資料8-2 委員提出資料(山田委員)

道徳教育の充実に関する懇談会(4月24日)提出メモ

山田昌弘(中央大学)

  大学の用事で本日出席できなくて,申し訳ありません。前回の発言も含めまして,意見を申し上げたく,書面で失礼いたします。

1.子どもの育つ家庭の状況の格差拡大

  「恒産なくして恒心なし」(孟子)という言葉があります。安定した心をもつためには,経済的に「安定」していることが必要です。しかし,今の子どもの育つ家庭の分析を行うと,さまざまな意味で不安定な家族の中で育つ状況が観察されます。
  まず,家族状況が多様化しています。年齢的に言えば,10代で出産したため小学校入学時も20代の親もいれば,60代,70代になっている親も出てきました。ひとり親や祖父母に養育されている子どもも多くなっています。
  経済的にも多様化が進みます。経済的に何不自由ない親の元で育つ子どももいれば,明日の生活も心配しなくてはならない子どもも。日本は,子どもの貧困率(平均年収の半分以下の家庭で育つ子ども)が15%と,先進国の中で高いレベルにあります。みなが貧しい時代ならともかく,多くの親が豊かに生活する中で,自分の親だけが貧しくて,将来に希望がないという状況の中で育つ子どもの気持ちをくんでいただきたいと思います。親がリストラされ将来に希望がなくなっているとき,努力は報われると言業で説いてもひびかないでしょう。親に虐待されている子どもに対し,親を尊敬しろと言えないでしょう。
  それゆえ,不安定な家庭の中で育つ子どもへの配慮をお願いします。というよりも,そのような子どものための教科にしてもらえればありがたいです。たとえば,親に虐待されてても希望を捨てるなとか。

2,コミュニケーション教育を

  今,多様な人々が共存する中で,コミュニケーションをとれるような実践的な教育が必要になっていると思います。
  浅井リョウさんが小説の中で述べるように,学校の中で,友人開係が「カースト化」されていて,近年は,男女交際率も低下しています。異質なものへの興味が失われ,同質のもの以外のコミュニケーションをやりたがらない子が増えています。
  心のノートは,内省や自己チェック的なものが目立ちます。挨拶しましたかと問うのではなく,実際に挨拶を教室で隣の人とさせてみる,人の目を見て話す,人の話は最後まで聞くといった心理臨床的なトレーニングを加えていけばよりよいものになると思います。
  (しかし,それができる先生はあまりいないと思いますが)

  以上,よろしくお願い申し上げます。

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