学校ネットパトロールに関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成23年3月8日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 旧庁舎第1会議室

3.議題

  1. 学校ネットパトロールに関するヒアリングについて
  2. 学校ネットパトロールに関する調査研究協力者会議審議経過(案)について

4.出席者

委員

大久保委員、角田委員、竹内委員、藤川委員、水木委員、水谷委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、郷治生徒指導室長、清重児童生徒課課長補佐 他

オブザーバー

永井視学官、三好視学官、上野生涯学習政策局参事官付教科調査官、
城戸国立教育政策研究所生徒指導研究センター総括研究官、中村生涯学習政策局参事官付企画官

5.議事要旨

開会

議事

(1)新潟県教育庁における取組について、ヒアリング及び質疑応答があった。
(2)審議経過(案)について、各委員からの意見交換があった。

(1)新潟県からのヒアリング

【委員】本日は、まず、学校ネットパトロールに関するヒアリングとして、新潟県の取組についてお話を伺いたい。委員の皆様には質疑応答の中で、各地域における取組との比較検討などもお願いしたい。それでは、お願いいたします。

【新潟県】新潟県では、ネットいじめ防止・解消推進員(以下、「推進員」とする。)配置事業として、県内3箇所の教育事務所に1名ずつ、計3名の推進員を配置している。これは、県の緊急雇用事業として、失業対策の観点から実施されている事業であり、単年度ごとの採用であり、平成23年度で終わりを迎えるものである。来年度末までに、ネットパトロールを行うボランティアの人材育成を推進し見守り体制を構築する、もしくは、別の事業として継続できるよう、有効性等も示していかなければ推進員を継続的に配置することが難しい現状である。
 推進員の予算については、人件費が月15万8,000円である。あらかじめネットに堪能な方を募集するが、推進員への研修として、外部講師を招いての2日間の養成研修や、県警の協力による技能研修等を行っている。
 県内の平成22年度の状況としては、犯罪予告に関する事案、動画サイト等に性的ないじめを投稿するといった中でネットが絡む事案が報告されている。一般にゲームサイトと言われるような非出会い系のサイト内の交流から、個人のメール機能を使ったやりとりに発展し、脅迫を受けて警察に相談するような事案や、携帯を使って関係が広くつながり、交流サイトで出会った人に遠方まで会いに行ってしまう形の家出といった事案も増えてきている。
 このような状況の中、ネットパトロールの実践を続ける中で、いくつか課題も見えてきている。例えば、学校が厳しく指導しすぎると、子どもたちはパスワードを設定したり、別のサイトに隠れてしまうため、子どもたちの状況が把握できなくなってしまうことも課題の一つである。また、学校の指導のあり方の課題もある。特に小学校の先生は、例えば、ゲーム機で簡単にネットにアクセスできることを知らないなど、危機感が薄かったり、ネット関係の知識が浅いために指導方法が分からないといった状況にある。
 県の教育事務所では、各学校に対して、講習会や研修会を設定している。対象は保護者や教職員とし、プロフィールサイトや書き込み等を見ている推進員と子どもたちを直接対面させることはしていない。
 教職員・保護者は、中学から高校での指導では遅く、早い段階での指導や情報モラル教育が必要と考えている。しかし、現場の先生方が取り組む時間がないこと、教職員の携帯やネットに関する知識が子どもたちに追いついていないこと、保護者の間にも意識の差があること、最終的には家庭の責任という考え方もあり学校として統一した指導ができない、あるいはどこまで踏み込んでいいか疑問を持っていること、などの課題を抱えている。
 また、県ではいじめ問題やインターネット上のトラブルへの対応に関する事例集を作成している。これは、平成18年11月にいじめ自殺が起こったことを機に、平成19年度から3年間、いじめ根絶県民運動という活動を行う中で構想・準備が始まったものである。平成19年度から平成20年度にかけて、各現場に加配教員を配置し、各校での実践を持ち寄って作成したものであり、形にするまでにはある程度の時間を要したようである。

