常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議(第5回) 議事録

1.日時

平成22年9月7日(火曜日)午後3時~5時

2.場所

文部科学省第2講堂

3.出席者

委員

吉田(裕)主査,髙木副主査,飯田委員,金武委員,小森委員,佐藤委員,柴田(悦)委員,柴田(洋)委員,杉戸委員,武元委員,千々岩委員,積山委員,長野委員,宝官委員,村越委員,村山委員,吉田(和)委員 (計17名)

文部科学省

平林教育課程課長,森教科書課長,倉見学校教育官 ほか関係官

4.議事録

〔配布資料〕

1 常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議(第1~4回)における主な意見
2 検討事項整理メモ(案)
3 新旧学習指導要領における漢字の取扱い
4 検討事項(案)(第1回会議配布資料)
5 今後の開催予定

〔委員提出資料〕

1 武元委員提出資料

〔経過概要〕

1 事務局から配布資料の確認及び説明があった。
2 事務局の説明に対する質問を含めつつ,配布資料2「検討事項整理メモ(案)」に沿って意見交換を行った。
3 次回の日程について,9月29日(水曜日)16時~18時に開催することが確認された。
4 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。それでは,これを中心的な資料にしながら本日の議事に入りたいと思います。

 7月7日に第1回を開いて,今日は第5回目ということになります。7月7日には,全体をまず見渡していただいて,それから2回目,3回目,4回目,それぞれの項目を重点的に見ていただき,そして,今日また全体を見ていただく。全体-部分-全体と,そんなことを言っていたら,通読-精読-味読というような,三読法的な展開になっているのではないかと思います。今日が本当の意味で味読になるようにご協力いただきたいと思います。

 それでは,先ほどご説明があった中身なども,それぞれのところで,質問も含めていただけたらと思います。では,資料2の1にまいります。「常用漢字表改定に伴う『読みの指導』について」に関して,ご発言をお願いします。今日は7項目全部にわたるということですので,短い時間で重点的な議論をお願いすることになろうかと思います。

【佐藤委員】

 これまで何回か検討を重ねていただく中で,中学校における常用漢字の「読みの指導」についてということで,各学年に割り振るという形で,まず字数の示し方のことですが,従来どおり,中学校で新たに学習する漢字の字数だけを示すというほうに私は賛成をいたします。それから,漢字の字数の割り振りの考え方ですが,私は,第3回あたりで,ここに整理メモの中では,ア)の方で発言をさせてもらいましたけれども,今,移行期を終えて,小学校は来年,全面実施になります。中学校も平成24年度に全面実施になるというようなことを踏まえますと,学習指導要領の趣旨をできるだけ変えない方向で,現場の混乱がないようにという考え方から,増加した191字をほぼ均等に増やすという形で割り振るという案のほうに賛成をいたします。

 そのとき,幅を持った示し方でしていただけると,現場にとって柔軟な対応ができるかなというふうに思いますので,そのような形で,できるだけ現行の新学習指導要領の趣旨に沿った形ということでお願いをしたいと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。私のほうで進め方をご説明したほうがよかったですね。申しわけございませんでした。(1)番のところの中学校における常用漢字の「読みの指導」について,今,佐藤委員のほうからは,○,●,2つぐらいに及んでご発言をいただきました。順番で行くほうがよいかと思いますので,まず最初の項目の,1つ1つに反応していただけたらと思っております。中学校修了までに「常用漢字の大体を読む」という,現行の中学校における漢字指導の考え方を踏襲し,新たに増加する常用漢字196字,増加を各学年に割り振ることでよいかどうか,まず,この点はいかがでしょうか。常用漢字は義務教育の期間中にということがありますから,中学校でこれを引き受けるという,こういうことでよろしいかどうか,まずここはどうでしょうか。

【吉田(和)委員】

 基本的にそのようにしていただければと思います。というか,そういうふうにせざるを得ないだろうと思いますので,そのご意見で結構です。

 それから,ちょっと先のことということでもないんですが,佐藤委員の考え方と私は同じでございます。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。それでは,まず最初に,今の各学年に追加された常用漢字を割り振るというのはよろしいでしょうか。

【武元委員】

 例えば,都道府県にかかわるような漢字を小学校にということは考えなくてよろしいのかということと,それから,この前,たしか,「餌」とか「餅」などというのは,小学校でも語彙的にはそうなのでというご意見もあったと思うんですけれども,そのあたりを一たん割り切っておかないといけないのではないかと思うんですが。

【倉見学校教育官】

 小学校の学年別漢字配当表については,これまでの会議でも何人かの委員の先生からご発言いただいたように,ちょっとすぐには見直すのは難しいのかなといったようなご意見も出ていたように思いますので,もちろん今後,未来永劫見直さないということではないとは思いますけれども,すぐにはなかなか難しいということで,当然,都道府県名にかかるような漢字だとか,追加された字種の中でも,中には小学校レベルでも理解できるようなものもあると思いますので,それはそういうことで,1つ宿題というんでしょうか。そういうような課題というのはあるのかなとは確かに思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。大事なところを補っていただいたと思います。この常用漢字を各学年に割り振るという1つ目についてはお認めいただいたということで進めていいでしょうか。

 はい。それでは,この割り振りをどのようにしていくかという,2つ目の漢字の字数の示し方,それから3つ目の,割り振るときの基本的な考え方と,ここが連動すると思います。まず初めに,中学校の各学年で読むことを指導する漢字の字数の示し方について。先ほど佐藤委員は,ア)のところの,従来通り,中学校で新たに学習する漢字の字数だけを示すことに賛成の意見を述べてくださいました。先ほど事務局からは,イ)の項目で,累積して示すという考え方も示されたから,ここでは併記しているということであります。この2つ目の漢字の字数の示し方については,いかがでしょうか。佐藤委員からは,ご意見をいただいてます。吉田委員も,佐藤委員に同じというのは,ここのところも含めてということでしょうか。

【吉田(和)委員】

 はい。

【積山委員】

 失礼いたします。私も,佐藤委員がご発言なされたように,中学校の現場の意見といたしまして,今のままの割り振っていく形がよいのではないかと思います。

 ただ,それにちょっと私なりの視点を加えるとすれば,資料3のほうで今回配付をされているんですけれども,中学校の割り振りの仕方というものが,1学年が250から300字,2学年が300から350字というふうに,50字単位で割り振られております。これに50字か60字足されていくんですけれども,1回目のときに私も発言をさせていただいたんですけれども,今,私が指導している子供たちに196字を例文の中で読ませたときに,正答率にかなり差異がある。県名のような漢字はほぼ100%であるけれども,「訃報」ですとか,このような言葉については,ほぼゼロに近いと。こういった現状を考えてみますと,字数が増えるということで,50字の枠ではなくて,もう少し,75字ですとか100字ぐらいの枠をもって示すことで,その辺の課題が1つ克服できるのではないかということを考えました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。字数を示すけれども,ちょっとその字数の幅を広げるという,そういうご意見だったかと思います。ほかにいかがでしょうか。累積的にという……。

【武元委員】

 言ったのは私でございます。

 そのことを申し上げましたときに,高木副主査から,いわゆる小学校から中学校にかけて,出てきたときに新出扱いをしていくということに基づいて考えると累積的に示すということには無理があるというご意見をいただきましたので,もう今あえて申し上げようとは思いませんけれども,根本的に言えば,繰り返して学習していくということを考えますと,新出,1回出たら,必ずそこで全部学習したというふうになることになってしまうので,少々私自身は疑問に思っておりましたので,そのことを申し上げたということでございます。

【吉田(裕)主査】

 はい。ご協力をいただきまして,ありがとうございました。それでは,この字数の示し方につきましては,従来どおり,中学校で新たに学習する漢字の字数を示す。50字くらいというのを少し幅を広げたほうがいいのではないかというようなご意見もありました。

 それでは,●の2つ目に進ませていただきまして,これも漢字の字数に関してですけれども,その割り振りをするときの基本的な考え方についてでございます。学年で割り振るときの考え方になるわけですけれども,ア)の項目は,増加した字数,196字マイナス5字,191字ですね。それを国語の週当たりの授業時数――今度4・4・3になります。その授業時数に案分して,現在割り振っている字数にプラスする。イ)は,学年に軽重をつけた現在の割り振りの仕方を改めて,増加した字数(191字)を含めて各学年ほぼ均等に割り振ると,この2つぐらいの意見がこれまで出ています。この2つの意見をどのように考えたらいいか。こういうことでございます。ご意見をいただけたらと思いますが,いかがでしょうか。

【千々岩委員】

 現行の学習指導要領の読みの字数の示し方の考え方の中には,第1学年が小学校の学習を復習する意味合いも含まれているという,そういうこともあって,1学年のところ字数が幾分か少なくなっております。したがって,そういう学習指導要領の趣旨というものを変えてしまうような字数の案分,すなわち,ほぼ各学年均等にという発想は,私はとらないほうが,いろいろと不整合が生まれなくて済むのではないかと思います。

