資料2 「主な検討の視点等について(案)」に係る主な意見の整理

(1)育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容の構造について

○ 各種の資質・能力概念の内容について

  • 法令上定められている教育の目的・目標について
  • これまで提言された様々な資質・能力の内容等について
  • これからの時代に求められる資質・能力として、初等中等教育段階において重視すべき内容と構造について

<主な意見>

【社会像】

○ 「育成すべき資質・能力」を構想するには、これからの社会のありよう・あり方を思い描く必要がある。

  • 知識基盤社会:知識経済、テクノロジーの発展
  • グローバル化:グローバル-リージョナル-ナショナル-ローカルの多層性
  • リスク化:進歩のもたらすリスクの管理の必要性
  • 流動化:社会の流動化、個人の人生の流動化

○ 今後の日本がどんな社会になっているか、を想定してみる必要がある。

  1. 日本は先進国の一員としての役割と責任を負う。(「問題解決能力=思考力」中心)
  2. 知識基盤社会が進行し、高度情報化社会となる。(「情報活用能力・情報批判能力」)
  3. グローバル化社会が進行し、国境を越える諸課題が拡大する。(「国際的連携能力」)
  4. 地球環境問題・環境汚染問題に正面から対応する必要あり。(「地球的視野・価値観」)
    これらのうち、1.~3.は4.に向けて、幅広く柔軟に、育成すべきもの。
    ESDを、地球環境問題を中核にして、教育目的の一つの焦点(人類の生存)に据え、主に「総合的な学習の時間」を活用する。
    1.~3.は従来の「能力開発型」教育でよいが、4.は「能力制御型」教育とし、前者を後者の枠の中に入れて、吟味にかけ、方向付ける。

○ 高学歴社会が極限に来て、大学への教育が全面展開し始めたことにより、本来の「教育」が入試準備のための「訓練training」に変質していることの問題がある。

○ 経済や産業の要請にただただ従属することには問題があるが、純粋に教育の論理で検討した結果、望ましいと考えられた資質・能力と、経済や産業が要請したものが一致することには特に問題があるとはいえないのではないか。

○ 情報化、グローバル化といった動向は重要であるが、それらが過度に焦点化されることには注意が必要。
 すなわち、発達と個人差の視点から、「何歳ごろの教育で必要なのか」「国民のどれだけ多くにとって必要なのか」を考慮し、とくに義務教育段階では、内容を精選する。
 ただし、その精選とは、レベルの低いことに留めるという意味ではない。従来のわが国の教育で不十分であり、早期からの育成が求められることについては、重点的にとりあげていくことが望まれる。

【資質・能力概念】

○ 「資質・能力」は両者を明確に区別する必要がある。「資質」は「生来の性質・特性」で「育てられないが、磨けば外に出てくるもの」、「能力」は「育てて、より質の高いものに変えていけるもの」ということでよい。前者は、面接やパフォーマンスにおいてとらえられるもので、ペーパーテストで見るものではない。

○ 「資質」は辞書的には、「生まれつきの性質や才能」や「生得的素質によって規定されている個人の潜在的可能性」のことであり、その場合「育成すべき」は形容矛盾になるが、ここでは、〈人格の基底層にあって育成の困難な、しかし重要な部分〉を意味していると解釈する。能力は後天的要因と生得的要因によって形成されるものであり、資質は能力の下位概念とみなしうる。

○ 広辞苑等で資質を引けば、生まれながら、といったような意味が出てくる。しかし、教育基本法においては「資質を養う」、他の設置法などでは「資質の向上」などといった言葉を一般的に使用しており、資質は変わりうる、改善できるものであるという前提に立っているのではないか。今までの使い方からすれば、能力という言い方でカバーできないものを資質と言ってきたのだと考えている。

○ 資質の方が能力に比べてより基本的で潜在的なものであるというニュアンスがあるように思う。つまり、「具体的に何かができる」というような顕在化したものが能力であり、それはあくまで相対的なものであって線引きが難しいため、資質と能力を一緒にしておくというニュアンスではないか。

