教職員のメンタルヘルス対策検討会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成24年6月15日(金曜日)18時30分から20時15分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(3階)

3.議題

  1. 意見発表を踏まえた議論の整理
  2. その他

4.議事要旨

冒頭、吉川座長から挨拶がなされた。

議題(1):意見発表を踏まえた議論の整理について                     

【事務局】

  まず、お手元にお配りしております配付資料の確認から、お願いしたいと思います。議事次第の配付資料にございますように、資料1から参考資料10までの資料をお配りしております。資料1がこれまでの会議で委員の先生方からいただいた御意見をまとめた資料です。資料2は、第1回の会議でもお配りをした会議の検討事項を明記した資料です。資料3については、前回の議事録概要でございまして、先生方にご確認いただきたいと思います。参考資料1~10は、委員の先生方の御発言で言及のあった資料をお配りしております。参考資料1は、平成16年に人事院から出されている資料でございます。管理監督者、職員の別で、心の健康増進、職場復帰、再発防止等の観点での指針でございます。参考資料2は、厚生労働省から出されている資料です。民間等も含めた事業場で使用者が講じるべき措置等についてまとめられている資料です。参考資料3では、平成16年度の厚生労働省の補助金によってなされた研究のヒント集・チェックリストをお配りしています。特に職場において、ストレス軽減のための職場環境の改善を提案するためのツールです。参考資料4は、財団法人地方公務員安全衛生推進協会が出している報告書のうち、学校編をお配りしています。学校における産業医の活動状況、衛生委員会の状況についてまとめられています。参考資料5は、産業医科大学のホームページからダウンロードをさせていただいたメンタルヘルス対策のツールでございます。参考資料6は、人事院から出されている資料で、早期対応、再発防止等の受入方針や、具体的な事例によりどのような対応がなされるべきか触れられています。参考資料7については、同じく人事院から出されております。職場復帰支援の各段階において、健康管理者等が行うべきことが明確にされています。試し復帰、職場復帰支援の流れ図も添付されています。参考資料8も、職場復帰支援の手引きでして、こちらも職場復帰支援に向けた流れ、留意点についてまとめられています。参考資料9は、産業医科大のホームページから、ダウンロードさせていただきました。本人が職場復帰する際のコミュニケーションツールとしてまとめられています。参考資料10は、委員の発言にもありました制度の資料でございます。以上でございます。

【座長】

  どうもありがとうございました。それでは、これから議題に入りたいと思います。文部科学省の方からこれまでの議論を整理いただきました。資料1、資料2を御覧いただきたいと思います。資料1、2について、文部科学省から説明をお願いします。

【事務局】

  それでは、ご説明申し上げます。まず資料2についてですが、第1回の会議の際に、本会議の検討事項ということで、事務局からお示ししたものです。学校におけるメンタルヘルスが喫緊の課題である中で、現場の対応を考える際には、ガイドラインのような考え方やグッドプラクティスなども提供できるよう、2つの検討事項をお示ししました。一つは、予防的な取組として、どういった対応・方法があるか、望ましいか。もう一つが、医師と学校の連携等の効果的な復職支援策でございます。これまで、第1回~第3回まで、委員の先生方の発表も踏まえて、頂戴した御意見をまとめたものが資料1でございます。

  2ページ以降で、主な意見を御紹介します。精神疾患の背景等としては、丸1の2つ目の項目で、社会においても、うつ病概念が広がってきていることやうつ病診断閾値の低下により、全体として精神疾患が増えています。丸2では、教職員の背景としては、生徒指導にストレスを感じている方は4割に上っていること。また、教員は対人援助職なので、終わりが見えにくく、目に見える結果が見えない等燃え尽きやすいということ。さらには、環境因としては、生徒との時間や権威が減って、消耗しやすい事務的用務や保護者対応が増えていることに加えて、異動や職場内の人間関係の変化で事例化するのではないかということ。コミュニケーションが苦手な方や人に悩みを話せない方は、メンタル不調になりやすいのではないか。文部科学省の資料でもお出ししましたが、異動後2年以内に休職しているケースがあり、職場の受け入れ態勢や職務適性などが考慮されているのか、支援体制が整備されていないということではないかという御示唆がありました。

   3ページでは、教員の業務の特徴から見る背景ということで、2つ目の項目にある通り、学校では多くの分掌を一人で対応しなければならないことや、教員の仕事の量や質が変化しており、効率的に仕事をこなさなければならない、また効率的にできないと精神的に弱ってしまうということがあり、教育委員会も書類の削減等に取り組んでいるが、必ずしも十分に改善されていないのではないか。そういったことに加えて、生徒指導・保護者対応の困難さ、対象範囲の拡大、制度改正等もあり、変化に慣れるのが大変な状況にある。教員の意識等としては、教員の仕事が、個人で抱え込みやすい傾向があり、対人関係上のストレスにうまく対応できない状況が生まれやすいのではないかということ。教員が同僚教員に意見が言いづらく、ストレスをためやすい傾向になっているのではないかということ。教員の特徴として、完璧にやって当たり前とか、子どものために身を粉にして頑張るという思いが、イラショナル・ビリーフにつながり、現実には理想的にできていないことで、ストレスを感じ、自らを責めてしまうのではないかということ。自分は大丈夫、忙しいという理由で健康診断を受けていない者もいることを明記しております。

