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キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成23年6月9日(木曜日)15時30分~18時30分

2.場所

中央合同庁舎7号館西館9階903号室

3.出席者

委員

鹿嶋委員、渡辺委員、生重委員、岩田委員、江川委員、清川委員、清水委員、下村委員、竹花委員、西山委員、野上委員、廣田委員、星野委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、德久大臣官房審議官、白間児童生徒課長、春山児童生徒課課長補佐、藤田生徒指導調査官、堀江指導調査係長、酒井指導調査係専門職

オブザーバー

厚生労働省 浅野室長、経済産業省 林企画官、文部科学省 山下生涯学習企画官

4.議事要旨

(座長の御発言-□ 委員の御発言-○ 事務局(オブザーバー)の発言-●)

(1)  キャリア教育に関する調査についての説明

資料1をもとに、小学校、中学校、高等学校のキャリア教育に関する現状と課題について、事務局の藤田生徒指導調査官が説明した。

質疑応答の概要は以下の通り。

□今の報告について、質問があれば伺いたい。

○都道府県別に見て、また小・中・高において特徴的なことがあるか。
●感覚論でいくと、大きな特徴があるとは認識していない。

○高等学校については、インターンシップは基本的には希望する生徒がやっているかどうかということで、全校とか全学年というわけではないということか。
●調査によると、高等学校では6割から7割の高等学校が実施はしているが、体験している生徒の割合は15%以下。ほとんどの学校は希望者制で行っているということが推測される。

○内容については、どう捉えればいいか。
●この調査とは別に国立教育政策研究所が行っている調査があり、そこで体験の日数や、実際に体験した子供の割合を調べている。平成22年度の中学校での職場体験活動の実施率は97.1%、全体の6割以上が3日以上である。一方で高等学校では全体の約15%の生徒が実施していて、その体験率は99%が3日以下である。高等学校の普通科だけを見た場合、中学校との差は大きいことが調査から裏づけられる。ただ、今回の調査ではそういうところは聞いていない。

○この観点からいうと、キャリア教育に関する調査ということで、先ほど藤田先生がキャリア教育の認識が不十分ではないかということをおっしゃっていたが、高校では、学校を訪ねると様々なことをやっている。どうして数字に反映されていないのかが疑問。学校によっては同窓会の組織が全面的に応援して、コーディネーターという認識がない状態でもつないでいる場合がある。それから東京の都立高校は全校熱心だとは断言できないが、少なくともキャリアサクセス及び奉仕も体験で、その中で多様な活動を展開しながら、かなり多様な展開をしながら教員も熱心にやっている。しかしながら、キャリア教育だという認識が不十分。その定義のようなものを学校現場がわかるような発信については、この調査ではわかりづらかったということか。
●最初のフェースシートに定義はつけた。キャリア教育の定義や、今の問題、インターンシップの捉えは言葉としては書いていた。ただ、普通の文字で強調せずに書いた調査なので、そういうところにどれだけ御注目いただいたかどうかはわからない。

○大抵読まないで答えるというパターンだろう。全部読まずにやっている。
●かもしれない。

○先日仙台に行ったら、仙台で被災した高校が、社会人を大いに活用させた授業をやっている。被災地ですらそういう前向きな姿勢が見えているのに、高校の数字的な反映が全然出ていないのは残念。
●今、御指摘いただいた宮城県だと、平成22年度から教育振興基本計画を立て、重点項目1が志教育の推進ということで、仙台版のキャリア教育といえる。県の教育委員会の方針としては実際動いているが、御指摘のとおり現場の先生方がやってはいるのに、それを志教育としては認識していないところがある。小学校も中学校も高等学校もそういうところが多いかもしれない。特に小学校と高等学校が多いかもしれない。

□学校と学校外部の教育資源とのコーディネートを主に担っているのはどのような人材か、該当するものをすべて選ぶ問いで気になるのは、例が1から15まで挙がっているのに、「その他」が多いこと。
●「その他」の内容が下に記載されている。小学校では学校支援地域本部の職員あるいは地域教育コーディネーター、中学校ではやはり学校支援地域本部が多い。それから、地域住民によるボランティア。高等学校では県から派遣されたキャリアアドバイザーや進路情報提供会社、あるいは同窓会役員などが挙がっている。

□私も時々高校に呼ばれて進路関係の話をするが、大体間に進路情報提供会社が入っていて、そこから呼ばれて、対応も全部そこがしてくれる。高校の場合は外注のケースが結構あるのでは。
●私どももそのような感覚を持っている。

○外部人材を活用するに当たり、教科指導を実施していくに当たっての課題についての答えで、予算と時間の確保が多い。予算や時間の確保は、どのようにアドバイスして今後やろうとしているのか教えてほしい。
●予算が十分に確保できないということに関して、直接的に今アドバイスできるようなことはない。ただ、学校外の教育資源を活用する場合に、総合的な学習の時間やその他様々な教科における予算は学校の裁量というのがあるので、その発想を豊かにしてほしいということは申し上げられる。
 時間については、もしかしたら学校の先生方は教科の時間を食いつぶしていくようなイメージでとらえているかもしれないが、そうではないということの情報提供をきちんとしなくてはいけないと感じている。

●今の発言のとおりであると思っている。それぞれの学校ということになると予算は本当に厳しい状況。工夫ということと、キャリア教育の捉え。学校の教育課程全体の中でやっていくんだという意識の問題もあわせて、どう捉えるかということの周知をしていかなければと考えている。

○具体的にキャリア教育はどういうものだと定義したのか。
●定義自体は、答申の定義そのものである。

○今回、いわゆる進路指導的なもの、就職指導や進学指導も含めた進路指導はあえて別物として考えてくださいというような方向づけをして調査を行ったということか。
●それはしていない。キャリア教育と進路指導というのは本来的に同じだという前提の中で実施した。

○たくさんのデータで、ポイントについての私の理解だが、小学校のキャリア教育は保護者が中心となって既存の授業の中でわりとなされている。中学校は特に職場体験等かなり盛り上がってきている。高校は必要性に応じてやっているけれども、知識という面ではかなりついているが、経験という面では乏しいので、ここが課題というまとめになるのか。
●おっしゃったとおり。高等学校は、今おっしゃったところに加えて、認識がもう少し高まるともう少し進展するのかなというところもつけ加えたい。

○キャリア教育が不幸だったのは、ちょうど「若者自立・挑戦プラン」ができたころ、ニートとかフリーターという問題が起きたときに、若者に職業教育というようなものが乏しいのではなかろうかというところから、キャリア教育がそこへくっついてしまったこと。私も埼玉の進学校などで校長先生とお話しすると、もちろんよくわかっているけれども、やっぱり進学校だと、自分がどういう分野の学問をしようかというところへ熱が行く。そこではむしろ、今までのキャリア教育の背景にあった就職だとか職業というようなところが色濃く残っている。