【資質・能力の内容】

○ 子供たちを「日本の未来の主権者」と表現し、それにふさわしい資質・能力を提示することが望ましい。「学力」だけが良くなっても、「人格」が良くなければいけない。

○ 国研研究を発展させて《肉付け》していく必要。世界の動向を押さえ、人間全体とらえる(「思考力」、「基礎力」、「実践力」)ことが必要。

○ 「目標・内容」は、「資質」「能力」で表わすが、とくに「人格」(道徳性)は「資質」であらわす。「学力」は「思考力」中心の「能力」で表わすが、「内容」は欠くことはできない。しかし、「内容」は「大学まで必要な知識・技能は何か」という観点から、これまで以上に絞り込む。全体に「最低基準」であることを明記する。

○ 公教育学校全体としても「子供の自立」を目指すこととし、小学校では「自立の基礎」を、中学校では「自立の基礎」と「個性の探求」を、高校では「自立の準備」と「個性の伸長」を、それぞれ明確に追求する。この視点が欠けてきている。

○ 義務教育段階における「学校から社会へ出る力」について、継続して検討する必要。

○ 資質・能力として今後重点的に育成することが望まれるものは、次のとおり。

  • 教科学習:自己学習力、活用力、探究力、創造性、説明・発表力、討論力など
  • 対人関係:感性、社会的スキルなど
  • 社会生活:情報活用能力、キャリア意識、倫理観、社会参画力、社会的問題意識など

○ 重要な汎用スキルやテーマを学習指導要領で例示する必要。

  • 汎用スキルの例(自律的な問題解決力、自己学習力、批判的思考力、コミュニケーション力、グループワーク、チームワークなど)
  • 重要なテーマの例(人権、生、キャリア、市民性、平和、国際理解、異文化理解、環境、持続可能な発展、防災など)

○ かつての一般知能(general intelligence)的な見方ではなく、多重知能(multiple intelligence)的な見方に立脚するならば、対人関係能力も数的シンボル操作の能力と同等に価値のある知性であり、十分に教育可能。

○ political literacyやcritical literacyなど、従来ややもすれば敬遠しがちであったものについても、積極的にその可能性を検討してはどうか。

○ 21世紀型の学力に向けて、教科の目標のさらに基底に教科共通の力を規定すべきである。言語力(表現力)、学びに向かう力(意欲・集中力・持続力等)、協同性など。

○ 「自ら学ぶ力」「確かな学力」「生きる力」「人間力」「キー・コンピテンシー」などの学力観や総合的な学習の時間の目標、キャリア教育の視点等が多様に溢れ、学校現場は混乱している。重なりも多い。改訂を契機に「育成すべき資質・能力」として整理を行うべきである。

○ <新しい能力>で求められているような有能性を育成するためには、基礎的・基本的な知識・技能の習得、ならびに基礎的・基本的な知識・技能を活用する思考力・判断力・表現力の育成が必要不可欠。全国学力・学習状況調査のB問題レベルにとどまらず、各教科でパフォーマンス課題(各学年1~3個程度)を取り入れていくことを積極的に検討すべき。

○ 資質・能力育成の重要性を共有する必要。正答のない困難な問題の解決が必要な時代に、思考力等の資質・能力の育成を強く意識した教育が不可欠との前提に立つ。柔軟な発想での検討が必要。

○ 「育成すべき資質・能力」と「伝えるべき教育内容」を明示する必要があり、「育成すべき資質・能力」について義務教育段階と大学教育段階の整理を丁寧にしてく必要。併せて、「伝えるべき教育内容」として、教育内容の差し替えや精選が必要。この両者の組み立て方と明示の仕方を議論する必要。

【資質・能力のモデル】

○ 世界中で提案されてきた資質・能力のモデルには、少なくとも3つのタイプがある。これらのモデルを組みあせることは可能だが、概念的な区別は必要。

  1. 座標軸モデル:対象世界・他者・自己
    (例)OECD-DeSeCo: キー・コンピテンシ、米国NRC
  2. 階層モデル:認識と行為、基礎と応用など
    (例) 経済産業省:社会人基礎力、国立教育政策研究所:21世紀型能力
  3. 領域モデル:知・徳・体など
    (例) 文部科学省:生きる力、ブルーム:教育目標の分類学