   4ページでは、学校の職場環境・雰囲気として、学校では人間関係が重層的になっており、同僚だけではなく、児童・生徒や保護者も関係し、互いに影響し合っているということで、人間関係が悪くなると、全部が悪くなっていく傾向がある。自分のクラスで起きたことに、周りに相談できないし、周りの教員も介入することを遠慮する風土がある。校長が早めにフランクに介入していくような学校は、事例化が少ないが、事例化がたびたびあるような学校では、校長があまり把握していないのではないかということ。学校は、学校内の問題について、外に助けを求めるのが、全体的に遅いのではないかという傾向があるのではないか。他の機関と連携する気風・風土が求められるのではないか。服務監督権者の市町村教育委員会は、県費負担教職員について、市町村の職員ではなく、県の職員であるという意識により、健康管理にまで十分手が回っていない現状があるのと指摘もありました。

  ラインケアの充実ということでは、厚生労働省の指針に則り、上司が適切にラインケアを行う必要があるのではないか。管理職が、心の健康に関する知識を持つよう、研修を充実させることが必要だということがありました。5ページの上の部分では、基本的に職場の問題は、職場で解決すべきであるが、現場で校長や本人、カウンセラー等が入って本音で話し合う機会がないと、中々解決できない。うまくコミュニケーションを図って、組織の問題としてしっかり解決していくことが必要。また、小さな問題でも、管理職に報告させ、教職員単独では対応させずに、管理職が判断して、的確な対応を取る必要があるということ。心の病を持つ職員への対応や、調子が悪くなり始めた職員への負担軽減を管理職が適切に行うことが必要。その際、個人情報にも配慮しながら、学校としてサポートできる体制を作ることが大切。事例の紹介として、東京都で新規採用の職員について、採用前に「任用前体験」を実施し、配属前にお互いに名前、顔、性格的なことをある程度把握して、赴任後の役割・指導が行えるようになっているとの指摘もありました。

   ストレスチェックでは、企業は法定検診時にストレスチェックを行い、問題のある対象者に、精神科医や産業医が面談をしている。問題があれば、即日に紹介状を書いて、精神科にかかるという対応をしている。労働者の疲労蓄積のチェックリストについて、家族から見た指標もあっていいのではないかということ。

  業務の縮減・効率化については、上司が職場環境を整備して、仕事のスクラップ・アンド・ビルトあるいは業務の平準化を行う、これがないと様々な問題を生じる。クレーマー対策では、誰かがサポートしてくれるという気持ちがあると心強い。重要なのは、管理職が出向いていって、部下のケアをするという体制にあること。

   相談体制の充実ということでは、PTA制度ということで新入社員を2年間フォローすることや、できるだけ本人が相談できる窓口やチャンネルをたくさん用意することが大切である。教職員に渡している相談窓口一覧は、家族や同僚にも渡しておく必要があるのではないかということ。組織と本人をつないで、コーディネートする役割の方も必要ではないかとの指摘もありました。この点で、「学校経営指導員」として、退職校長をうまく活用して有効に機能しているという指摘もありました。スクールカウンセラーには、児童・生徒や保護者への対応という本来職務もありますが、時には教員のアドバイスを行うということで、教員にとっても、カウンセラーからアドバイスをもらうことで、気持ちに安心感を持って活動できるという指摘もありました。

   職場環境の醸成ということでは、開かれた学校、開かれた校長室、開かれた職員室にすれば、地域からクレームが来ても一緒に相談して対応できるようになるのではないかということ。教職員には特技や持ち味があり、優れた実践をしたときには、他の先生の前で認めて、よいイメージを持って振り返ってもらえば、ストレスもたまりにくいのではないか。また、教職員個人において、ストレスへの対処行動を身につける機会が得られるよう、支援していく仕組みが必要ではないか。休職者が職場復帰するときの雰囲気作り、受け入れ体制は、そのときに急に行っても疎外感を感じることがあるので、日頃から明るい職場づくり、精神保健に理解のある職場づくりを行うことが大切である。

   復職支援では、復職前の対応として、職場復帰支援とは、本人が休み始めた時点から始まっていて、復職後職場再適用を果たしていくまでの長期間の支援が重要であるということ。就業に関する意見書を主治医から出してもらって、産業医が面会し、本人の了解の下、復職プランを作成するということで、復職プランは本人と上司が話をし、問題がないかどうかを確認した後、復職プログラムが開始されることになっている。

   復職時の留意点としては、企業では復職時に1~2時間の面談と、毎月1時間産業医が面談をする。再発すると、その後の再発率が高くなり、再発を繰り返してはならないということで、復職は極めて慎重に対応しなければならない。また、復職の可否については、主治医任せにするのではなく、主治医の意見を尊重しながらも、職場として判断しなければならないということ。主治医と職場とで情報交換して復職について判断する際には、職場で復職が認められる要件を事前に出して、主治医の理解を求めていくことが有効ではないかということ。