 だから、今後、省庁間の連携に加え、地方では産業界も教育界も全部連携しなければいけないが、キャリア教育について見ると、まず就職、職業を切り離して、自分はどう生きていくのか、だとすればこういう学問をやっていかないとそこへ到達できないということで、キャリア教育になると、どうしても職場、職業、就職ということが出てくる。

 小学校、中学の段階で「働くこととは」とか「職業とは」というところへ直接結びついてしまうと、なかなかキャリア教育が浸透しないというようなことを耳にしている。私も同感だと思うので、職業、職場、働くことと切り分けて、キャリア教育とは何かという調査を一度していただくと、キャリア教育が進んでいくのではと思った。

□この協議会での今後の議論、あるいは前回までの議論の中で出てきた、協議会としてキャリア教育についてメッセージを発すると。そのメッセージの中にまさに盛り込むべき事柄というように、今、お話を伺った。

 

(2)自由討議 

□自由討議に移っていきたいが、前回までの議論と本日の議論を踏まえ、私と事務局との方で協議をしながら中間取りまとめをしていきたいと考えている。次回の会議で皆様にその中間取りまとめの原案を諮って、中間取りまとめとしての案を次回にまとめていきたい。

 本日の議論において、前回お配りした論点や皆様の御発言を論点別に事務局に整理してもらったものがある。この資料について、これから議論をしていただくための前提として事務局から御説明を頂きたい。

●初めは、なぜキャリア教育が必要なのか、次が、どうすればキャリア教育を学校でやるようになるのかという視点。例えば総合学科では「産業社会と人間」があるが、これを全ての学科でやらせればいいのではという議論もあった。ただ、新しい学習指導要領は再来年高校で始まるので、これを今すぐ変えることはできない。総合的な学習の時間が2単位70時間もあるので、こういうものを活用するなど、いろいろな方法で、各学校でやらせるというのはあり得る。

 それから、実は高校教育の改革についてということで各都道府県の教育長、教育委員の方から意見を頂いている。高校教育で今、何が必要なのか、欠けているのか、何をしなければならないのかと問いかけると、ほとんどの県がキャリア教育を挙げている。今の高校生は、学力はあるかもしれないけれども、あるいは学力は低いかもしれないけれども、意欲がないとか、何のために学んでいるのか、勉強しているのか、そこのところの意識が非常に薄い。税金が払えるようになる人間になるのがキャリア教育。すべての県の教育長、教育委員が、このような視点が欠けていると思っている。

 それでは一体どうやったらキャリア教育を学校でやるようになるのかというと、今の調査でも高校がポイントになってくる。それぞれの県はやらなければならないと思っているにもかかわらず動いていない。現場の学校が、特に高校が動いていないという現実がある。どうすれば学校のキャリア教育が動き出すのかという点について、是非具体的な御提言をいただけると有り難い。

 例えば、文部科学省でスーパーサイエンスハイスクールを実施している。これは150校でやっており、まさにキャリア教育だと思う。理系で勉強ができる子が医学部に行くのではなくて、物理をやりたいとか数学をやりたいとか、そういう興味を持って大学に進学にしていくという非常にいい機会になっている。あるいは日本の30人の代表的学者が、数億から十数億の金を使って研究をやっているが、こういう人たちが文部科学省関係の科学技術振興機構で、全国1,000人の高校生を対象に何を研究しているのかを話して、高校生と話をするというプログラムをやっており、この模様を見ると非常に活発にやっている。

 一流に触れさせるというものもあるし、地元企業の経営者などの本物に触れさせる機会をつくるというのもあるし、埼玉のように県の中で労働とか企業とか教育が連携してプログラムをつくることもある。これは、知事を動かせばできると思う。すべての教育長がキャリア教育が必要と言っているわけなので、石原知事はもう動き出しているし、埼玉も動き出しているし、他の県も動き出すと思う。知事に火をつけるという形もあるし、ポータルサイトのようなものを立ち上げて、やりたいという学校と支援したいという人たちを結びつける、こういうのをコーディネートするというのもある。

 その際に非正規雇用のサイクルに入ってしまうと大変だとか、女性の雇用形態の現実とかを基礎的なものとして教えながら、どうすればキャリア教育が動き出すようにするのかという具体的なものも挙げていただきたい。

 是非、今、学校でやっているとか、これもキャリア教育なんだと思えるような、キャリア教育とは何を言っていて、こういうことをやってほしいんだということをまず発信していただいて、具体にどうしていくというあたりをまとめていただくと大変有り難い。

 なぜ学ぶかというところの中核にあるのがまさにキャリア教育で、それは進学校であろうが、普通科の中堅以下であろうが、職業学科であろうが、すべての高校で必要だし、自己探求というステップとして小・中学校でも必要になると思う。

□今、局長から今後のまとめの視点についてお話を頂いた。自由に御発言を頂きたい。

○確かに高校でキャリア教育が進んでいないのは実態として経験するが、今、局長がおっしゃったように、自分たちのやっているのももしかしたらキャリア教育かなと気づく機会がない。先生方が今どこに気をつけてやっているのかというようなことを研修会でやっていくと、あ、それだったの、だったらこうなるよ、だったら職場体験もできるよっておっしゃる先生が出てくる。

教員養成のプログラムの中でキャリア教育というのは入ってきていない。これは教員免許のプログラムを見れば明らか。今までキャリア教育ということが教員の仕事とか教員の領域の中に入ってきていないという教員養成そのものを見直さなければならない。キャリア教育は教員が中核となってやるべきだという理念が私にはあるが、しかしその教員が知らない、聞いたこともないとしたら、やっぱり現職教員をきちんと教育する予算やチャンスが欲しい。キャリア教育の必要性に気づいている先生方はどうしていいかわからないから外部の方にお願いする。

 外部の方がよくわかっている方ならいいが、そうではないケースもある。使用しているワークシートを見たら、中高年の大人対象のワークシートを子供たちにやらせたり、進路、キャリア発達の理論からいっても大人に当てはめる理論を中学や高校で堂々と教えたりしている。こういう問題がある限りは、子供の発達という視点からはマイナスの要素すらあると思ってしまう。

 だから、子供たちに一番大きな影響を与える教員に、きちんと現職教育をしなければならない。中央研修などで少しずつやらせていただくと、先生方もだんだん変わってくる。地域にそういう先生が戻っていき、中核になってくだされば、大きな力を発揮する。具体的に現職教員、特に高校の現職教員にきちんとキャリア教育とかキャリア支援の目的など原点を話せば、自分たちの教科で何をやったらいいかとか、総合的な学習の時間をどう使おうか、について考えてもらえる。

 企業の方々も、日本の人材育成はハウツーに終わってきたところに問題があるとおっしゃっている。人材育成の原点に戻らなければならないとおっしゃっているのは、ある意味で教員養成でもつながると思う。だから、外部の方にお願いするにしても、中核になる人間がわからなければ仕方がないので、現職教員の教育に外部の方が協力してくださるという形で先生方を育てていただくという機会を早急に作っていただきたい。