 196字分の案分については,あくまでもこれは字数の目安ですので,あまりそこに大きな軽重をつけないように進めていったほうがいのではないかと思います。

【吉田(裕)主査】

 1年生,2年生,3年生と,各学年には各学年の性格があるということでしょうか。

 佐藤委員は,どちらかというと,先ほどイ)のお立場であったんじゃないかと思うんですけれども,今お2人が,ちょうど2つの意見を代表してくださった形になっています。ほかの方の意見はございますでしょうか。

【佐藤委員】

 私は,この整理メモのイ)のほうというふうに申し上げましたが,この整理メモは,これまでの検討の中で,もう1つ考え方があったのかなと。今,千々岩先生がおっしゃってくださった,新学習指導要領の趣旨を変えない方向でということは,中学校1年生への配慮が多少あったということで,この示されている250から300字,それから2年生に300から350字,3年生はその他の常用漢字の大体ということで,ここにさらに均等に増やしていくことで,現行の趣旨を変えない形になろうかと思いますので,私の意見は,千々岩先生と同じ意向で発言をしたつもりでおります。

【吉田(裕)主査】

 分かりました。ア)とイ)の中間みたいな形になるんですかね。

【佐藤委員】

 はい,そうです。

【吉田(裕)主査】

 授業時数に案分して,その先を均等にと,こういうご発言をいただいたということでしょうか。

【吉田(和)委員】

 私は,佐藤先生の話をそのように受けとめましたので,今,千々岩委員がおっしゃったような形だと思います。つまり,もう少し具体的に申し上げますと,週当たりの授業時数というのが,1年生は確かに多いというふうになるんですが,ここの場合に,具体的に言いますと,書写が入っておりますので,現実には1年生で書写を時間をとってやっているということがあります。そういうふうなことから考えるのと,それから3年生と1年生では,やはり習熟の度合いというんでしょうか,そういう意味で多少変わってきます。したがって,この学習指導要領の趣旨というのは,やはり1年を小学校からの引き継ぎという形で,比較的軽く踏まえて,そして3年生は,今までのものも全体をということで,かなり負担的には多くなっているはずなんです。そのようなことから考えて,その見通しの上で,均等に字数配分をするというふうに,私もそのように思いますので,千々岩委員のお話に賛成です。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。現行の,学年に軽重をつけた現在の割り振り,これは,1年生は1年生の小学校を受けてということがあるし,それから中3は,中学校の終わりの段階という,そういう学年の性格に応じてまずは考える。そして,あとはそのプラスというところは均等にと,こういうことでありました。

 そうすると,それはア)のところで,字数にプラスするというところを均等に割り振るという形で理解すれば,今のは一件落着と,こういうふうに考えてよろしいですね。

 もし反対意見がなければ,そのようにさせていただいてよろしゅうございましょうか。 それでは,また何かありましたら,振り返っていただくことにして,■がありますけれども,4番目。新たに割り振られた字数による漢字指導,今協議していますものを,いつから始めるかという実施の時期についてでございます。これについては,今1番をやっているんですけれども,6番目の項目の「常用漢字表改定に伴う教科書上の記載の在り方について」ということと非常に大きく関連します。これまでの発言の中でも,実際には教科書との関連が濃いからというようなこともありましたので,ちょっと6番目のところを見ていただきたいと思います。

 そこには,同じく■で,教科書について,以下の対応の内容と,それから時期について,その検討項目が出ております。3つの「・」がありまして,順番に,改定常用漢字表を中学校及び高等学校の国語教科書の巻末に掲載すること。それから,本文中の表記を改定常用漢字表に基づく新しい表記に直すこと。それから,改定された常用漢字の指導を適切に行うための教材に差しかえること。段階を踏んでそこには示されています。このことと,この常用漢字表による漢字指導の実施時期というのが連動するかと思います。この件も含めてご発言をいただけたらと思います。

【吉田(和)委員】

 結論から申し上げますと,平成24年度に新しく教科書が出るわけです。それを使うときには,この改定に伴う教科書,改定を教科書上に反映していただければと思います。

 その際に,6番のほうで,教科書の巻末に掲載するというのは,これはどういう扱いで掲載するかは,ちょっと何とも言えないんでしょうけれども,少なくともそれぐらいの対応はできるだろうと。本文の中に入れ込むというのは,ちょっと間に合わないかもしれない。ただ,私は,教科書会社がそれぞれ独自の工夫をして,それぞれの教科書をつくっておりますので,それで学年ごとに,この字をこの学年に入れるということを一般的に決まっているわけではありませんので,そういう意味では,かなり柔軟なものだと思います。したがって,今の段階で,多分白表紙本というんでしょうか,そういうものができていると思いますけれども,その段階で,これがどの程度含まれているかはわかりませんけれども,少なくとも平成24年度に発行される教科書においては,この改定常用漢字表に基づく漢字が何らかの形で入っているということが望ましい。それによって指導ができるということになります。

【武元委員】

 お言葉ではあるんでございますけれども,巻末の漢字一覧を改めるということにつきまして,そのぐらいの努力はしなければならないかと思っておりますけれども,例えば,今現在ある一覧の中に,新しい要素が加わった要素を割り込ませていくという方法は,あまり効果的ではないのではないかと私は思っております。つまり,新たに加わったものだけを独立させまして示すほうが,そのこと自体がはっきり分かるということになろうかと思いますので,従来のものに割り込ませるよりは,新たに加わった漢字,音訓というふうに示すほうが私は効果があるのではないかと思っております。

 それから,本文中の表記を改定常用漢字表に基づく新しい表記に直すことというお話があって,吉田委員からも,おそらく趣旨としては同様なことをおっしゃっているんだと思うんですけれども,新たに加わりました196字が問題であるというよりも,今度,従来常用漢字であった「他」という漢字に「ほか」という訓が加わりました。それから,例えば「全て」,それから「何々中」に「何々じゅう」という読み方が加わっております。これらをやっていきますと,文字数の教科書上の変化が起こってしまいまして,行が前のほうに送られてしまったり,そのために,そんなことかとお思いになるかもしれませんけれども,1行の違いが図版の位置をおかしくしてしまうというふうなことも起こり得るわけでございまして,むしろ従来,常用漢字であったものに加わったこれらの訓というものが,非常に教科書においては苦しい状況を招くということはぜひご理解いただきたいと思っておりまして,おそらく教科書発行会社各社とも,そのことは心配していることだと思いますので,ぜひそのあたりはご理解いただきたいと思っております。

 新たに加わったものとしましては,繰り返しますけれども,独立させまして,巻末に示していくということでございます。それから,たまたま新しく加わった漢字がルビつきで出ていれば,それも当然,指導者の指導なさる方にはお知らせするというふうなことですね。

 それから,6ではございませんけれども,5番に,参考となるような資料の作成について検討するというようなこともおっしゃっていますので,それら3つを合わせて1本というふうな方策もあるのではないかと考えております。教科書の事情につきましては,ぜひご理解いただきたいと思っております。

【吉田(裕)主査】

 はい,分かりました。ほかに意見がありますでしょうか。今は教科書を使う側,それから教科書を生み出す側,その2つの立場からのご発言があったと思いますけれども,いかがでしょうか。

 いずれにしましても,この常用漢字表改定に伴う教科書の記載,あるいは,いつから始めるかという開始時期の問題は,これは考えていかなければいけないことです。これは継続して,またお考えをお聞きする場面もあるかもわかりませんので,またそのときに伺うという形にさせていただきます。今の意見としては,この常用漢字表の改定に伴って,できるだけ,ある時期から教科書の巻末に何らかの反映をさせていこうというような,こういったところが今発言としては出てきたかというように思っています。

 もとに返りまして,1の(2)のところです。中学校における常用漢字の「読みの指導」について今終えまして,今度は2つ目の高等学校における常用漢字の「読みの指導」についてというところにまいります。

 高等学校では,そこに○と■が1つずつ出ておりまして,まず上のほうの○のほうです。高等学校については,現行どおり「常用漢字の読みに慣れるようになること」でよいかという,こういう問いかけであります。中心は,「常用漢字の読みに慣れる」。こういう表現を用いておりますけれども,これでよいかどうかということであります。いかがでしょうか。

【柴田(悦)委員】

 よろしくお願いします。今までの議論でも出ていたことだと思いますけれども,さまざまな習熟度の段階の生徒がいるという現状,さまざまな学校があるということですね。そういった現状を踏まえますと,この現行どおりの言い方で私はよろしいかなと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。ほかに意見がありますでしょうか。ここが○印であるということは,前回もこれについては,あまり異なる意見がなかったということであります。ではこれは,こういうことで,つまり現行どおりの「常用漢字の読みに慣れるようになること」でよいと,こういうことで進めさせてもらいたいと思います。

