「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成23年12月21日(水曜日) 9時30分~11時30分

2.場所

文部科学省 東館5階 5F6会議室

3.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」の調査内容、実施方法等について

4.出席者

委員

(委員)市川委員、上野委員、太田委員、大南委員、滝澤委員、土屋委員、宮本委員
(特別協力者)渥美特別協力者、柘植特別協力者、廣瀬特別協力者、笹森特別協力者、海津特別協力者

文部科学省

神本政務官、山中初等中等教育局長、千原特別支援教育課長、横井特別支援教育企画官、石塚特別支援教育調査官、樋口特別支援教育調査官他

5.議事要旨

(1)大南委員が座長に、太田委員、滝澤委員が副座長に選任された。

(2)会議運営規則、議事の取扱いについて了承された。

(3)神本政務官からの挨拶の後、事務局から資料の説明がなされた。

(4)各委員から発言の後、議事に基づき自由討議を行った。各委員の発言及び自由討議の概要は次のとおり。

(各委員等の発言)

1.調査全般について

【委員】今回の調査は、前回から10年経ったということで、非常に意義のあるものである。10年前と比較して実態が変わっているのか、いないのかを検討するのであれば、基本的には前回と同じやり方を踏襲しないと比較できないし、10年の特別支援教育の流れの中で、当初は気がつかなかったような新たな問題等が起こってきた場合には、そうしたことを付け加える等も考える必要がある。

【委員】よく講習会や研修会を行っているが、当初、特別支援教育をやっている先生方が多く参加していたが、今や半分以上、通常学級の先生方が来ている。特別支援教育の対象者を捜し出して、特別支援教育をやるということではなく、通常学級の先生方が、特別支援教育のマインドを持って授業を行わないとうまくいかなくなっているという話である。この調査を通常学級の中で生かす方向で行けば、インクルーシブな考え方にもつながり、学級もうまくいくと思う。

【委員】障害者の保護者としての立場から言えば、より適切な教育が行えるようになるということは、保護者としてもありがたいので、そういう方向で進めていただきたい。

【委員】私は地域でモデルを作る仕事をしているが、保護者は随分変わってきた。特別支援教育をぜひ受けたいが、できれば通常学級でお願いしたいという声がかなり強い。それは早い判断、気付きと程度が軽ければ十分可能なことである。

【委員】平成14年の調査が行われたときの現場の教員の受け止め方としては、特別な目で子どもを見たり、この調査でいったい何が分かるのかと、混乱と戸惑いがあった。何か現場が変だ、子どもが変わったと受け止めていた教員が多かったのは事実である。親の育て方等様々な教員なりの憶測はしていたが、理論的な裏付けとなるものはなかった。通常の学校の教員にとっては、この調査をすることにより、教員が子どもの様子を見取る姿勢ができたことは確かである。子どもが多様化し、小中学校には教育課題が様々ある中の一つの非常に大きな教育課題として、このことと向き合わなければならないということが分かった、非常に画期的なきっかけになった調査だと受け止めている。

【委員】現場が14年度以降、特別支援教育コーディネーターの設置によって、大きく変わったことは確かである。ただ、現在、特別支援教育コーディネーターが特別支援教育のエキスパートかと言えば必ずしもそうではない。教員は今一生懸命学ぼうとしているが、学びの途中であって、決してエキスパートではない。こういう現場の状況から何とか一人一人の子どもを大事にしていきたいというのが、今の公立小中学校の現場だと思う。全て子どものために、この調査がこれからの子どものために政策上反映されるよう願う。14年度の調査から10年間で随分現場は変わった。今度の24年度の調査からも現場が大きく変わって、インクルーシブ教育が円滑に行くように、この調査が非常に重要な意味を持っているものと考えている。

【特別協力者】追加質問項目が今回非常に重要で、この結果が通級はこれ位で良いのか、全然足りないのか、今の仕組みで良いのかということを議論していく、非常に重要なエビデンスになると思う。前の調査と比較するかどうかについては、基本的には比較するが、こういう調査の宿命で、完全な比較はできない。どこまで妥協して、前と比べてこうだという議論をするかというレベルだと思う。