   復職後の対応は、復職した職員に対して、いつも通り接して励ましすぎないようにすることが大切だということ。通院や服薬を続けられるよう、援助していくため、うまく管理職が話を聞き、サポートしていくことが重要であるということ。最後のページでは、復職後の配慮について、復職後の職場でできる対応パターンを職場が主治医に示して、どのようなパターンで支援すべきかを問うなどして主治医とコミュニケーションを図ることが有効ではないかということ。仕事の軽減、業務上の配慮ということについて、それが何のためなのかという目的を明確にすることが大事であるという意見がありました。

   その他としては、新たな取り組みで新たなものが増える一方、前のものが消えないということになると、学校で行うべきことがどんどん増加し、校長のストレスが配慮する必要があるのではないか。会議においても、現場の声を聞いてほしい、専門家である病院の関係者の意見も聞いて、現場を中心に考えていくべきではないかという意見がありました。

  雑ぱくな紹介ではありますが、これまでの先生方の意見ということでまとめさせていただきました。以上でございます。

【座長】

   どうもありがとうございました。これからは、その他も交えて、4項目になっておりますので、それぞれの項目ごとに考えていきたいと思っています。委員の先生方は、これまでのご自分の意見が反映されているかということも、お考えいただきながら、同時にこれまでの議論の中で気づいたことも盛り込んでいければと思っています。まずは、精神疾患の背景から、御意見をいただければと思います。ここは、現代的な流れから入っています。精神疾患の範疇が広がっていることが問題かもしれないというところから入っています。

【委員】

  この会議の中では、社会的な背景として精神疾患の患者数が増えているという指摘をさせていただきました。学校の先生も同じような影響を受けていると思います。5月末の精神神経学会でも、「うつ病」という言葉をどう取り扱うかというシンポジウムがありました。うつ病という概念の広がり、診断や薬物療法の開始が以前より早まっているということも、うつ病、気分障害の患者数の増加に影響している。こうした点は、教員のメンタルヘルスの現状にも少なからず影響していると言えるかもしれません。

【委員】

  教員は、適応障害が多いという結果があり、御本人の性格傾向や特徴に問題がある方が圧倒的なのではありません。そういう方もいらっしゃるかもしれないし、特に、先生の仕事はコミュニケーションが大事な職なので、一般の方以上に、コミュニケーションにハンディがあると事例化しやすい傾向があるかもしれませんが、通常より多いわけではないと思います。それよりは、業務負担等で、普通の方が適応障害に陥っている割合の方が高いと考えられます。

【委員】

  適応障害ということでは、時代の流れや社会の変化、子どもたちやご両親の考え方の個別性が豊かになると、学校の先生がついていけなくなって、そのギャップが非常に大きくなっているのではないか。企業でも、技術革新が進むと、一人一台パソコンが配置され、それまでは給料も担当にお願いしていたことを全部自分で行わなければならなくなっています。それで適応障害を起こして、夜眠れないという方が出たときもあります。おそらく、これからも時代の流れが、各分野が先進的になりますので、そこにうまく適応できない方がどうしても出てくるのではないか。そこをうまくカバーする機能、社会的にサポートしてあげないと、ついていけていない人が、精神疾患として見なされているのではないかという気がします。それが抑うつ状態に入っていると思いますので、社会的基盤を整備することが重要だと思います。

【座長】

  精神疾患の背景では、むしろ現代的には、精神疾患と言い切るのではなく、「不調」の背景と考えるべきではないかと思います。精神疾患と言いきっていいかどうかわからない問題がたくさんあります。そう考えますと、精神疾患の背景というくくりではなく、精神的不調者の背景という表現の方がいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【委員】

  企業では、メンタルヘルス不調ということで、精神疾患という言葉はほとんど使っていません。

【座長】

  精神医学的には、診断基準もかなり動いていますので、固定的に考えるのではなく、あまり強調しないほうがいいかなと思います。精神疾患の背景というところでは、適応障害を本当に精神疾患として考えるのかという問題もあります。それであれば、適応障害も含めて、精神的な不調ということになるのではないか思います。

【委員】

  職場のメンタルヘルスの関係では、従来から疾病性ではなく、事例性を重視して対応していくべきであるというのが一般的な考え方だと思いますので、精神疾患ではなく、メンタルヘルス不調、あるいは精神面の不調、をどうするのかということで結構かと思います。

【座長】

  他、いかがでございますでしょうか。

【委員】

  基本的には、教員に求められるものが増えているのかなと思います。期待されるのはいいのですが、求められるものが増える中で、バランスということもありますので、学生が教員になってすぐに保護者や子どもから先生と呼ばれて、一人前にやらなければならないのですが、まだまだ未熟な部分がありますので、プレッシャーになってつぶされてしまい、採用2ヶ月で体調不良で休んでいるという事例も聞いています。業務のスリム化や、分掌についても、一人一役制ということを徹底させている学校もありますので、この辺を管理職員が配慮していくことが必要かなと思っております。

【委員】

  業務の特徴では、事務的業務が多いという指摘がありますが、事務的業務を他の人が代替できるか、という論点があるかと思います。事務的業務をどのように減らすことができるのか、検討する必要があると思います。