 では,下の■のところに行きたいと思います。柴田委員,継続してご意見がありますか。はい,お願いします。

【柴田(悦)委員】

 先ほどの中学校の「読みの指導」の■にもかかわってくる話だと思いますけれども,まず私の意見を述べる前に,先ほど武元委員がおっしゃったことなんですが,確かに教科書を編集する側の立場として,無理なことをあまりこちらが,使う側が要求してもいけないなということをまず思いますので,やはりできることとできないことということがもしあれば,それをはっきり言っていただければということをまず思いました。

 その上で,1つ,巻末に改定の常用漢字表を載せるということは最低できるというようなお話があったと思います。ということは,中学校においては,平成24年度から改定常用漢字表による指導を行うということで,まず大前提としてそれでよろしいんですよね。そういう認識を私が持ってよろしいかということをまず確認をしたいんです。

【吉田(裕)主査】

 それは,まだはっきりと決まっていないと思います。

【柴田(悦)委員】

 そういうことですか。分かりました。要するに,その時期とかかわってくるというふうに思うんですけれども,高校で指導ができる。つまり中学校の指導が当然あって,高校でそれに慣れるということがあるものですから,それがきちんと始まるのが平成24年度からだということで,もし合意が得られるならば,それに合わせた形で高等学校,当然,段階的に学年が上がってくるわけですから,それに合わせた形で行っていけばいいと思います。

 それから,先ほど中学校の教科書検定のスケジュールからして,なかなか本文に反映することは難しいだろうという武元委員のご意見があったと思うんですけれども,高校の場合は,もちろん先ほど申し上げた中学校の指導がいつから始まるかということにどうしても左右されるものですから,もし平成24年度から,例えば巻末の表で指導を始めるということであれば,高等学校の場合,それより1年遅いわけですので,もしかしたら本文に反映させた形という教科書もできるのかなと思ったりします。常用漢字表を改定したということで,情報化社会に対応した形でという文言があったと思いますので,結論的には,中学校の指導の時期を踏まえて高等学校も,できれば早く対応したほうがいいだろうと。ただ,先ほど申し上げたとおり,あまり無理を言ってもいけない部分もあるものですから,可能な限り早い段階で対応できるスケジュールを考えていく必要があろうかなと思っています。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。可及的速やかにというのは,こういうときの常套文句かもわかりません。杉戸委員,お願いいたします。

【杉戸委員】

 関連したお尋ねになります。1つ前の中学校の「読み」の■のときのご意見の出方,これは,例えば教科書の巻末に,増えた文字だけであれ,全体であれ,常用漢字の一覧を出すということの対応は可能かどうかという,そういうことだけだったと思います。この■の「新たに割り振られた字数による漢字指導」ということまでを含んでのご発言ではなかったように伺ったのですが,いかがでしょうか。

 つまり,その上の●2つで,中学校が学習漢字の字数,あるいは累積数を示す。それも結論が出されました。それから,2つ目の●についても,ア)とイ)の中間折衷案のような案がまとまりました。それに基づいた漢字指導をいつするかというのが■ではないのでしょうか。つまり,漢字一覧表を出すということが割り振りを踏まえた漢字指導の発足ということにならないのではないかと思うんです。それを踏まえて,今話題の高等学校の「読みの指導」も考えなければいけないということで,これは行き着くところ,私の意見は,繰り返しになりますけれども,ちょっと極端な意見かもしれませんが,改定常用漢字表を踏まえた中学校・高等学校共通しての学習指導を始めるのは,もっと後,もう1期後という,これは資料1の9ページの一番下に赤い文字で記していただいているものと同じことを言っているつもりなんですけれども。そういう前提で,そこに至る経過措置をどう考えるか,例えば巻末の一覧表であるといったことを考えるべきだと,そんなふうに思います。

【吉田(裕)主査】

 初めのところで漢字指導の範囲の問題がありましたけど,事務局のほうで確認をお願いいたします。

【倉見学校教育官】

 はい。この四角い新たに割り振られた字数による漢字指導の実施時期についてどうするかといったようなところを,この教科書上の記載の在り方についてというところを関連させたような整理メモになっているという意味なんでございますが,今までこれまでの会議でいただいた意見で,新しい中学校の学習指導要領が平成24年度からということなので,平成24年度から実施できれば,きれいな形でスタートできるんだけれども,やはりその現場で教科書を教材として漢字指導を行っているということであれば,どのぐらい教科書に新しい改定常用漢字表が反映できるのかと。現場サイドとして,最低限例えば巻末に載っていれば,それなりの指導ができるのか。やはり本文中の表記まで,ある程度直らないと,なかなか新しい常用漢字表に基づく指導があるところまで,やれと言ってもできないのか。そういったようなこともあるのかと思いまして,これまでそういうふうな意見もいただいたかと思いますので,こういった形で整理メモをつくらせていただいたということでございます。

 ですから,先ほども武元委員のほうから,巻末に常用漢字表を,今の常用漢字表に新しい常用漢字表を溶け込ませるというところまでは行けるのかわからないけれども,それを別物として,一緒に巻末に載せるというぐらいは何とかできるのかなというようなご意見をいただいた中で,現場の吉田先生や,それから,もうそうであれば,そこからスタートはやればできるのかなと。漢字の教科書にどう対応するのがいつからかというだけでなくて,それと連動した形で現場の指導もやっていけるのかなといったご意見だったかというふうに思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございます。それで杉戸委員のほうは,拙速をできるだけ避けて,しかも準備が整った段階でという,時期を少し遅らせたほうがいいんじゃないかと,こういうご意見です。前回も,それから今回もいただいたということです。

 いかがでしょうか。この時期に関して,柴田委員から先ほど,いつからかというのが非常に大事なんだというご発言をいただいたと思います。実際に授業をしている側,情報化社会云々ということもあって,できるだけ早くというぐあいに望みながら,教科書も実際に編集作業は進んでいるというようなこともあって,しかも教科書を使って,この漢字指導というのが多くなされているということもあって,なかなかこういうところを勘案していくと,慎重な進みぐあいを考えたほうがいいだろうと,今こんな状況かと思うんですけれども,いかがでしょうか。

 そういう難しさがあって,これまでも,今ここで見ていただいているような■という形になっておりまして,ちょっとこれは少し時間をいただくというようなことでよろしいでしょうか。

 それでは,ちょっと先を急ぐようで申しわけないんですけれども,裏のページに行きまして,1の(3)でございます。1の(3)のところは,追加字種の音訓及び追加音訓の指導の在り方についてでありまして,これは○ですから,比較的委員のお考えは同じ方向に向かっているということでいいのかと思いますけれども,追加字種の音訓及び追加音訓等については,速やかに現行の「音訓の小・中・高等学校段階別割り振り表」――これは先ほど事務局からもご説明がありましたけれども,7月7日に開かれた第1回目のときに,参考資料8として冊子が配られています。これは,「学校教育における音訓の取り扱いについて」という,先ほどこれも事務局からご説明がありましたけれども,初中局長から出された通知でございます。そのときに,各学校段階別の割り振り表が作成されて,大変便利なものだというので使われているようですけれども,それに今回のものを追加して,各学校段階における小・中・高段階における音訓の指導や教科書の編集に資する,これでいいだろうかということでございます。よろしいでしょうか。新たに加わったものについて,これまであるものを参考にしながら,これから考えていきます。速やかに対応していきたいと,こういうことのようです。

【柴田(悦)委員】

 たびたび申しわけありません。この速やかにということなんですが,たしか前回は,昭和56年に改定をされて,平成3年に通知が出たということでよろしかったですね。

【吉田(裕)主査】

 はい,そうです。

【柴田(悦)委員】

 ならば,そのペースで行くということなのか,それとも,この「速やかに」という言葉は,それより早くできるのかどうかということで,私個人の意見になりますけれども,やはり学校の現場も,我々,教育委員会関係者にとってもあの通知は確かに目安なんですが,非常に重く受けとめておりまして,これが1つの指導等の基準になるという認識をもっているものですから,もちろん拙速はいけないと思いますが,この「速やかに」という言葉が,前回よりも早くという意味での速やかにであってほしいという思いがございます。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございます。文字通りそうなんですけれども,杉戸委員,どうぞ。

【杉戸委員】

 この○の項目には異存はございません。ただ,この割り振り表を改定していくという――速やかにでしょうか――そのときに,これも以前申し上げた意見に重なりますけれども,1回目の資料の参考資料8ですね。それの冒頭の,この割り振り表をどういう点に考慮してつくったものであるかという,その条件のようなものですね。それが1から4まで4項目上がっています。児童生徒の日常生活や学校生活で必要な語彙であること云々,その4項目です。

 これを,今回の改定常用漢字表の改定の背景というか,精神というか,それを生かして,そのことを少しでも反映させた観点で考えたんだというものに性格そのものを改定することを希望します。

