(資料1)これまでの議論の整理について(案)

資料1
第6回修士レベルの教員養成課程の改善に関するWG

 

本ワーキンググループで議論してきた「教職大学院の教育課程の見直し」、「教職大学院の教員組織の見直し」、「国立の教員養成系修士課程の改善」の三点について、政府の教育再生実行会議における議論や国立大学改革の動向を踏まえながら、これまでの議論を以下の通り整理した。

今後の教員養成機能の在り方の方向性

(教員養成の高度化の必要性)
○急速に変化する社会状況に対応するため、これからの教員に求められる資質能力は、思考力・判断力・表現力等を育成するような学びのデザイン力や、社会の変化に伴う新たな課題にも柔軟に対応できる広い視野や応用力など、教職に関わる専門的知識を活用・応用する高度専門職業人としての能力である。
また、スクールリーダーとしての資質能力は、チームの中で他の教員を指導できる力やマネジメント能力であり、その育成のためには現職の教員が専門的知識を学び直し、自らの実践を理論に基づき振り返ることが必要となる。
したがって、これからの教員には、知識・技能の修得にとどまらず、高度の専門性に基づく実践力・応用力が要求されるものであり、教員は教職生活全体を通じて学び続け、このような高度な資質能力を身に付けていく専門職であると位置づけられる。
○このような「学び続ける教員」を支援するため、教育委員会・学校と大学との連携・協働により、教員の養成・採用・研修の一体的な改革を確実に進めることとし、開放制の中で、一般の研究科との機能分担を行いながら、既存の教員養成系修士課程の在り方を見直し、高度専門職業人の養成の場として、教職大学院を中心とした改革を進めていく必要がある。
○教育委員会・学校との密接な連携・協働のためには、大学は、教育委員会の幹部職員や連携協力校の長等が構成員となる常設の会議を設置して、養成する人材像、教育課程の内容、現職教員の再教育の在り方について定期的に実質的な意見交換を行い、教育への社会の要請を受けとめ、その質の向上を図ることが求められる。

(今後の教員養成機能の在り方の方向性)
教職大学院は、「学び続ける教員像」の確立と教員の高度専門職業人としての明確な位置付けの下、現職教員の再教育を含め、高度専門職業人たる教員養成の主たる担い手となることが考えられる。このことを前提として、当面は引き続き高度専門職としての教員養成におけるモデル的役割を担う。
○学校現場からは、質の高い教員の養成が教員養成系大学の使命として期待されていることに鑑み、教員養成機能は、教職大学院が中心となって担うことが考えられることから、教員養成を主たる目的とする修士課程については教職大学院に段階的に移行する。移行期における既存の修士課程については、当面、例えば教科を大括り化した専攻などにおいて、学校実習など実践的な科目を取り入れ、総合大学においては他研究科の専門科目も活用しつつ、教職大学院への移行の準備を行うことが考えられる。
ただし、教職大学院の教員等への採用や博士課程への進学など研究者養成の実績やその需要等を考慮して修士課程を存続させる場合は、真に必要なものに限ることが考えられる。また、養護教諭やスクールカウンセラーの養成など資格取得の観点から教職大学院で担うことの困難な人材を養成することは修士課程の人材養成機能と考えられる。
○専修免許状の課程認定を受ける国・公・私立大学の一般の修士課程は、一定の分野について学問的な幅広い知識や深い理解を強みとする、主として中学校・高等学校教員を養成することが考えられる。

(今後の教職大学院の拡充方策)
○教職大学院の一定の教育成果、教育課程の体系性を維持した上で、学校現場や社会からの様々な要請を踏まえながら制度を発展・充実させる。また、教育委員会・学校と大学との連携・協働により、すべての都道府県に教職大学院が設置されることが望ましいことを踏まえて、国立の教員養成系修士課程の在り方を見直していく必要があり、その改革を促進する。なお、教職大学院の拡充にあたっては、現職教員の派遣を支援するために教員定数の積極的な活用などが望まれる。

教職大学院の教育課程の見直し

(共通五領域)
○引き続き、現職教員と学部卒生の両方に向けて、すべての領域について授業科目を開設することを求め、総単位数は現行どおり20単位程度を目安とし、学生はすべての領域を必修とすることが考えられる。ただし、各領域を均等に履修させる現行の考え方は改め、コース等の特色に応じて履修科目や単位数を設定することができるようにすることが必要ではないか。
○なお、管理職を目指す現職教員を主な対象とする学校経営に特化したコースに属する学生については、学生の教職経験等を考慮して、「教育課程の編成及び実施に関する領域」や「教科等の実践的な指導方法に関する領域」などの履修を減らすなどして、総単位数を6割程度に減少させることも可能とすることが考えられる。
○新たな学びに対応する必要性や教育委員会等からの要請が高いことを踏まえ、現代的な教育課題として、「生徒指導、教育相談に関する領域」などには特別支援教育の内容を必修とすることが考えられる。
○中央教育審議会の平成18年答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」において「学級経営、学校経営に関する領域」の具体的内容例として挙げられている「開かれた学校づくり(家庭や地域社会との連携、学校間交流の推進、学校経営と学校評議員、情報公開と説明責任)」については、これからの学校づくりに欠かせない重要な内容であるため、必ず授業で取り扱うものとすることが考えられる。