○高校の先生たちに向けてのキャリア教育の講演とか研修のお仕事を随分頂くが、個別に聞いてみると実は、いろいろなことをやっているのに、それがキャリア教育だと思っていなかったり、それぞれが単独でやったりしている。高校は、学校の組織としては小・中より大きいのでばらばら。みんな自分の分掌のところにいるので、統一感がとれておらず、しかもキャリア教育担当がいないので、進路指導部の先生一人で走り回っている。

 もっときちんとどういうことなのかということをそれぞれが理解した上で、ちゃんと仕事として組織立って動けるような体制を校内につくって、個人の意欲ではなく体制を整えるということが、もっと深く入っていくための一つの手法である。一昨日、沖縄の教育長と話をしてきて、高校、中学のやっている事例等も見せていただいた。「グッジョブ」という首長部局で人材雇用の方が中・高に投げている授業としてインターンシップと「グッジョブ」という企画をやっており、いい企画だと学校が100万円使える。様子をうかがうとみんな必死に取り組んでいる。それは生半可な知識ではできないことで、総じて学力を伸ばすことにもつながっている。中学も高校もそういう取り組みを通して職場体験、インターンシップをやって、なおかつ自分たちの住んでいる町に対する誇りも育てつつ、それを教員が上手に外とつながりながらやっている。

 また、佐賀大学と佐賀銀行がつくっている鳳雛塾という佐賀県の経済振興と人材育成のためのNPOがあり、経済界と大学が連携しながらやっている。そこは、特に商業高校にアドバイザー、コンサル、そういう企画を出させるものをやっていて、自分たちが今若者としてこの店に買物に行きたい視線はどう置くとかという提案型のものをつくっていくというのをやっていらしていて、ちゃんと商業系のコンサルタントの方とかが入って組み立てていっている。

 局長がおっしゃったとおり首長がその気になる、教育長が前向きであるという、その二つの条件は必要だが、学校の先生たちが努力しているという部分はすごくあるので、そこに役割の明確化と、全然そこは違うと思っている部分があるので、つなげていくことで1個1個がそうだよという認識を持たれること。まさしく教員の養成にその観点が入っていないことが問題。全部を一人の人間がやることはなくて、一緒にアドバイスしてもらったり、自分の範ちゅうで子供と向き合ういいプログラムを立てていったりするときに外部をどう利用するかということを考える、そういう体験を教員養成の中に入れていくことというのも重要だと思っている。

 その両方をやっていきながら、産業関係、経済団体も含めて全部に手伝っていただくという体制ができたときに、最初に緩やかなコンソーシアムネットワークがいいと言ったが、学校はやっぱり明確になるべきだし、大学の教員養成の部分でもそういうことをやるべきである。

 日本女子大で、社会教育主事と学校の先生を目指している学生さんの前で毎年一回しゃべるが、自分も子供のころこういう教育を受けたかったと言ってくれる。そういう思いを持って教育者になってくださる人が増えていってくれるとうれしい。

○中学校長としての感想だが、最近新卒が入ってくる率が高くなってきて、実際に職場体験とかいろいろなキャリア教育を進める上で、ネットワークづくりが重要になってくるわけだが、勉強はしてきたけれどもそういったことは苦手ということがある。今のお話を聞いていて、大学でそれを進めていくことは重要だと思った。

 現に学校を経営しているという立場で言うと、キャリア教育がすごくスピードがアップしたなと思った瞬間があった。一つは、やっぱり生活指導主任と教務主任と進路指導主任がいて、かつてのように教務主任と生活指導主任が2トップで走っている学校経営ではなくて、進路指導主任という主任の果たす役割がとても大きいと思う。そういったコアとなる進路指導主任がどれだけ育つかで、随分義務教育段階でのキャリア教育の推進というのは違ってくると思う。コア人材を育成するということで言えば、進路指導主任あたりを中心に、例えばコーディネーターやコンサルタントとどう連携していくのかというものも含めた研修というのが前進していくと、随分変わってくると思う。

 それから、小・中で一貫してキャリア教育の9年間の指導計画を作って、これまで行ってきたことの何がキャリア教育に当たるのか、何が足りないのかというのを整理していったことがあった。義務教育段階が終わるまでに、どんな力をつけたいのかについて視点を明確にしていけば、足りなかったことが分かり、学校組織が動いていったということがある。義務教育段階と高校は違うのかもしれないが、何か指標になるようなものが出てくると加速をするのではないかという感想を持っている。

○今の御意見に共感する。大学で先生になろうとしている人たちとかかわって思うのだが、小学校時代からさせられることをやり、それなりに成果を上げ、褒められてきた。そういう体験だけをしている人たちは、何かのタスクがおりてきてそれを果たしていればとりあえず人生はよくなると考えたまま育っていく。

 その人たちに対して、どのぐらい教員の仕事に思い入れがあるかを調べてみると、大変大きな差が出る。絶対に先生という仕事につきたいと思っている人と、そうではない人の差は、自分がしたいことや好きなことは何だろうというのを、小学校の時期からしっかり取り入れていくというようなことをどれぐらいやってきているかということが大きい。

 君は何が好きかということを学校の中で問い続けていくこともキャリア教育の一つである。発達段階に合わせたキャリア教育的な声かけなどを、教育の中のいろいろな側面に入れていく必要がある。

 中学校、高校が問題視されているという印象はあるが、でもベースになる考え方や人生に対してとらえ方の最初をつくるのは小学校。そこから巻き込む必要がある。

○今日も東京都の教育委員会で今後の高校教育をどう進めていくのかという点について議論してきた。そこで話したことは、やっぱり高校生は、勉強ができるかどうかということが大きな絶対的な価値基準としてあって、それ以外のことに余り価値を置かないということ。いい大学に行ければ、それが高校生として価値のあることで、それ以外の価値をなかなか見いだしにくいという状況がある。

 そういうものをつくり出しているのは、例えばこういうこともあるのではないか。

高校において普通科は普通で、それ以外の学校は何となく特別な学校。何のために普通科に行くかといえば、職業につくためではなく大学に行くため、となっている。この普通科という高校の名前を変えてしまおう、みんなあえて総合高校にしようと。そこで大学に行く子もいれば、行かない価値観を持った子もいて、あるいは相互の入れかえがあってもいいと。そのような高校づくりを進めていくのが大事という議論をしてきた。

 今、小学校、中学校も同じ問題を抱えていて、皆、小学校4年生、5年生になれば塾に行く。何のためかといえば、5教科の成績、特に英数国の成績を上げるため。そこの価値観が圧倒的に強い。でもキャリア教育というのは、別に大事なものがあるという柱を立てることが必要。