 自分自身は、これからの社会を生きていくのに求められる能力は、「道具を介して対象世界と対話し、異質な他者と関わりあい、自分をより大きな時空間の中に定位しながら人生の物語を編む能力」と捉えている。

(1)育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容の構造について

○ 教育目標・内容の構造の再構築の可能性や具体的なイメージについて

  • 教育目標の明確化・体系化と教育内容(教科横断的な内容と各教科等における内容等)との関係について
  • 育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容の構造を可視化する方策について

<主な意見>

【教育目標の明確化・体系化と教育内容】

○ 教科体系の中での知識・技能のみならず、教科横断的な資質・能力や、社会生活を視野に入れた資質・能力の育成を図る必要がある。資質・能力と教科等のマトリクスを例にすれば、情報活用能力を育てる場合、各教科等の中に、どの学年でどういう内容・単元が対応し、こういう重点的な内容や活動をしましょうというイメージ。

○ 育成すべき資質・能力と内容は、二者択一的な関係にはなく、両者の関係を考えることは、結果的に学力の構造に関する議論を要請する。次の4層で考えてはどうか。

  1. 領域固有の個別的知識・技能等、
  2. 教科の本質(その教科ならではのものの見方・考え方、処理や表現の方法等)、
  3. 教科・領域を超えた汎用技能(generic skills)や意欲・態度等、
  4. メタ認知

○ 資質・能力の形成には、大きく分けて「統合的・文脈的アプローチ」「要素的・脱文脈的アプローチ」2つのアプローチが存在する。後者は、人材を差異化するために使われるものであり、本来、生成・発達する人間を育てていく際のアプローチとしては適さないと考える。

○ 資質・能力は、知識の習得・活用や、探究・実践といった活動を通じて育成されるべきものなので、それのみを別個に抽出してスキル化したり、マトリックス化したりしない方がよい。

○ 資質・能力については、カリキュラム全体で育成すべき一般的能力を設定し、それを各教科の中で、教科の特質に応じてどう選択し具体化するか検討するという筋道がある。一方、それとは逆に、各教科の中で重要と思われる能力(教科別能力)を抽出し、その集積・結合・再編を通じて、カリキュラム全体でどのような能力を育成していくかを考えるという筋道もある。

○ 全体構成と関係性の明確化(全体と部分、部分と部分、統合的扱い)が大事。
 現実の問題解決には人間がもてるものすべてを働かせて取り組むことから、重視すべき資質・能力も広い視野から整理し、それらが統合的に働くように育成する必要。
 資質・能力と内容、活動、教材との関係について十分検討し、「理念と教科をつなぐ」ことを具体的に考える必要。

○ 「人格形成」と「学力形成」を分け、前者を全体、後者を部分として位置づけ、前者は、学校外の教育の場との協働で推進するという原則を明示する。「道徳教育」は学校外の保護者・地域住民等との連携の下で行うことを明記する。

○ 全学校段階で「学び方」「発表・伝達の仕方」「考え方」=「自己教育力」を身につけさせる。

○ 教育課程全体に、「地球環境問題」を核としたESDの概念で関連づけ、方向づける。

【重要な概念(重大な観念)】

○ 教育課程全体(各教科等)を貫く重要な概念を明確にする必要(理念的なものと方法的なもの、人間・自然・地域づくり・国を超えた関係などへの着目、学校教育全体(教科等・学年・学校段階)、人の生涯や数世代を視野に入れる必要)。特に、人間ということを大事にする必要。

○ 知識については、「重大な観念」とそれにつながる「本質的な問い」を明確化する必要。

【学習指導要領の改善】

(教科再編の必要性の有無)