【委員】それでは、委員の皆様からご質問、ご意見などをいただきたい。

【委員】予算は国費なのか、それとも、県単独の緊急雇用の予算なのか。また、緊急雇用事業は1年限りなので再任用できないと思うが、推進員のスキルが落ちてしまうのではないか。また、失業対策の予算であるという趣旨と、ネットパトロール事業のためのスキルを持った方を雇いたいという趣旨がミスマッチすることはないか。

【新潟県】まず、予算は県単独の事業である。スキルが落ちてしまうというのはご指摘のとおりであり、養成研修などの成果が継続されないのは残念である。また、前職は問わず、失業中の方であればよいという県の方針で事業は実施されている。

【委員】推進員の業務のうち、相談の件数はどのくらいあるか。また、厳しく指導をした結果、子どもがパスワードをかけてしまうということがなぜ分かるのか。

【新潟県】まず、相談件数は多くないと聞いている。また、推進員がパトロールをする中で、何か危険な書き込みがあると、指導主事と連携をして現場に情報提供するので、学校から指導が入ることになる。推進員のうち一人は、自分が担当しているエリア内の学校別に情報を整理しており、学校からの指導が入った後、その学校の子どもたちの使っているサイトにパスワードがかかり始めたり、別のサイトに移ってしまうという状況が見えると聞いている。

【委員】最近、教員がきちんと指導しなかったことで事件が起きてしまった小学校の事例を見た。厳しく指導することがよいと言い切れないのが難しい。

【委員】まず子どもからの相談を受けたら肯定的に受け入れ、それから関わりを持つことで問題が減ってきた。指導の厳しさというよりもまず、子どもの立ち直りを願って子どもを守るという生徒指導の視点が必要である。

【新潟県】子どもの行動に制限ばかりをかけるのではなく、掲示板やサイトの使い方や、モラル・マナーについて指導を加えていくことが必要だと考えている。

【委員】そのような指導を推進員は直接できないので、やはり先生が指導することになるが、学校の先生方への助言や適切な指導は、推進員が行うことになっているのか。

【新潟県】県では、各事務所のネット推進員と指導主事が必ずペアになって、教職員に対して指導する体制である。

【委員】緊急雇用事業が終了した後の対処について、どのように考えているか。また、県教委から市教委への情報伝達にあたっての課題と対応について教えて欲しい。それから、事例集はどの程度の範囲に配付して、配付先の先生方からの感想はどのようなものか。最後に、携帯電話は小中学生には要らないのではないかという意見について、保護者の考え方に関する調査の有無や、感じる雰囲気について教えて欲しい。

【新潟県】緊急雇用事業が終了するまでに、事務所単位もしくは市町村単位でネットパトロールをするボランティア人材を育成し、見守り体制を構築するよう事業を推進する予定である。また、事業終了後は、ボランティア人材の指導的立場を担うために別の事業として推進員を継続できるよう、財政部局との調整を検討している。市町村教委・学校への連絡は、現場が混乱しないよう、その学校が指導に活用できるような情報を選択して提供している。事例集は、市教委と、すべての小学校・中学校・高校に5冊ずつ配付されている。しかし、現場の先生方にあまり知られておらず、活用しきれていないため、様々な場面で紹介して活用を促している。
 携帯電話の所持は、県内で1市のみ条例で禁止している。家庭に最終的に責任を持たせていいのか、学校でどこまで指導すべきか、現場の先生方は悩んでいるようである。

【委員】県でも事例集や緊急マニュアルを学校に配付しているが、こちらも学校で使用されていない。携帯電話の所持については、基本的には家庭に責任があると考えているが、子どもたちの安全をどう守るかはお互いに話し合うことが大切である。県では緊急雇用事業について、来年度で終わってしまうが、その後も、探索は必要だろうとは考えている。予算がとれない場合の対応として、学校現場で探索をしていただくこと、あるいは何か起こったら対応できるよう、普段から子どもたちと情報共有することをお願いしており、また、PTAでは保護者同士の連携も必要ということで活動をしていただいている。

【委員】県内の各教育事務所で担当する児童生徒数の概数を教えて欲しい。どれぐらいの児童生徒数に対して推進員を1名付けているのか。危機介入件数が、平成21年と平成22年の間で偏っているが、その理由は何か。

