資料3 「道徳教育の充実に関する懇談会」前回(第9回)の主な意見

1 なぜ今道徳教育の充実が必要なのか

○ 社会全体への呼びかけを意識して報告書を作る必要。専門的な言葉については、丁寧に説明し、具体的な記述にしていくべき。
○ 社会全体の中でも、特に家庭への呼び掛けが一番の要。報告書全体を通じて、家庭について触れることが必要。
○ 「道徳的価値」などの言葉の使い方については、「社会的な理解を得られないのでは」という思いと、「この言葉を定着させたい」という思いの両方があり、迷うところ。
○ 「より良い社会の形成に努める態度」が分かりにくい。道徳教育の目的の一つである、マナーや規範意識の育成、自立した一人の人間としての人格形成をもって、より良い社会の形成に努めるということではないか。
○ 道徳教育には課題だけでなく、優れた実践があることも強調すべき。
○ 「道徳教育は機能していない」という指摘について、機能していないからどうなのかが大事。子供だけではなく社会全体として、道徳教育がきちんと行われなかった実態について指摘することが必要。
○ 道徳教育の課題として、骨子案に挙げられている4点に加え「道徳の授業を行うに当たって、教員の能力の養成が十分に行われてきていないのではないか」という指摘も追加すべき。
○ グローバル化や情報高度化など、今後の社会のビジョンを視野に入れた上で、道徳教育の必要性を明確化することが必要。
○ 社会の一層の複雑化や変化のスピードが増すことについて、道徳教育の重要性として言及する必要があるのか。
○ 自ら考える力や学ぶ意欲に課題があるのは、子供に限った問題ではない。社会人の方が積極性や自分で物事を解決する能力に欠けている面もあり、幅広く捉えた方が良い。
○ いじめ防止の観点について、思いやりや社会性、規範意識に加え「善悪を見極める力がない」という点も付け加えるべき。
○ 社会全体で道徳教育に取り組んでいく必要性だけでなく、家庭の重要性についても、改めて「学校における道徳教育も家庭との連携抜きにその達成を目指すことは難しく、家庭との一層の連携が求められている」という形で記載すべき。

