全国的な学力調査に関する専門家会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成24年9月3日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

旧文部省6階 第2講堂

3.出席者

委員

梶田座長、荒井座長代理、相川委員、池田委員、小川委員、柴山委員、清水(美)委員、高木委員、田中委員、田村委員、土屋委員、野嶋委員、福田委員、堀竹委員、耳塚委員、山崎委員

4.議事要旨

(1)平成24年度全国学力・学習状況調査の結果について

○事務局より資料1-1から1-7に沿って説明。委員からの主な発言は以下のとおり。

  • 理科について、小学校では問題量、時間ともに特段の負担感があったという話は聞いていない。むしろ、調査問題が教員の指導の上で勉強になったという話を聞いている。ただ、午前中に3教科と質問紙調査を実施するのは小学生にはきつかったのではという声もわずかだがあった。
  • 中学校では、理科の教員から、生徒が問題文を理解するのが難しいのではないかといった感想があった。

(2)平成25年度全国学力・学習状況調査の内容の検討について

○事務局より資料2の説明後、意見交換を行った。主な意見は以下のとおり。

  • 【事務局】(委員からの質問紙の配布方法に関する質問に対して)現時点では、学校において問題冊子の取扱いに混乱が生じないよう、各学校には1種類のみ配布する予定である。その際、各都道府県内では、三つの冊子が満遍なく配布されるようにする予定である。
  • 東日本大震災による影響の分析にあたっては、被災した子どもの心に十分配慮が必要。また、各地域の相対比較をするのか、それとも同一地域における過年度との比較をするのか、過年度で分析するとすれば地方自治体が実施している学力調査の結果を活用することも考えられる。
  • 保護者アンケート調査について、学校の取組には家庭や地域の協力が必要となるため、保護者の学校に対する関与の仕方・積極性について調査を行う必要があると考える。
  • 学校教育がどういう教員、教育方針でもって構成されるかということと学力との間の関係を分析して、明らかにしていくということが、大きなポイントであると思う。教員の役割、あるいは、どういう教員によって学校教育が成り立っているかということは大きな要素なので、教員に焦点を当てた分析を行うことはできないか。例えば、文部科学省で把握している教員に関するデータとも連携できるようなことがあればよい。
  • 【事務局】25年度調査の設計にもあるが、専門家分析の中で教員へのアンケートを行うことは考えられる。
  • 教員を対象とした調査が「きめ細かい調査」の設計には含まれていないのは、学校質問紙の中に、ある程度内容が含まれるということ、追加分析の中で取り扱うことができる内容だということ、また、年度当初に調査を実施するため、質問内容によっては、調査対象の先生が当該学校にもういないということもあった。
  • 保護者アンケートについては、家庭状況が恵まれていなくても、児童生徒の学力向上に成果をあげている学校の事例を明らかにすることが必要。
  • 経年変化分析のための調査は教育施策の改善指標のチェックや調査の制度的妥当性のチェックにも使い得るデータがとれると考える。長期的な視点で調査設計しておくことが必要。また、実施時期については、中学校3年生は受験勉強等で学力の変化が激しい時期であることを踏まえ、本体調査との関係も分析することを考えて、本体調査の期間からあまり離れていないときに、経年変化分析のための調査を行う必要がある。
  • 児童生徒質問紙については、24年度調査で、今までの国語、算数・数学だけではなく、理科に関する意識に関して非常に興味深い結果が得られた。25年度は、項目の量を増やせるということであれば、理科以外の、社会、英語、音楽などの教科についても意識調査をしてはどうか。
  • 今回、理科の調査をしたことで、単なる学力調査から人材養成とう観点で、一歩踏み出したと思う。理科について、小中学校の学習状況が個々人の将来設計にどう結び付くのか。フォローアップは大変難しいと思うが、今回、調査対象の児童生徒たちが、例えば1年後、2年後にどういう進路選択をしているのかということを追えるような可能性を、どこかで検討いただければということを感じた。
  • 教育委員会に対する調査において、例えば、加配教員の配置、土曜授業の実施、学校選択制などの関係も調査してほしいと考える。 

(3)平成25年度全国学力・学習状況調査の結果の取扱いについて

○事務局より3-1、3-2説明後、意見交換を行った。

  • 25年度は全数調査になるので、19年度から21年度の悉皆調査の取扱いとほぼ同様でいいというのは賛成。調査結果については、各都道府県における平均正答率や平均正答数だけでなく、都道府県内の学校の分布についても施策に役立てることができるのではないか。また、児童生徒質問紙の結果を領域別に出すことも有効な情報提供になるのではないか。
  • 公開できるものは全部公開する方がいいという立場だが、全国学力・学習状況調査については、過去の調査で目的からそれ、行き過ぎた競争意識をあおるものになっていったという当時の新聞記事もある。本来の目的ではないところで的外れな情報の公開をすると、最後にしわ寄せが行くのは子どもたちのところである。公開することによるメリット・デメリットをよく考えてもらう必要がある。私は、従来どおりの扱いでいいと考えている。
  • アンケート結果からは、従来どおりでよいという意見が多数で、私も21年度までの形を踏襲するのがいいと思う。全国学力・学習状況調査は、科学的・客観的にデータを採取したいという調査の目的と同時に、それを受けている子供たちは、テスト自体も教育の活動の一環として行っているという両面があり、新しい内容の学力はどういうものかというのを、調査問題の形で象徴的に示しているような面があり、指導の改善あるいは学校の先生方の学力観というものを変えていくような意味も大きい。それも踏まえて、結果の扱い、公表については非常に慎重に考えていかなければならないと思っている。経年変化分析のための調査結果の分析とその公表は、長期的なスパンで考える必要がある。PISAのように、問題は原則非公開としつつも、象徴的に、何問かは公開するというやり方もある。
  • 経年変化分析の問題に関しては、短期的な検討課題と中長期的な検討課題を分けて取り組む必要がある。
  • データの公開については、現実に教育委員会等でデータを使用するに当たって、かなり限られたデータでしか分析ができないので、利用できるデータをもう少し広げていくことを考えていただきたいと思う。
  • 25年度調査の公表の方法については、19年から21年度を原則とすることで良いと思う。ただ、市町村教育委員会のホームページを見ると、どの市町村も同じような様式で、簡単な結果しか掲載していない。当然、市町村の状況については、市町村が判断して公表するということだが、もう少し工夫をしていただいて、問題に取り組むような姿勢がもう少し感じられるような分析を期待している。
  • 次回の理科が3年後とすると27年度で、更にその3年後になると新しい学習指導要領が改訂になってしまったときに、どれだけデータの蓄積ができるのか。学習指導要領の改訂等に向かってのデータの蓄積というようなことから考えると弱い。
  • 全国学力・学習状況調査は、小中学校では活用されているが、高校への影響がほとんどないことが問題と考える。高校ではどうしてもセンター試験という問題が出てくる。そこに手をつけない限りは、全体の学力のあり方というのは変わらないと考える。
  • 保護者アンケート調査については、各家庭が学校に対してどういう意識を持っているのかという調査もしていただきたい。また、地域、保護者が学校にどのぐらい関わっているか、地域の人たちが学校に対してどのような意識を持ち、また、協力することにより、学力、生活習慣にどのような影響を与えているのかについても調査をしていただきたい。
  • 都道府県内の学校の分布については、施策面等に役立てるために作成する必要はあると考えるが、一般的な公表は控えるなど、使用目的に沿って考える必要がある。

(4)全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から今後の取組が期待される内容のまとめについて

○事務局より、資料4について説明を行った。

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初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)