常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議(第3回) 議事録

1.日時

平成22年8月9日(月曜日)午後4時~6時

2.場所

文部科学省第2講堂

3.出席者

委員

吉田(裕)主査,髙木副主査,飯田委員,金武委員,小森委員,佐藤委員,柴田(悦)委員,柴田(洋)委員,杉戸委員,武元委員,千々岩委員,積山委員,長野委員,村越委員,村山委員,吉田(和)委員(計16名)

文部科学省

山中初等中等教育局長,德久大臣官房審議官,平林教育課程課長,森教科書課長,倉見学校教育官,氏原主任国語調査官ほか関係官

4.議事録

〔配布資料〕

1 常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議(第1~2回)における主な意見
2 論点メモ(案)
3 漢字の指導に関する中学校学習指導要領(平成20年3月文部科学省告示第28号)における取扱いについて(抜粋)
4 当用漢字から常用漢字への変更に伴う学校教育上の対応スケジュール
5 常用漢字表の制定に伴う学校教育における漢字指導の在り方について(昭和56年8月31日 教育用漢字調査研究協力者会議まとめ)
6 小学校,中学校及び高等学校の学習指導要領の一部改正について(昭和56年 10月1日 文部事務次官通達)
7 大学入学者選抜時における「常用漢字表」の取り扱いについて(昭和56年12月23日 文部省大学局長通知)
8 検討事項(案)(第1回会議配布資料)
9 今後の開催予定

〔経過概要〕

1 事務局から人事異動の報告があった。
2 事務局から配布資料の確認及び説明があった。
3 事務局の説明に対する質問を含めつつ,配布資料2「論点メモ(案)」に沿って意見交換を行った。
4 次回の日程について,8月31日(火曜日)10時~12時に開催することが確認された。
5 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。それでは今の事務局からの資料を参考にしながら,本日の議事に入りたいと思います。

 今もおまとめいただきましたけれども,前回は中学校,高等学校における「読みの指導」の見直し,それから高等学校における「書きの指導」の見直しについて議論をいただきました。大まかな整理をしておきますと,その新たに増加する漢字196字を含めて,中学校卒業までに常用漢字の大体を読むこと,それから高等学校段階では多様な生徒の実態を考慮して,現行どおり主な常用漢字を書くこととするという,大体の合意を得られたのではないかと思います。

 一方,常用漢字表に掲げるすべての漢字を手書きできる必要はなく,また,それを求めるものでもないと文化審議会の答申にありますけれども,そのことにつきましては高等学校の「書きの指導」をどのように考えるかについて,さまざまなご意見が前回もあったと思います。

 それでは,掲げられました順序に従って,まず,1番目の中学校における常用漢字の「読みの指導」についての中学校の学年ごとの割り振りについて,意見交換を行いたいと思います。今,学校教育官からも前回までのまとめがありましたけれども,それらも含みながら,常用漢字の中学校の各学年における割り振りについてご意見を伺いたいと思います。

【佐藤委員】

 現状,小学校時代に,漢字のでき方ですとか,漢字の成り立ちなどの取り立て学習,指導を受けて,中学校に上がってくるわけですが,第1回にもお話ししましたように,漢字への苦手意識というのは中学生がわりあい多いように,現状とらえています。今回,字数にしますと191字常用漢字が増えていくということの中で,中学校の各学年の読みの字数の割り振りのことなんですが,先ほどいただきました資料3を見ていただきますと,まず第1学年は小学校の学年別漢字配当表の1,006字に加えて,その他の常用漢字の250から300ということで,ここがなかなか厳しい現実ということになりまして,小学校と違って中学校の国語の時数がかなり少ないのが実情です。

 そういう中で,できたらこの1,006字については小学校の6か年の中で定着を頑張っていただいて,中学校は残る1,130字を,週当たり1年生が4時間,2年生が4時間,3年生が3時間という授業時数の割合で,均等に割り振るという形をとっていただけるといいのかなということを考えております。

 漢字の表意性などの取り立て指導をできるだけ中学校もやりたいと思います。そういう中で,授業時数のかかわりで,大変厳しい現実があります。指導要領の解説には,今度分数表示ではなくて時数で目安が示されてきているわけですが,話すこと,聞くことでは2年生が15時間から25時間,3年生が10時間から20時間,書くことについては2年生が30から40時間,3年生が20時間から30時間,書写もしっかり時数が明記されてありまして,2年生は20時間,3年生が10時間。

 最大のほうでとっていきますと,2年生は全体の140時間から85時間ほど引かなければなりませんので,55時間の中で読むことの領域の指導と,伝統的な言語文化と,国語の特質に関する事項の指導を行わなければならない。3年生はさらに厳しく,105時間から最大の指導時数を引きますと,残る時間が45時間ということになろうかと思います。そういう中で,先ほど申し上げましたように,小学校の6か年の中で学年別漢字配当表の1,006字が読めるというふうに指導が行われると,その後を引き継ぐ中学校のほうは,読みの1,130字の割り振りを中学3か年でどうするかと考えていくように希望いたします。

 以上です。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。小学校にも波及しているようですけれども,さらにご意見を承りたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

 1回目,2回目の会議で出されておりましても,ここで必要になってくることもございますので,重ねても構いませんから,今,この視点で考えておくべきというご意見をいただけたら幸いに存じます。理念をという声も,今のまとめの中にもありましたけれども,言うならば,この中学校の割り振りについて,こういうことはやはり考えておかなければならないだろうというような点について,ご発言いただけたらありがたく存じます。いかがでしょうか。

【吉田(和)委員】

 中学校としては小学校で読みの指導をしていただくというのは,ある意味で大変ありがたいと思います。しかしながら,現状配当漢字1,006字を読むということで,各学年がそれぞれ配当されている上にその増えた字数を,どのように配当するかということになると思います。

 私自身は中学校が,前にも申し上げましたように,その後高校,義務教育も終わりますので,そこの段階ではすべてを読んでおかなければいけないということにはなると思うんですが,その際に,どちらかというとやはり読むことの抵抗よりも,書くことの抵抗のほうが非常に中学ではあります。したがって,読めなければ書けないというのは毎回言っていることですので,読むことができるようになっている必要はあると思うんですが,この字数を小学校のほうに振るということについては,学習指導要領に基づいて教科書を既に来年から使うことになっておりますので,私は,教科書に合わせるということが子供にとっては大事なのではないかなと思うんです。

 そうすると,もし読みをある程度引き受けてくださるというならば,これから音訓配当表のことが出てくると思います。その音訓配当について,小学校で幾つか配当漢字で新たに読みが加わるものについてはやっていただくとかという形にしていく必要があるかなと思います。それで中学の段階で,少なくとも増えた字数について高校にも接続するわけですので,どなたか意見がありましたが,そこは中学校で50字程度ずつ各学年に配当し,それでその配当の中身が明確に決まっているわけではございませんけれども,とりあえずそのような形で,24年度にはその配当漢字をすべて教科書が引き受けていくような形にすべきではないかと,私自身は思っております。

