考え方等、国の基本的な教育の方向性を盛り込むような講習内容の工夫が必要である、ということが大半の委員の意向であると承知した。

・次に選択必修領域の内容・考え方について御意見を伺いたい。特に、従来の必修領域から選択必修領域に移す項目(「A:学校を巡る近年の状況の変化」、「E:学習指導要領の改訂の動向等」、「F:法令改正及び国の審議会の状況等」)や、従来必修領域に入っていたが、必ずしも選択必修領域に入れなくてもよいのではないかという事項(「G:様々な問題に対する組織的対応の必要性」、「H:学校における危機管理上の課題」)の扱いをどうするのか、また選択必修領域については、各大学が状況に応じてどの程度の講習数を設定するのか決定すると思うが、選択必修領域をどれくらい設定する必要があるのか等について御意見を伺いたいと思う。

・事務局に一つ確認したい。中間取りまとめの際の議論で、大学が選択必修領域の科目を複数開講した場合、受講生が複数の内容を履修することは物理的に無理だということで、原則として受講生が選択必修領域を履修できるのは1科目である、ということを確認してきているが、これを前提とした場合、各大学は選択必修領域の科目をどの程度開講するのが適当なのか、大学の状況によって違ってくるが、大学の規模や受講生の数によってこの程度の開講数が妥当だ、というイメージやガイドライン等はあるか。

・大学の規模、通学制か通信制かということで状況はかなり変わってくる。約3,000人の受講生を受け入れ可能な大規模大学を基準として考えると、どんなに1講習当たりの受講生を多く見積もっても200人が限度であり、必修領域は通常100人前後の定員で行っているのが現状。そのため選択必修領域に位置付ける項目としては、少なくとも10種類くらいはないと、実際の運用が難しくなるのではないかと思っている。ただし、10種類を全て開講しなくても、特定の数種類の講習を複数回開講することも可能であり、大学教員の方々の協力が得られるか、その在り方と密接に関わってくると考えている。それと連動して考えると、通信制であれば、数種類のみを集中的に開講する方法もある。また、小規模大学では国が選択必修領域として10種類の項目を設けたとしても、実際に開講できるのは一つ二つになると思う。

・事務局の意見も踏まえ、選択必修領域の内容、また国として選択必修領域に位置付ける妥当な項目数、さらに各大学における状況に応じた選択必修領域の設定の仕方について御意見を伺いたい。

・国が選択必修領域に位置付ける項目の範囲を示し、大学がその中から選択する方法であれば大学としては教員数等を勘案し、開講科目等を設定しやすい。しかし全国的に開講科目に偏りが出なければよいという懸念はある。
・選択必修領域の内容は、学校現場において当面の課題となっているものであるため、資料3-1 2ページ目の2(3)に示す「国際理解・異文化理解教育」、「英語教育」については、可能であれば選択必修領域に入れていただきたい。小学校教員の8割は英語教育を自分自身の課題と認識しており、英語教育に関する研修機会を必要としている。都道府県・市町村教育委員会でも研修は実施しているが、免許状の更新時にそれがきちんとできるようになればよい。その場合、現在抵抗の強い大学の人材をうまく活用する必要があり、その抵抗を和らげていくためにも選択必修領域に位置付けていただきたいと思う。

・資料3-1 1ページ目1(3)特に検討が必要な内容に挙がっている二つ(「G:様々な問題に対する組織的対応の必要性」、「H:学校における危機管理上の課題」)については重要な項目ではあるが、全体と比較して異質であり、免許状更新講習の必修領域、選択必修領域に位置付ける必要はないのではないかと思う。

・受講者側から考えると、必修領域と選択必修領域は同じ大学で合わせて受講したいと思う。そう考えると選択必修領域に位置付ける事項が多い方がよいと思う。選択肢が多い大学に受講希望が集まると思う。
・本学でも委託事業を受けて幼稚園・小学校・中学校・高等学校に共通する内容等について研究を行っているが、例えば「アレルギー反応」は命に関わる上、全ての校種の教員に必要となる知識であるため、免許状更新講習に入れてほしいという要望はある。しかし選択必修領域は単なる選択ではなく、必修であるので、選択肢が多くなると選択必修領域を設定する意味がなくなるし、その一方である程度講座の選択肢がないと各大学で講座が開講できない。その辺りの落とし所を議論する必要がある。

・一つの考え方として必修領域は教育哲学のようなイメージであり、選択必修領域は教育哲学から分化したもの、つまり必修領域の一部をより詳しく学ぶ講習と考えると整理しやすい。大学としても必修領域のうち大学教員が得意な分野を選択必修領域として開講していただくこととすると、選択必修領域そのものの意味についても理解しやすいと思う。

・中間取りまとめの際の議論にもあったが、校種別で選択必修領域を設定すると講習は絞れると思う。受講した立場でいうと、資料3-1 1(3)に示す内容等、受講者のニーズが低いものを必修・選択必修領域に入れる必要はないと思う。受講者ニーズが高いものを、校種に応じて選択必修領域に位置付けるべきかと思う。

・必修領域及び選択必修領域に入れるべき項目のいくつかは内容が重複しており、恐らく講習を担当する教員も重複することとなる。その辺りの負担を考えると、選択必修領域として位置付ける内容としては、枠を広く設定していただく方がよい。