 具体的には,例えばですけれども,この1から4に5を,あるいは2と3の間ぐらいでもいいかと思うんですけれども,例えば,情報化社会における言語生活で必要な語彙例であることというようなこと。コンピューターとかインターネットなどを使う,そういう生活ということを意識して「情報化社会」あるいは「高度情報化社会」という言葉を使うとして,そこにおける言語生活で必要な語彙であることも考慮して,おそらく主として,今度の191字の多くは高等学校で読むということに位置づけられるものが,地名とか,そういったものを除けばなってくると思うんですけれども,そういうものを,なぜ高等学校に位置づけたかということを積極的に,特にこの割り振り表という資料として,今回の改定を将来に残していくためにも,その1項目をぜひ加えていくべきではないかと,こんなふうに思います。

【吉田(裕)主査】

 はい,そうですね。完璧なものをということになれば時間をかけなければいけないでしょうし,時間をかければ速やかにというのがなかなか実現できないと,この辺のところが今からの課題になってくるかと思います。

 事務局,何かありますか。今の件で。

【倉見学校教育官】

 いえ。

【吉田(裕)主査】

 それでは,今のことなどを勘案しながら,その方向でということで進めさせていただきたいと思います。

 今この時間でご発言が続きましたので,委員の方も資料8を見てくださったのではないかと思います。小学校,中学校,高等学校。私も少し見ました。例えば,6ページに,「眼」があります。「目」でなくて「眼」のほう。その「眼」は,「ガン」「ゲン」「まなこ」という読み方が小・中・高ですね。「ガン」は小学校,それから「まなこ」が中学校,そして「ゲン」が高等学校という形になっているようですけれども,前回は4つの条件を出していましたが,今,杉戸委員からもありましたように,今度の常用漢字表の改定が情報化社会というところを反映しているわけだから,この音訓の割り振りを考えるときにも,情報化社会というところに何らかの形で触れる,こういうことが必要になってくるという留意点を示してくださったということだろうと思います。どうもありがとうございました。大事なご指摘だったと思います。

 それでは,今一番最初の項目が終わりまして,6番もあわせて見ていきました。ここまで,小学校,中学校の「読み」を見ておきましたので,4番目の「その他,常用漢字表の改定に伴う漢字指導の在り方について」,学年別漢字配当表,小学校の「読み・書き」,中学校の「書き」と,こういう形が出ていますので,その4番のほうを先にさせてください。したがって,4,5,6は今扱いましたので,7番まで行って,それから2番,3番というところへ行きたいと思います。ご協力のほど,お願いいたします。

 それでは,4番のところへまいります。(1)でございますけれども,学年別漢字配当表。これは小学校における「読み・書きの指導」,それから中学校における「書きの指導」でございます。これも○でそこに記述してありますけれども,学年別漢字配当表――これは現行の1,006字でございますが,その表については,来年度,平成23年度から新しい小学校学習指導要領が実施されること,それに伴う教科書の検定・採択が既に終了していること,この状況を踏まえるとともに,児童生徒の学習負担や追加字種の配当学年などについて調査を行うなど,慎重かつ丁寧に検討を行う必要があり,今後継続して検討すること,これでよろしいかどうかということでございます。いかがでしょうか。

 学年別漢字配当表についてのご意見もありました。これについては継続して検討する。児童生徒の学習負担,追加字種の配当学年。それらについて調査を進めていって,慎重かつ丁寧に検討を加える必要がある,こういうことでございます。いかがでしょうか。

 これもよろしいでしょうか。(2)に,国語科以外の各教科における対応についてというのがあるんですけれども,これは社会科の――はい,では柴田委員,どうぞ。

【柴田(洋)委員】

 ちょっと別の角度からなんですけれども,国語科以外につきましても,私は入試センターの人間なんですが,作題で問題に出てくるわけですね。その場合には,教科書の表記を基本にして,それに準じて出題しておりますけれども,先々回にも申しましたけれども,それに準じて改定常用漢字表,お手元の机上配付資料の7ページにあります,この表の基本的な性格というところに,1,2,3,4,5とございまして,2番目に,科学,技術,芸術その他の各種専門分野での用字,それから個々人の表記等々ということでございまして,特に,高等学校の履修を見る大学の入試におきましては,地理,歴史,政治経済,それから理科ですね。そういうものについては,既に教科書等では,かなり常用漢字以外の漢字が出ております。それから,漢文・古典においても同様な状況だと思いますので,そういうものについては,この基本的な性格にのっとった上で,各学習段階に応じて教科書のほうでも採用していただけるのだろうと思いますし,その成果,到達度を見る入学試験においても,そういうことを配慮した上で達成度を見たいと。そういうことを,ここに空欄になっていて,ちょっと寂しいものですから,発言させていただきました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。おそらく柴田委員がおっしゃった,その場その場で,要するに適切な配慮をしていきたいという,こういうことだろうと思います。

【柴田(洋)委員】

 排除するものではないということですね。

【吉田(裕)主査】

 そうですね。はい,そのとおりでございます。村山委員,どうぞ。

【村山委員】

 私も,ここの(2)が空欄なので,寂しいので申し上げたいと思います。

 先の(1)で,学年別漢字配当表は,当面このままでということがあるかと思いますので,それを前提とすれば,例えば,新しく社会科の都道府県名で出てくる漢字につきましても,現在の指導の状態でいいのかなと思います。

 現在の指導といいますのは,振り仮名を振りまして,無理なく指導が行われるということでございます。これらの漢字の指導につきましては,資料3に,新学習指導要領における漢字の取扱いの中で,「内容の取扱い」という項目のところで,下線が振ってありますが,「当該学年より後の学年に配当されている漢字及びそれ以外の漢字については,振り仮名を付けるなど,児童の学習負担に配慮しつつ提示することができること」というふうに明示されてあります。ですから,この規定に従って指導をしていくということでよろしいのかなと思っているところです。

 これから社会科のほうでも「岡」や「熊」,それから茨城の「茨」など,漢字が出てきますけれども,この規定をもとに考えて,各学校で児童生徒の実態に応じて指導していけばいいということを確認してもらいたいと思います。

【吉田(裕)主査】

 はい,ありがとうございました。ここに項目として掲げたのは,特にこれまで取り上げられてこなかったんだけれども,連動してこのことも大事なことになるだろうというので,項目としてそこに上げたということでございます。今お2人の委員からご説明がありましたけれども,これは排除するものでもないし,それからルビを振って適切に,むしろその実態に合わせた指導をしていきたいと,こういうことだろうと思います。ありがとうございました。

 ほかに何かありましたら承りますけれども,もしなかったら次のほうへと考えております。

【飯田委員】

 じゃあ,少し。

【吉田(裕)主査】

 はい,飯田委員,どうぞ。

【飯田委員】

 私も小学校にいる者として,ちょっと一言だけつけ加えさせていただければ,今,村山委員が言ったそのものだと思っています。それから,地名等の漢字は,常用漢字にないようなものでも,日常的に使っているのが現状です。例えば,私が前任校で校長をやっている前任校は,鑓水小学校っていうんですね。鑓水小学校というのは,「かねへん」に「にてんしんにゅう」の学校なんです。でも,それは,もう小学校に入った段階から,振り仮名を振ったりして,もう日常的にその学校の子供たちは書けますね。それから,周りの八王子の学校の子供たちも,ほとんどの子が読めたりするわけです。そういうことも踏まえたりして考えて,やはり現状でもそうであるということで,国語以外の教科では,やはり地名などは振り仮名を振ることで今までどおり対応していければいいのかなと,そんなふうに思っているところです。つけ加えさせていただきました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。同じ方向でのご発言だったかと思います。

 それでは,もしご異論がないということでありましたら,次の5番目に行かせてもらってよろしいでしょうか。それでは,5番目のところをお願いいたします。今の4番目のところは,学年別漢字配当表に関するものでした。5番目は,その常用漢字表改定に伴う学校教育上の取扱いに関する指導及び周知について。これを一体どのように現実の漢字指導の場に徹底を図っていくかという,こういうことでございます。そこに○で示してありますのを読みますと,「常用漢字表の改定に伴う教科書の対応等を勘案し,学校現場の指導に資するよう,文部科学省において,参考となるような資料(教材)の作成について検討すること」,これでよろしいでしょうか。先ほどちょっと話題にしていただいたところでもありますけれども,周知徹底を図るというぐあいに言ったときに,だれが,どのようにしていくのかという,その具体を提案したのがここであります。いかがでしょうか。宝官委員,どうぞ。

【宝官委員】

 失礼します。基本的に,こういうふうに書いていただいている整理メモの参考となるような資料・教材の作成ということをお願いするという形で賛成なんですけれども,できれば,高等学校についても,漢字指導の在り方,どういう形で行えばよいかというようなことについても何か参考となるようなものを,例えばホームページ等で示していただけるとありがたいなと考えます。