 小学校でもし若干お手伝いをいただくというか,そのものをやっていただくならば,多分読みの幾つかがございます。実際にはちょっと調べてみたんですけど,追加音訓のある28字中の17字程度がおそらく小学校配当漢字に含まれていて,そのあたりの7音訓ぐらい,例えば「私」とか「中」を「じゅう」と読ませるとか,その程度のことならばそんなに負担がなく,小学校でもできるんではないかと思っておりますが,基本的には中学でやっていいんじゃないかなと思います。

 なお,若干非常に難しい読みがございます。実はここの中学校での配当の大体を読むの「大体」というのは,やはりコンテクスト,要するに文脈依存型の読みができるようなことであるわけです。そうすると,かなり文脈的に当面この字は出てこないだろう,あるいはなかなか出るのが難しいだろうという字がございます。そういう字についてはやはり,高等学校のほうに割り振りをしていただくということになるんじゃないかと思います。

 しかしとりあえずは,増えた字も含めて改定されたわけですので,それを教科書に反映し,しっかりと中学校で教えていきたいと思っています。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。中学校でその新しい字種を基本的に引き受け,音訓に関しては,増えた中にも小学校へ譲れるもの,あるいは難解なものについては高等学校へという割り振りが1つには考えられるんじゃないか,こんなご意見だったかと思います。

【村山委員】

 中学校の話が出ていますので失礼いたします。やはり学習指導要領が来年度より全面実施されますので,1,006字を読むということは変えずに,このままでいければいいのかなと思います。今,吉田委員さんからもお話がありましたが,教科書もそのような方向でつくられていること,そして子供たちの実態から見ましても,やはり2年間というか,漢字学習の幅に余裕を持たせたところで繰り返し学習し,小学生は漢字を身につけることができておりますので,1,006字を読む,そして6年生の漢字は中学校のほうに書くまでということで,変えずにいければいいのではないかなと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。小学校のほうへ負担が出るところも少しありましたけれども,小学校は小学校でもう手いっぱい。読みは6年生までの1,006字,それで書くは5年生までので,これもやっとですよという,おそらく実態を今ご報告くださったんではないかと思います。今日は中学校のところへという形で焦点を定めておきたいと思いますので,もちろん中学校は小学校から,それから高校へ接続するということなので,全く無縁であり得ないことではありますけれども,中学校の割り振りというところで続けてご発言いただけたらと思います。いかがでしょうか。

【積山委員】

 失礼いたします。中学校の現場の立場からなんですけれども,資料2に書いてありますように,今の学習指導要領の中では,250字から300字を1年生で,300から350字を2年生でということになっておりますが,授業数のほうが現行は1年生が4時間,2年生が3時間という中でやっております。時数が多い1年生のほうが割り当てが少ないんです。これはやはり,いろんな小学校から上がってくる子供たちを対象として,やっぱり1回小学校の復習というか,それまでの達成度を確認しながらまた指導していくということが,中学校1年生で大事になってくるものであると思います。

 次の指導要領のもとでは,授業数は4,4,3で,2年生は増えるんですけれども,第1学年は授業数がそのままの状況で進みます。中学校の現状の第1学年の指導として,今250字から300字を指導している。2年生は増えるんですけれども,単純に50字,50字という割り振りをすると,1年生の段階の負担が多少増えるのではないのかなということを,現場としては危惧いたします。

 小学校にもちろんお願いをしたい部分もありますし,中学校1年生において小学校の確認というか復習,それに積み上げていくことを考えたときには,第2学年より,やはり第1学年に割り振る漢字を多少少なくしたほうがいいのではないのかなと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。1学年は時間数も増えない,それから小学校の復習ということもある。2年生は現行よりもプラス1時間増えている。1年生の負担を少なくするということは,2年生の負担を大きくするということに置きかえて解釈してもいいということでしょうかね。

【積山委員】

 結果的にそういう解釈になろうと思います。

【吉田(裕)主査】

 妙な確認をしまして,まことに申しわけありませんでした。ほかにご意見がありましたらよろしくお願いいたします。このことを考える上で,こういう観点がまだ見落とされているのではないか,こういった形でのご発言もいただけたらと思います。いかがでしょうか。

【吉田(和)委員】

 すいません,現場といってもいろんな考え方がおそらくあるだろうと思われます。しかしまず最初に,先ほどちょっと言いそびれたんですけれども,配当漢字を小学校のほうで読む方向を増やしていただくのは結構と思うんですが,この配当漢字を読むのが中学校に来ると,そのまま使いなれるという形に学習指導要領上なるんです。となると,この配当漢字を増やしていただいてしまいますと,当然中学校で書くことの指導を,より強化しなければいけなくなります。

 読むことの指導と書くことの指導の負担,その取り立てという形から考えると,やはり書くことの指導が大変時間もかかるし,なかなか子供たちができないという現状がございます。したがって,読む負担もさることながら,書くことの負担のほうが私は大きいと思います。したがって,読むほうではなくて書くことについては,この常用漢字表が変わったとしても,配当漢字の1,006字でやっていただければと思いますし,それからそれについて2年生が負担が多くなるのは,漢字だけの問題ではなくて,時数がそんなに増えないにもかかわらず,かなりこの学習指導要領が,前は1年と2,3年となっていたものが,2年,3年となってきて,3年のものがかなり2年に入ってきているということもあります。

 ということで,大体中学校の現状から見ると,2年生にどうしてもいろんな面での学習負担がかかってくるわけですが,ただここを,1年を軽くして2年を軽くすると,当然3年が重くなるわけですから,それはやはり我々としてはできないということです。ですから50字というのは,これからもう少し検討しなければいけない数値ではあると思うんですけれども,一定程度中学が引き受けるとするならば,均等に配置をしないとやはり矛盾が出てくるんではないかと考えます。

 3年になってからそれを使いなれるということまで出てくると,この字数が増えることによって,3年の負担が非常に多くなります。これは入試とかその他にもかかわることですけれども,そう考えております。したがって教科書の中では,どういうふうにどの程度の年度でどのように扱うかは,これから検討しなければいけないと思いますけれども,少なくとも教科書の中にきちっと入れ込んでいただいて,そして読むこと,書くことについてきちっとしたベースを,中学校でつくっていく必要があるだろうとは変わらず思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。学習指導要領が今回は各学年で示されるということもありますから,新しい漢字も含めて,1年生,2年生,3年生にほぼ均等に分けていったらどうか。2年生にだけ負担をかけるということになると3年生に影響が出てくる,こういうことだったんじゃないかと思います。ちょっと変わるのは,先ほど積山委員が発言されたこととかかわらせれば,2年生の時数が1時間増えるということがございますね。その辺のこともどのように勘案するかという問題があろうかと思います。

【千々岩委員】

 最初の会議のときに,学年別漢字配当表の変更まで今回やるのかということを確認いたしましたが,その点については時間をかけてやるということでした。そういう意味で,吉田委員がおっしゃるような,小学校に音訓を割り振って,幾分か読みの部分に関して小学校のほうで負担してもらうということは,この場では現実的な検討の素材にはならないんだろうなと思っています。