○ 諸外国におけるコンピテンシー・ベースの教育課程においても、その枠組み自体は在来の教科等を用いている事例も多い。我が国において、教育課程を資質・能力を踏まえたものとする可能性を検討する場合にも、学習指導要領の枠組み自体は、まずは現行の各教科等の枠組みを維持して検討を進めることでよいのではないか

○ 大幅な方針転換(たとえば教科再編)を図るよりも、むしろ各教科で「確かな学力」の育成という方針を堅持し、充実させるべき。

○ 新教科を立てるのではなく、現在の教科目構成は残すが、教科内容を変えて、経験的な活動を加味して、知識と体験とのバランスをとる。

(目標・内容)

○ 学習指導要領について、昭和33年以来用いている表し方が、基本的にコンテンツ・ベースを前提としているとすれば、その表し方、書式、用語自体を、コンピテンシー・ベースの観点も含めた今日的視点から見直してみてはどうか

○ 現行の各教科等の目標・内容等について、資質・能力の観点から全面的に見直し、必要に応じてそれぞれを整理し、統廃合し、修正し、あるいは価値付け直したりする作業の中で、比較的穏当でかつ実用上十分に資質・能力を踏まえると同時に、内容との対応関係もしっかりと押さえられた教育課程の構造が見えてくるのではないか。

○ 中教審答申と学習指導要領との相互の関係を見直し、「育成すべき資質・能力」を学習指導要領に明記すべき。

○ 発達的観点を明らかにして、一定の発達的筋道を、暫定的枠組みとして決める。特に5歳前後(言語技能)や9歳前後(抽象的思考)に見られる段階に十分に配慮する。

(組織原理)

○ 教科目構成については、特に高校段階では科目に分化するとしても、大学受験教科目は「教科」レベルの問題内容によるものとし、科目レベルの細かい知識は問わないようにさせる。

(履修原理)

○ 小学校中学年までは全て共通必修教科、小学校高学年から中学校までは、それに加えて「個性をさぐる」ための選択教科(履修原理:広く、浅く、短く、多く、軽く)、高校からは「個性を伸ばす」ための選択教科(履修原理:中学校までと反対)を設定。

【言語活動の充実】

○ “習得・活用・探究”については、授業過程・学習過程のモデルを提供する役割を果たしている。また、“言語活動の充実”というコンセプトについては、教科の枠を超える発想、視点、方法を提示し、教科の枠を超える教育経営実践を触発してく役割を果たしている。これらについて、バージョンアップを図りつつ、発展的に継承していく必要。

○ 言語活動の充実を進めることで授業に工夫・改善が見られる。特に、中学校や高等学校で教科を越えた授業づくりやその検討が定着化しつつある。言語活動を重視している学校では学力面においても向上が見られる。これらの取り組みは、資質・能力を重視した教育改革を進めていく上で円滑な移行を促進するもの。
しかし、中学校や高等学校を中心に従来型の授業が根強いのも事実。言語活動を重視した授業がどの程度実行され、効果を上げているのかを明確にする共に、次期学習指導要領を実施する前に促進しておく必要。

○ 言語力を3つのレベルでの表現過程としてすべての教科に位置づける。普通の言葉、教科の用語を使った表現、記号やパフォーマンスを引用可能として表現化する。
 対応する思考・問題解決スキルをいくつも洗い出し、教育プログラムに載せる。
 教科毎の思考のためのモデルを取り出し、その教育を中心とする。
 基礎的基本的知識・技能はその理屈立て(活用)の上で訓練するものである。活用から習得さらに活用へというサイクルを基本とする。

【総合的な学習の時間】

○ 総合的な学習の時間で育てようとする資質や能力及び態度の3つの視点がPISA学力調査の基盤となっているキー・コンピテンシーと一致している。総合的な学習の時間を研究の中心に据えている学校では、全国学力・学習状況調査では特にB問題で向上が見られ、また、国語や算数の基礎基本の定着にも好影響をもたらしている。しかし、そのことは一般的には理解されていない。総合的な学習の時間の意義及び教育効果について広く調査を行い、その有効性を発信し、充実化を図るべき。