 その別の柱というのは、いつも最終的に勉強していることも、最後は何らかの職業を得て、そこでお金を稼いで生きていく、あるいは社会の中で役割を果たしていく、そういう力を養っていくことが大事だということ。このメッセージを、是非ともこのワーキンググループから出していってほしい。

 例えば、小学校、中学校の通信簿で親が見るのは大概5、4、3、2、1という評定。それはそれで客観的な事実なので、そこをなくすわけにはいかない。

 別な柱を立てるということになると、非常に難しいかもしれないが、例えば人間基礎力科など、成績ではなかなかとらえ切れない科目を新たに設けることも考えればいい。技術・家庭、保健体育の保健の部分、道徳、特別活動、総合的な学習の時間などは、評価しにくいものを一回集約してみて評価をする。5段階でなくてもいいと思うが、それを別の柱として立ち上げていくという工夫をしないと、キャリア教育を職業に結びつけるというな、柱ではないものとして扱われるのではないかと思う。

 また、先ほども出ていたが、キャリア教育というと中学校でも子供たちも、また別のものを押しつけられて教育されるということにならないように注意しないといけない。自分で考えて、自分の一生なんだから、自分でつかみ取る機会やヒントを与えてくれる、そういうものだと子供たちに伝わるようなものでないと駄目だと思う。

 もちろんいろいろなキャリア教育があっていいわけで、職業に直結するような高校における教育もいいし、中学校の職場体験もあるし、いずれにしてもそこでつかんでほしいのは自分で自分なりに自分の将来を考える力。そこを強調しないと、キャリア教育は職業を教えて、大人がいろいろなことを言うという印象を持たれないものであることが大変重要。

○キャリア教育は、どうしても高校、とりわけ普通高校、進学校で関心が低いという話があった。埼玉でも調査結果と同じようなデータが出たので、知事を含めての知事部局と教育局の連携、そして我々産業界との連携に力をそそいだ。グローバル人材の育成を目指し、まず普通高校、進学高校の関心を招くために取り組んだ。キャリア教育が目指す着地点というのは、創造性豊かで、挑戦意欲があって自立ができる若者の育成だろうというところに置いた。例えば、進学校がキャリア教育に関心を持つ仕組みをまず作ろうということで、今年度4月1日から県は10億円の基金を設立した。我々産業界にも呼びかけて、今、進行中である。具体的には、高校生の海外留学と企業への派遣、大学生の海外留学と企業への派遣というところで始めた。我々産業界も、それじゃあ受け入れましょうということで、それらの人を海外で受け入れる体制をつくりつつある。加えて高校の進路指導の先生を我々協会で推薦した企業に派遣して体験してもらう。こういう人材を是非教育界に育成してほしいというメッセージを発信するために、海外の企業で高校の先生を受け入れて、実践している。

 そのようなことを通じて、まず体験によって進学校にキャリア教育が何たるかを理解していただいて、学校現場で関心を持ってもらうというような試みをしている。トップ校がそうであれば、他の高校も関心を持ち出すだろう。グローバルな人材の育成というのは何も海外で働ける人材を育成しようということではなく、創造性豊かで、自立心おうせいで挑戦的な人材である。

○進路指導の一部もキャリア教育だと思うが、進路指導との大きな違いの一つは、グローバル人材教育。グローバル人材を育てるきっかけはキャリア教育で、地域、地元のアイデンティティーというのを醸成すること。子供たち、あるいは地域の人がキャリア教育にかかわることによって地域、地元のアイデンティティーを育てていくこと。

 小学校はそれを既にやっている。工場見学や、地元又は保護者の方に来てもらっていろいろな話をしてもらい、地元について知ってもらう。中学校では生徒自身が企画をして、県内の企業などを調べて地域のことを知っていく。地域がわからないとグローバルの世界もわからない。地域がわかって初めて比較ができ、他との違いがわかってくる。

 高校に行くまでに、経験のない勉強をすると、違いが知識としてしかわからない。小・中で地元を知り、高校、あるいは大学で地元との違いを比較することによって初めてグローバルがわかり、地元のすばらしさがなおわかる。そうすることで地元の企業も更に積極的に参加しやすくなるし、子供たちも自分の将来を考えることができる。

 人格というのはほとんど環境によって決まってくると思うので、その人格形成自体がキャリア教育になっている。

○これはただ単に教育政策だけの問題ではなくて、産業政策の一環でもあると思っている。地域の振興を考えたときに、人材力というのは一番大きな財産。日本には資源もないし、人間力が一番の財産である。要は産業政策としてキャリア教育を見ていく視点というのも入れていかなければいけないのではないか。

 そういう意味で、教育委員会と知事部局の連携というのが、先ほど埼玉県は順調に進んでいるというお話があったが、そこには壁があって、なかなか教育行政の方に都道府県からお金や人材がおりないという部分がある。是非とも知事部局を巻き込んだ形での、その都道府県全体としての動きという形のスキームを国の方から提示していただいて、その上で都道府県、あるいは政令都市をどうするかというのはあると思うが、そのあたりをどう形にしていくかというのをここで提言していただけたら有り難い。

○冒頭の調査結果の御説明の中で、キャリア教育がやりにくい理由として時間がないというのがあった。先ほどのお話の中で、既存の科目を一回くくってみて、必要であれば新しい科目をつくったらどうかという御趣旨の御発言だったが、最近参考になるような経験をした。

 当社は毎年ある小学校に出前教室をしており、私自身もそれに参加した。小・中一貫教育をしている学校で、実験的なことをやっている。総合的な学習の時間と特別活動の時間と道徳などの時間を全部合わせて市民科というのをつくり、その市民科の中で私たちも、うちの会社も受け入れていただいて、そこで、笑顔で人と人とのコミュニケーションをどうやってうまくするかという講座をしている。既存のカリキュラムをくくり直すということは学校単位でもできるのかなという感じもしたし、あるいは教育委員会単位でもできるのかもしれないし、省庁的にそういう新しい科目のつくり方を文部科学省が見せることによって、現場の意識や、そして産業界の意識や社会全体が変わるということもあり得るのかなと思った。

 次に申し上げたいのは、中間取りまとめの項目の中に、何を教えるべきかというのを少し議論した方がいいのかなと思う。

 教員がそれを教えるというのが基本だと思うが、何を教えるかで内容によってはどうしても学内だけでは対応できないので、外部の資源をどうやったらうまく使えるかということになる。

 何を教えるかということの一つの例だが、キャリアは、日本の場合は男性と女性で非常に違う。キャリア教育の中には必ずジェンダーの視点が必要だと思うので、必ずそういうことを議論していただきたい。

□これまで局長の問題提起を踏まえて御発言いただいた。文部科学省で今後のキャリア教育の方向性などについてどのように考えているのか。事務局から御説明いただきたい。

●これまでの議論等を踏まえて、今の時点でこういうことをやらなければならないと思っていることを幾つか御報告する。

 一点は、今日も議論に出ていたが、学校の現場でいかにキャリア教育をやっていただくかということ。現場をいかに動かすかというのがポイントなので、幾つか考えられることを申し上げる。