【吉田(裕)主査】

 こういうことが行われた場合に,高等学校にも配慮してほしいと,こういうことのようであります。ほかにありますでしょうか。吉田委員,どうぞ。

【吉田(和)委員】

 私は,平成23年4月から新学習指導要領に基づく指導を行うわけです。そういうときに,教科書がまだそこまでは行かないわけなんですが,このときに,その平成23年4月に文部科学省のほうで移行資料というか,そういう改定常用漢字の一覧をつくっていただいて,それを小学校も含めて,小・中・高等学校の児童生徒に配付する必要があるのではないかと思います。それをやることによって,平成24年からの教科書に,いろいろな形でそれがもちろん出てくるわけですけれども,巻末ということもあるとは思いますけれども,それがあらかじめ現場のほうに届くということになります。ですから,もちろんホームページもそうなんですけれども,やはり文部科学省が一斉対応をしていただいて,それを小学校,中学校,高等学校に出していただければと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。高等学校から発言があり,それから中学校から発言がありましたので,小学校からもあるかもわかりませんが,各学校群で参考となるような資料を,ぜひ示してほしいという声だと思います。事務局のほうで,何かこれに関してお考えがありましたら。

【倉見学校教育官】

 はい。皆様の期待にこたえるように頑張っていきたいと思います。ちょっとその予算との関係もありますので,全校一斉に配付物までできるかどうかわかりませんけれども,多くの学校が利用しやすいように,できるだけ早く作成していくことについて検討していきたいとは思っています。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。早く充実したものを,しかし予算の範囲で,あるかもわかりませんけれども。武元委員,お願いします。

【武元委員】

 今のお話は,教科書発行者にとりましても大変ありがたい話だと思っております。それで,きょう私,資料を提出させていただいたんですけれども,おそらく字体にかかわること,つまり筆写の指導の際にどのように指導するのか,まだはっきりは方針は決まっておりませんけれども,その決まったことを現場に周知するということについても,その手段は使えるのではないかと思いますので,それも含めて,ぜひお示しいただくとよいかと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。こんな物があればいいなというような,そういうこととして,まだ幾つか上がってくるかもわかりませんけれども,またその機会を得ながら提案をしていただけたらと思います。よろしいでしょうか。

 5番目の項目は,この常用漢字表が改定されて,いろいろなところに波及していくけれども,その学校現場において,混乱のないように,文部科学省のほうで資料等を準備してほしい,準備していきましょうということで,ご意見をいただきました。

 それでは,7番目に移らせていただきまして,入学試験の対応であります。常用漢字表改定に伴う高等学校及び大学の入学者選抜の対応の在り方について。これも極めて現実的で極めて大事なことであります。これについては2つありまして,2つとも○印になっていますので,同一の方向でこれまで議論が進んでいますけれども確認をしていきたいと思います。

 上のほうが,「高等学校及び大学入学者選抜試験における漢字の出題等は,受験者の負担を考慮し,改定常用漢字表による漢字の指導の実施年度の入学生が卒業するまでは,従来の常用漢字表の範囲とするなど」――丁寧に書かれているところですけれども,要するに新しく適用されるのは,これが実施されてからと,こういうことですね。実施される前のものは現行の制度でと,こういうことです。そういう適切な配慮のもとに行われる。これでよろしいでしょうかと,こういうことであります。

【柴田(洋)委員】

 これで結構なんですけれども,我々のほうで関係方面といろいろ議論したんですけれども,おそらくこの「適切な配慮のもとに」ということに入るんだと思うんですけれども,削除される5文字については,おそらく今年の秋か冬には内閣告示ということで発効するわけですね。そういうことを配慮しますと,やはりこの削除のほうについては,原則的には出題範囲から外すというような配慮も要るのではないかというようなことを検討を進めており,ご承知かと思いますけれども,文部科学省のほうでは,大学入試の改善協議の場というのがございますので,そちらのほうで協議いただきまして,そのような趣旨のものを,各大学,それから我々のような入試センターのほうにも通達いただけるというぐあいに考えております。

 だから,それが適切な配慮ということに入るのだろうというぐあいには考えておりますけれども,現実には,もう我々,既に作題等対応しておりまして,平成24年度のものを考えなければいけないんですけれども,それに当たりましては,そういうことの配慮も詰めた上で進めていくというぐあいに検討しております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。入学試験のことなので,どこまで具体的に話題にできるかというところは,制限がないわけではありませんけれども,今,柴田委員が具体的なところまで触れてくださったように思います。入学試験に関しては,受験生に不利な改革・改悪はしないというのが大原則ですので,改まるというようなときには,かなり早い時期に受験生には周知するということも,この適切な配慮の中には入っているということだと思います。これは徹底して行われるということだろうと思います。

 それから2つ目ですね。「その際,入学者選抜試験において,受験者が書く漢字を評価する場合には,学校教育での筆写(手書き字形)の取扱いについて,関係者に十分周知することでよいか」。これは3番目のところにもかかわるかもわかりませんが,もう既に協議していただいていますので,初めてのことではないということもあって,要するに,漢字を書かせた,その評価については,比較的緩やかな対応をしましょうと,こういうような形で来たと思います。いかがでしょうか。村越委員,お願いいたします。

【村越委員】

 そのようにしていただければと思うんですが,先ほどの学校教育上の取扱いに関する指導及び周知についてと,これも含めて,入試関係のことについて,ともに何か通達とか,それをつくっていただけるとありがたい。常用漢字表そのものを配るというのは,あまり現実的ではないだろうと思うんです。だから,ほんとうにエッセンスをきちんと周知できるような,そういう文書を文部科学省のほうでつくっていただけると混乱なくできるのではないかと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。混乱のないようにというのが一番大事なところだったのではないかと思います。5番目のところで協議をした,文部科学省のほうで参考となる資料の作成の中に,先ほど武元委員は,字体のことも含めてということもありましたし,今,村越委員のほうからは,入試のことも含めてとありました。そんなところも大事なところだというご指摘をいただきました。今のところに返りまして,入学試験の手書きのところですけれども,これは,とめる,はねるという小さなところにあまりこだわらないで,骨格ができていればいい,そんな中身ではないかと思うんですけれども,よろしいでしょうか。

 それでは,もとに返らせていただきます。残されているのが2番目と3番目でございます。2番目は,「読み,書き」の「書きの指導」でございますし,3番目は,その「書き」の中の手書き,筆写の扱いという形になります。2つは連動していますけれども,上のほうからまいります。

 常用漢字表改定に伴う「書きの指導」の見直しについて,(1)でございます。高等学校における常用漢字表の「書きの指導」についてというので,そこに1つの○,1つの●がございます。初めのほうが○でして,「高等学校においては,高等教育を受ける基礎として必要な教育を求める者」――先ほど宝官委員がおっしゃったかな。高等学校は,多様な生徒が通学してくるところだからという,そこにかかわりますけれども,高等学校は,教育を受ける基礎として必要な教育を求める者,それから就職等に必要な専門教育を希望する者,さらには義務教育段階での学習内容の確実な定着を必要とする者など――ここからですよね。様々な生徒が在籍していることを踏まえ,各学校が生徒の実態に応じて指導ができるよう,現行どおり「主な常用漢字が書けるようになること」,これでいいかどうかということであります。もっと厳しくしていくのか,あるいは今のような,さまざまな生徒が高等学校に在籍しているという状況を考えてみると,やはり「主な常用漢字が書けるようになること」という,この現行の案がこの場でも多く意見として出されてきましたけれども,通読,精読,味読じゃないけれども,味読段階でもこれでよろしいでしょうかということであります。

【村越委員】

 ぜひ,このようにお願いしたいと思うんです。高等学校は,今,一くくりで高等学校って言えない状況なんですね。そのぐらい多様化しているというところで,各学校でそれぞれ工夫して漢字の指導はしています。それは,国語科だけでなく,各教科でとか,あるいはそれ以外の課外活動で指導をしています。

 それから,もう1つ,外国籍の生徒,それからいわゆるハーフの子たちが非常に多く高等学校に入ってきています。その子たちは,小学校の漢字から勉強しなくてはならないという,そういう生徒たちも入ってきている。そのぐらい多様化されているところですので,できるだけ高等学校の場合は,学校の独自の指導の仕方を認めていただけるような,そういう書き方でお願いしたいと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。ここに文言として出ているものに加えて,さらに深刻なんですよという,またさらに様々なんですということを添えてくださったのではないかと思います。これは,そういう扱いでよろしいでしょうか。○であるということもありますが,これは繰り返しになっているカンがありますから,それでは,これはこれまでの議論をそのままここでも確認していただいたという扱いをさせていただきます。

 2つ目は●であります。文化審議会答申。これは改定常用漢字表のことですよね――において,「情報機器の使用が一般化・日常化している現在の文字生活の実態を踏まえるならば,漢字表に掲げるすべての漢字を手書きできる必要はなく,また,それを求めるものでもない」。これはお手元にあります改定常用漢字表の括弧つきの7ページですね。そこに記されている,その引用ですので,そこがかぎ括弧になっています。