2 道徳教育をどのような方向に改善することが求められるか

○ 2の構成は、道徳教育の教育課程の位置付け、目標、内容、方法、評価という流れの方が分かりやすい。
○ 学校教育の基本は知育・徳育・体育。知育と体育は成果が見えやすいが、徳育は非常に評価が難しいことを踏まえた上で、道徳教育の現状をどう見るかを考えるべき。
    日本人がより品格のある日本人になり、生活における悩みをうまく解決できるようになるためにも、道徳教育の充実が必要。
○ 道徳教育の目標は訓育であり、その構成として態度の形成や知識理解等を位置付けるべき。
○ 道徳律を守るということは、半分は自己犠牲や我慢である点もどこかに明記すべき。
○ 「道徳教育」「道徳の時間」「学校の教育活動全体を通じた道徳教育」のそれぞれについて、一般の方にも分かるように説明すべき。
    「道徳の時間」については、行為を中心に教える時間ではないため、特別活動や総合的な学習の時間と混乱することがないよう、目的を押さえた表現にする必要。
○ 「学校教育全体の道徳教育」と「道徳の時間」の違いについて、注意深くかみ砕いて書く必要。
○ 道徳教育の目標として、道徳的な心情や道徳的な判断力といった内面的な資質とともに、実践する力の育成や習慣化についても総合的に考慮する必要。
○ 学習指導要領における記載の見直しについて、方向性としては賛同。骨子案の基本的な中身は、現行学習指導要領にも書かれているため、道徳教育や道徳の時間の目標について、従来のものを尊重しながら、より具体化・発展させていくという趣旨で書く必要。
○ 他律から自律へという道徳教育の課題がよくまとまっており、意見もバランスよく入っている。ただ、これを一般国民が読んで分かるかが問題。
    道徳の時間では、道徳的価値を「内容項目」という形で示しているが、この内容で現在の義務教育における道徳教育や道徳の時間の特質が読み切れるか心配。
    「道徳的実践力」も業界用語であり、一般の中学生が読んでも道徳教育の課題が分かるような文章まで開くか、「道徳的実践力の育成」というねらいを覚えてもらうか悩むところ。全体として、補助資料的な解説書があると良い。
○ 情報モラルの観点からも、社会の変化のスピードへの柔軟な対応は重要。スピードが遅いものも含めて、社会の変化に対する柔軟な対応の必要性を盛り込むべき。
○ 「してはいけない」という善悪のマイナス部分だけでなく、社会的・道徳的に「こう振る舞えば楽しくなる」というプラスの部分も含めるべき。
○ 法治国家である現代社会においては、法の尊重や法令遵守も道徳教育の中で強調すべき。
○ 道徳教育の内容の記述が少ない。他の項目に挙げられている「より現代的で児童生徒の実生活に即したテーマの素材」や、「体系的な指導により道徳的価値に関わる知識・技能を学ぶ」「道徳性という人格全体に関わる力を育成する」との側面などについては、内容にも含めることができる。内容と指導方法の記述を整理する必要。
○ 道徳の時間の指導は担任が行うことを基本とするが、各学校で柔軟に対応できるよう、枠を広げた方が良い。
○ 授業時数について、小学校の場合、45分の授業の中で、頭で学び、実践し、振り返りまで行うには時間が足りない。最も大事な「自分が感じたことを社会や生活の中でどう生かすか」という振り返りの部分が1、2分で終わってしまう。子供の中に浸透させるためには、35時間を増やした方が良いとの話もあると思うが、現行の35時間を各学校で柔軟に編成できるような工夫が必要。
○ 「子供たちの実態や発達段階に即したより柔軟な道徳教育の指導方法」への支援だけでなく、優れた指導方法を生み出していくことに対する積極的な支援が必要。
○ 子供たちの実態や発達段階に即した指導方法については、子供の貧困率が先進国最高であることなど、子供たちの置かれた状況の多様性を強調すべき。
○ 経済的状況によって子育てにも格差が生じていることを前提に、学校での指導方法を考える必要。
○ 発達段階を踏まえた指導として、マナーなどの習得に重点を置く段階から、学年が上がるにつれ批判的に考えさせる授業を重視するとあるが、低学年は行為を教えることが中心にならないか心配。
    「振る舞い方などの技法的な面も取り入れた指導や問題解決的な指導等の充実」についても、「道徳的実践力」の育成やそれを基盤とした道徳的実践につながるよう、配慮すべき点をしっかり押さえる必要。
○ 道徳の時間の基本形として共感型の授業が継続してきた中で、新しい指導法が実践される一方、道徳の時間の目標として「道徳的価値の自覚」が重視されてきた。指導においては、こうした道徳的価値や道徳的実践力の育成を押さえた上で、1時間の道徳の時間の中で取り入れ可能な方法を示していくべき。特別活動で行われている様々な技法が、イコール道徳の時間でやって良いことにならないか危惧される。
○ 指導方法は学校現場に任せることを基本とするが、技法的な面や問題解決的な指導等の充実がメーンではない。道徳の時間の目標を踏まえた上で、柔軟に考えていく必要。
○ 知識としての善悪の判断と、実際の行動との間のギャップを埋めるためには、コミュニケーションスキルの学習が必要。同時に、それを指導する教員のコミュニケーション力や指導体制についても考慮すべき。
○ 発達段階には、知的な発達だけでなく社会性や他者との関係も含まれる。現在の脳科学では十分に明らかになっていないが、今後解明されてきたときにどう教えていくか、進行中のことも含めて押さえるべき。
○ 「複数の価値が相互に対立する状況を内包した素材」の積極的活用とあるが、「対立する」という点が不明確であるため、指導のねらいも不明確になってしまう。
○ 「問題解決的な指導」など専門的な記述が多い。分かりやすさの観点から見直す必要。
○ 道徳の時間における指導の工夫だけでなく、道徳の時間と他の教科との関連、連携した指導の工夫について明記すべき。これにより、道徳を「特別の教科」とする意味を明確化できる。
○ 「道徳教育の全体計画」と「道徳の時間の年間指導計画」を有機的に関連付け、実質化することが必要。道徳を「特別の教科」とする意味としてアピールすべき。
○ 評価については社会的関心も高く、懇談会でも多様な意見が出されている。現行の教科と同じ4観点による評価の在り方や、道徳教育の特性を生かす形での自己評価や総合評価、パフォーマンス評価など、子供たちの学びを励ますような多様な評価の在り方について、検討の必要性を記載すべき。
○ 知識・技能を学ぶ「教科」と共通する側面は、家庭での道徳に比べ、特に中学校の道徳教育において必要。ただし、知識・技能だけが道徳で教えるべき内容ではなく、善悪の価値や教養も含まれるため、表現を工夫する必要。
○ 我が国の道徳教育の目指すところは、不十分だった道徳の指導を平等のステージに上げること。文部科学省の教科調査官や学校現場での努力もあり、様々な指導方法が醸成されているが、全国の学校では十分ではなかった。この土壌を平等にするために、道徳の教科化が重要であることを、全国の先生方や社会に対して示していく必要。
○ 学級担任を中心に、小中学校の全教員が道徳を教えるという意識を持って、教員養成や研修、日々の実践を行うことが大事。
○ 教育課程の位置付けに係る考え方として、「特別の教科」とする考え方だけでなく、従来の教科の充実やコア・カリキュラム的な考え方についても明記すべき。
○ 宗教と道徳は、戦後GHQの宗教家と教育家との駆け引きの中で制度設計がずれた背景がある。今回の道徳の教科化の検討に当たり、宗教と道徳を対比させ、制度的に近づけていく努力も必要。
○ 宗教をもって道徳に代えるに当たり、ガイドラインに沿って行うのは難しい。私立学校における宗教教育は、実際には必ずしも担任が行うのではなく、宗教のベテラン教員が教えている。既にある程度の教え方が確立している中で、改めてガイドラインを設けたとしても、かえって教えにくい面がある。
○ 宗教を道徳に代えるためのガイドラインについては、細かく内容を規定するのではなく、教育基本法の趣旨に沿う形での大枠の設定であれば難しくない。
○ 宗教教育の評価については、記述式という幅があれば難しくない。評価をきちんと行うことで、学習指導要領を意識した教科としての指導が行われるのではないか。