 その上で,佐藤委員や積山委員がおっしゃった,中学校の現実ということを考えたときに,やっぱり1,006字の部分については小学校段階できっちりと読みの指導をやっていただくことを,ぜひお願いした上で,中学校としては,義務教育の最終段階としての責任ということから考えると,やはり増えた196字マイナス5字の191字分について,3学年で読みについては,一応形式的ではあるけれども割り振っておくということを,現実的に対応していく手段として選ぶべきではないかと私は思います。

 そう考えて,前回の2回目の会議で私は,各学年50字ずつという当面の目安でいいのではないかという提案をいたしました。その意見を改めて強調しておきたいということと,それからもう一つ,前回申し上げていないんですが,漢字を読む力というのは,実は言葉としての意味が了解できていないと,ただ単に漢字に音を当てるというだけでは全く意味がありません。

 そういう意味では,漢字191字分の読みが増えるということは,実は単純に191字ではなくて,それに連関する言葉の意味というものを理解した上で読みを措定していくという,大変な負担増であることは間違いない。その点をぜひご理解いただいた上で,しかし状況からいって191字については,中学校で割り振っていくしかないだろうと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。千々岩委員,ちょっと確認のためにお伺いしたいんですけれども,例えば今,均等にという形のものと,50字ずつという案がございますよね。ちょっと算数ができないのかもしれないけれども,50字ずつだったら3学年で150字。ちょっと私が間違っているのかもしれないので確認したい。

【千々岩委員】

 いやいや,おっしゃるとおりです。算数としては確かにおっしゃるとおりなんですが,イメージとして50字ずつと申し上げたわけで,したがって具体的に分けていくときには,私はやっぱり大体50字程度を増やしていくということで,1年生では300字程度から350字程度,2年生では350字から400字程度という形で,学習指導要領の書き方としてはいいのではないかという提案です。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。確認という形で。そうですね。191字をという形ではなくて,今の幅のある「程度」という,そこでの50字程度を増やしていくと。

【千々岩委員】

 そうです。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。もう少し伺えればと思います。
 じゃ,長野委員,お願いいたします。

【長野委員】

 中学校現場を詳しく知っていない者があまり意見をと思うんですけれども,ここで今千々岩先生が割り振るというお考えを出されて,そういう方向もあると思うんですけれども,やはり中学校だけじゃなくて,小学校,中学校,義務教育の段階として漢字をどうするかということ,そこをまず確認しておかないと。それはもちろん先生方もそういう意見になっていると思うんですけれども。つまり先には配当漢字の見直しもあるということも,ここでやるかどうかは別として,当然指導要領で決定することですから,そういうことを千々岩先生が第1回目に確認されました。

 私が申し上げたいのは,よく小学校,中学校の読書離れということを,実際に具体的にどういう形,あるいはそれが文字離れとか漢字離れということで,やはり単純に191字増えるということだけじゃないということは,語彙とか,あるいは関連する言葉とかとすると,相当な文章というか,文学も含めて,出てこないといけないといったときに,何か現実的な小学生や中学生の読書量とかいうことは,いろいろ今度の指導要領でも読書指導とかいうのはかなり企画されて,現在もいろんなところでやっているとは思うんですけれども,何かここで数字を割り振ってしまって,それを現場に押しつけるというんでしょうか,結果的にはそうなるかもしれませんけれども,もっと中学生の漢字も含めた文字文化というものがどうなっているのか。

 簡単にじゃないんですけれども,今939字の常用漢字を大体割り振っていますよね。191をさらに3等分云々ということだけで,ここがそんなに簡単にいっていいのかなという感じがちょっとします。何か現場の先生方で,読書離れとか,中学生の語彙とかという話を,ちょっと情報としていただけるとありがたいなという感じがします。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございます。大変大きなというのか,基本的なというのか,漢字が1つの文化として私たちにあるという,理念的なところをこういう機会には思い出してというご指摘だったと思います。

【飯田委員】

 うまく言えないかもしれませんけれども,小学校段階で読書離れ,確かにいろいろなゲーム等,それからパソコン等でそういう機器が発達してきますので,子供たちはそちらのほうに走る傾向にあることは事実です。そこら辺を踏まえて,多分村山委員の学校もそうだと思うんですけれども,かなり読書については,特に今,小学校段階は頑張っているのではないだろうかと思っているところです。今,どこの学校でも朝読書であるとか,読書への100万ページだとか,いろんな実践報告が私のほうに全国から集まっているような状況にありまして,かなりの部分,読みが多くなってきているのが段階です。

 それで,今回196字が増えるということで,じゃ,小学校段階で何かできないだろうかということが当然あるわけです。小学校としてはやはり,先ほど村山委員も言っていましたけれども,今,現状の1,006字をきちんとしていくのが一番の大前提だろうと思っています。小学校はご存じのとおり,平仮名もわからない子から始まりまして,6年間で1,006字をマスターしていくわけですが,やはり最初の段階から筆順であるとか,それからへん,つくりだとか,いろんな手法を使ってゆっくり興味を持つように教えていくわけですが,一気にそのものを,ただ小学校段階におろしてくるのは難しいだろうと私は思っていますけれども,ぜひきっちりさせていただくということを追記していただいて,そこら辺を中学校のほうの段階で追加していくことが大事だろうかなというところです。

 また,読みの段階ですけれども,今さまざまな総合的な学習等,それからさまざまな部分で交流等,それから発表,表現とかで,いろんなものから調べる学習をしているんです。そういう中で,この1,006字にかかわらず,多くの漢字を子供たちは実は読んだり,それから必要な範囲で書いたりもしているんです。そういう中で,触れる,なれるを多く経験させていきたいなと思っているところです。ただし,教えたものは書かせたい,1,006字のところをきっちりとさせていきたいというのが,やはり小学校現場では重要なことかなと思っています。ちょっと増えるとなかなか難しい部分が多くなってくるのかなと思っています。

【佐藤委員】

 すみません,冒頭に申し上げたことがうまく伝わったかどうかがちょっと不安になったので,もう一度発言をさせてください。小学校で学年別漢字配当表に示されている漢字1,006字は,中学校の3か年をかけて,書く指導のほうは繰り返し行います。それで先ほど申し上げたのは,読むことの割り振りということで,1,006字を小学校で読みとしては定着を図り,追加のものを合わせて読みの指導の字数は939が1,130になるわけですけれど,小学校の1,006字の読みの復習が外れれば,中学校1年生が400程度,2年生が400程度,3年生がその他の常用漢字の大体として330字という,そんな割り振りができるのかなと思ったわけですが,いかがでしょうか。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。おそらく千々岩委員もそういうようなご発言だったんじゃないかと受けとめています。小学校の1,006字,それから中学校で1,130字を大体均等に割り振りしてみると,今の佐藤委員がお示しくださったような数字になりましょうか。これも一つのご意見だろうと思います。