 要するに,そういう新しい状況の中で,この漢字表に掲げているすべての漢字を手書きできる必要はなく,また,それを求めているものでもない。「改定常用漢字表の基本的な性格」と書いてありますけれども,基本的な性格を踏まえた対応について,ア)とイ)が用意されていますけれども,ア)は,「主な常用漢字」の範囲や字種を具体的に示そうというもの。イ)は,「主な常用漢字」,これは主な常用漢字が書けるようにということです。「主な常用漢字」の範囲や字種を一律に示すことは難しいので,改定常用漢字表の性格,基本的な性格をしっかり周知することにより,各学校が生徒の実態等に応じて指導する,この2つ。つまり,「主な常用漢字」が書けるようになることと言っているわけだから,範囲や字種を示すという1つの考え方と,いや,やはり高等学校は,村越委員も重ねて発言してくださいましたけれども,ほんとうに多様なので,したがって,それを一律に示してしまうと,各学校の対応が難しくなる。だから,ここはイ)のほうは,一律に示すことは難しいから,学校が生徒の実態に応じて適用できるようにしていきたいという,この2つの案でございます。

 ご意見をいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。宝官委員,お願いいたします。

【宝官委員】

 今,村越委員からのご説明もありましたように,ぜひイ)の立場で,学校の現場に任せるという形の方向でお願いしたいと思っています。ほんとうに生徒の多様性に合わせて学校のほうで工夫させていただくという形にお願いしたいと思います。それが現実的だと思います。ただ,この答申の趣旨については,すべての漢字を手書きできる必要はなく,求めるものではないということを,ぜひ高等学校から出口のほうの試験ですね――大学入試とか就職の関係の試験のつくる側のほうに,ぜひ国のほうから周知徹底していただけたらと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。このことも先ほどの文部科学省のほうで作成する資料の中に含められればと,こういうことでございました。今,高等学校での「書きの指導」の中で,「主な常用漢字」に慣れるということが方向としては出てきているんですけれども,それでは「主な常用漢字」って何,と問われたときに,それを示すほうがいいのか,いや,示すことによって,その指導が難しくなる,そういう観点からです。実情は,非常にさまざまなので,その範囲,字種というのを示さないで,各学校に任せてほしいと,こういうことのようでした。よろしいでしょうか。金武委員,お願いいたします。

【金武委員】

 意見というよりも,質問といいますか,このイ)のほうが実際的であるということはよく分かりますし,それでいいとは思うんですが,例えば,生徒の立場になったときに,情報機器で打てれば書けなくてもいいということが言われているのであれば,大体この範囲のこのくらいの字は読めるだけでいいだろうという目安みたいなものが何字か示されていれば,そのほうが生徒にとっても,それからまた大学入試においても,そこに示された字は読みだけであって,書き取りまではしないということがわかるので,線引きで厳密にやるのは難しいにしても,大体この辺の字は読めればいいというのが示されれば,生徒にとっても,あるいは一般社会にとっても,わかりやすいのではないかと思います。

【吉田(裕)主査】

 金武委員,私ちょっと,聞き誤ったかもわからないんですが,ここは今,「書きの指導」ですよね。

【金武委員】

 そうです。

【吉田(裕)主査】

 読めればということではなくて……。

【金武委員】

 ですから,読めるだけでいいという字を具体的に,ある程度,きっちりでなくても示されればいいかなと,そういう意見です。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。今のご意見は,1のところの,さかのぼりますと,(2)高等学校における常用漢字の「読みの指導」についてという,そこでも関連を持ったということではないかと思います。

 ほかにありますでしょうか。今の高等学校における「書きの指導」についてでございます。千々岩委員,お願いいたします。

【千々岩委員】

 基本的に皆様方の意見に賛成です。この「主な常用漢字」というのは,「主な」ということを書かざるを得ない状況は,高校あるいは高校生の実態というようなことももちろんありますけれども,先ほど飯田委員のほうからありましたように,地域環境とかそういったもの,それから自分の生命にかかわるものとか,とにかく生活環境,生活実態に合わせて,さまざまなレベルで常用漢字の学習がなされると。書くということもなされるというふうに考えますと,金武委員のご発言もあるにもかかわらず,やはりこういう形で「主な常用漢字」というふうな形で示さざるを得ない現実があるのではないかと思います。

 蛇足ながら,宝官委員のほうから,大学のほうで随意出題する漢字についての配慮というものをするように通知・通達的なものがあったほうがいいというお願いがあったんですけれども,その点については,ぜひ大学側を信用していただければと。要するに,その辺のところは,やはり常用漢字の範囲の中で,その大学がどういった質の学生を欲しているのかといったようなことに基づきながら,よほどひどいことは出さないんじゃないかというふうに思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。大学入試だとか,あるいは就職のときの試験にも反映するからということで,大学の立場からということでした。そうですよね。大学も評価されていますのでね。どんな漢字を出題したかということで,大学自体が社会にさらされるということもあろうかと思いますので。

【吉田(和)委員】

 私もイ)の立場でいいと思います。と申しますのも,書くということと,使うということと,昔はイコールであったんですけれども,今は使うけれども書けないというのが出ております。これは我々の日常生活の中の変化がそういうふうにさせているのだろうと思います。したがって,私は,この学習指導要領の,中学校のほうでは,「大体を」というところがそれに当たって,これは読む話なんですけれども,かなりアバウトに書いてあります。それに伴って,高等学校のほうは「読み慣れる」になっていると思うんですが,書くほうも,「主な」ということで,非常に,ある意味ではアバウトに示しているわけです。

 この部分がわりと大事なのではないかなと思います。つまり,常用漢字は,まさにこの言葉どおり普通に使われる言葉でございますので,それが使えるようになることが,まずもって大事な観点でありますので,書くということよりも使うということ,使える,あるいは意味がわかるというようなことのほうが大事ではないかと思います。

 そういうふうに考えてくると,やはり,この読みについても,これは高等学校の入試なんかもそうなんですが,大学の入試も高等学校の入試も,その部分の,今の常用漢字の在り方みたいなものも踏まえて出題を考えていただければと思います。これは大学だけではなく,高等学校も同じだと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。いずれにしても,漢字がそういう出題,試験にかかわってくるということが今の発言を重ねられたということだろうと思います。

 この今の高等学校における常用漢字の「書きの指導」についてという,全般にわたってもこれでよろしいでしょうか。それでは,2番目のところも議論していただいたということにしまして,いよいよ最後に,3番目の「常用漢字表改定に伴う学校教育での筆写(手書き字形)の取扱いについて」というところに行かせていただきます。

 これについては,まだ記憶も新たな,前回ですね。この項目だけで1回を使って議論をしていただきました。そこに●から始まって○へとなっていますけれども,●のところが大きな議論になったところです。ちょっと読み上げます。ア),イ),ウ)と,選択肢が入っていますけれども,筆写の楷書字形と印刷文字字形の違いが,字体の違いに及ぶものについての筆写の指導について。これは,嗅覚の「嗅」だとか進ちょく(※1(下部参照))の「ちょく(※1(下部参照))」だとか,そういうものでしたよね。それで,ア),筆写の指導における字形の基準のようなものを示す。イ),筆写の指導における字形の基準のようなものを具体的に示すことは難しいので,各学校(中・高等学校)が生徒の実態に応じて指導する。ウ),学校段階に応じて筆写の指導における字形の基準のようなものの示し方を中・高で変えるという,中学校なら中学校,高等学校なら高等学校の,おそらくその考え方があるだろうから,ここはちょっと,そういう考え方も1つですよという,こういう議論が前回までになされています。

 そのときに,ア)もウ)も基準のようなものを示すという形になりますので,先ほど事務局からも説明がありましたように,これを示すならば,じゃあ,どういう形でその基準を考えていくのかと。これが出てくるということであります。

 それから,続けて次のページの○。今度はこれは評価の問題であります。書いた文字が,指導した字形以外の字形であっても柔軟に評価するという。これまでも評価に関しては緩やかにというのが,この会議での基本的なとらえ方でしたので,ここは○になっていまして,柔軟に評価するという方向でいいだろうかと,こういうことであります。主たる議論は前半にあるかと思います。いかがでしょうか。

 その前に,今日,武元委員から資料が提出されていますので,これを先に取り上げたいと思います。

【武元委員】

 お時間ちょうだいしまして恐縮に存じます。前回の会議において議論された字体の問題につきまして,結論を得るための参考になればと思いまして,僭越ながら資料を提出いたしました。同じく「嗅」を取り上げております。

 この表の見方にかかわることですけれども,字体に関する基準や根拠となるものを,ひとまずA,改定常用漢字表,ニアリーイコールで社会一般の印刷物において目にすることの多い字体とすると。そうだばかりも言えないのではないかという金武委員のご意見もあったかと思いますので,ひとまず2のところには「大」の文字を括弧つきで入れております。それから,それは教育に適用していく際に,B,教科書一般の活字,イコール中学校以上の教科書において多く用いられる明朝体やゴシック体などの活字。その段階と,C,手書き文字。手書きの文字として指導する際の字体という2つの段階があるものとするということでございます。