○ 児童生徒自身が自らの興味関心に沿った課題を主体的に追究することを中心とし、創作活動や企画運営活動なども含めることが考えられる。

○ 育成すべき学力を教科横断的なものとし、言語的表現力の育成を進めるべき。

○ 記述式により「関心・意欲・態度」を評価する時間としても機能することが期待。

○ 価値判断の力を育てるためには、カリキュラムを細切れにするよりも、「総合的な学習の時間」や特別活動の充実を図る方が有効だと考えられる。

【○○教育の対応】

○ キャリア教育、防災教育など、「○○教育」への対応が迫れているが、収拾がつかなくなりつつある。教育課程上、整理・統合する形で済む問題かどうか。

○ 学校現場はいわゆる「〇〇教育」への対応に奔走しているが、実際は教科学習等で取り扱われている事項に現代的諸課題に対応するための知識や技能は組み込まれている。教師や子供がそのことを意識して学習に臨んでいるかどうかである。児童生徒向けに各教科学習と現代的諸課題との関連を示すような補助的資料の作成が求められる。授業レベルでの具体的な手立ての開発は今後の課題。

(2)教育目標、指導内容、学習評価を一体的に捉えた教育課程の在り方について

○最近の教育課程編成や教育評価の理論と実践について

  • 「パフォーマンス評価」「ルーブリック」「ポートフォリオ評価」等について
  • これらの理論と実践に関する成果と課題について
  • 学習評価を見通した教育目標・指導内容の在り方について

<主な意見>

【「パフォーマンス評価」「ポートフォーリオ評価」「ルーブリック」】

○ 資質・能力の育成において統合的・文脈的アプローチをとる場合、パフォーマンス評価やポートフォリオ評価を活用することが望ましい。単に「学習の評価」だけでなく、それ自体が学習経験として意味をもつという「学習としての評価」の働きがある。
 ただし、そのような評価は、往々にして評価負担が大きく、教師に高い評価能力を要求する。また、事実的知識や個別のスキルの評価には適さない場合もある。
 したがって、パフォーマンス評価と客観テストなど、異なる複数のタイプの評価を組み合わせる必要。その場合も、複数の評価の使用が、教師の評価疲れにつながらないよう留意する必要。

○ 思考力のスタンダード評価を明確にし、ルーブリック(評価基準と見本)を明示する必要。自己評価技能あるいは広く自己学習技能を生徒に教える必要。各学校毎の総括的評価の共通化を図り、ルーブリックの共通化をする必要。

○ 量的(数値的)評価でなく、質的評価を重視し、ポートフォリオ評価、パフォーマンス評価、文章評価等を前面に出す。前者を副にし、補助的・二次的資料と位置づける必要。IBコースの評価法に学ぶ必要。

○ 学習指導要領では、包括的な「本質的な問い」や重点的指導事項例(「転移可能な概念」や「複雑なプロセス」)を明示することが有効ではないか。そのほかは、学校現場での創意工夫に委ねるのが原則。
 ただし、学校現場での実践作りを支援するため、パフォーマンス課題、「永続的理解」、ルーブリック、アンカー作品(児童・生徒のパフォーマンス事例)、効果的な指導方法などを参考資料として示す必要。改訂の前にかなりの研究開発が必要。

○ パフォーマンス課題に取り組むと、その中に汎用スキルやテーマは必ず副次的に織り込まれてくる。それに対し、汎用スキル等について個別に独立させて扱う方法は、非効率で教育効果も低い。各教科でパフォーマンス課題に取り組ませつつ、学校のカリキュラム全体で横断するような目標を位置付けるようにすべき。この場合、重要な汎用スキルやテーマを具体的にカリキュラムのどこで扱うのかは、各学校の判断。

○ カリキュラム全体のレベルで見たとき、どのように生徒たちに汎用スキルやテーマが学ばれているかを把握するため、ポートフォリオを活用することも考えられる。学校における実際のカリキュラム改善は、授業や単元といったミクロの設計と、年間指導計画や学校カリキュラム全体といったマクロな設計とを往復させながら進む。