 一番目の議題をぼつぼつというような時間配分になってきているんですけれども,それならば言い残してはいけないというご発言がありましたら,最後のご発言になるかもわかりませんので,よろしくお願いいたします。大体今,割り振りということで言えば,均等だとか,あるいは若干2年生がこれまでよりも時数が増えるということで,若干着目をしてもいいんじゃないかとかいうようなご発言などが出ているかと思います。

 いずれにしても,中学校で大体を読み,そして残された常用漢字についても割り振りをしながら進めていきたいと。そういうことでは一つの方向性を見出し得ているのかなと思っています。

【長野委員】

 すいません。つまり学習負担ということを考えていったときに,現行の1,2年生の字数を,字種が決まっているわけじゃないんですけれども,250から300と。これらを1年,2年は場合によったらこのままにして,3年に増えた分を入れておくというか。変な言い方ですけれども。均等にしないという考え方もあると私は思うんです。

 というのは,やはり小学校から中学校に行ったときに,学習負担とか国語の時間数とかいうお話もありましたけれども,その部分は,小学校と中学校1年生までは現状でいきながら,急に3年生に増やすというのはどうかとは思うんですけれども,つまり常用漢字というものをこのまま中学校に,あるいは学校教育にぴたっと割り振って受け入れるというんじゃなくて,今の子供たちの,例えば先ほどちょっと申しました実態を考えたら,もうこれで常用漢字の読みとかいうのは,今十分に使いこなせるということが大事であって,それを学年ごとに均等に割り振るということ自体が,何か精神としてもう少しやり方はあるんじゃないか。

 別にそうしたいというわけじゃなくて。何かこのままいってしまうと均等になってしまいそうな感じがするので,我々の気持ちとすれば,小・中学校の国語,あるいは漢字教育だけじゃなくて,国語教育すべてを考えたときに,こういう判断になったという考え方もあるんではないかということを申し上げたかったんです。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。じゃ,今のさまざまなことを考えた結果,均等という形になることも,一つの案になるかもしれないと……。

【長野委員】

 そういうことです。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。今,この場の雰囲気として,均等という考え方が大きく出てきている面があるから,もう少し考えてみようじゃないかと,そういうご発言だったと受けとめさせていただきたいと思います。

 それじゃ,ちょっとほかの議題も用意してありますのと,それからこの件に関してはもう,前回にもお話をいただいていますので,今までいただいた意見をまた事務局のほうでまとめてもらって,今後へというぐあいにさせていただきたいと思います。

 それでは続いて2つ目の議題であります,常用漢字表改定に伴う教科書上の記載のあり方について意見交換を行いたいと思います。同じような形でご意見をよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

【吉田(和)委員】

 対応スケジュールを見せていただきまして,大変よくまとまっていて,ありがとうございました。この対応スケジュールを見ると,やはり今回の,私はこの教科書の全面実施と,それに伴う漢字の今話し合っていること,常用漢字改定を受けた教科書になってもらいたいなと,強く思っているわけです。そのためには,おそらく来年度の23年度には教科書採択がございますけれども,多分その採択の教科書にはそこを載せることはできないとは思うんですが,少なくともこの常用漢字の改定が行われて,このような字を中学校で学習するようになった。音訓割り振りが出てくるかどうかはちょっとまた定かではないんですけれども,可能な限り採択の段階でその表を少し出して,それを現場自体も踏まえて指導に当たっていく必要があるんではないかと思います。

 どこまでできるか,限られた時数の中で,負担が大きいということもございますけれども,やはり学ぶべきところをきちっとあらかじめ出していくことが,子供たちにとってはいいんだろうと思うんです。そして24年度から教科書が改訂された段階では,その教科書の中に,その改定された常用漢字表がきちっと入っているというのが私は望ましいと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。24年度から中学校の新しい教科書が用いられ,来年,23年度が採択に当たるということで,そのあたりを見通しながら,この常用漢字表が改定されたことが反映されればいい,こんなご意見だったかと思います。

【武元委員】

 毎回同じようなことを申し上げて恐縮なんですけれども,教科書発行者の側からちょっとお話をしたいと思います。この前も申し上げたかもしれませんが,現在検定中の24年度用の中学校の国語教科書に,今のお話のように反映させるとしますと,見本本か供給本かという選択しかないわけでございます。見本本ということになりますと,今年の秋におそらく予定されている検定権通知のときまでに,字種及び音訓の割り振りが行われていなければ,その対応はできないという関係になるわけですから,これは現実には非常に厳しい問題だと思います。

 もう一つの供給本という話になりますと,先ほど現行教科書においても,196の半数近くは出ているというご紹介がございましたけれども,仮に現在検定中の教科書でその程度だとなっていたとしまして,その後,その程度でよいとするのか,もっと出せるように求めるのかという問題が,我々には非常に重大な問題として出てまいります。それでもし後者であれば,つまりもっと出すように求めるという話になりますと,これは教材の追加等の処置をしなければ,到底それは不可能だという話になるわけでございます。

 それから,そのいずれにしましても,今回の改定にはこのほかの「ほか」であるとか,何々中の「ちゅう」,それから「まったく」,全ですね,「わたくし」,「かかわる」などの非常に使用頻度の高い言葉に対して,漢字が与えられるという状況になるわけでございます。そうしますと,そういうことに対応するという話になりますと,これはおそらく全ページにわたって表記の変更をしなければならないという状況になるわけでございます。

 ということになりますと,一たん検定が終わったものに対して,また改めて全ページについて訂正申請をしなければならないという事態になるわけでございまして,これは我々にとってのみだけではなくて,また検定のやり直しという事態にもなりかねないわけでございまして,非常に困難が大きいのではないかと言わざるを得ません。これはもうこの後の話ですけれども,今回の改定の規模というものは,30年前のものとは全く違うものだと思います。そうなると,これを教育を通じて中学生に普及,定着させるためには,今回は全く違う道を考えなければならないのではないかと私は思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。ちょっと違う道というのが比喩的なんですけれども,漢字あるいは国語にかかわるところで比喩的に発言されるのは大変うれしいんですが,具体的にもう少し踏み込むとどういう形になるでしょうか。参考までに。

【武元委員】

 つまり教科書上において,極端に言えば196字全部を提示することは,常用漢字一覧表は別ですけれども,本文中でとにかく出すということは,ほぼ不可能に近いということであります。

 一方で,まず一番最初の会議のときにお尋ねしたんですけれども,来年,再来年,中学校3年生,2年生の子供たちが,ひとまずは新しい常用漢字を加えたものを学習して,卒業していかなければならないと考えますと,これは言うとしかられると思って比喩的に申し上げたんですけど,例えば国がその対象となる子供たちに対して,新たに加わった漢字を小冊子の形にして配布する。これが一番私は漏れのない姿ではないかと考えたわけでございます。果たしてこんなことが可能なのかどうかわかりませんけれども,精神からすれば,私はそれが一番不公平がなくていいのではないかと考えたということでございます。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。具体的な提案が出てきました。実現するかどうかは,また検討してという形になるかと思いますけれども,一つのご意見だと思います。ほかにありますでしょうか。非常に大事な観点かと思います。と同時に,教科書のことですから先ほどからありますように,見本本あるいは供給本という,長い時間をかけてつくるものでもありますので,ここで一定の方針が決まらないと,見越してやっているうちにまた改定ということになってしまうという,その辺のところも確かにございます。ご意見,いかがでしょうか。