(特化コース等の設置)
○教職大学院は、スクールリーダー養成機能として、管理職候補者となる教員が、学校の組織的な対応や管理職としてのリーダーシップを発揮し、学校が地域と一体となって目標を達成していくプロセスなどの学校マネジメントを重点的に学修するコースを設置する必要があると考えられる。コースの教育課程については、教育委員会との連携・協働により、地域の学校管理職に求められる資質能力を育成できる内容とすることが重要である。 
○個別の教科内容を中心したコースを設定することは、既存の教員養成系修士課程の教科教育専攻(専修)の教育課程と変わらず、共通科目を基盤とし、学校現場の今日的課題の解決に資するこれまでの教職大学院の趣旨・目的を変えてしまう可能性がある。したがって、教職大学院においては、今後も教科ごとのコースを設けず、高度専門職として修得すべき実践的指導力の育成という観点から、個別の教科や学校種の違いを超えて教育を俯瞰し研究する教育実践研究を積極的に採り入れた体系的な教育課程を編成することを重視し、教科内容に関する授業科目を開設する場合は、学校における教育実践に直接的に結びつく内容とすることが考えられる。

(学校における実習の在り方)
○教職大学院では、当初から学校における実習を10単位必修にするなど学校現場での課題と実践を重視してきたが、理論と実践の往還が真に有効になるように、その内容を更に充実したものに改善する。

(教育実践研究のとりまとめ)
○学修の成果をとりまとめることは、主体的な課題解決力を育成し、自らの学修を客観化する上で大学院での学修として重要である。それゆえ、授業と学校での実習を総括して振り返り、自らの実践研究を省察した報告書を教育実践研究として作成・発表することを教育課程の中で位置づけることが考えられる。さらに、こうした観点から、教職大学院生に対しては、修了後も継続してフォローアップし、学び続ける教員を支援することに配慮することが望ましい。

(学部卒生と現職教員)
○学部卒生と現職教員では、それまでの各々の経験の違いから必要とされる教育内容に違いがあるのではないかと指摘される一方、集団での活動を中心とする授業では、お互いの特性を生かした討議が可能となるとの意見もあり、学生や教員の評価は高い。各大学院では、学部卒生と現職教員がお互いの特性を生かし協働しながら学修していくことができる工夫が求められる。

○中核的教員となり得る人材の養成という目的の下で、共通の「専門職学位」を授与する教職大学院においては、共通の教育研究水準を設定する必要があるが、実際は、学部卒生と現職教員とでは異なる履修形態を採ることや、共通科目について達成水準を分けて設定せざるを得ない現状であり、今後、国として制度上の課題について整理し検討することが望ましい。

教職大学院の教員組織の見直し

(基本的な在り方)
教職大学院の教育は、共通科目を基軸とした教育課程が必要となることから、専任教員基準についても、文部科学省告示第百七十五号別表第一における「学校教育専攻」の研究指導教員等を基礎に据える現行の考え方(最低11人)を今後とも維持することが適当であると考えられる。
○また、今後、教員養成系の大学院における教員養成機能は、教職大学院が中心となって担うことが考えられることから、教科に係る教育についても、従来の修士課程とは異なる内容で教職大学院において行われることが考えられる。このため、教科領域分野の教員を教職大学院の専任教員として配置するなど現行規定の改正を検討する必要があるが、担当教員については、教育実践への関心、研究分野について十分な審査が求められる。
○教職大学院の教員は、学校現場の現状や教育実践について深い理解を持ち、教員養成を目的とする課程としての意識を共有することが重要である。したがって、実務家教員、研究者教員という区分以前に、中期的な目標として、すべての教員が教職経験を有するなど学校現場の現状を十分理解しつつ、併せて研究能力を有し理論的な見地から授業を行うことができるようになることが望ましい。

(実務家教員)
○実務家教員には、学校現場での最新・多彩な経験を有し、優れた教育実践を行ってきた者が求められており、教育委員会との人事交流や校長等経験者を期限を定めて採用する等により一定期間で替わっていくことが望ましい。
○当面の方策としては、教職大学院制度の創設以降、理論と実践の架橋を進めている段階であり、学校現場の経験を持つ教員を引き続き増やしていく必要があることから、実務家教員比率は現行どおり4割以上を維持することが考えられる。

(ダブルカウント)
○教職大学院における専任教員基準のダブルカウントについては、高度専門職業人養成に特化した独立性の確保という専門職大学院制度の趣旨を鑑みると慎重な検討が求められる。
一方、国立の教員養成系修士課程が教職大学院に段階的に移行していくことが考えられ、今後も教職大学院の発展・拡充が見込まれるため、優秀な教員を拡充期においても確保することも必要となる。教職大学院の発展・拡充が見込まれる当面の間、教職大学院の専任教員を他の学位課程の必要教員数に算入できるような措置を行う方向性で、中央教育審議会でさらに検討することが望まれる。

国立の教員養成系修士課程の改善

(教員組織の改善)
○今後、国立の大学院での養成・研修機能を教職大学院が中心となって担っていくことが考えられることから、教科に係る専攻では、すべての国立の大学院が必ずしも十教科全部を設置する必要がなくなり、各大学院が強みとする教科に集中して教育研究を行うことも考えられる。
したがって、文部科学省告示第百七十五号別表第一の表に示されている教科に係る専攻の規定については、例えば十教科のうち、いくつかの教科を括った専攻を置くことも考えられることから、研究指導教員や研究指導補助教員の配置について、設置する専攻の教育課程等に応じて適切に研究指導教員等を配置できることを検討する必要がある。

 

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