【座長】

  今回の会議の対象は、教職員でありますし、事務的業務については両者の重なりがありえますし、教員と職員の住み分けはできるのでしょうか。

【委員】

  事務職員のメンタル不調が増えています。例えば、教員が行っている業務のうち、教材の購入等は、事務職員が行えるのではないかとも考えられますが、事務職員の定数増も厳しい中で、現状のまま仕事を移行するのは難しいという気がいたします。

【座長】

  一気に解決するのはできないにせよ、事務的な業務の削減や、教員と職員の住み分けをどこかで考えないといけないのかと思います。

【委員】

  教員の業務の特徴の一つとしては、学校の規模が変わっても、こなすべき業務があまり変わらないという点があります。先ほど出た一人一役割を実現するのは、ある程度の学校規模が必要で、小規模校ではどうしても数が少ないので、限られた教職員で行わなければならず、かなり重ならざるを得ないという点も考えないといけない問題だと思います。

【委員】

  学校規模や経験を有する教員の有無によっても変わってくる。加えて、教員だけで行うという発想ではなく、外部の方、地域の方に応援していただくという発想も大切。中学校の部活動も、すべて教員が行うということではなく、地域で各種目の得意な方を活用して、外部の方にも顧問として責任を持って指導していただいて、報酬もお支払いするという形で行えば、少しは教員の負担軽減になると思います。

【座長】

  そうなると、責任問題ということが生じますよね。その保障をしなければ、地域の方々も、恐れ多くて入ってこられないでしょうし、地域の方に参加していただくのに、恐れをなしてしまうかもしれません。何らかの形で保障をしなければならないと考えています。

【委員】

  ここで述べられていることは、教員の仕事をしていく上で必然的に生じる傾向だと思いますので、「なくしましょう」という方向での対処は難しいのではないかという気がいたします。

【座長】

  「教員は同僚に意見が言いづらい」と資料に記載されているが、そう感じられますか。

【委員】

  感じます。特に小学校は、「学級王国」と言われるくらい教員が責任を持って学級経営をしている。子ども間の問題や、教員と子ども間の問題のどちらについても、教員が責任を感じるし、周囲もそれを暗黙の内に感じているので、アドバイスや手伝いが言い出しづらい部分があると思います。今は特に、一人の教員が抱えきれないほどの複雑な問題が出てきてしまっているので、非常に難しい状態にあるのですが、子ども達を責任を持って抱える姿勢がないと学校教育が成り立たないという側面もあるので、バランスが非常に難しいと思っています。

【委員】

  東京都は、管理職の下に、主幹教諭-主任教諭を置いて、階層的になっています。主任教諭が、若手教員を指導・助言したり、悩みを聞いたりする等の役割を持っており、大分機能しつつあるかと思います。直接言いにくい部分もあると思いますので、主幹教諭が校長に報告をする等しています。何でも言える雰囲気が一番いいのですが、人間関係やプライドでモノが言えない等ありますので、是正していかないといけないと思います。

【座長】

  資料1の3ページで、自分は大丈夫とか、健康診断を受診しないとの教職員の意識があげられていますが、これはどのように考えていますか。

【委員】

  確かにこれは限られた教員ではあります。健康管理といえば、学校では養護教諭が担っていると思います。再検査の際には、管理職が指導すべきだと思いますが、中には、養護教諭が該当する教員に対して再検査を受診する旨言うと、「あなたにそんな権限があるのか」と言う方もいらっしゃいますし、「私は大丈夫です」と言われる教員もいます。これは一部ではあります。ただし、静岡県の場合、正確ではありませんが、再検査を受けない教員が100人単位でいます。再検査は部位が特定されているため、再検査を受診しないのは、問題だと思います。

【委員】

  民間企業では、健康診断を受診しない社員には、業務制限をいたします。労働安全衛生法65条の3において、部下の健康状態を知らずして業務の指揮命令をかけることは、上司が責任を負うことになりますし、労働安全衛生法では健康診断については罰則規定で罰金刑をかけています。健康診断を受診しない方については、健康状況がわからないということになりますので、業務命令はできず、勤務時間以外の残業制限をしなければならないということと、精密検査を受診しない場合には、これも勤務制限をしなければいけません。その状況で仕事をしているのは、極めてリスキーですので、その後でいろんな病気を発症した場合に、疾患が重症化する可能性がありますので、ここはセルフケアの問題だと思います。セルフケアとラインケアがうまく合わないと自己の健康管理はできませんので、教育も必要でしょうし、セルフケアの意識の向上も図ってもらわないといけないのかと思います。

【座長】

  職場環境の問題はいかがでしょうか。

【委員】

  最近判例がありましたが、若手の女性教員が自殺した事案では、ある男性生徒が男性教員の言うことは聞くが、担任の女性教員の言うことは聞かないという困った状況において、判例によると、学校としてのチームワークがまったくできていない、まったく協力しない体制ができていたということで、学校としてのチームワークや生徒の指導は、教員同士の特徴を生かせば可能となるのではないかと思いますが、相談も介入もできないとなると、先生方はかなり疲弊するのではないでしょうか。システムとして、お互いに助け合う仕組みや、管理職がうまくコントロールして人員配置をすることができればよかったのではないかと思います。

【委員】

  極めてレアケースだとは思いますが、毎日いろいろなトラブルがある中で、必ず個人で抱え込まずに、組織的に対応する必要があるということだと思います。そういう話を報告して、各主任なり、管理職の指示を受けて、対応することになります。