 1,2からA,B,Cというふうに移っていく場合,順列としては8つあるんですけれども,例えば,1,4,5のような上昇形,つまり一たん下がって上に上がるというふうなものが選択されることは考えられませんので,選択の対象となるのは,水平になっているものと下降の形でできているものだというふうになると思います。

 ただ,2,4,6という,このルートが,いわば根拠とすることが,1,4,6というものとは違うということになると思うのですけれども,4,6の部分は同じになりますので,1,4,6に含めて考えるということであります。

 そうしますと,残るのは次の3つのルートではないかと考えられます。1,3,5,つまりすべて「嗅」という漢字は「犬」で通すという考え方であります。それから,イは,1,3,6というルートでございまして,教科書の活字は「犬」,手書きの字は「大」ということになります。それからウは,1,4,6でありますので,活字・手書き文字ともに「大」ということになるというわけでございます。

 これら3つのルートにつきまして,メリット・デメリット,学習者や指導者から出てくる疑問,必要となる説明などを考えてみますと,例えば次のようなことが想定されるのではないかと思います。むろん大ざっぱなものでございまして,すべて尽くしているわけではございません。典型的なものや代表的というふうに考えられるものを記したにすぎません。

 まずアでございますけれども,これは一貫して「犬」になっているわけでありまして,同一字種に関する矛盾というとおかしいかもしれませんが,食い違いは生じません。「嗅」という漢字は,書くときも「犬」がよいという立場となるのではないかと思います。

 ただし,同一部分とみなされるものだと考えられるのに,漢字によって異なるということについての説明が必要になってきます。すなわち,「臭」は「大」なのに,なぜ「嗅」は「犬」なのかという疑問でございます。これに対しましては,「表外漢字」から新たに「改定常用漢字表」に加わった漢字は,例外が3つありますから,「その多くが」としましたけれども,「表外漢字字体表」に示されていた字体,正確には印刷標準字体ですね――のまま入ってきていると。「嗅」は従来「嗅」,つまり「犬」と示されてきており,「臭」とは違って「大」になっていると。書くときも,「どちらで書いてもよいのだが」と,これはもう必ず言わなければいけないことになると思いますけれども,書くときも,「犬」と書くほうがよいという立場でございます。

 かなり硬派の考え方だと思えるのでございますけれども,これを選択することは,私自身はちょっと難しい面があるのではないかと思っております。1つは,この改定常用漢字表の22,23ページのところに,非常に巧みな表現はしてあるんですけれども,括弧の中に入っているものを選択するということになりまして,何か印象的に言いますと,本則ではなくて,許容のほうを採用しているというような印象がぬぐえないという気がすることと,それから,これはすべてに――すべてというか,ほかの漢字,ここに上がっているものもございますけれども,すべてに適用していくというふうになりますと,例えば,「ほしいまま」,恣意的の「恣」は,「恣」の1画目は横棒で書くんだというふうな指導にまで至ってしまうというふうなこともあります。それから,「せん(※2(下部参照))索する」の「せん(※2(下部参照))」の「ひとやね」の部分が左に突き出すように書くんだと,そんなふうになってしまわないとも限らないということがございますので,逆に,この字とこの字をというふうに,そうなると指定していかなければならないというふうな問題も起こってくるのではないかと思います。

 それから,イのルートでございますけれども,これは活字のレベルでは「改定常用漢字表」に示されている字体で教科書も統一されるということになります。ただ,一方で,活字と手書き文字で字体が異なることについての説明が必要になると。つまり,教科書に使われている活字は「犬」になっているのに,書くときには,なぜ「大」なのかという疑問が出てくるということでございます。これにつきましては,表外漢字から新たに「改定常用漢字表」に加わった漢字は,その多くが「表外漢字字体表」に示されていた印刷標準字体のまま入ってきており,教科書の活字もそれに合わせられていると。ただし,書くときには,どちらで書いてもいいが,「臭」と同様に「大」でよいというふうな説明が出てくるのかと思います。

 それから,最後にウでございます。これは教育という世界の中では矛盾が生じないということになります。他方,社会一般で多く用いられる活字の字体と,教科書で目にする活字の字体が異なるということについての説明が必要になってくると。また,国が基準として示しましたものが教育に反映されない,登場してこないという面があるのではないかと思います。

 疑問例としましては,一般の書籍類で目にする「嗅」は「犬」になっているのに,なぜ教科書では「大」になっているのか。それに対しまして,教科書においては同一とみなされる部分に関して,従来の「常用漢字表」に含まれていた漢字に合わせた活字を使用していると。書くときにも,どちらで書いてもよいのだが,「臭」と「大」同様に,「大」でよいと,こんな説明になろうかと思います。

 以上でございますけれども,国としての方針を示す,あるいは,ここのイとウに当たるんでしょうか。判断は,教科書発行者や現場に委ねると。そのいずれにしましても,結局ア,イ,ウのどれかを選択せざるを得ないのではないかというふうに思われます。学校段階において変えるという話は,またちょっと議論が違うかと思いますけれども,おそらくこの3つから選ばなければいけないのだろうと思います。

 ただ,教科書によって,あるいは指導者によって異なるという事態はやはり避けるべきではないかと思いまして,やはり一定の方針が示されることが望ましいのではないかと私は考えております。言い方を変えれば,教科書会社に任されてしまうと,これはまた混乱が起こるだけだろうと思いますし,このことにつきましては,一定の方針が示されることが望ましいと思っております。ありがとうございました。

【吉田(裕)主査】

 やはり何らかの形で一定の基準あるいは方針が示されることが教育現場に混乱を生じさせないという,そういうご発言でありました。具体的には,この「嗅」という字を用いてのご説明をいただきました。

 いかがでしょうか。この字体に及ぶ字形の指導については,前回もさまざまにご議論いただいたところではありますけれども,このあたりでご意見を出し尽くしたいというふうに思うんですが。柴田委員,お願いいたします。

【柴田(悦)委員】

 前回,白熱した議論であったと思いますので,ちょっと時間のことも気になって,自分の意見が言えなかったという点があって,ちょっと残念に思っていたことがありますので言わせていただきます。今の武元委員のご意見,非常に詳細な資料を出していただいてありがたいと思っておるんですが,それも頭に入れながら考えていることを申し上げたいと思います。

 前回の冒頭で,氏原主任国語調査官から,前回の資料3の「改定常用漢字表の字体について」という資料があったと思います。この資料を用いてご説明があったと思いますけれども,当用漢字字体表や常用漢字表でも字体の不整合の問題はあったというご説明ではなかったかというふうに記憶をしております。しかし,生活上あるいは学校教育上,混乱があったかといえば,混乱があったというのは,私自身はあまり聞いていないというのが実情ではないかと考えております。

 つまり,子供たちは,この字はこういう字形だと認識しながら漢字を学習していくのであって,例えば,「干渉」ですね。「さんずい」の「歩」が通用字体となっていれば,それを基準として覚えさせて,許容字体である1画ないものについては,こちらで書いてもいいよというような教え方をしていけば混乱はないのではないか。先ほどの武元委員のお話にもあったように,最後は必ず,「どちらで書いてもいいのだが,こちらで書くほうがいい」――こちらで書くほうがいいという結論は若干,当然,ア,イ,ウ,違っているわけですけれども,そういう形で実際今までも,字体の不整合の問題があっても,混乱がそれほど起きていないのではないかと私自身感じているものですから,そういう教え方をしていけば混乱はないのではないかと考えます。

 私は,高等学校の立場で発言しております。高等学校においては,特に漢文の授業においては,旧字体の漢字でも読む必要に迫られるということであります。自然にそういった学習を通じて,自然に字形や字体について認識を深めていくことができると考えております。

 前回,髙木副主査がおっしゃっていたというふうに記憶しておりますが,字形や字体を1つにしていく方向というのは,文字文化の教育を矮小化するおそれがあるという趣旨のご発言があったと思います。私自身,それに賛成します。このご意見に加えまして,高等学校の現状ということで言いますと,習熟度という観点において,さまざまな状況の学校がある中で,少なくとも高等学校においては,手書きの字形を括弧内と括弧外のどちらかに統一するというのが現実的ではないというふうに考えております。

 それからまた,小森委員から,前回,発達段階に応じて,特に小・中学校と高等学校を分けて考える方向もあるのではないかというご意見があったと思いますけれども,小学校については,あまり現状と変わらない形で当面は行くんだという大きな方向性が見えていると思いますので,問題にならないと思うんですけれども,議論の焦点は中学校であるというふうに考えます。高等学校の担当者にとっては,中学校の部分がわからない,現実がわからない部分もありますけれども,先ほど述べたような教え方をしていけば,大きな混乱はないということで,氏原主任国語調査官のご説明を受ける形での意見を述べさせていただきました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。前回ご意見を控えていただいたということで,進行した者としては大変申しわけないことをしてしまいました。お許しください。