(2)教育目標、指導内容、学習評価を一体的に捉えた教育課程の在り方について

○教育目標として示すべき内容、示し方、測定の方法について

  • 教育目標として示すべき項目の具体的な内容について
  • 教育目標の表現ぶりなどの示し方について
  • 教育目標として示した項目の達成状況の把握・評価の方法について

<主な意見>

【教育目標の示し方】

○ 「内容」は小学校中学年までの「道具的な知識・技能」と、それらを使って身に付ける「理論的・概念的な知識・思考技能thinking skills」とを区別することが必要である。前者は内容であるとともに認識の手段・方法・用具でもあるという独自性があるので、しっかり記憶ないし行動の定着を、また技能は十分な習熟を図る必要がある。この部分は「到達目標」で表わす。後者の部分は「方向目標」でよい。

○ 小学校4年までの「国語」「算数」の技能部分は到達目標を明確にした「課程主義」、その後は「年齢主義」という、全体としては「半課程主義」の教育課程とする。

○ 小学校中学年までの「国語」と「算数」の「技能」の部分は「到達目標」で表わし、教員が全員到達に責任をもつこととする。それ以外は無理をせず「方向目標」でよい。

【評価方法・内容】

○ 評価を目的別に明確に区分する。まず、成績(順位)をつけるための評価か(評定)、活動改善のための評価か(評価)、の区別を明確にする。それによって、評価方法が異なることを教員に自覚させる。活用型学習の成果は「評定」に使わない。

○ 人格特性や態度、価値観などを、いわゆる成績づけの対象にはしないことが必要。
(道徳的な判断力を身につけさせるためにこそ、価値判断の自由を保障することが必要不可欠。)

○ 指導要録の観点別学習状況の観点は、「知識・技能の習得」「思考・判断・表現」の2つ、または「知識の習得」「技能の習得」「思考・判断・表現」の3つにすべき。パフォーマンス課題では、思考力・判断力・表現力と関心・意欲・態度が一体となって発揮されるため、両者を区別して評価するのは不可能。

○ 高校入試、大学入試に対する提言を含めることが必要。

(2)教育目標、指導内容、学習評価を一体的に捉えた教育課程の在り方について

○ 教育目標、指導内容、学習評価を一体的に捉えた在り方について

<主な意見>

【一体的な在り方】

○ 重視すべき資質・能力の性質に即した育成の手立てや評価も一体的に検討する必要。

○ 「育成すべき資質・能力」⇒「教育目標と教育内容」⇒「指導方法及び留意点」⇒「評価の在り方」について一連のセットになるような学習指導要領の構成の仕方を検討する必要。

○ クロス・カリキュラムで育成する汎用スキルやテーマを設定し、カリキュラム全体のレベルで育成・評価の対象にすることも考えられる。

【指導方法】

○ 今後の教育課程政策が、何を教えるか(知識の量)に留まらず、どのようなものとして身に付く(知識の質)ことを望むか、あるいは、その知識を教えることを通して、どのような資質・能力の育成を目指すかをも問題としていかざるを得ないならば、それは各知識をどのように教えるか、つまり教育方法に関する何らかの踏み込みが必要。
 もっとも、教育方法については現場の裁量が大幅に認められるべきであり、徹底して慎重であることが望まれるが、同時に教育方法を「野放し」としたままで資質・能力の育成を十全に実現することは極めて困難ではないか。

○ 学習指導要領に指導方法・指導形態も明記する必要があるとの意見もあるが、それは、学習指導要領の大綱化の流れの中では、「解説書」の方に入れる方が望ましい。解説書を、もっと資料や教え方なども入れて、現場教員が活用できるようなものにする方向を考える方がよい。

○ 最近の指導方法として小集団を活用するものが提案されているが、それだけが絶対ではなく、目的に応じて種々の指導方法を使い分けることが望ましい。その中にICTの利活用も含まれる。