【委員】

  どうしても教員個人よりは、実際に児童生徒がどうかという点に目がいきがちだと思います。それは重要な視点であって、学校は子ども達の教育をする場ですので、それをないがしろにはできませんが、あまりにも教員個人の負担が過ぎてしまうと限界もある中で、限界を超える事態に関しては周囲の手も必要になる。そのときに、視線が教員にいかないときに、今のような不幸な事態が起きると思います。教員と子どもとのバランスを取りながら、個人の先生がつぶれないように、学校という組織として解決していくべきだと思います。

【委員】

  中学校、高校であれば、組織的な対応というのはあると思うのですが、小学校で感じることは、担任やクラスを1年間代えることができないということが大前提になっている気がいたします。たまたま担任になった教員と児童のウマが合わなかったり、トラブルが起きたときに、担任としてやるべきことというのがかなり全面に出てしまって、どれだけ担任以外の人が支援できるかというと、支援しづらいということを感じます。担任やクラスが変更できないことで、ますます混乱するということがあります。

【座長】

  予防的取組という点ではいかがでしょうか。

【委員】

  組織的な問題として、一般企業に比べて学校ではラインケアがやりづらいという面があると思います。企業においても、組織のフラット化や上司と部下が必ずしも同じ職場で働いていない、プロジェクト制の導入等の理由により、昔のような上司・部下関係ではなくなり、ラインケアがやりづらくなっている。それに対して、厚生労働省のメンタルヘルス指針では、企業の実態の変化はあるだろうけれども、何かしらそれに変わるような工夫をしなさいと言われています。どうするかという点は、知恵を絞る必要があると思います。

【委員】

  指揮命令系統は学校はどうなっていますか。上司部下の関係、職務命令の関係、健康診断の受診命令の関係等、命令関係や上下関係があるのでしょうか。

【委員】

  地方公務員法により、上司の命に従う義務もありますし、校長の職務命令権もありますので、強制的に健康診断を受診させたり、休ませることも可能です。企業と変わらないと思います。

【委員】

  ある教員にもう一人の教員の手助けをするよう指示することもできるんですね。

【委員】

  当然できます。

【委員】

  そうは言っても、人員が限られていますので、人員が決まっている中で振り分けようとしても、支援をする人員を確保するのが難しいという現実はあります。学校は、現場での融通がききづらく、民間企業では産業医に来てもらうことができても、学校ではそれは決まっているので、出来ないことが多い。学校が努力をしても資源がないということがあると思います。

【委員】

  以前の会議で、困ったときの相談相手について説明があり、同僚や上司ではなく、家族に相談する人が多く、非常に印象的でした。チームワークでという意識が希薄なのか、指揮命令系統が出来ていないのか、構造的な問題があるのかというところが気になっています。

【委員】

  産業精神医学領域において、ストレスチェックに関しては、これまで否定的な意見もあるかと思います。学校現場でストレスチェックを行ったとして、リスクの高い方を発見することができるのか、漏れてしまった方がいた場合に誰が責任を負うのか、ツールに信頼性があるのか、ストレスが高い方がたくさん抽出された場合にその方々に対応するだけの人的・経済的資源が十分整っているのかについての議論が出てくる。今までの議論でも、困ったときの相談相手が家族であり、保健師や産業医との連携を取ろうとしてもそれだけの資源がない中で、ストレスチェックを早い内から始めるということは、大丈夫なのかなという心配を感じました。

【委員】

  その指摘に尽きるかと思います。ストレスチェックを語る場合には、今委員が言われたような事柄をすべて含めて考えなければならず、ストレスチェックだけが一人歩きをすることはあり得ません。企業でも、個人情報の取り扱いや事後措置、環境を整えた上でやってらっしゃると思います。事後措置等も含めて、学校にどう適応していくかを考えるべきであって、ストレスチェックやチェックリスト等の道具だけの議論はすべきではないと思います。

【座長】

  業務の効率化、縮減が、現実的に進まない、進められないということがあるとすれば、どういうことがあるのでしょうか。

【委員】

  最近話し合いで議論になるのは、部活動です。部活動は、部活動指導を得意とする教員には、指導しないことがストレスになりうるということや、一方で、不得意な種目を担当せざるを得なくなっている教員もいるため、そういう教員には部活動指導が負担感となります。部活動指導は、中々減らない。保護者や子どもたちのニーズということが言われるが、教員の生活を犠牲にして指導している場合もあり、子どもや保護者と話し合いをしていくべきではないかと思います。

【委員】

  企業では、過重労働、長時間労働が問題になっており、それがメンタル不調の原因になるということで、企業では優先順位付けが問題になっています。トップから、優先順位をつけて、優先順位の高い仕事からこなし、低いものについては、管理職と相談しながら、スクラップしていくということになります。一人ではできないので、ラインで相談をして上司の一言でうまくスクラップが可能となり、上司の考え方が示されることで部下は楽になります。指揮命令系統や上司の一言で心の負担が取れるようになります。優先順位付けがポイントだろうと思います。

【座長】

  教職員の住み分けの問題だけではなく、指揮命令系統の中で、順位をつけるようなシステムが必要だろうと思います。業務の縮減の問題に直接関係するかはわかりませんが、保護者のクレームの問題への対応はいかがでしょうか。