 まず、高校も含め現場の先生方に意識を持っていただく。その意識というのも、キャリア教育が重要ということよりも、現在学校で行っているいろいろな活動がこういうふうにとらえればキャリア教育なんだということや、こういう視点でもう少し取り組むとそれはキャリア教育なんだということを私どもが足を運んで現職の現場の先生方にお伝えすることが必要と思っている。各教育委員会等で校長あるいは教員の先生方に研修を行っているので、そこに私どもや委員の先生方の御協力も頂いて、そういうメッセージを伝え、先生方の意識を少しでも変えていきたい。その先生方が学校に戻られて、そのほかの先生方にもそういうことを伝えていただくということをまずやる必要があるだろうと思っている。

 次に、現在高校のキャリア教育の手引きを作成中だが、その中でもできるだけ実践例、学校の先生が今やっておられる教育の指導がこういうふうにとらえればキャリア教育だというのがわかるような具体の指導例まで踏み込んで示したい。

 さらに、そういった指導を進めていく上で、応援してもらえる外部人材に関する情報を集約化するとともに、具体の支援について学校でこういう支援が欲しい、ではこういう支援をする用意がある、ということをマッチングできるようなポータルサイトのようなものをキャリア教育についてつくれないかということを今、考えている。

 そういった応援をしてくださる方々の体制をつくるということで、大阪ではキャリア教育支援ステーションのようなものがあるし、埼玉にもグローバル人材育成といったような体制があるということだったので、そういったことを私どもが各県に依頼や働きかけをして、体制づくりを進めていくということも必要。

 さらに、少し中長期的なことになるかもしれないが、教科としての位置づけということも、中教審の答申でも更に検討するということになっている。こういったことに向けて、キャリア教育をすることでこういった資質能力が高まるといったようなことが実証的な形でとらえられるということを並行して進めていき、カリキュラムの検討につなげられるようなことも必要ではないかと考えている。

□教育委員会主催の場に文科省から出向いていくのは、とても効果的だと思うが、約半分の県では、各教育委員会の進路指導担当の指導主事が1年で交代してしまう。教育委員会はキャリア教育を県の重点施策の一つに挙げている。推進するための研修もする。しかしその研修の場で、県のキャリア教育担当の指導主事が中心になって研究を進めていただきたいが、1年で交代してしまうと中心メンバーになれない。県の研修を意味あるものにするためには、本当は指導主事の方にやっていただきたい。指導主事のための研究協議会は国立教育政策研究所で毎年5月にやっているのに、毎年来る人が変わってしまうので成果が上がらない。これは文科省の指導で何とかならないかという感想をもっている。

 それからもう一つ問題なのは、県の教育政策としてキャリア教育の研修をやっているが、教育委員会と研修センターと2本立てで、連携していない場合がある。教育委員会の施策的な考え方が研修センターの研修に反映していない場合もある。そこに文科省の方から講師などとして行くということは非常に有効かなと思っている。

○高校はメリットを感じていないということで、やっぱり危機感が足りないのではないか。我々が持っている危機感というのは、進学校の8割の学生は県外に行ってい、県外に行った学生の8割は県外に就職してしまう。そうすると結局優秀な人材がいなくなる、あるいは子供たちが少なくなると産業として成り立っていかないという危機感がある。高校の先生にとって、優秀な都会の大学に行くことが目的になってしまって、それを達成すれば安どしている。結果的にその学生が全然地元に戻ってこなければ人口も減るし、学校も減っていって、先生の職もなくなってしまう。もっと先生たちにも危機感を持ってもらい、極端かもしれないが、IターンやUターン率を上げるなどの指標まで入れていって、キャリア教育の成果というぐらいが、我々企業としても非常にわかりやすい。大きなメリットだけ示すのではなくて、危機感というのも入れてほしい。

○今のことだが、キャリア教育の研究が始められたとき、文科省が珍しく学校単位で特別指定地域にした。今までは研究指定校だった。その地域の小・中・高と地域の人で一緒になって、地域でキャリア教育を3年間取り組むというのを確か全国47か所で行った。あの影響は、いまだにその地域に行くと残っている。始まったときは余りキャリア教育が世の中の関心事ではなかったが、今はやりやすいかもしれない。

 例えば知事とか市長とか、地域の産業界の方が関心を持ってくださっているのであれば、あのときの大変さよりもはるかに少ないエネルギーで地域指定ができると思う。あれは、画期的な施策だったような気がするし、実際、その地域指定に伺ってみて、悩みながらも先生方が一生懸命やっており、教師が育っていく姿や、その先生方が県の教育指導主事になっているのも拝見している。

 一番大きかったのは、地域指定にしたときに、地域の保護者が関心を持ったということ。広島県の尾道で経験したが、講師として行くと、「キャリア教育で来たんですね」とおっしゃる。そこでは子供たちが地域の外に出てしまう。職場体験をさせるというと子供たちは広島県・市、本州の方に行きたがる。親たちはそれをとめたい。葛藤しているから余分なことをやらないでくれと言っていたが、外に行くことで町のよさもわかってくるでしょうとか、一度外に行っても地元の特産物を勉強しておけば戻ってくるでしょうということを、広島大学の先生がキャリア教育のプログラムに組み込んで、保護者の理解が深まった。

 高校の普通科の問題は、確かに教員の責任もあるが、高校の先生方のお話を伺っていると、保護者が進学しか考えず、余分なことをやるなと言っている。そういう保護者に対して先生方ではどうしようもないときがあるだろう。大学も同じ。そこを乗り越えて、「いや、教育はこういうものだ」と言えるだけのエネルギーを持つのは大変なこと。地域社会の保護者が、「学校って今こんなことをやり出しているんだね、これは子供たちのためになるらしいね」と変わる必要がある。

 地位指定になったときに保護者が学校に足を運んで協力してくれたというのだから、特別指定地域でキャリア教育をやり直すとよい。そうすると保護者が入ってくるという気がする。

□  ありがとうございました。

さて局長から問題提起をしていただいた、なぜ勉強しなければいけないのかということを子供たちにどう提示していくのか。これもキャリア教育の大きな課題なので、少し議論をしていただきたい。そのことを含めて学校がキャリア教育に向けて動き出すためにどうしたらいいかという議論を進めていただきたい。

○私もキャリア教育がなかなか浸透しないと思ったので、65歳で現役の専務理事はやめようと思い、最後に試みたいと思ったのは4者面談。キャリア教育は登場人物が4者いる。生徒本人と一番の難敵の保護者と、先生と、社会人。保護者は、自分の子供に対しては、その個性や興味や資質にかかわらず、大会社に行けというようなことをおっしゃる。清川さんが言ったように地元に帰ってこない、中小企業には帰ってこない。そこを崩さないとキャリア教育は進まない。