・1点確認をしたい。資料3-1 2ページ目選択必修領域に位置付ける内容(1)のd~rについては、「必修領域に位置付けるものを除き」と示しているが、委員の御意見を伺うと、必ずしも除くということではなく、必修領域は全校種共通に受講する項目であるが、そこからさらに校種ごとに内容を深めて受講した方がよいと考えられる項目もあるため、これらの項目については校種ごとに開設するということで、選択必修領域に残した方がよいという御意見でよろしいか。ただし、講習を担当する大学教員の負担等があるので、大学ごとに工夫をする必要があると考えるが。

・本日の議論を集約すると、選択必修領域に位置付けるものとしては、事務局から提示された資料3-1 1ページ目の1(2)にあるA、E、Fが選択領域から選択必修領域に移すもの、それから2ページ目のd~r、そして委員から選択必修領域に位置付けてほしいという御意見が出たa、cとなる。また1ページの1(3)G、Hは選択必修領域ではなく選択領域でよいのではないかという意見が出ている。このような方向性でよいか。
・選択必修領域のイメージが混乱している。以前は選択必修領域について、現代的な課題について学ぶ領域として議論をまとめてきたと思うが、必修領域をさらに深めるものとして選択必修領域があると考えることとなったのか。

・選択必修領域としてそのような考え方もある、という意見であり、検討会議として選択必修領域の性格を大きく変える、というような議論はしていない。

・そうであれば、現代的な課題をここで挙げていかないと選択必修領域が具体的になってこない。課題として挙げられているものもあるが、必修領域と重複しているものもあるため、その辺りを具体的に整理して詰めていく必要がある。

・選択必修領域に関し、大学の規模によって全ての項目を開設できるところとできないところがあると思うが、ここに示されているような項目は都道府県教育委員会や教育センターの研修でも扱っているのではないかと思う。そうすると、大学が実施する免許状更新講習で期待されるものと実際に講習の実施が可能なものの棲み分けを行う必要があると思っている。参考までに、都道府県教育委員会では先ほど挙げられた選択必修領域に位置付ける項目の候補について、研修の中でどれくらい扱っているのか教えてほしい。

・対象者を限定しているものもあるが、「アレルギー対応」以外は実施している。

・強弱はあるが、都道府県・市町村教育委員会においてほぼ全ての項目に対応していると思う。国の法令や指針に基づくものや現場の事例に基づいて研修や協議会を実施している。

・その状況を踏まえると、国がある程度選択必修領域についてどの程度扱うのかも含めて、いくつかの項目を例示すべきではないか。先ほどの「アレルギー対応」についてはとても重要な項目だと思うが、今扱うべきなのか、扱わない方がよいのか、ある事例等があって集中的に行うべきなのか等、扱い方について方向性や優先度を示す必要があるのではないか。

・事務局として今回のアンケート結果の取り扱いで一番悩んでいるのは、危機管理関係の項目である。必修領域でも優先度が低かったが、これは講習開設者については、それを教えられる専門家が余り多くなく、開設が難しいと考える開設者が多かったからである。また受講者の回答において優先度は低かった一方で、校長等管理職は優先度が高い。また必修領域については、社会的要請を踏まえて設定すべきであるという本検討会議における当初の議論から考えると、受講者等のアンケートにおいて優先度が低いからといって学ぶべき内容から除いてもよいものか、国民からするとやってほしいという思いが強いのではないのかという懸念がある。
・例えば「アレルギー対応」を例に挙げると、アレルギー反応が起きた際にどのように注射を打つのかというようなことは実技であるため、教育委員会の研修で行っていただいた方が効果的であるし、一方でアナフィラキシーショックとは何か等、医学的なことも含めた内容については大学の方が適切に講習を行えるものと考える。それらを含めて御検討いただきたいと思う。

・教育委員会と大学で項目の棲み分けをする必要はないと考える。同じ項目であってもそれぞれの立場の専門性ややり方に基づいて講習を行えば、受講者にとってはどちらもプラスになる講習であるため、重複していてもよいと思う。危機管理に関しても現場でできる危機管理もある一方で、現代社会の中でアレルギー対応も含めてどのような危機管理が必要なのかといったような、包括的な内容の免許状更新講習があってもよいのではないかとも思う。

・考え方の一例であるが、必修領域は総論、選択必修領域と選択領域は各論である。そう考えた場合、危機管理が必要だと考えるのであれば、きちんと総論である必修領域に含めるべきだと思う。それによって項目が細かくなってしまうということであれば、選択領域で受講者が選べるようにすべき。全体像を見せて、その中で各論を選べるようにすることが重要だと思う。

・必修領域、選択必修領域、選択領域の色々な考え方が示された。再度整理して選択必修領域の優先順位等を確認する必要がある。

・選択必修領域は各論ではないと思う。必修領域のいくつかの課題について、教員には全てを知っておいてほしいと思うが限度があるため、選択必修領域として示す項目の中からいくつかを選んで学ぶ、という位置付けだと思う。学校教育の中で現在課題となっていること、今後10年間で課題となるようなものを挙げてもらって、その中から項目を決めていく、という方がよいと思う。

・本日は選択必修領域の内容について、合意を得られなかった。必修領域の内容については、基本的には資料3-1 1ページ目1(1)に示すB、C、Dを基本にしつつ、国内外の教育の動向や今後の国の基本的な教育方針についても加味するような内容とすること、また選択必修領域について、どのような考え方で理解するのか、本日の議論を踏まえて事務局において再度整理し、次回に議論を行うこととする。

(了)

お問合せ先

初等中等教育局教職員課