【委員】

  管理職が対応して解決できる問題であればいいのですが、こじれてしまうケースや補償問題も含めれば、東京都では区によっては教育委員会が弁護士を含めた相談窓口を作っているところもありますので、教職員の精神的負担については、ケースに関わりはするけれども、最終的にはそういう方にお願いをするということで安心感が出てくるかなと思います。

【座長】

  これは、同僚間や管理職によるサポートだけではなく、外部機関によるサポートということを考えるということですね。

【委員】

  静岡県の場合には、クレーム対応ということで、弁護士等で構成される組織があります。県立学校については、県教委に専門の方がいらっしゃいますが、小中学校は、自分の学校で対応しようという姿勢や考え方があったり、市町村教育委員会の考え方があり、また教育事務所もあるため、小中学校からは相談が上がってきていないのが現実でございます。

【座長】

  相談体制の充実ということについては、今までも話が出ましたし、今日も話は出ていると思います。何か加えるようなことはありますでしょうか。特に相談の問題では、外部機関をどのように活用するかが大きいかと思いますが、EAP等はいかがでしょうか。

【委員】

  もともと、アメリカのEAPは、企業の中で解決できない問題を解決するためにあります。主には離婚とドラッグとアルコール中毒。個人情報の問題もあり、企業が原因で企業の組織的問題が原因で起こったものではないものを外部に委託して、専門家にお願いをするものです。個人情報も守りながら、社員が気軽に相談ができ、その情報は会社には流さないという形になっています。ところが最近では、会社内部で起こった問題もEAPに依頼しますので、ほとんど解決していません。つまり、内部で解決しないといけない問題の解決を外に依頼してしまうことで、逆に結果が出ていないため、問題が長期化してしまい、中々よくならず、内部の問題は内部で解決できるシステムを作る必要がありますし、それ以外の問題をEAPに依頼してもいいと思いますが、私どもの経験では、内部の問題例えば上司と部下のトラブルが原因でうつ病になった方がEAPへ相談したとしても、もともとの問題が上司とのトラブルである以上、外部で解決できる結果は出てきません。それはEAPの限界ですので、EAPには我々の企業の組織的問題を指摘してもらって、私たちが組織的問題に介入するということをしなければ、決してよくならないと思いますので、外部の機関を利用する場合には、その限界と適用を認識しておかなければ、事例が先鋭化する、もしくはあるEAP機関ですと、「あなたの上司が悪い」とEAPが指摘したことによって、訴訟になった例もあります。それは、上司が悪いのか、組織が悪いのかという問題になり、EAPの本来の姿を果たしていないということがありますので、きちんと認識しなければならない問題だと思います。

【座長】

  EAPについては期待もあるのですが、今のような問題点もあるという御指摘だと思います。次に、良好な職場環境、雰囲気の醸成について御意見はいかがでしょうか。

【委員】

  具体的に何をするかが漠然としていて、実際は様々なパーソナリティーの教職員がいる中で、どのように資料に記載されている事項をまとめていくかが難しいなと思いながら資料を読んでいました。もちろん、現実的には、これらが非常に重要なことなのですが、だったらこれらができないときに何を行えばいいのかという観点でいえば、具体的には難しいなということを感じました。

【座長】

  資料明記の通り、初期症状を見逃さないということは大切だと思いますが、これに関して、実際どのような組織が必要なのか、例えば静岡県ではどのような組織を作られているのか、御説明いただけますか。

【委員】

  県レベルではそういう組織はありません。

【委員】

  難しい部分はありますし、漠然としている部分はあると思いますが、例えば、健康管理責任者の教職員に対する研修で知識を深めていただくとか、あるいは責任者の教職員ではなくても、実際に現場でがんばってらっしゃる教職員自身に対して、このような情報を集団研修等で伝えていって、意識を深めていただく、同僚間でもしくは上司との関係で、メンタルヘルスに関する知識を深めた上で、職場を見ていただくことが良好な職場環境や職場の醸成に役に立つかと思います。

【座長】

  資料では、その下に教職員個人にストレスへの対処方法を身につけるとありますが、何か工夫を行っていますか。

【委員】

  新採用後、新任教頭等を対象に、職場で例えばクレームに遭遇したときや過剰な業務量を課されたと感じたとき等の課題を設定し、5名~8名程の小グループを作って、グループワークを実施する取り組みをしています。全体で2時間程度の研修ですが、グループワークで自分たちの対応を議論し、発表してもらい、発表に対して質問や意見をするという場を作っています。まだ始めたばかりで、準備不足な点もあり十分とは言えませんが。また一部の企業では行われている簡易認知行動療法教育プログラムを利用した1次予防を目的とする取り組みも検討中です。

【座長】

  復職支援の問題について考えてみたいと思いますが、何かございますでしょうか。復職支援に関しては、人事院でかなり議論を行って、「試し出勤」という言葉を使って、全国の国家公務員に関する限りは通知を出してきましたが、こうしたことが教職員に対して、「試し出勤」を文部科学省が考えているのか、後ほど考えたいと思いますが、その他何かありませんでしょうか。