 我々の4者面談は、生徒、保護者、先生、そして私どもが推薦した社長4人が高校2年の進路を決める段階で、個室に4人を入れて1時間行う。生徒は経験がないから、有名大学への進学、有名大企業への就職を希望するが、1時間面談をすると随分変わる。もう十数回やっているが、中小企業の面白さや学問について、本当にやりたいことがあるのに、通信簿を見せてもらうと物理が3、英語が3、これでは難しいかもしれないね、だからやっぱり大学もこういうところに照準を合わせて進んでいったらどう?と、漠然としたものを具体化する。先生も日ごろ一生懸命言っているが、外部人材を使うことによって説得力が増す。

 今年からは、協会の手を離れて県が自分の財源を使って4者面談制度を実施している。先生が日々の指導の中で、一人一人の子供に対する指導方向というのが決まってくる。親御さんも単に「寄らば大樹」では駄目と気付く。生徒も、自分の資質や興味は何なんだというところをもう一回思い出す。

 企業経営者にとっては、面接した子が自分のところへ戻ってこなくてもいい。社会的責任を果たすということで、企業経営者から断られたことがない。この4者を集めるには日曜日しかない。先生も保護者も勤務があり、生徒も現場を離れられない、企業経営者も同様だが、「わかりました。喜んでさせてもらいます。ゴルフも飲み会にも行きません」ということで9時から5時まで面接を行い、のどもからからになるが、満足感がある。

 今年からは全県下、全学校を対象にやることになった。埼玉ではそういう試みをしている。

□希望すれば4者面談が受けられるのか。
○しかり。ただ、どんな経営者に頼んでもいいというのではなく、私から選べる経営者はせいぜい20人。
 最終的に言いたいのは、高校2年では遅いということ。本当は中学で4者面談をやりたい。

○その高校は普通高校か。
○総合高校も、芸術高校も、進学校も含めて全て。ニート、フリーターの問題があるので、職業高校の方が多くなるが。

○大学に行きたいという子供に経営者たちは何をお話しされるのか。
○まずは、子供からどんな興味があるのか聞き出す。1時間の持ち時間のうち20分は社長の声しか聞こえない。社長が自分の人生観を述べる。おれも大会社に勤めたが、自分がやりたいことはできなくて歯車になってしまったなど。「君、大学出てそういう企業、大会社に行って何をやるの?」というようなところの切り口から始まることもある。
 そのうち、「何で工学関係に行きたいの? 何がやりたいの?」という話になって、「数学が3じゃ駄目だぜ。英語が3じゃ駄目だぜ」と言うと、それに刺激されて、数学や物理が好きになり、成績も上昇する。
 それを、1年間に20組だから、大体70~80名を対象に行っている。

○拡充は難しいか。
○経営者協会では無理。社長を選ぶときに、どんな人でもいいというわけにはいかないため。

○20人ぐらいの信頼のおける経営者たちに、一回につき生徒5人とか10人に面接してもらうのはどうか。
○子供や保護者は、他人のいるところで秘密はしゃべらない。自分の持ち味をほかの生徒がいるのにしゃべるということはあり得ない。それでは意味がない。

□学びの動機づけをどうするのか、社会とのかかわりを持たせるにはどうしたらいいのかというのは局長の大きな問題提起だった。特に普通科高校の生徒に社会とのかかわりをどう見させていくのか。これはインターンシップだけの話ではなくて、教科の勉強でも何かできそうな気がする。

○キャリア教育というのが、いろいろな子供たちに様々な観点で受け入れられることが大事だと思う。勉強のよくできる子が、話を聞いて更に勉強意欲を高めていくというのもいい。気をつけなければいけないのは、そうすると結局はいい点数を取るためのキャリア教育というふうになるのではないか。

 そういう側面があって悪いとは思わないけれども、そのためだけではない。主要な部分はそれ以外のところにあって、勉強をして、いい大学に行って、大企業に行くと、それが本当に君の能力を発揮する道か?という問いかけがあって、もっと違った価値観が小学校、中学校、高校とあっていいという、そこの部分が今、一番子供たちに見えない部分である。違った柱を公立の教育の中で立てることをしなければ、いつまでたっても、キャリア教育をやっても結局は、いい大学に行かなきゃしょうがないということになる。親にもそれだけではないと思わせるような力のあるキャリア教育であることが必要。

やっぱり5教科中心、それも英数国中心の子供たちの評価をどこかで変えて、子供たちが何か目標を持てるような、別の目標を持ってその目標を持つことが誇りになるような仕掛けを作る必要がある。その一角を担うのがキャリア教育。そういう意味でチャンスが来ている。

 今、課長がおっしゃったが、キャリア教育をこれからどう進めていくのかについて、すぐできること、長期的、中長期的に考えなければならないことなどいろいろあるが、根底になる考え方は共通したものがあるので、そこをまず整理する。具体的に始まっているものもある、やっているものもある。そういうものをどう拡充するのかという点と、根本的に考えなければならないことをうまく仕分して提言していけば、すごく形のいいものになるのではないか。もっとも、それは我々の任務の範囲を超えたものだおっしゃるのであれば、もう少し絞ってもいいのかもしれないが。

 外部人材の活用だけを言われると、それは極めて技術的なことでもあるし、それをうまくやる前提となるものについてもう少し話をすれば、うまく整理していけるのではないか。

□局長のおっしゃっていた事柄の一つに、委員の方から指摘があったが、学校は意外とキャリア教育をやっており、キャリア教育と意識していない部分があって、やっていながら認識していないという問題。だから、こうやっていればキャリア教育ですよということを、キャリア教育に学校が取りかかるきっかけ、メッセージとして出したい。

○高等学校の最大の目的は、やはり人格形成とともに3年間、あるいは4年間で進路を決定していくこと。

 ただ、前回、全国の高等学校の校長の意識を紹介したが、高等学校はそれぞれ目的が異なっているという点で中学校や小学校と違うということは御理解いただけていると思う。したがってキャリア教育の意味、とらえ方についてはそれぞれの校種や地域、条件によってとらえ方が違うということを前提にお話したい。

 文科省から出された3つのテーマについて、私の考えを説明させていただく。

なぜキャリア教育が必要なのかということについてだが、今まであるいは今日の会議の中でも様々な御意見があった。ただ、そもそもキャリア教育というのは一体何なのかという定義が明確でないと、それは必要だ、それは必要でないというふうに違ってきてしまうので、キャリア教育の定義というのは広い意味なのか狭い意味なのかということを少し整理しないといけないだろう。