○ 各教科等の目標や内容、評価観点については国で明示すべきだが、指導方法や評価方法については各学校で考え、実施し、見直すべきである。特に、各教科教育には流派や流儀があり、国で具体を示すことは困難。
 学習指導要領を改訂しても、各校が子供や地域の実態を踏まえつつ、限られた資源を最大限に活用して教育効果を上げていく営みが実行されなければ、定着していかない。各校のカリキュラムマネジメントを促進するための資料を国として作成する必要。

○ 一般の学校に対しては、指導方法を一定程度例示していかないと、資質・能力の育成は成功しないと思う。学校を支援する市町村の教育委員会も、大多数は小さな市町村であるため、これを単独で支えることは難しい。国では、一度に大人数の関係者を長期間動員し、多くの情報を収集・活用して作業ができるため、果たせる役割がある。

○ <対象世界・他者・自己の3軸を内包し、教科の特質を備えた活動>を中心に考え、そこに知識と資質・能力を埋めこむ。多様な問題・課題に取り組むなかで、知識の理解を深め、資質・能力を高めていく。
 これまでに行われてきた各教科での教授・学習活動を大きく変えるものではないが、教師も子供も、どんな能力がその活動の中に埋めこまれているかについて、これまでより自覚的であることが望まれる。それが、そうした能力を他の文脈の中でも使えるようになるための必要条件となる。その観点からすれば、指導の際に、資質・能力の育成を意識して、教師が「思考のこどば」を用いることは有効だろう。

(3)その他

<主な意見>

【学校現場との関連】

○ キーコンピテンシ-や育てたい資質・能力の煩雑さにより、教育現場における扱いにくさがある。実践のフィールドに下ろした時に、どう扱えば良いか、そこの距離をどう埋めていくか。

○ 学校の教育課程とその基準である学習指導要領を区別し、期待したい教育課程の姿と、その実現を促す基準や条件整備の在り方を探る。実現可能性を高めるためには、学校の実情を踏まえた方策が重要。

○ 学校での実現可能性を徹底的に検討すべき。生活科の検討過程では、実現可能性を慎重に議論して、確認できたものだけでも300枚以上の指導計画案が作られている。今回、各教科等全体でやるとなれば、非常に丁寧な作業をしていく必要。

○ 学校の状況が極めて違っているので、多様性への配慮が必要。条件が整った学校は、「先駆版」として「羅生門的方法」(創造的に展開し実際に育つものに目を向ける)により先へ行ってもらって良い。一般的な学校は、「標準版」として工学的方法(具体的スキルと育成方法の明示など)により積み重ねていった方がより着実。

○ 総則の在り方について、カリキュラムマネジメントを生み出し、促す必要。
 (教育課程全体を通して具体化・実質化を図る、教科横断型アプローチを促す、教科等間の相互の連携の促進、校種間の連携の円滑化)

○ カリキュラム編成のスタンダードづくりのシステムについては、いわゆるトップダウンとボトムアップを往還させつつ開発していくことが重要。E.FORUMスタンダードづくりに際しては、現場の知見を集約して作成した原案を提案し、現場から御指摘いただきつつ修正するというプロセスで進めていく。このプロセスに教員が参加すること自体が教員研修としても意義の大きい。そのような中間の公共性を担うネットワークが全国に幾つか存在する。それらの知見を更に集約して学習指導要領に反映させるといった仕組みが出来てくれば、理想的。

○ 諸外国ではかなり研究的にスタンダード開発が進められており、学習指導要領改訂の前に本格的な国際調査や開発研究が必要。実際のところどれぐらいの期間を見通して長期的ルーブリックを取り入れたら良いのかは未解明であり、研究、検証が必要。

○ スタンダードが策定されたとしても、各学校でカリキュラム改善を進めることは必要不可欠。具体的には、校内研修を効果的に計画し、実施していくことも求められる。各学校や地域のカリキュラム改善の進め方についても、手引や参考資料を提供するなどして支援していくことが重要。

○ 学校の教育課程編成として、各学校が必ず内容を組織する必要があるが、きちんとやっている学校はかなり少ないのではないか。この点については、学校の責任というよりも、養成や研修、教育課程行政の中でどのように学校や教員の力量(課題探求型の指導)を高めていくかということは大きな課題。