【委員】

  東京都では、リワークプラザ東京を立ち上げ、学校現場への復帰訓練を支援するということを行っています。その前にも、健康相談という場面で、学校現場の復帰訓練を支援してきたのですが、その経験でいえば、不調者の復帰時に求める能力については企業は7~8割で定時出勤から始まるのだと思いますが、学校現場の印象では9割~9割5分以上です。そのくらい回復してから復帰訓練をして、中には、9割に満たない方もいらっしゃいますが、復帰訓練の中で9割以上もしくは寛解して、その後学校現場で教職員としての仕事を経験して、確認をしてようやく復帰ということになります。東京都の制度では、復帰訓練に3ヶ月かけています。3ヶ月という期間は、通常の企業であれば長い方で、企業では大体1ヶ月くらい試し出勤をするというのがほとんどだと思います。いろんな方を見てきた印象では、不全寛解くらいがちょうどいいくらいです。逆に、十分ではないけれどという見切り発車的に戻られた方は、3ヶ月以内に調子を崩される方が多いと感じています。教員の職務は、かなり専門的であるということと、児童生徒への指導ということでかなりエネルギーを使う面がありますので、相当いい状況になってから、慣らし勤務を経て戻るかなと思います。

【委員】

  今の7割、9割というのは、症状を言っていらっしゃるのか、業務遂行能力の割合を言ってらっしゃるのか、どちらでしょうか。企業の場合、症状はほぼ取れているし、生活リズムも戻っているけれども、見込める業務遂行能力が7割、8割くらいで職場に戻ってもらうという考え方が多いのではないかと思います。症状が取れていないと戻せないという考え方が一般的なような気がしますが、いかがでしょうか。

【委員】

  症状が取れていないと、規則正しい生活ができるという前提で、一定の集中力が確保されていないと、復職は認めておりません。その中で、試し出勤については、5~6割の仕事量ができれば認めて、過去の判例でありますように、3ヶ月以内は業務軽減をして、時間外労働を認めずにアウトプット6割でも十分であるとします。その後6ヶ月以内に8割まで戻るのであれば、産業医の判断で復職を認めて、勤務を続けていただくことになります。ただし、試し出勤と就業軽減は、まったく別です。試し出勤は、出勤するだけで業務は命じません。出勤できるかどうかを試すのであって、業務は行いません。業務を遂行できるかは、復職してから判定をしますので、そのときに定時時間内における業務遂行能力が5割から6割ということで、上司が判断して3ヶ月以内で約8割まで持っていきます。その前提は、生活がちゃんとできて、睡眠と覚醒のメリハリがついていることが最低条件で、就業規則に定める就業時間労働ができるということではじめて復職となります。そうしないと、再発の可能性は極めて高いと考えています。

【委員】

  そうなると、主治医の先生の診断書が出てきた時点、復帰訓練を行う時点では、回復度合いはバラバラということになりますか。

【委員】

  企業も、様々な規模のものがありますので、すべての企業で決まった水準があるわけではありません。症状はなく大丈夫だということで、よくよく詰めていると、若干問題が起こっているということはあると思いますが、明らかな症状はなく、生活リズムが戻っているという中で決めるということだと思います。ただし、企業によっては、その辺りがあいまいで、主治医が認めれば復帰を認めているという企業も少なくありませんが、それだとうまくいかないというのが我々の最近の考え方だと思います。

【委員】

  おそらく、学校の先生方は使命感が強いので、症状が残っていても、主治医の先生方との話の中で、出勤したいということを訴えられると思います。私たちの場合は、それを見抜かないといけませんので、約1時間の面接の中で、症状がきちんと取れている、ウォーミングアップが出来ている等、体制が取れていれば、復職してからの再発率が極めて少ないです。それを昔のように「えいや」でやってしまいますと、再発してしまう。そこを見極めれば、DSMでもあるように、次の次の再発率が6割と極めて高いですので、1回目もメンタルヘルス不調なり、うつ病なりで本当に注意して見て、もう1ヶ月休めばもっと良くなるというケースもありますので、それをきちんと見極めるということが必要だろうと思います。

【委員】

  勤務の軽減がしにくいという事情があって、一旦復帰してしまうと、一人分とカウントされてしまいます。講師の先生がいらしていても、復帰すると外れてしまいますし、そうすると一人分の仕事は確実にこなさざるを得ない、一人分の仕事をこなせないと、周りの先生に負担がいくということがあり、業務遂行能力が9割くらいに戻っていないと、現実には復帰した後へばってしまう、あるいは周りに負担がいってしまうということになると思います。

【委員】

  静岡県の場合、ほぼ9割を求めています。試し出勤とはいえ、子ども達の相手をするので、授業が出来ないとなるとどうかという判断をしています。しかし、確かに再発も多いかなという気も致します。ただ、本県の場合は、試し出勤が2週間~1ヶ月でちょっと短い気も致しますが、生活リズムは基本的に、朝起きられるか等を見極めた上で、主治医の判断を受けて行っています。やはり、学校での生活ができるかどうかを見させてもらっています。