 学びとか社会とのかかわりとか働きとか自立とかということからすれば、高等学校はまさに、小・中もみんなそのために一生懸命やっているのだから、キャリア教育とあえて言わなくていいじゃないかと。もっと狭い意味で、社会とのかかわり、職業の経験、そういうものが必要だよということであれば、もう少し限定した定義に置きかえなければ議論がかみ合わないのではないか。メッセージを出す前に、この委員会としてのキャリア教育というのは一体何を定義しているのか、これは是非明確にしていただきたい。キャリア教育は必要だということを前提に話が進んでいると思うので、一体何を指しているのかということを整理してメッセージを出していく必要がある。

 端的に言えば、議論の中身が外部人材の活用ということであり、職場体験を前提として高等学校にキャリア教育を導入しろということを暗に示しているということであれば、そのためにはどうしたらいいんだということについて議論を進めていかないと前へ進まない。

 2番目の、どうすれば学校でキャリア教育をするようになるかということだが、キャリア教育とは一体何なのかということを教職員の中で議論、精査していく必要がある。うちの学校のキャリア教育はこうだということをそれぞれの学校が持っており、それを整理しないといけない。

 例えば、進学校のキャリア教育は、就職のためのキャリア教育とは質が違う。医者とかマスコミ関係とか芸術家とかいろいろな方面があり、学校はそのためのキャリア教育を行っている。大学を見学して授業を体験するということもキャリア教育に含めるとすれば、それはまさに進学校で行っている。

 支援の在り方としては、学校がいろいろな取り組みをしている中で、学校として何を求めているのか、求められているのか、支援してほしいのかということをもう少し整理をしなければならない。一律に1週間の職場体験を進学校も進路対応校も全部入れなさい、それがニートやフリーターや非正規雇用、早期離職の防止になるという客観的で明確な根拠があれば、5日間の職場体験を導入してもよい。導入しろということであれば、明確にその根拠を示してほしい。

 どうすればキャリア教育を学校が行うようになるかということは、どういうキャリア教育を行っているのかということを明確に意義づけてあげるということが学校には必要。キャリア教育の意義、位置づけを別の観点の方から、これはこういう点ですばらしいキャリア教育を行っているということを明確に示して勇気づける必要がある。

 先ほど中学校からも出てきたが、今やっているままでいいのかということについては、何か欠けていないか、もう少し重点に置くべきことは何なのかということをアドバイスする必要がある。それは外側から与えられるものと中側からつくるもの両方だと思う。

 どうすればということだが、導入できない理由は、いつもお話ししているように多忙感や学校に対する多様な要請がある。それから、目の前にいる子供たちの実態がある。そこを何とかしなければならない。保護者、地域、いろいろな関係団体あるいは教育委員会からも様々な要請があり、それに一生懸命学校はこたえているし、多忙感の中でいろいろなことをやっているということを御理解いただきたい。

 その中でさらに、キャリア教育をということであれば、今やっていることがキャリア教育です、ただしこういう点はもう少し先生方、意識してやられたらどうでしょうかとか、更にこんなものを導入したらどうでしょうかという助言が必要。

 3番目のどうすれば学校のキャリア教育は動き出すかということだが、学校が必要な情報をすぐ取り出せるように整理をしておくということは必要だろう。いろいろなパンフレットや手引を配付されるが、多忙なため中身はよく見ていないかもしれない。先生方にも配られたが、埋もれてしまう可能性がある。

 そういった点では、例えば文科省のホームページを開いて、その中のキャリア教育というのが開かれて、こんな支援団体がありますよということでリストになっていれば、もう少し詳しく調べていける。必要なときに必要な情報がすぐに手に入るようなそういう仕掛けがあると、学校としては有り難い。

 それから、いろいろな取り組みがいろいろなところでなされているので、手引の中で事例が出てくると思うが、ちょっと工夫するとできるという事例があれば、学校としてはそういうものをモデルにしながら、活動に踏み切れる。

 それから学校の中での体制をつくっておかなければいけない。高等学校は進路指導部というのがある。その中で、キャリア教育というのは、欠けた部分を補うという点で専門の人が必要になってくる。

 そこで、学校の中での担当者を選出していくということを、教育委員会を通して学校に指示をしていく必要がある。それから担当者を集めて連絡会などを開きながら、各学校がどのような取り組みをしているのかという情報交換は効果的な方法である。

 それから、教員の研修の問題。これは、2年次、3年次、4年次、あるいは10年研などいろいろな研修があるので、キャリア教育を研修の中に意図的に位置づけるということ。

 それから、これは文科省の方でできるのかどうか。学習指導要領解説などの中に、キャリア教育というものを具体的に位置づけていく。例えば総合的な学習の時間に位置づけられるとか、指針となるようなものを示していけば、法的拘束力なり、また指導の拘束力があるので、それに基づく取り組みをしていくだろう。ガイドラインというか、あるいは学習指導要領などの中で位置づけるということも必要。

 それから更に発展的に進めていくとすれば、一斉にというのはなかなか難しいので、各県での試行校を幾つか導入しながら広げていくという方法もある。

 それから今度は外側からの支援だが、内側からは担当者が勉強をしていく、先生方も意識を高めていく、その中でやはり必要なときに必要な方から情報を得たい。それは先ほどのインターネット等の情報ではなくて、直接いろいろなことを御存じの方に来ていただきたい。そのときにいろいろなかかわり方がある。一つは相談的なもの、あるいはお問合せ的なものから、直接先生方に対して研修をしていただく、あるいは直接生徒へかかわっていくとか、そのかかわり方の程度によっていろいろな外部からの支援の在り方がある。そこを整理して支援の仕組みをつくっていかなければいけない。

 そのときに、関係機関の中では厚労省などいろいろなところですばらしい機能があったり資料があったりノウハウがあったりしているわけで、それを少し整理して、こういうニーズに対してはこの機関で対応するなど、整理する必要がある。文科省からの制度的なものだけではなくて、他の機関でどういう機能があるのかを整理し、学校に示してあげれば、学校でキャリア教育が進んでいくのかなと思う。

 学校だけの啓発だけではまずいだろう。保護者に対しては、学校を通してということになる。ただ企業のがわに対しても学校がこう取り組む、あるいは支援の在り方について企業や社会も学校の教育を担っていくんだという視点も、啓発の資料等で働きかけていく必要がある。

○今、お話をお伺いして、鹿嶋座長のもと、高校のキャリア教育の資料づくりに参加したとき、高校の先生方は、今やっている教育活動がいかにキャリア教育なのかということを他の先生方にちゃんと伝えられるような資料をつくろうということに腐心していたことを思い出した。例えば国語でも数学でも特別活動でも、こう見るとキャリア教育になるんだということを伝えることに腐心していた。

 キャリア教育を教科と融合してというのは、キャリア教育のもとからのモデルだったと思う。教科を中心にキャリア教育を考えていって、今、単に進路の意識ではなくて基礎的・汎用的な能力、学力をつけていこうというのが世界標準の議論でもある。そうしたことを今、高校で、特に進学校普通科で勉強を通してやっていることが全部キャリア教育と言えばキャリア教育なんだということも少し強調して訴えていいのでは。