 こういうことを考えて進めるべきだという,今は方向性,あるいは先ほどから出ています言葉で言えば,理念的なところでもご発言をいただけたらと思います。中学校からお一人ご意見が出て,今教科書側からもお一人ご発言をいただきました。教科書ということになりますと,小学校も高等学校も……。

【吉田(和)委員】

 すいません,たびたび申しわけないんですけれども,中学校においては常用漢字の大体を読むという形になっておりまして,それぞれ配当になってはいるんですけれども,その配当漢字が小学校のようにきちっと定められてはおりません。したがって,教科書会社によって多少,いろんな字をどのように使うかということは裁量があると思われます。

 私も白表紙本の段階で全部訂正,その漢字を入れなきゃいけないということは,もう全く無理だと思います。しかしそれから1年あったとして,どのような形でその漢字を子供たちの目に触れさせるかということなんですけれども,確かに本文の中の問題も出てくるとは思われますが,それ以上に巻末の,あるいは漢字を取り立てたドリルのようなものを使っていけば,教科書の中にそれを位置づけることは大いに可能だろうと思われます。

 それで,文部科学省のほうでそれぞれの教科書に対応した新しい字を出すのか,それとも3年間の分をまとめて,増えた部分をドリル,あるいは学習ノートみたいな形で出すのかということなんですが,そういうものについてどこでどのように使うのかということになってくると,やはり学校現場は非常に混乱すると思われます。文部科学省が出したものだからといって,すぐにスムーズに現場がそれを使って,それを指導できるかというと,なかなか難しいと思われます。私はやはり教科書の中にきちっと位置づけていただかない限り,ちゃんとした読み書きをすることは難しいんではないかなと思います。

 これはちょっとまだ全然先の話なんですけど,この字数の300字とか350字とかというのが非常にあいまいなんです。このあいまいなのは,それはそれでいいと私も思っておりますけれども,ただ,どこまでやるのか,どこまでできたらいいのかということを子供に示すことが,できない状況に現在の教科書もあるわけです。この辺も踏まえてちょっと考えていかなければいけないと思いますので,教科書でそれぞれの学年配当みたいなものが,今後きちっと定められることも一つの対応の方式なのかなと,私は思っているところです。

 したがって,もう一度申し上げますと,採択の段階では無理だとしても,それが教科書になって出てきた段階では,その漢字が配当されているということは,検定上の問題ではなく実利的な問題として必要なのではないかと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。中学校の実際としては,新しく示されたものをできるだけ早く反映させたいということかと思います。教科書のほうとしてはまた,検定はすごく大事な一里塚でしょうから,その辺をどのようにこれから考えていくか,大きな課題が目の前にあるような感じがいたします。ほかにいかがでしょうか。

 漢字が改定されることになるわけですから,しかも義務教育の中でどのようにその漢字を提出するか。吉田委員の今のご発言の中では,やはり教科書はすごく大事な存在で,教科書の中で漢字を学び,教科書の中で漢字を読み書きできる。もちろん生活の中でも漢字を学ぶんだけれども,体系的,系統的に学ぶのはやはり教科書ではないか。だから教科書は非常に大事なもの,こういうご発言だったと思います。いかがでしょうか。

【森教科書課長】

 1つよろしいですか。

【吉田(裕)主査】

 教科書課長,よろしくお願いいたします。

【森教科書課長】

 先ほど,場合によったら訂正の箇所が多くて,検定のやり直しにもなりかねないんじゃないかというお話もございましたけれども,昭和58年のときと字数も多いということはございますが,昭和58年のときもこういった表記の変更でありますとか,常用漢字表の掲載というのは,訂正申請で対応をしているということがございまして,題材も取りかえて改めて編集をし直すということになれば,これは教科書会社のほうも大変なことだろうと思いますし,それなりに手続が必要になってくるかと思っております。

 先ほども武元委員がおっしゃったように,教科書に一体どこまでタイミングとの関係で求められるのかということも,十分関係してくるだろうとは思っております。

 なお,その訂正申請のタイミングについて先ほど,見本本でありますとか供給本というお話がございましたけれども,見本本というのは要は,採択のときに参考として見るための本ということでございまして,これはその年の5月,例えば平成23年度で言えば,平成23年5月ぐらいには間に合わないといけないということでございまして,それが供給ということであれば,印刷の期間もありますけれども,その後23年度間かけて訂正を考えていくというような手続になっていくという問題ではございます。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。
 じゃ,武元委員,お願いいたします。

【武元委員】

 今のお話はわかったんですけれど,先ほどの発言の中でも申し上げたんですが,結局その196の中のどの程度を教科書に求めるかというのが非常に大きなポイントであると,私は考えておりまして,そのところが自然に出ているものだけでよいとするのか,もっと積極的に,できるだけ提出するようにしなさいと求めるのかで,私は話が大きく違ってくると思っております。そのあたりがポイントになってくると思うんです。

【吉田(裕)主査】

 話がかなり専門的,また非常に詳細な部分というのか,新しく常用漢字表に加わった漢字の提示の仕方をどのようなレベルで反映させるか,これによって随分大きく違ってくるだろう。今中学校の教科書,これがおそらく焦点になろうかと思いますので,中学校に集中しているということではないかと思います。もう少し教科書について,このような観点もあるのではないかということがありましたらお願いいたします。

【金武委員】

 現在,小学校の学年別配当表はとりあえずは見直さない,1,006字,それを前提として,その残りを中学,高校でという形になっておりますけれども,近い将来配当表が見直されるとすれば,その数字だけではなくて,現在追加された改定常用漢字表の中には,難しい字もたくさんあるんだけれども,小学生でも知っているような字も入っているわけですから,当然もう少しプラスされて見直されるということが考えられるわけです。そこのところも視野に置いて,中学,高校もどうするかという具体的なことが検討されることになって,今回とりあえず決めても,それは学年別配当表が変更されれば,当然また改定されることになるのではないかと思いますので,とにかくこの常用漢字表の答申が告示になるまでに,これはとりあえずの対応を考えるということで,皆さんのご意見を聞いていても,絶対的にこれをきちんとぴたっと割り振って決めるということができにくいようなお話でありますから,やはりそこのところは大体の線ということで,しかも現場の先生方にとって教えやすいような線でまとめられれば,一番いいと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。3つ目の論点へということもありますので,時間を勘案しながらという形になりますけれども,もしもう少しあれば,教科書の表記のことについてお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。