3 道徳教育の充実のために求められる条件整備

○ 「心のノート」は教育活動全体を通じて活用するというコンセプトで作られている。国際的にコンピテンシーや能力育成が重視される中で、「道徳的実践力」の育成が根源的な能力育成につながるという関係性を提示するとともに、「心のノート」がそれをフォローする役割を持つ点も明示すべき。
○ 「特別の教科 道徳」(仮称)への教科書の導入については賛同。検定教科書の場合、「心のノート」が一つのモデルとなるが、教育委員会の下では副読本を活用した道徳教育が行われている。そこには地域の実情を反映した優れた資料も多く、これらが検定教科書制度においても使われうるものだという理解の下でまとめる必要。
○ いろいろな価値観や考え方を学ぶために、幅広く教科書を認めていくことは良いが、価値観が余りにも多様化し過ぎていると、まとまりがなく、判断力にも差が出てしまう。教科書を作る段階では「多様な価値観」とまでは書かない方が良い。
○ 家庭でも使える教科書にする必要。「心のノート」にも保護者が記入する欄があり、家庭で使えるようにできているが、より家庭の関与を明確にする必要。
○ 「特別の教科 道徳」(仮称)の主たる教材という言い方が引っ掛かる。「道徳の主たる教材」としてはどうか。
○ 検定教科書を用いるまでの間は、新「心のノート」(仮称)を中心に、現在用いられている民間の副読本や、地域・学校の創意工夫を生かした教材をうまく使いながら移行する必要。
○ 道徳教育の充実のためには、指導体制の構築が最重要。校長のリーダーシップや校長の研修の重要性についても明記すべき。
○ 学校における指導体制として、公開授業だけでなく校内研修も重要。教員同士が授業を見せ合い、校内で検証していくことが、指導体制構築の基本。
○ 公開授業などを通じた保護者や地域等との協力体制の構築や、社会全体で道徳教育に取り組む機運の醸成は非常に大切。子育てやしつけは家庭が基盤であるが、様々な事情でそれができないときに、公的な教育機関としての学校の役割だけでなく、社会全体で子育てをする必要性を明確化すべき。道徳教育に関する環境整備や連携の項目を立て、記述を充実させる必要。
○ 情報倫理やモラルについては、社会全体として共通認識が図れておらず、子供が学ぶだけでは世代間の隔絶を起こしてしまう。こうした問題を社会と連携して共有できるような場が必要。
○ 地域連携の意味を明記する必要。地域の人たちが授業や教育活動に入ってくることで、子供たちにとっては良い教育になる。
○ 少子化が進む中でも、50代の退職教員の増加により、教員採用が増える都道府県が多い。今後10数年の教員養成の在り方は大きな課題であり、新規採用教員が教員養成課程でしっかり道徳教育を学ぶことも、これからの道徳教育の充実において非常に重要。
○ 各大学で教員養成のカリキュラム改善を進めていく必要。全教員が道徳教育を担当する意識で養成する観点から、履修単位数の増加も検討すべき。
○ 教職課程の総単位数を増やすことは慎重に検討すべき。大学教育改革においても、単位数より学生の自己学習を増やす流れにあり、中身の充実が必要。
○ 道徳教育の専攻の設置は、大学に道徳教育の研究拠点が必要という観点から重要であるが、小学校段階と中学校段階では意味合いが異なる。
    小中学校では、原則として学級担任を中心に全ての教員が道徳の授業をすることが望ましいが、中学校段階では専門的な内容を扱う場面も出てくるため、小中を分けて考える必要。
    中学校段階の専門免許状の可能性についても、検討課題として明記すべき。
○ 教員養成の段階で道徳の踏み込んだ勉強をした教員を育てたいと考えた場合、道徳の専門免許状以外にも、道徳を副専門とするなど、各大学の創意の下でできる工夫が十分にあり得る。
○ 幼稚園や高等学校における道徳教育も課題。道徳教育行政の観点からは、道徳教育の専門研究機関の設置なども積極的に提言する必要

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