【新潟県】小・中学校の数で言えば、各地区ごとに112、167、314、政令市が172、県立・市立学校が30であり、1つの地区の規模が大きくなっている。危機介入するかどうかは、指導主事や担当課長が判断した件数であるので、推進員の意向によるものではない。今年度は突出した技能を持つ推進員がおり、その担当地区の発見・情報提供数が急増している。

【委員】ボランティアの育成のための研修会等を行われているが、研修会に参加した方は、具体的にどういう活動をされているか。

【新潟県】推進員として協力しただける方の育成にまでは至っておらず、現場の先生方が現場で生かせる程度のノウハウを研修で身につけている程度、また保護者への啓発活動としての研修である。

【委員】 携帯ゲームへの取組を教えていただきたい。携帯電話については、使い方によっては危ないという認識が広まってきたが、最近は写真やネット機能付きの携帯ゲーム機が問題になっている。携帯電話と異なり、携帯ゲーム機には有料でフィルタリングソフトを入れる必要や、親がネットの接続そのものをできないようにする必要があるが、親にそういった知識が足りていない。

【新潟県】同じような問題が起きてきている。県では、携帯電話だけではなく、携帯端末と言われるものを網羅的に考えていかなければならないという話が出ている。

【委員】青少年インターネット環境整備法により、携帯電話に関しては、保護者から申し出がない限り、フィルタリングを提供することを条件にサービスを提供することが事業者の義務であるが、ゲーム機などには適用されていない。この点は教育関係者から議論を出してもいいのかもしれない。

【委員】最近はパソコンのオンラインゲームの中で、アバターを通して他人と知り合い、実際に会うことも簡単にできる状況である。携帯電話だけの問題ではないという点は同感である。

【委員】ネットパトロールを実施しているサイトとして、従来から裏サイトなどで問題になっていた掲示板等だけでなく、オンラインゲームのできるブログサイトも挙げられている。現状は、どちらが多いのか。

【新潟県】詳しくは把握していないが、県では、プロフィールサイトが大半を占めていること、オンラインゲームも掲示板もある総合的なコミュニティーサイトの利用が増加してきている。

【委員】推進員は単年度限りの雇用ということだが、本人は仕事を続けたいと希望しているか。また、給与面も含め、やりがいの面ではどう感じているのか。

【新潟県】仕事を続けたいと考えているのかは聞いていない。また、報酬面は安いと感じているが、かなりのやりがいを持って働いていただいている。推進員の問題意識としては、ネットの問題についてよく分からないままに対応してしまい、問題がこじれたり、無責任な状態になっている学校現場について、先生方の知識不足や、指導が十分に行われていない部分を歯がゆく感じている。

【委員】ネットパトロールに関する事業の担当者として、こうした取組において一番大切だと思う部分はどこか。

【新潟県】子どもたちの周りに様々な危険が実際にある、という視点を持つことだと思う。教育委員会含めて教職員が認識・使命感持たなければならない。子どもたちを取り巻く大変な状況にどう対応し、子どもたちを守り教育していくのかが課題である。

(2)審議経過(案)について

【委員】続いて、審議経過(案)についてご意見をいただきたい。まず、児童生徒を取り巻く有害環境の現状については、コミュニティーサイトに関する実態調査だけでなく、内閣府の調査や警察庁の資料に触れる必要があるかもしれない。また、地方の条例の動向も記載することができるかもしれない。携帯ゲーム機などの問題についての記載も検討の余地があるだろう。
 教育委員会、学校におけるネットパトロールの現状と課題については、調査結果のまとめ方等でお気づきの点をご意見いただきたい。成果と課題については、本日のヒアリングの話も加筆することを考えたい。マニュアルづくりの必要性については、マニュアルとするかどうかも含めて今後の議論としたい。

【委員】ネットパトロールの成果として、「個人情報等の流出の減少」などが挙がっているが、非常に危険なものは減っている一方、軽度なものは増えているという実感である。この部分の記載は、どこを根拠としているのか。

