資料5 「道徳教育の充実に関する懇談会」前回(第7回)の主な意見

全般

○  道徳について議論する中で、その一番の入り口はエチケット。アメリカでは、エチケット(コミュニケーションの仕方、旗を揚げる理由、手紙の書き方など)の教育が大切にされており、参考にすべき。

○  学校における指導体制の確立強化の大前提として、なぜ道徳教育が充実してこなかったのかという反省点を認識すべき。

○  道徳には、「実定道徳」と「批判道徳」の2種類がある。「実定道徳」とは、社会全体で受け入れられている道徳観やエチケットをしっかり身に付けさせるもの。一方、「批判道徳」とは、現在ある道徳を吟味するという視点を最終的に身に付けさせるもの。特に、「批判道徳」は、「実定道徳」が揺らいでいるときや、常識で判断がつかないことを考えるときに必要になってくる視点。発達段階を踏まえ、学年が上がるにつれ、批判的な視点を持っていく必要。
  「批判道徳」や法教育を考えていく上で、基本的な道徳的なものの見方・考え方、公正さや公平さとは何かといった法的なものの見方・考え方の理屈面をしっかり身に付ける必要。

○ 子供たちが自分が受けた道徳教育をどう思っているか、学校教育全体の中で道徳をどう位置付けているのかという観点は大切にして議論を進めていきたい。いい先生に出会った子供は、道徳の時間に対していい印象を持っているのではないかと思う。子供とのいい関わり方ができる教員をいかに確保するかということが最大のポイント。

○ 道徳教育を子供たちがどう受けとめて、それをどのように現実的に生かしていこうとしているのか、学習者の立場から考えていくような取組を入れる必要。

○ 高等学校における道徳教育を実践レベルで推進していくことや、幼児教育における道徳教育の充実も考える必要。

1 学校における指導体制の確立・強化について

○ 学習指導要領に基づいた道徳教育がなされていないために、道徳的実践力という内なる力、いわゆる心の在り方が系統立って育てられていないのではないか。道徳教育を充実するためには、学習指導要領に基づいた道徳教育を全ての学校で行うことが必要。

○ 道徳教育推進教師も、ベテラン教員がなっているところもあれば、新卒2~3年目 の教員がなっているところもあり、校長の姿勢が大事。

○  道徳教育の充実については、学校経営の中でどれだけ具体化されているかが問題。例えば、職員会議で道徳教育推進教師が何番目に発言するとか、教育予算の中で道徳予算がどれだけ割り当てられているかなどの指標が考えられる。こうしたものを教育委員会が調査しながら、校長の評価もするような仕組みが必要。
  また、道徳教育推進教師にリーダーシップの発揮できる教員が割り当てられるよう、手当のような措置をしたり、道徳教育推進予算を各学校に配ると、研修が必ず行われると思うし、それがどう使われているか評価しながら進めていくことが必要。

○ 研究の指定を受けた学校の研究発表が蓄積されていないため、国や都道府県レベルでまとめておき、次に研究開発をやる学校が出てきたときに、従来の研究を参考にしながら、一歩でも二歩でも進める成果を出せるようにすべき。一つ一つの研究をいかに有効に残していくかを考えた方がよい。

○ 指定校での研究成果を蓄積するため、「初等教育資料」の別冊を復活していただけると有り難い。

○ 東京都では、かつて教育研究所に膨大なデータベースがあったが、教職員研修センターに変えたときに全部捨ててしまった。データベース化はこれからの課題。

○ 地域の人々の理解・協力を得るための取組の充実が必要。道徳の公開授業を積極的に行い、地域の人々にも入ってもらって、どのような道徳授業をやれば良いか一緒に検討すべき。

2 教員研修について

○ 教員研修においては、戦前戦後の道徳教育の歩みの反省に立って、認識を新たに出発していくことが必要。

○ 中学校だけでなく、小学校の教員も忙しく、外国語活動、総合的な学習の時間、生活科など新しい仕事が出てきて、いろいろ研修を受けなければならない状況。このため、小学校の教員が道徳の研修を十分受けられ、かつ、教育活動が展開できるような条件整備をしていく必要がある。研修の中心は校内研修にあり、お互いの道徳の授業を見せ合う研修が一番のポイント。さらに、教育委員会や国が行う研修を体系的にもっと充実すべき。

○ 教員研修については、例えば、3年か4年に1回、どの教員も研修が受けられるようなシステムを確立し、そのための補助をしていくことが考えられる。
○  道徳教育を充実させるためには、一人一人の教員が1時間の授業をしっかりやることが一番大事。そのために、学校という組織で充実していく必要があり、校長が意識を改め、高めるため、校長の任用前研修などに道徳の研修を必ずいれることが大事。