□残り時間も少なくなってきたが、高校が焦点の一つだといえる。進学校というよりは、入学難易度でいうと中レベルの高校などでキャリア教育を進めていく視点というのは何か考えられないものか。

 各県の上位の進学校というのは、それなりに学習の動機づけのやり方みたいなのがある。スーパーサイエンスハイスクールは、まさに一つの動機づけ。

 そこほどではないけれどもという高校はいっぱいある。そういう高校の生徒たちへの学習の動機づけをどうしていくのかというのは、多分、局長も意識しておっしゃったところだろう。

 自分の大学の学生を見ると、必ずしも明確な目的を持って学部選びをしているわけではない。入れるから入ったと言うが、入った後で困る。高校に言わせれば大学・学部でキャリア教育をやればいいんでしょという話なのかもしれないが、高校で入れる学部に入るという大学や学部学科選びでないキャリア教育というのは必要。

○私は、最初、親の立場で学校にPTA会長として10年かかわったのが原点。発達形成段階に応じて、小学校1年生から6年生までに何をやるべきか。中学校1年生から3年生まで何をやるべきか。高校を選ぶときには数字じゃなくて学びたいものがあるところに行く。大学を選ぶ際に、この先生の講義を聴きたい、この授業でこういうことを学びたいという思いで大学に行ってもらいたい。塾にいたずらにお金をかけることをよしと思っているわけではない。そんなことよりもきっちり教えていただけて、それに見合うだけの力を身につけさせてくれればいい。

 ところが、小学校では先生中心に授業が組み立てられ、30対1とか40対1の関係だが、これは現代の子供たちに通用しなくなっている。おふろに入ってちゃんと九九をやるというような家庭学習という概念すらも、今は消えている。勉強は塾でやらせるからいい、学校はしつけをやってくれみたいなことを親が平気で言いに行く。

 それを見ていて疑問を感じたので、私どもはこういう教育支援活動を始め、キャリア教育にたどり着いた。キャリア教育というのはエリート教育ではなく一人一人が自分はどう生きていくんだ、どういう大学に行くんだ、どういう仕事につくんだということを意識できる。

 だから小学校段階でも、中学校でも、そういうことをやらせていただいている。高校で本当に職場体験でいいのかという話。先生と腹を割って忌たんなくいろいろな話をすると、実にいろいろなものを抱えている。

 十五、六歳の子供が、もう一回頑張れば、マサチューセッツ工科大学だって行けちゃうのにあきらめる。だけど、真剣に語りかける大人たちに出会い、先生がそこをうまくつないでいくことによって、1年かければその子たちの髪の毛が黒くなるしピアスも取れるしズボンのベルトが腰に来るということが起こる。そういうことがキャリア教育なんだと私は思う。

 だから一律でこうやれではなくて、それぞれの学校の専門性に合わせて相談に乗って、先生の思いをちゃんと受けとめてつくっていくというのがとても大事だし、それも30人が一気に行って見たからいいことがあるわけではない。野上先生がおっしゃったように、1対1の関係か、せいぜい希望者で1対3とか1対2。そういうものをきめ細やかにつくっていく必要がある。

 現場だけの感覚だが、日本が危ないというのを感じる。若者が生きやすい国をつくってあげなければならないし、ということは自分が苦しんで努力するということをわからせなければならない。そういうことを感じる機会をつくるのがキャリア教育ではないか。だから、一律同じことをやらせれば、すべておしまいだというやり方だけは選びたくない。

○前に説明したとき、私は平成9年から毎年5人の先生方、高等学校の先生方を1年間お預かりして、70名近くの先生にかかわったが、その中のお一人の先生の話をしたい。

 その先生は数学の先生。普通高校の15年選手ぐらい、三十五、六歳だった。研修が終わって何を言ったかというと、1年間の企業勤務体験を通じて、キャリア教育というのは何も特殊な教育ではない。数学という教科の指導の中で、今までは数学の解法を中心に教えてきたが、その中で社会の在り方とか歴史とか数学以外のこと、例えば日本の書物とかの中で、これは生きるなと思ったとき、その問題に絡めていろいろなことを言った。その先生は受け入れた企業が、「うちの会社はグローバル企業。8割が海外生産だから、海外へ行ってみないとどんな人材が必要かわからない。社長や専務が行くから海外に行かないか」ということで、海外勤務体験もなさった。自分の数学の時間に、あるテーマについて英語で話すと、生徒の方はちんぷんかんだったが、「これからは好むと好まざるとにかかわらず内なる国際化、外なる国際化も起こってくるから、君たち、これを英語のまま写してうちに帰って解いてこい」と。すると、中には興味を持った生徒がいて、英語もやっておかなくちゃいけないということになり、その解法の中にはやっぱり理科が必要になってくる。その要素も含まれた問題をおれは出しているんだということで、学問、勉強への興味・関心を引くよう努力を始めたとのこと。

 そういうことで、特殊なものがキャリア教育ではなく、自分がやる教科の中や日々生徒に接する中でいろいろかかわっていくことがキャリア教育なんだという視点も必要ということを、強く感じるようになった。

 だから、キャリア教育の中心人物は、やはり先生だと思う。日々の指導の中にキャリア教育の真髄があり、特殊なものではない、毎日やっていらっしゃることがキャリア教育だという位置づけに気づかせてくれたのが、企業体験をした先生のキャリア教育観だった。

○今までの先生方の御意見を承服してお聞きしていたし、キャリア教育の定義というのはこれまで文科省の答申などの中でも十分書かれている。我々が外部人材としてどうすれば教育現場に入っていきやすいか、それを考えるのが我々の仕事。

 星野先生からは、学校が求めていらっしゃるものはこういうものである、学校の実態はこういうことであるというのを非常にわかりやすく教えていただいた。キャリア教育がなぜ必要なのかというのは、自明の理としてわかっていることなので、次のステップとして、その中に我々がどう入っていきやすいのかというのを議論しなければならない。これまでの経験則の中での成功例、失敗例を出しながら、新たに構築するときになっているのではないかと思うので、次の段階で中間報告ということだが、それが果たしてどんな形で出てくるのか。それが来年度にどうつながっていくのか。タイムラグも考えながらというところが必要ではないか。

□次回の会議でお示しする中間まとめについては、問題意識としては局長が冒頭におっしゃった方向、あるいは先ほど課長の方から御説明いただいたような方向でとりあえず中間まとめをして、それぞれ学校あるいは産業界、企業、それからコーディネーター、コンサルタント、それぞれが協働していく中で、それぞれがどういう役割を果たし得るかということは、中間まとめ後の議論の中で更に深めて考えていきたい。その上でこの会議のテーマである外部人材の活用の問題を明らかにしていきたいと考えている。

 それでは本日の会議はこれで終了する。

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-- 登録:平成23年08月 --