【座長】

  教員としての業務遂行能力は、10割か0か。7割や8割というのは教員としてできるものでしょうか。教職員の一つの特色かもしれません。

【委員】

  7割や8割は考えにくいですが、教職員については、復帰しても勤務軽減ができないという部分と、復帰により代替教員がいなくなってしまうという問題があります。それであれば、復帰した後も、一定期間臨時の代替教員を残して、複数体制がとれないかなという点は非常に大事だと思います。確かに、学校に復帰した際には、実際は9割に行っていないこともあると思います。勤務軽減は難しいかもしれませんが、勤務を支援する複数体制が組めたらいいなと思います。

【委員】

  部活動指導等は除いて、教育活動には9割だとしても、これまで議論になっているような負担は制限するということは可能なのでしょうか。

【委員】

  校長の姿勢によると思いますが、中には担任を外すこともあります。授業以外の部活動等の担当は軽くするという対応はとっています。

【委員】

  うつ病以外の病気もありますし、疾患によっては90%~100%だという見定めをして復帰させることが難しいことがあると思います。そのような場合に、時期、財政面、人員のタイミング等もあり、ケースによっては臨時任用教員を3ヶ月~4ヶ月併用するということもあります。そうすることで、支えながら何とか復帰できる事例も実際にはあります。同様な事例でありながら、臨時任用教員をつけられなかった場合には、苦労して再休職に至るという事例もありますので、復職時の勤務軽減の体制は重要なポイントになると思います。

【委員】

  そのような場合に、退職教員を活用することは可能なのでしょうか。企業では、大震災の時のライフラインの復旧に、退職した技術職の方が尽力してくれました。教職員の世界は、経験豊かなOBを「助っ人」として活用することは考えられないのでしょうか。

【委員】

  静岡県の場合、校長が中心ですが、退職した教職員が支援を行っています。最終的には予算が伴いますので、厳しい部分もあります。

【座長】

  最後に、その他で何かありますでしょうか。

【委員】

  議論が整理されてきたと思いますが、いい活動を行って、かつ継続的に行って、効果を検証しないといけないと思います。それを行うためには、組織的に対応する、職場全体が問題意識を持って、学校全体として取り組む必要があります。その場として、民間企業では、「衛生委員会」が月に1回くらい開催されています。学校でも開催されることになっていますが、その実施状況がどうかということが気になり、配付資料につけてもらいました。参考資料4の39ページです。結論は、衛生委員会の設置は、形の上では80数%なのですが、本来月に1回は開催されないといけないにもかかわらず、2ヶ月に1回開催されているところでさえ20%くらいです。つまり、ほとんど機能していないということが伺い知れます。それから、産業医の選任についても、産業医として選任された方が産業医としての意識を持って活動しているかというと、資料を見る限りは、そうは推測できない。活動の基盤となる部分が、脆弱ではないかと思います。組織体制の問題も提言をしないと、いくら妙案を出しても、継続的にうまくいかないのではないかと思います。

【座長】

 今の御指摘も大変重要なところで、形式的に何かを決めることだけではダメということで、実際にそれをどうするかということだと思います。

【委員】

  産業医を依頼することで精一杯というのが現実です。その学校のOB・OGであれば積極的にやっていただいている方もいるようです。ストレスチェックを実施した場合、今の学校の状況では、多くの方にストレス症状が出たときに、何もできないと思います。産業医の配置については、静岡県の場合には、10万円に満たない報酬で、1年間お願いしておりますが、ある民間病院に依頼したところ年間60万円ならばという回答がありました。また、学校の場合、校長が長時間労働を勤務制限できていないという状況からすると、産業医からすると、「校長が勤務制限をしないままに産業医に依頼するというのはいかがなものか」という意見もありますし、産業医の現実と教職員の労働の現実と、うまくマッチしていないと思います。

【座長】

  今日はこのあたりにして、次々回には中間まとめをしたいと思っています。次回は、今日の議論も集約して次回には再度提案したいと思います。次々回は、中間まとめを何らかできるかと思います。

【委員】

  以前は、新入社員を数多く採用しましたので、同じ部や課に複数の新入社員がいることになり、お互いに相談をしながら業務が行えましたが、今は採用が少なくなりましたので、各事業所に1人しかいません。相談相手がいないということで、PTA制度を導入していますし、数ヶ月に1回新入社員を集めて情報交換会を行っています。それによって、その場でいろいろな意見を吸収できますので、そのような横のラインを作ることで、お互いの悩みを言えるような場を作る必要があるかと思います。

【座長】

  他にありますでしょうか。私が申し上げたのは、教員養成の問題を申し上げたと思いますが、今回のまとめには特にこの問題は入っていません。これについては、文部科学省とも相談をした上で、教員養成課程の中でどのようにあるべきか、単なる大学教育だけではなく、教員になってからの研修も含めて、教員を教員たらしめていく教員養成の課程について、やはり考えていかなくてはならないのではないかと思います。それは教育のスキルの問題ではなく、人格的なものも含めて、教員として独り立ちしていくための援助をどうしたらいいのかということを考えたいと思っております。それでは、お忙しいところありがとうございました。

【事務局】

  本日もありがとうございました。最後に日程等についてご説明させていただきます。次回の日程については、7月上旬を予定しております。また、別途、委員の先生方にメール等でご連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

【座長】

  どうもありがとうございました。

                                                                 (以上) 

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