【小森委員】

 よく理解できていないところがあるんですけれども,そもそもなぜ改定されたのかということを考えると,この情報化社会の進行,情報機器の普及,これに学校教育がどう対応するのかということがポイントなのかなと思うんです。情報機器の普及,そして情報化社会の進行に伴って,読みの力はどうあるべきだといったときに,これは国語科だけの問題なのか,そうじゃなくて言語活動の充実と言われているように,すべての教科領域で,例えば書く力,読む力をつけるという指導方法と評価,やはりこれを分けて,どう指導するのか,どう評価するのか考えて枠組みをつくっていくのも一つの考え方かなと。

 ですから196字を読めるように,そして情報機器,例えば電子辞書とかパソコンを使って,自分の考えを自分の言葉で書くときに使えるようにするということを考えると,国語科だけで枠組みをつくってよいのか。やはりすべての教科領域で読めて,そして情報機器を使って書けるようにする。そんなふうに考えると,教科書の役割は,武元委員,どうなんでしょうか,国語科だけの対応はちょっと窮屈で,その意味で先ほどの196字を1冊の冊子にということで,学校全体で使えるように,そういうところにつながると理解してよろしいのでしょうかね。

【武元委員】

 確かにおっしゃるように,例えばですけど,都道府県にかかわるような漢字というのは,間違いなく小学校で学習しておくことになると思いますので,これは当然社会科で主に出てくるものでございますから,そういうところで,小学校であれば担任の先生が同じだというのが原則ですから,そこで指導すればよいということになると思います。

 ただ,大きなところでは小森先生がおっしゃったとおりでございますけれど,学習指導要領の中で一つの漢字の範囲というものが定められているとするならば,それはやはり国語科の中でというのが第一に来るわけですから,その前提はまず確保された上で,より定着を図るためには,例えばほかの教科でもきちんと,出てくるたびに効率よく教えていくという配慮は当然必要かと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。小森委員のご発言にありましたけれども,今度の常用漢字表の改定は今の社会を反映しているということで,その社会の状況はある意味では待ったなしというところがあるので,それについてはできるだけ早く,指導なり,あるいは学習なり,生活なりに反映していくことが必要ではないか。ただ教科書をつくるということになると,教科書には時間がかかる。そうすると,その間のずれというんでしょうか,時間差をどのようにしていくかということも,一つの大きな課題であるということを,今ご指摘してくださったと思います。この教科書の観点,ご発言ほかにいかがでしょうか。

 なかったら,ぼつぼつ閉じなきゃいけないかなと思っていますけれどもよろしいでしょうか。今さまざまにご意見をいただきながら,また事務局のほうで整理していただいて,まとまった形でご意見をいただく機会を得たいと思っています。よろしいでしょうか。

 それでは時間の問題もありますので,未消化の感があるかもわかりませんけれども,3番目の論点に移らせていただきます。3番目も重い課題でございます。常用漢字表改定に伴う高等学校及び大学の入学者選抜の対応のあり方についてでございます。入学者選抜というのは,大変責任の重い課題でございますので,慎重な議論,また慎重な対応がやはり望まれます。これについてのご意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

【柴田(洋)委員】

 入試センターの柴田でございます。我々のこの大学入学者選抜につきましての基本的なスタンスというのは,あくまでも入学志願者の不利にならないような対応ということで,従来より,重要な変更については予告期間を置いて変更を行ってきております。今回もそのような配慮をした上で実施していくことになろうかと思います。

 先例といたしましては,先ほど当用漢字から常用漢字への前回の改定のときの配慮が出ておりましたけれども,大方そういうことになろうかと思います。実は国語ではないんですけれども,10年ほど前にドイツ語表記の正書法が変わったときの対応というのがございまして,この際にも3年間の予告期間を置いた上で実施しております。

 今回も少なくとも3年は置いて,新たな高校の入学者が卒業する者に対応したいというのが基本であろうと思います。その際,先ほど教科書のお話もございましたけれども,資料4をごらんいただきますと,今回高等学校の学習指導要領が,国語につきましては平成25年から実施されまして,平成28年に大学入学者が出てくるということになります。

 我々入試センターではセンター試験に対しまして,この新しい高等学校指導要領に対応した国語の問題等につきまして検討を始めておりますけれども,おそらくこの常用漢字の利用につきましても,それとあわせて検討することで,今回の場合には時期がほぼ一致するんではないか,その新しい教科書を用いて問題を作成するのに合わせて,この常用漢字の実施ができるのではないかと考えております。ただ,個別の大学におきましては,それぞれ大学の入学者選抜方針というのがございますので,前回と同様に,やはり文部科学省のほうからそういう通達を出していただければ,それにのっとってということになろうかと思います。

 国語科の問題はそれで対応が進むと思いますけれども,他の教科につきましては,実は理科と数学が1年前倒しで学習指導要領の実施が進んでおります。これにつきましては,我々の理解といたしましては,先ほどもございましたけれども,一般的に我々が現在入試センターでやっておりますが,この改定常用漢字表という机上配付資料がございますけれども,7ページにあります,この基本的な性格というのにのっとって,実は国語以外の,例えば理科とか,地理,歴史,それから公民,そういう教科で用いられる専門的な用語というのは,常用漢字表に必ずしも沿っていないわけでございまして,その扱いについては従来どおり,必要な場合には振り仮名等振って,間違いのないようにするというような配慮をした上での作題,出題ということになろうと思います。

 ただ今回,前回と違うところが1つありますのは,五字ほど削除されるものがございまして,これに対して移行期間中どういう配慮をするかということは,あわせて考慮しなければいけないのかなということも考えているところでございます。

 以上,入試センターとして検討しているところの概略をご説明申し上げました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。入学試験,大学入試センターのお仕事は,大変大きなお仕事でもありますので,今のような早い時期からの検討が必要だということで,ご紹介がありました。ほかにいかがでしょうか。高等学校の入学試験,大学の入学試験,この両者が今問題なので。

【村越委員】

 高等学校の立場から言いますと,今おっしゃったとおりしていただけると大変ありがたいと思います。,かなりの数が増えておりますし,早める必要は今見つからないだろうなと。小・中・高ときちっと対応が考えられ,たところでセンター入試に入っていただける,ぜひそうしていただければありがたい。そういう意味では,文科省からきちっとした通達も出していただけると,大変ありがたいと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。きちんと一定期間の配慮というんでしょうか,そういうことをきちんと踏まえた上で適用していただきたい,こういうご意見だったかと思います。

【吉田(和)委員】

 私も中学校から高校に行く際の入試についても,やはり同じようにお願いできればと思います。と申しますのは,教科書が私が話したように,漢字が全部うまく入ったとしても,そこを使うのが24年度ですので,今の1年生が3年になったときになります。となると,その新しい教科書になってからやはり3年たって,それからのほうがいいのかなと思います。今の時代ですので,多少急ぐにしても,私は26年度ぐらいがぎりぎりではないかなと思います。ほんとうに早くそれをやることによって,それこそ1年から積み上げて漢字を習ってきた子供たちでなければ通らないような入試になってはいけないんだろうと思いますので,その対応については,私は大学入試センターと同じように,ずらしてやっていただければと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。入学試験ということで,高等学校の入学試験のことについても触れていただきました。ほかにいかがでしょうか。