【エビデンスの収集と蓄積と利用への支援】

○ 現行の学習指導要領の評価をきちんとしてほしい。

○ 今の社会そのものをもう少し相対化して批判的に捉えられるような情報がほしい。

○ 国立教育政策研究所を中心に全国の教育学部関係者とのネットワークを作り、教育施策の効果検討研究や個別の指導手法の有効性の検討を進め、エビデンスとして集積し、利用を図る。

○ 全国学力・学習状況調査を拡大する。中学における英語。小2、4、6年と中1、2、3年。また、個々の子供の追跡を義務づける(対応表を作る)。

【授業日時数】

○ 授業日数・時数は「最低基準」の数字だけ示し、具体的な配当は学校現場に任せる。

○ 授業時数は、小学校中学年以下は少なめに、高学年から中学校・高校では多めに配当する必要がある。前者は多いと負担過重となり疲労が出るが、後者は少ないと実験・調査・討論・発表などの活動ができなくなる。

○ 学校五日制は原則として守る必要。

【学校評価・教育委員会評価】

○ 学校評価を多面的に専門家を交えた外部と内部との合同チームで行い、改善点を明確にする。
 教師の指導のあり方を専門家による観察評価により行い、指導力強化の研修につなげる。
 教育委員会がその地域の全体への教育水準向上への努力をどう行っているかを外部から評価し、改善点を伝える。

【個別の教科等の強化】

○ 教科群を作り、合科や時間編成の教育委員会による裁量を増やす必要。

○ 国語科
 教科横断的な言語力育成の要の教科として、説明・発表力や討論力の育成を重視する内容をいっそう重視する必要。これらを、一種の実技として、そのパフォーマンスを評価することも考えられてよい。また、文学については、読解や鑑賞だけに偏らないようにし、社会における創作活動への参加につなげることが望まれる。

○ 社会科
 社会認識力の育成と、社会参画の実践的態度を育成することに重点をおき、評価方法としても、記述式問題、レポート、発表などを大幅に取り入れていく必要。

○ 算数科・数学科
 定型的な問題に対する解法暗記の学習に陥ることのないよう、数学的概念の理解、数学的コミュニケーションの促進、問題解決力や論理的思考力の育成をバランスよく盛り込む必要。評価においても、答えを出すだけのテストではなく、概念や解法を説明する活動を含めることが望ましい。

○ 理科
 実験・観察が重要なことは言うまでもないが、現代人に必要な科学的知識を小学校段階から盛り込み、自然現象や科学技術に対する理解と興味関心を高める必要。また、内容の習得だけでなく、自発的な探究活動を促すことが求められる。評価としては、記述式問題、レポート、発表などを重視していくことが望ましい。

○ 実技教科(体育、音楽、図工・美術、家庭科・技術家庭)
 将来の文化的活動への参加という観点から、個人生活や社会における活動を紹介することが望まれる。社会教育の場との連携も必要。

○ 英語(外国語活動)

  • 日本における環境や学習者の発達段階に配慮し、発音、文法などの明示的指導の上に立った豊かなコミュニケーション活動を展開する必要。小学校段階では、楽しい活動を展開する中にも、習得目標を入れて、中学校への助走期間とすることが望まれる。中学校、高校段階では、ペーパーテストだけでなく、発音、スピーチ、作文なども実技として評価の対象にすることが重要。また、インターネットやビデオレター等を活用して、外国の生徒とのリアルなコミュニケーションを取り入れることが考えられる。
  • 小学校の英語教育の授業時数増、専門の教員の指導が必要。中学生以降については、留学の機会を増やす必要。

○ 道徳
 児童生徒が自らの生き方を考えるのに直結した内容、素材にしていく必要。たとえば、人間関係や自己理解、社会人の生き方、倫理と法、偏見や差別といったリアルなテーマをとりあげることが重要。

○ 生活科
 体験からの気づきの形成に力を入れる。中を例えば4期に分けて段階を設ける。

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