【事務局】この部分は、教育委員会からの回答をまとめたものである。

【委員】例えば、いくつの教育委員会のうち、いくつから回答があった、などと検証可能な書き方を考える必要があるだろう。調査結果に関する記述は、記載方法を工夫して欲しい。

【委員】ネットパトロールをすると相当の個人情報をつかむことになるが、ボランティアの方が検索する際のリスクを課題としてあげるべきではないか。

【委員】ネットパトロールを行う際の方法上の工夫や配慮すべき点についてまとめることも検討して欲しい。

【委員】県と市と学校が、情報共有の仕方や役割分担について、具体的にどう連携していくのかというモデルケースを示すことができるとよい。

【委員】この点は、委員からも文案や参考になる事例について提示いただきたい。

【委員】一つ一つの書き込み自体を見ると削除を要するほどのものではないが、学校間の抗争などにつながるケースもある。そうしたケースでは、結局は先生方が、子どもたちの日々の行動観察から得られた情報から検索をして、幾つかの学校の先生方と情報を統合して、やっと全体像が見えてくる。そういった中では、ある自治体は学校で情報を把握して動くことができるが、別の自治体は業者任せであるために進行中の事案に対応できないという状況も起きている。ネットパトロールは委託してやるべきという議論だけで一方的に進んでいくことには、デメリットもあるのではないか。

【事務局】ネットパトロールは基本的には都道府県・指定都市教育委員会が中心となるべきであり、学校の対応は緊急避難的なものである、という主従の関係でとらえてよいのだろうか。

【委員】学校の体制により状況が相当違うだろう。各学校の生徒指導担当の先生が中心となって、余裕を持って動ける体制がある自治体と、その他多くの自治体とは状況が異なるだろう。基本的には教育委員会が主導でやらなくてはいけない、各学校では難しいという認識でよいか。

【委員】ネットパトロールの探索自体は学校では無理であり、教育委員会でやるほうがいいと思う。学校の先生がやっていただいているところもあるが、相当大変な労力である。

【委員】学校の対応が緊急避難的なものとして位置づけてよいのか、ここは大きな論点である。ネットパトロール、検索などは教育委員会が中心になるという原則でいくのか、あるいは、地域の状況に応じて学校の先生を中心に行うことが望ましい場合についても両論併記するか。

【委員】基本的には県教委が中心にやるのが一番いいと思う。大きな市では教育委員会の指導主事等の体制も作れるが、主導主事が1人の市もある。

【委員】県内では、1市だけ学校でやっていたが、それは単なる検索を目的としたものではなく、検索から知り得たことを生徒指導に生かす趣旨でやっていた。そういう自治体もあれば、そこまで必要性のない市もあるため、地域の実態に合うよう、両論併記がいいと思う。

【委員】市では、検索に必要な情報を市教委が収集して、学校と協力する体制である。学校側は検索の仕方がわからないため、その部分は教育委員会と連携しながら、中心は学校でやっているという状況である。

【事務局】ネットパトロールについては、県教委でなければならないなどとパターンで示してしまうのは良くないだろう。地域の実態に合わせて、連携もとりながら進めるのが望ましいという点を丁寧に書くべきではないか。県がネットパトロールを実施する方が望ましい場合の条件、市教委や学校が中心になる方が望ましい場合の条件などについて、追加でご意見をいただきたい。また、新しく出てきた課題でもあるため、教育委員会からの関与・支援は必要である点は指摘しておきたい。

【委員】ネットパトロールは、どこがやればいいという簡単なものでないことは明らかになってきた。連携というのは前提として、最終的に生徒を指導するのは学校の先生でしかあり得ない。その学校の先生が動きやすいようにどうような体制を整えるべきなのか、地域性なども考慮した書き方が必要かもしれない。

【事務局】次回は違法・有害情報相談センターからのヒアリングを予定している。また、審議経過(案)は、本日のご議論を踏まえて修正し、次回もご意見をいただきたい。

【委員】それでは、本日はこれで閉会としたい。ありがとうございました。

閉会

 

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初等中等教育局児童生徒課生徒指導室