資料3「教職員のメンタルヘルス対策検討会議の中間まとめ」に対する意見について

全教委連第130号 
平成24年12月4日 

文部科学省初等中等教育局
局長  布村 幸彦  様


全国都道府県教育委員長協議会
会長  木村  孟


全国都道府県教育長協議会
会長  比留間 英人


「教職員のメンタルヘルス対策検討会議の中間まとめ」に対する意見について

 平成24年10月5日付けで依頼のありました標記の件について下記の通り意見を申し上げます。
 教職員の業務の特性を考慮したメンタルヘルス対策の検討を更に進めていただき、具体的な制度設計を行う段階では、現場の意見を十分反映されるよう要望いたします。

1 教職員のメンタルヘルスに関する現状と課題
意見なし

2 教職員のメンタルヘルス不調の背景等
 ○ 過去20年間で教員のメンタルヘルス不調者が増加傾向にある背景や原因が、限定的かつ主観的である。ここに述べられている背景等は、一つの要因として考えられるが、根拠のはっきりしない事項が多いため、数値的なバックデータ等による説明を加えていただきたい。

3 予防的取組
(1)セルフケアの促進
○ 実践的な研修の充実は望まれるところであるが、「2.丸3 教職員の業務の特徴」に記述された背景を踏まえた研修の実施方法等の検討が必要である。
(2)ラインによるケアの充実
○ 管理職がメンタルヘルスについての基礎的知識やカウンセリングマインドを身につけることは大変重要であり、特にパワーハラスメント等管理職自身に起因する例もあるため、速やかに研修等で周知徹底を図る必要がある。一方で、副校長や教頭は、非常に多忙な状況におかれていることから、効率的で効果的な研修の在り方についても併せて検討する必要がある。
○ 管理職自身の精神疾患による休職も皆無ではないことから、ラインケアに当たる管理職の精神的負担を軽減するための具体的方策についても、検討する必要がある。
○ 教職員の業務の特性を考慮したメンタルヘルス対策の重要性について、校内の管理職のみならず、産業医等が、研修等を通して認識を深めるための取組が望まれる。
(3)業務の縮減・効率化等
○ 校長のリーダーシップの下、優先度の低い業務の積極的なスクラップ・アンド・ビルドは重要であるが、業務のスクラップが教職員のモチベーションの低下につながらないよう、校長と教職員がコミュニケーションを取りながら改善を図るなど、実施に当たっての留意点についても記述する必要がある。
   なお、教育委員会が業務の縮減・効率化の実践例について集約し、学校の業務縮減・効率化の資料として配付するなどの記述も必要である。
(4)相談体制等の充実
○ この項目の記述の通り、ほとんどの学校が50人未満の事業所となる小・中学校を管轄する市区町村教育委員会においては、産業医や保健師等が配置されていないなどの課題がある。このことについては、法的な整備とともに国の財政的な支援について検討する必要がある。
(5)良好な職場環境・雰囲気の醸成
○ 労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防策として行われた小集団での参加型活動等の職場環境改善の取組によって、健康状態やメンタルヘルス不調の改善した事例が製造業等の企業で蓄積されている(厚生労働省「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透方法に関する調査研究」より)ので、教育現場においても、こうした良好事例に学び、職場の自主的な取組を支援する枠組みづくり(=職場環境改善のプロセス支援)を検討し、普及する必要がある。
○ 労働安全衛生管理体制の整備のために、地方公共団体において財政措置を含めた取組をより一層推進する必要があると述べられているが、それとともに、地域によっては精神科医や精神科医と連携できる産業医の人的確保が困難な場合が考えられることから、安心して相談できる体制づくりについても検討する必要がある。特に、東日本大震災による被災地の医師不足は深刻であり、産業医の確保自体が困難な状況となっていることから、地方公共団体に対する財政支援等、国の積極的な支援が必要である。

4 復職支援
○ 各段階の対応として、文章中には、産業医や精神科医、保健師の対応が記述されているので、各段階のフロー図にも同様に示していただきたい。
(1)病気休暇の取得時点からの対応
○ 病気休暇を取得することになった教職員は、自責の念や今後の不安等を抱えながら病気の治療に入ることも考えられるため、本人が治療に専念できるよう代替措置等を含めた校内体制の整備をはじめとした病気休暇直前の対応についても検討し、記述する必要がある。
(2)復職プログラムの実施前における対応
○ 復職プログラムを実施するに当たり、校内のその他の教職員への事前説明等の在り方についても記述する必要がある。
  特に、教職員間のトラブルから発症したケースにおける周知方法や配慮事項についての検討が必要である。
(3)復職プログラムの実施中における対応
○ 産業医や教育委員会の職員等の第三者が加わり、異なる視点で観察することの有効性が述べられているが、周囲の教職員の視点も管理職として把握する必要があることを記述する必要がある。
○ 復職プログラムを実施する際に、児童生徒の保護者の理解を得ることは大切な事項である。
  但し、周知の方法等については、当該教職員や保護者の心情に配慮し、慎重に検討する必要がある。
○ 復職プログラム中に発生しうる事故等を想定した対応について検討する必要がある。特に保険措置等の事前に必要となる体制整備について検討すべきである。
(4)復職プログラムの実施後における対応
○ 復職の際の勤務場所については、それまでの職場の人間関係が誘因となり休職に至った事例も少なくない現状から、単に勤務場所の問題としてのみ捉えるのではなく、人間関係に関して対処すべき事項についても丁寧に記述することが望まれる。
(5)職場復帰後の対応
○ 再発防止のため、職場復帰をした本人が採るべきセルフケアに関わる事項についても記述されることが望まれる。例えば、自らがリワークトレーニングやアサーション・トレーニングなど実践的な研修に積極的に参加できたり、校内に相談役を設け常時相談ができ、本人の健康観察を行ったりできる体制づくり等の重要性についても検討し、記述する必要がある。
  また、主治医や家族との連携を継続させておくことも記述すべきである。
○ 休職者の代替として任用されている教職員が、財政事情等を勘案しながらも、一定期間継続して任用することが望ましいと記述されており、非常に重要な事項である。財政的な裏付けをどのように国として支援するかについて検討し、実現に向けた具体的な取組を進める必要がある。

5 その他
○ 教育委員会において教職員としての資質能力を備えた人材を採用し、採用後においても教育委員会と大学との連携・協働により研修を充実させることの大切さが記述されているが、文部科学省としても、大学への実態調査を委託するだけでなく、教職員の業務の特性を考慮したメンタルヘルス対策のための研修の構築に向けて支援を検討する必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課

教育公務員係

(初等中等教育局初等中等教育企画課)