○  中堅教員と管理職の研修が非常に重要であり、指導法だけでなく、理論的な部分についても理解が求められる。

○  校内研修をいかに充実するか、また、校長が研修会をいかに作っていくかが要となる。特に、短い時間の中で道徳を究めるためには、それしかない。

○  学校の先生方は、学校という組織しか知らない方がほとんどであり、一般社会の経験や知識が少し乏しい印象がある。子供たちに社会の厳しさを教えていく必要があることを考えると、企業での研修などの機会を増やす必要があるのではないか。

○ 研修する教員への助成や研修期間、いろいろな学校の視察の機会の保障など、教員の自主性を引き出すような施策の方向も考える必要。

3 教員養成・免許について

○ 大学の教職課程に、エチケットや日本の伝統行事を学ぶカリキュラムがないと、今求められている道徳教育の成果には実践的につながらないのではないか。

○ 教職課程では、道徳教育の授業が並んでいるが、その基本となる道徳や法をどう考えるかという部分をある程度充実した方が、教員が自信をもって生徒に臨むことができるのではないか。

○  大学での道徳教育の理論面での研究が非常に弱く、結果的に教員養成、指導法、研修の問題などに全部つながっていく。例えば、研修の成果指標も確立されていない。 現在の学習指導要領の内容そのもののが、今の子供たちの育ちにとってどういう意味を持つのか相対的な観点から考えてみる必要。
  修身の中では、道徳的な実践としてエチケット教育、礼儀教育がカリキュラムに組み込まれていていたことも理解されておらず、歴史的な観点からの弱さもある。
  教員養成課程も指導法2単位だけで済んでおり、教科に関する科目8単位から道徳は対象として抜け落ちており、理論面の充実が必要。
  構造的な問題として、教員養成・免許の問題を捉えていくことが必要。

○ 資料2の大学の教員養成の指導案のような形で、教員養成をやっていただきたい。理論と実践をやっていただきたいし、単位数を増やすのに超したことはないが、教職課程ではいろいろな単位が増えているので、全体のバランスの中で考えてほしい。ただし、教育実習の中での実践は必要であるので、是非やってほしい。教育委員会側の教員養成大学への要望をもっと言っていくべき。

○ 大学の単位数を増やし、特に教育実習では必ず道徳の授業をさせ、実習後にシミュレーションの授業をすることが大事。

○ 教員養成について、理論と実践の双方から科目の時間割を義務づけることが必要。また、教科専門研究と教科の指導法研究のせめぎ合いがあるが、実践力を担保する教育が重要であり、教育実習期間中に道徳の時間の授業を義務づけることが必要。道徳の授業の基本形と多様な指導法を大学で学べるようなシステムを構築すべき。

○ 小学校の一種免許状を出す上においても、専修免許状への道徳教育分野の取扱いを応用して、一定の単位取得をその授与条件と位置付けてはどうか。そうなると、大学教員の確保や様々な分野の研究開発も必要となり、教員養成系の大学の道徳講座が充実してくるし、大学院の博士課程や国立道徳教育研究所のようなものができて、研究・実践ともに深まっていけば良い。

○ 教員自身が情報モラル教育に取り組めるよう、教員養成課程、教員研修、免許更新講習でも、情報モラル教育の学習や研修の充実が望まれる。特に教員養成課程では、道徳関係の単位が増加して、情報モラル教育の内容が含まれると有り難い。

○ 道徳では、行動がとても大切だが、逆に一歩間違えて、行動に心が入っていないことが起きては本末転倒となる。一つの行動について、「なぜそうしなければならないのか」ということを考えたり、物事の善悪について討論する時間をしっかりとっていくことが必要。こういった考えさせたり討論する授業ができる教員の養成を考えてほしい。

○ 理論研究の成果を出すことが核になるとは言えるが、現実の事実や道徳現象から考えていく方法で取り組むことも必要。

○ 道徳が教科となった場合、他の教科と同様に、教科に関する科目と指導法に関する科目を両面として設ける必要が出てくる。例えば、道徳教育学概論といった理論的な側面を強調した科目を設置するなど。また、大学の理論研究の強化のため、教員養成課程の中で、道徳教育を専門とする講座や専攻を設けていく必要。大学院の専修免許については、現行の括弧書きの道徳教育だけでなく、道徳教育専攻の専修免許の可能性を考えていくべき。

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