【千々岩委員】

 期間的な対応につきましては,今,柴田委員や村越委員,吉田委員がおっしゃったような対応を,ぜひ通達という形でとっていただきたいと私も思います。ただ,この後議論の話題になってくる手書き文字の問題と,実は関連してくるんですが,入試には読むことだけではなくて,当然書くことも出題されるということになりますと,聞くところでは,非常に活字体に即した形で,点画をはねるとかとめるとかというところまで細かくこだわって採点をなさるとか,あるいは必ずしもそうではないとかと,採点基準ということに関してかなりばらつきがあるように伺っております。

 そういったことを考えますと,この期間的な通達の問題だけではなくて,手書き文字をどのように評価,採点していくのかという問題も検討した上で,この入試への対応ということは考えていかないといけないのではないかと思います。それについてはまた別途,次の議題で話題になるかと思います。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。そうですね。漢字をおそらく入学試験の一つには使うでしょうから,そうなったときには書かせる。大学入試センターの場合,現行どおりにいけば,書かせることはないけれども,個別の大学の入学試験という形になりますと,これも現状でいけば,おそらく書かせることが出てくるでしょうから,その評価をどうするのかということとは極めて連動している,こういうご意見だったと思います。

 手書きのことについては,もうちょっとたくさんのことを内容的に持っていると思いますので,できたらそちらのほうへ譲って,入学試験のことでもう少しご意見がありましたら,入学試験対応ということでご意見を賜れればと思いますけれども,いかがでしょうか。

【柴田(悦)委員】

 愛知県教育委員会の柴田でございます。今,ちょうどこの資料4を拝見しながらいろいろ考えていたのですけれども,,右端にありますこの平成3年3月に出された初中局長の通知です。つまり配当表,これがやはり学校現場,あるいは入試も含めてだと思いますけれども,指導の基準になっていると。当然教科書もこの基準にのっとって,ルビを振る,振らないということも含めてされていると私自身は認識しているのですけれども,この表を最終的には当然出していくことになると私自身思っているんですが,もちろんこの会で出していくということではないということも当然認識しておりますけれども,この通知が今回どれぐらいの日程でできるのかということは,1つ大きな問題のような気がします。

 こういった配当表ができて,これを基準に動いているというところがあるものですから,今回,実際にこの内閣告示が本年度の秋から冬にかけて行われるわけですが,その後,前回で言えばこの昭和58年,高校入試適用とありますから,そのまま同じように適用するのか,1年ずらすのか,2年ずらすのかというようなことで,もちろん考えていくことになろうかと思うんですが,それを考える上でも,この通知の作成がどういう日程で行われるのかというようなことを勘案した上でやっていかないと,もしかしたら学校現場が混乱する可能性もあるのかなということを感じております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。今日の第1議題とも関連を持っているということかと思いますけれども,この割り振りについては前回も杉戸委員のほうから,平成3年3月のこの割り振りをしたときの基準としての項目なども用意されているから,何が基本で何が応用的な側面を持つのかというようなことなども勘案しながら,もしつくっていくということになれば,やはりその前例が一つの参考資料になるだろうと,前回も話題になったと思います。ほかにいかがでしょうか。

【吉田(裕)主査】

 積山委員,中学校の現職の先生として,高等学校の入学試験ということで,今さまざまに意見が出されていましたけれども,積山委員としてはいかがでしょうか。高校入試というところでも接触があるんじゃないかと思うんですけれども,ご意見があれば賜りたいと思います。

【積山委員】

 私は,吉田先生をはじめとして,今議論をされてきたように,1,2,3ですぐ実施というのは非常に危険であるという意見で一致しております。やはりある程度の期間を置いてということを,しっかりと周知していただきたいなと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。周知期間をきちんととって,それから従来もありましたように,文部科学省から通知のような形をとっていただきたいという,この2点ぐらいで今大きく整理されつつあるかなと思います。いかがでしょうか,ほかにこの件に関して。

【金武委員】

 皆さんのご意見と大体同じなんですが,この現在の常用漢字が当用漢字から変わったときと比べて,今回のほうが変わり幅といいますか,変更の点が非常に多いので,やはり準備期間を前回よりはもっと慎重にとる必要があると思います。字数が非常に増えているということと,先ほどおっしゃったような字体の問題というものは,常用漢字のときにはありませんでしたから,そういうことも考慮しなければいけないということで,やはり前回どおりのスケジュールがそのまま参考になるとは思えないといいますか,事情が少し複雑になっているということで,時間をかけるべきではないかと思っております。

【杉戸委員】

 今の議題の入学試験のポイントでない,1つさかのぼることになる発言になってしまいますが,恐縮ですが,スケジュールということに関してですのでお許しいただけないでしょうか。

【吉田(裕)主査】

 はい。

【杉戸委員】

 1回目,2回目のこの専門家会議での議論が,このスケジュールについて具体的には,例えば今日の資料4のようなものを目の前にしては,されてこなかったと思います。特に私などのように,この教科書のつくられ方のスケジュール,進行の概略もわかっていない者にとっては,今日の議論は,1回目,2回目の議論の内容をスケジュールとどう整合性を持たせて考えるかということで,非常に重要なポイントに差しかかったと思います。

 端的に先ほど来の議論を伺いながら私が思っている疑問は,例えば今の中学校の22年度の教科書検定,来年採択,24年度からの使用という,ここに今回の常用漢字表の改定の趣旨を反映させることが必須であるかどうかということです。次の26年度から検定の始まる期,さらにはもう一期後くらいでようやく完璧な実現が見られるというスケジュールを前提にして,そこに向かっての移行期間の対応策を考えるというようなことが,ぜひ必要ではないかということを思います。今の金武委員のご発言をさらに強くして言えば,今回の中学校の教科書,武元委員が繰り返し今回のその検定,あるいは採択のスケジュールとの重なりぐあいを発言されておりますけれども,それはもうむしろ今回の改定常用漢字表については反映させないということです。学習指導要領に常用漢字表についてこう扱うんだとあるのは,これはまだ改定する前の常用漢字表のことであるというような移行期間を置いて,少なくともあと3年間くらいは,今話題になっている平成3年に行われたようなものを作る,そしてそれを目指す移行期間として考えるような姿勢がぜひとも必要じゃないでしょうか。

 3年間,この時代に中学校時代を送るその子供たちに,空白期間を与えるんじゃないかということがあるとしても,それは改定前の常用漢字表についてはきちんとやるわけですから,22年度以前と同じ教育ができるわけです。あえて申しましたけれども,少なくともそういう将来の漢字配当表の見直しとか,音訓の取り扱いの表の見直しとか,それを見越した移行期間を意識した,例えば今後の3年間を設定する,そういう姿勢をはっきりさせて議論をして,あるいは案づくりもしていただきたい,そういう希望を持ちました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。慎重を期してということかと思います。ある意味,難しい選択ですよね。今の常用漢字表の改定が,情報化社会,情報機器という,日常生活の待ったなしみたいなところで出されてきている。子供たちはその中で生きている。一方で教科書に反映させていくことは,相当の時間をかけなきゃいけない。それでは,具体的に指導はどうするかというような,今日ご意見いただいたところが三すくみのような形で,整理されるかな,見渡せるようになってきたかなと思うのですけれども,いかがでしょうか。