【委員】調査の題には「発達障害のある」と書いておらず、調査の目的だけ、「発達障害のある特別な教育的支援を必要とする」ということが入っている。

【委員】何らかの二次調査ができると、前とは違った意義が出るのではないか。

【委員】発達障害の子ども達の中に、発達障害だけでなく、愛着形成の問題を併せ持っている子ども達がいて、その問題が、本来の発達障害の特性に強く影響して、基本的には同じ特性を持つ子どものように見えるが、通常よりもそれが強く出てしまっているということがあり得る。今回の調査に組み込むことがないが、そういった事柄があるということが、少しでも浮かび上がるような調査も検討してよいと思う。

【委員】二次障害がどんどん増えてきて、必ずしも発達障害ではなくて、もっと違う要素があるケースもあると思う。そういった発達によって見えにくくなるということをどう扱うかということがある。

2.実施計画について

【委員】サンプリング調査では地域を全国的に広げることに、非常に大きなプラスの面がある。

【委員】全国連合小学校長会としては、資料7に示したとおり、平成19年度から発達障害に関わる調査を行ってきたが、実際に個表を見ると、随分校長先生のとらえ方が違うと痛感している。今回の計画のように色々な項目を提示した上で調査をして実態を把握していくことが良いと思う。

【委員】特別支援学級やそういうものが併設されているかをきちんと捉えないと、併設されていると通常学級から大きく減るので、それは調査としては非常に不完全になると思う。

【委員】資料4、調査の目的の中に、冒頭で話のあったように、「インクルーシブ教育に向けて」ということが、どこかに入った方が良いか思う。気付きから支援へということで、現場としてみると、10年前と比べてこうだったというよりも、これから先のことを考えるものになった方が良いと思う。実態を把握し、施策へ反映されると、何より現場の教員が結果的に元気付く。この調査が、現場での教育を後押しし、施策に反映される根拠となるようなものであれば、クロス集計で追加項目をきちんと出していくことにより、平成14年度以降の取り組みが評価され、次へ向かう手立てになると思う。

【委員】今回地域を表に出すことは、あまり好ましくない。

【委員】地域別は意味がないということだが。

【委員】難しい。ランク付けみたいになる。

【委員】資料4で、対象地域・学校が、全国のそれぞれ500校となっている。前回の結果、6.3パーセントという結果が出ているが、その位、今回もいるだろうという前提に基づけば、500校で全体45,000人なら、十分な精度で結果を出せると思う。5地域に限定して結果を出すということになると、当然数が少なくなるので、5地域についても精度が高く結果が出せる設計をしていく必要があるかもしれない。

【委員】調査結果として、かなり減っている可能性があるのであれば、もう少し学校数を増やしておいても良いかもしれない。

【委員】今回は500校という数なので、都道府県は考えずに、学校をグループに分けて、それぞれのグループから学校を選ぶという方法にしたら良いと思う。その時の相関基準としては、一つは学校の規模、もう一つは都市規模、大都市部と郡部とか、この二つを考えており、都道府県別の割合というのは考えていないので、無作為に抜いてくれば東京とか大阪とか学校の多いところの学校が多く含まれるということになろうかと思う。

【委員】この調査は教員に対して負担になるという話もあるが、教員がきちんとした基準を見ながら、それに照らし合わせて子どもをもう一度見直すことについては、一時的な作業としての負担はあっても、教員の特別支援教育の見方や考え方、あるいは児童理解の力をつけていくための、一つの良い機会でもあると思う。もう一桁下のパーセントまで出るような調査はできないものか。

【委員】もう一つ下の桁まで出すためには、学校を100倍しないといけないので、500も600も、全体を出すという観点からすれば精度はほとんど変わらない。増やす意義というのは、全体の数字を出すだけでなく、例えば学年別に結果を出そうという時には、500を600に増やすというのは非常に意義がある。数字の桁を増やすのではなくて、色々な相加をして、色々な属性の結果を出すというようなことを考えたときには増やすことは意義があると思う。