 今まとめてご意見を表明してくださったと思います。高等学校は,やはり様々な生徒がいるために,あるいは漢文では旧字体などもあって,なかなか統一するということは難しいのではないか。中学校は,前回でもかなりそういう基準があるほうがというような発言があったように思いますがいかがでしょうかと,こういうことのようですね。

【髙木委員】

 今,柴田(悦)委員が前回の意見を取り上げてくださっているんですが,実は私は,文化庁の文化審議会の漢字小委員会に出ております。その折,私は教育の立場から,かなり多くの発言をいたしましたが,こういう席で申し上げるのは大変不適切とは思いますが,その場では教育の論議はほとんど対象外とされるような状況にありました。教育は教育で決めろというような形がございました。

 審議会の中では,一般社会で用いる漢字ということが中心であり,実は教育界では,その一般社会で用いる漢字ではない――漢字ではないという言い方は誤解がありますが,一般社会で用いるだけではなくて,教育活動として漢字指導が行われているんだということをご理解いただきたいという発言もしましたが,なかなかそれもお認めいただけませんでした。

 前回のご意見を聞いて伺っておりますと,学校教育には学校教育の漢字指導の論理が実はあるんだということ。そして,それは先生方はほんとうに日々の授業の中で,1点1画,「はらい」「とめ」について非常に心を砕いて丁寧な指導を行われているということ。これも一般社会の人々にご理解をいただきたい点でもあるわけです。

 私が一番心配しているのは,小・中学校で1点1画を非常に丁寧に指導したにもかかわらず,例えば,現在NIEというのが学校教育の中に入り,ところが新聞の活字は,学校教育で指導する活字とは違う活字も入っていると。そういう状況の中で学校教育の漢字指導をどういうふうにしたらいいか。それをここできちんと考えておかなければいけないということで,前回の発言をしているわけです。

 ぜひ,この場においても,特に中学校の先生方に,そういった指導が今後どういうふうにあるべきか。さらには,願いとしては,例えば今,これから中学校のほうで字形指導を考えるに当たって,これは社会一般でもある程度ご協力を賜らないと,学校教育の指導が非常に難しくなっているという状況も生み出すということをご理解いただきたい。ぜひ中学校の先生方がご苦労されていることも含めてご意見を伺いたいと思っております。

【飯田委員】

 小学校の立場からちょっと考えてみますと,3ページの一番上のところの「柔軟に評価することでよい」というようなことで,先ほど髙木副主査のほうからもお話がありましたけれども,小学校段階では,学習指導要領の中に,書写の指導は「硬筆による書写の能力の基礎を養うよう指導し,文字を正しく整えて書くことができるようにする」ということが書いてあるんですね。そういう指導の中で,出る,出ない,くっつく,くっつかない,とめ,はね,1画,長さの違い等も実はきちんと指導しているわけです。上の学校の段階で許容はしていくんでしょうけれども,もうここで児童生徒の書いた文字が指導した字形であっても柔軟に評価して,もう小学校段階から柔軟なことをしている指導をしていれば,なかなか思うような漢字指導はできないというところが現状であると思います。

 もちろん,いつの段階での評価を指すのかということが重要だろうと思います。例えば,中学校入試だとか高校入試のときには,当然「はね」「とめ」ぐらいは許容されるのかもしれない。ただ,小学校の段階でも,日常生活の中では,作文とか手紙などを書くときには,「とめ」「はね」とかというのは,かなり柔軟に対応しているわけですが,指導したときの,このように指導しているというときの評価というのは,やはり文字を正しく整えて書くという段階では,きちんと指導していきたいと,そんなふうに思っているところですけれども,柔軟に指導というのは,いつの段階での評価なのかというところが重要になってくるだろうと思っています。高木副主査等の考えと一致するところがあるのかなと思ってお話をさせていただきました。

【金武委員】

 この武元委員の提案で,イの形,つまり1,4,6と,この6が手書き文字について,教科書体を含めて示すということであれば,この前,私が提案した提案と同じだと思います。つまり,教科書体もしくは正楷書体で示す印刷文字というのは,筆記文字の標準というか手本になるものですから,これは改定常用漢字表の22ページに示されている括弧の外にある,手書きではこう書いてもいいというものでありますので,この形で,主な疑問のある字がすべて示されれば現場にとっては非常に分かりやすいのではないかなと。

 つまり,統一するというのではなくて,現場の先生が,特に小・中学校の先生が漢字を教える場合に,手書き文字の基準というものを示してほしいというのはもっともなことでありますので,どれを書いてもいいというのは大前提としてはありますけれども,標準としてはこれだと。つまり,その形は,やはり手書き文字の慣用に従ったものと。この「臭」ですと,あまり手書きすることが少ないので,問題が出るかもしれませんが,例えば,「しんにゅう」とか「しょくへん」は,改定常用漢字表の説明にもありますように,手書きの場合でも「いってんしんにゅう」,やさしい「しょくへん」というのは普通であります。したがって,手書き文字の標準としての教科書体は,「しんにゅう」は「いってんしんにゅう」で示すべきであろうと,そういうふうに思っておりますので,そのことは,私は高校の先生の経験はないんですけれども,先ほど髙木副主査もおっしゃったように,改定常用漢字表の委員会のときに,パブリックコメントで小・中学校の先生から非常にたくさんの意見がありましたけれども,ほとんどが常用漢字体の部分字形というものは一緒にしていただければ教えやすいという声が圧倒的に多かったんです。ですけれども,残念ながらといいますか,そういう意見は通らなかったということで,こういう状況になっておりますが,少なくとも教育の現場においては,特に小・中学校の先生に分かりやすいような形の基準の示し方が大事であると。

 それで,さらに言えば,高等学校になると義務教育ではありませんので,一般社会の実情というものを教える必要があるということでは,高校の教科書においては,手書き文字を示すあれがあまりないんじゃないかということで,これは口頭で,どちらでもいいということを教えてもいいんですが,少なくとも小・中学校までは手書きの基準はやさしい形で標準を示すということが望ましいと思っております。

【吉田(裕)主査】

 はい。中学校の先生方,何かご発言はありませんか。

【吉田(和)委員】

 私は,やはり標準の字体を示していただきたいと思います。確かに読むことについては,いろいろな文字があって,それが1つの規範として,同じ種類のものとして読めるというのは大変大切な視点だと思いますし,それができる柔軟性というのがあると。それは必要だと思います。しかし,やはり書くということを前提にした場合には,どのような字を書くかということになってきたときに,当然,その標準字体を意識する必要があるだろうと思うんです。いろいろな字体で書いても構わないと思いますけれども,標準字体というものを私たちは指導したいと,教えたいと思っています。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。やはり,ここに,ア,イ,ウというぐあいに示されたものが,同じような形で出てきました。完全にどこかへ集約という形ではないかもわかりませんけれども,集約できたらしていきたいというぐあいに考えています。

 ちょっと時間を過ごしてしまいましたけれども,ほんとうに,今日もご熱心に,さまざまなご意見をいただきました。冒頭で申し上げましたように,今日は1番から7番まで,これまで課題として取り上げられたものを,もう1度おさらいする。全体的な視野からもう1回見直してみたいという,きょうはそういう性格の会議でありました。

 先ほど言いましたように,7月7日の第1回から今日まで5回ほど,全体に及ぶもの,それから部分に集中するもの,そして,今日の全体のものという,その3つの性格の5回の会議を経てきました。この中で,おそらくまだ十分意見を言い尽くせていない,そういうところがあったんじゃないかと思います。そういう方は,ご意見,あるいはお気づきの点をペーパーで事務局あてにお送りいただければと思います。9月10日までという,これも非常に短い時間になるんですけれども,でも忘れないうちに書いておいたほうがということもありますので,すみませんが,9月10日までにご意見等,事務局のほうへお寄せいただけたらと思います。

 私たちは,この改定常用漢字表の内閣告示へ向けて,学校教育の対応ということでこの会議を開いてきたわけですけれども,11月ごろに改定常用漢字表の内閣告示が出そうだということのようであります。したがいまして,私ども,もう1回これを事務局でまとめていただいて,その上で結論を出したいと考えていますが,事務局,よろしいですかね。

【倉見学校教育官】

 はい。

【吉田(裕)主査】

 それでは,今のこともあわせて,次回の日程等をお願いいたします。

【倉見学校教育官】  はい。一通りご議論いただいて,きょうは,さらにそれの確認の事項もございましたし,さらにまた詰めたご意見もいただいたところなので,次回につきましては,この検討会議でのまとめということで,事務局から提案させていただければと思っております。

 次回なんですが,そのためにちょっとお時間をいただきまして,9月29日,水曜日でございますけれども,16時から18時,今度は文部科学省の中央合同庁舎第7号館東館の3階ということになりますが,講堂で行いたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。これとあわせて,次回までには関係団体からの意見も伺うということになります。それもあわせてご承知いただきたいと思います。

 すみません,4分ほど時間を過ごしてしまいました。ご熱心なご意見,あるいはご協力いただきましたことを,重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。これで本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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