【委員】信頼区間6.3パーセントではなく、例えば1.1パーセントから6.5パーセントという形で出すのは非常に良いことだと思う。どういう比較が意義のあることなのか分からないが、全体としてだけではなく、何かの意味のある比較ができるようにしたい。学年別の比較が意味があるのか、前回男女別に出されているが、そういうのが良いのか。

【委員】地域によって13パーセント以上という数値をいう学校心理士がいる。確実にそれはある特定の地域である。先ほど、都道府県別という話があったが、例えば都市部とか何らかの偏在している可能性もあるので、それに対応できるものもできたらよいと思う。

【委員】資料4、実施方法の、学級担任とダブルチェックするところについては、教務主任とあるが、教務主任にチェック機能があると必ずしもいえない。文言は何でも良いが、主幹等、管理的な教員が良いと思う。

3.質問項目について

【委員】前回と同じアイテムを使って、前回との比較をすることを意図すべきである。

【委員】私もそれが良いと思う。

【委員】同じ調査をして、どれ位状況の変化の中で変わっているかということを調べることが非常に大事なことだと思う。第一段階では前回の診断基準を踏襲し、今回は更に学校の中で専門性のある先生や、子どもに日々接している方の意見をいただけると良いと思う。

4.追加項目について

【委員】資料5の追加項目だが、過去にどうだったかという情報を担任が持っていない可能性がある。保護者が必ずしも全部伝えているとは限らないので、そのような時に、少なくとも推測で回答しないような留意点は必要だと思う。

【特別協力者】実態として同じ数いたとしても、例えば通級でうまく支えていると、または通級の数は多くないが、通常学級の先生が非常に理解があって、うまく指導していると、あるいは校長先生の理解が良く校内委員会をうまく転がしている場合、それと大きく変わってくる可能性がある。だから追加質問項目を入れることは重要で、今議論されている根本を解決する一つの重要なポイントになると思う。個別の支援計画を作っているかどうか、支援員をどう使っているかどうかとか、この辺とのクロスの分析みたいなもので、かなり色々なものが出てくるのではないか。

【委員】支援が必要かということについて、追加質問項目に加えたらいかがか。支援の必要はあるが、諸事情によりできていない、また、特性は見られるけれども支援の必要性は少ないと判断して行っていないということがあるので、新たに支援の必要性を感じているかどうかを追加質問項目に加えたらいかがか。

【特別協力者】最後の追加項目の、「校内委員会において、特別な教育的支援が必要と判断されているか」の、「特別な教育的支援」というとらえ方を、つける先生方、学校がどのレベルで考えているのかが、この一文では見えない。もう少し具体に書いた方がより子どものニーズの深さを把握するのに、具体になるのではないか。「通級による指導で指導を受けているか」については、ある学校で通級指導教室があれば受けられているが、自分の学校ではないがあれば使わせたりとか、そういうことに具体的に触れないと、質問のレベルがつける先生のものに直接マッチしないのではないかと思う。

【特別協力者】資料5、最後の質問について、校内委員会云々にかけるところまで行くということは、担任の意識としては特別支援が必要だからかけるのだと思う。気付き、支援のレベルで担任の意識は少し違うと思う。つける方が違ってきていることを考えながら分析をしないといけない。

【特別協力者】例えば、支援計画、指導計画を作成しているかという所が低かった場合、作成方法をこれからどう、より周知徹底していくかを考えていくという手立てが考えられる。例えば通級による指導も他校通級と自校通級では随分関わりが違うし、インクルーシブ教育を進めていく上で、通級や特学の存在はすごく大事になる。学校に特学が設置されているのか、通級による指導を受けているかどうかだけではなく、例えば、受けている場合には他校か自校かを聞く必要がある。その上で、他校通級だとしにくいという結果が出てくれば、それに対しての提言が今後大事になる。追加項目に関しては、その答えが出てきたときの仮説、施策の指針をこちらがイメージできるかという視点も大事ではないかと思う。

(5)調査の実施計画、質問項目、追加の質問項目、スケジュールについて、委員の意見を踏まえた修正の作業を座長及び副座長に一任することについて委員に了承された。また、二次的な調査については、引き続き検討していくこととなった。

(6)閉会

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)