 非常に熱心にご議論いただいたと思いますし,問題点もかなり鮮明になってきたと同時に,難しさも加わってきたというように受けとめておりますけれども,残された時間が20分を切りつつあります。入試選抜に関してもう少しご意見を伺えればと思いますが,いかがでしょうか。

【小森委員】

 先ほどの千々岩委員の発言なんですが,今回の常用漢字表改定の趣旨からいって,とめ,はね,はらいということを評価するという方向は,私は沈むのではないかと期待しているんです。つまり,字体として骨のようなことはきちっと認識して,それを語彙,語句として使う。特にPISA型調査とか,全国学力調査のB問題で求められているような,記述力を評価するという方向が期待されているんではないかと,千々岩委員の発言を聞いて考えたんですが,どうでしょうか。

【吉田(裕)主査】

 千々岩委員,ちょっと待ってください。すいません。今関心が4番目のほうに関心が移りつつあるかなというぐあいに思っています。

【小森委員】

 すいません。

【吉田(裕)主査】

 いえいえ。私の進行として,4番目のものをどのあたりで入れていこうかと,今勘案しつつあるんですけれども,3番目の入学試験対応というところはもうよろしいでしょうか。これについては周知期間をきちんと置くべきだということと,それから通知を今回もぜひ出してほしいというところあたりが落ちつきどころかなと思って,その後の発言を求めていますけれども,その発言は特には出なくて,今小森委員からもご指摘がありました,やはり4番目の常用漢字表改定に伴う学校教育での筆写(手書き字形)の取り扱いについてというあたりに関心が移りつつあるかと思うんですけれども,そのように判断してよろしいですか。

 いや,入学試験のところでこんなことを話題にしたかったというのがありましたら,最後のご意見として伺いたいと思います。やっぱりありますよね。それじゃ,どっちがいいかな。

【千々岩委員】

 すいません,私が議論を4番に持っていくような発言をしてしまったような気もするんですが,ただ,その入試の問題を考えるときに,手書き文字への対応,特に評価の仕方ということについて示さないと,今回の常用漢字表の場合は二点しんにょう,しょくへんのものもありますし,いろいろと現場では混乱を起こすだろうから,その問題も考える時間が欲しいなという意味で,この入試の対応について考えていただきたいという発言でした。

【吉田(裕)主査】

 そうでした。ありがとうございました。

【柴田(洋)委員】

 先ほどもちょっと言及しましたけれども,今回5つ削除の文字があるんですね。これをその移行期間にどう取り扱うかということに,ちょっと我々としては皆さん方のご意見を伺えればと思います。出さないほうがいいんでしょうけれども,それをどういう形で徹底するかというのがちょっと,前回はなかった観点かなという気がしております。

【吉田(裕)主査】

 削除される文字について,この期間どのように考えたらいいかということのようですね。もちろん入学試験との対応と,こうでしょうね。特に何か今のことについて,ご意見ありますか。

【髙木副主査】

 基本的には先ほどから委員の皆様から出ているように,文部科学省からの前回のような通知の形で行うと。増えたものも通知ですから,当然減ったものも通知の中に入っていくだろうと。そうなると,期間も今までと同じ形で,削除するものだけ早く削除したりするという形にはいきませんので,同じ形の通知文の中で処理するというのが,現行どおりというか,今までやってきたことを踏まえた通知の出し方だと私は考えています。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。それじゃ,これで一たん3番目の話題を閉じてよろしいでしょうか。これもまた事務局のほうで整理していただいて,またお伺いできる機会を得たいというぐあいに思っております。それでよろしいですか。事務局もいいですか。

 それじゃ,ちょっと残された時間は短いんですけれども,4番目の常用漢字表改定に伴う学校教育での筆写(手書き字形)の取り扱いについてということを,少しだけ話題にしておきたいと思います。残れば次回に引き継ぎます。

 さっきの小森委員から千々岩委員へのご質問というのが,これのきっかけになろうかと思います。その前に, 事務局のほうから,何かありますか。

【倉見学校教育官】

 冒頭なんですが,ここは手書き字形の扱いについてとしてしか,私は申し上げなかったものですから,この論点メモのマル4について,ちょっと読み上げる形になってしまいますが,もう一度説明させていただければと思います。今回,改定常用漢字表において,追加字種の字体について,「表外漢字字体表」に示された「印刷標準字体」を基本としつつ,例えば下の5文字が例に挙がって,セットで1語ずつ書いてありますけれども,左側に書いてある文字を標準としつつ,括弧内に示す「許容字体」をあわせて明示するということにされました。これらをはじめとして,筆写の楷書字形と印刷文字の字形の違いが字体の違いに及ぶものについて,学校教育における手書き指導の取り扱いについてどのように考えるかといったようなことについて,ご意見をいただければと思います。

 ちなみに,しんにゅうについては改定常用漢字表の答申の「基本的な考え方」というところに,この点線で囲ってあるような文言があります。しんにゅうの印刷文字字形である一点しんにゅう,二点しんにゅうに関して付言すれば,どちらの印刷文字字形であっても,手書き字形としては同じ,この揺すって書く一点しんにゅうの形で書くことが一般的であるという認識を,社会全般に普及していく必要があると,このような記述になっているところでございます。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。結局論点メモでは,今話題になりましたように,特に字体の違いがあるものの中で,しんにゅうと,それからしょくへんとを1つの事例にして出しているということでございます。この点についても及ぶことができればと思いますけれども,先ほど来申し上げていますように,この4番目の観点は,また次回へもと考えてもおりましたので,次回へのつながりということを踏まえながら,さっきの小森委員から千々岩委員へ向けてのご質問がありましたので,それを残してしまうと宿題になるかもしれませんので,そこをとりあえずお願いしたいと思います。

【千々岩委員】

 私の考えでは,初出の漢字として指導する場合は,読み,書き,使い方,こういったものをできるだけ,この標準字体に合わせる形で指導して,あるいは教科書体に合わせる形で指導していくべきだと思っておりますが,実際に手書きをする場合は,当然書写的な視点からいっても,筆脈その他の中で,とめるべきところをはねてしまったりということは起こり得ます。

 したがって,そういったことを考慮するならば,評価する際の基準としては柔軟にやっていくべきであろうと。したがって小森委員がおっしゃるように,字体の細部については目くじらを立てないような方向に学校教育のほうを持っていくような,そういう対策も必要なんではないかと。それはどういう具体的な対策にするかということについては,またじっくり意見を申し上げたいと思いますけれども,そう考えているということです。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。この件についてはもう残された時間も少ないから,とりあえず次回,本格的な議論をしていただくという形にして,今はご意見拝聴という時間に充てたいと思います。いかがでしょう。

【髙木副主査】

 手持ち資料,机上配付資料の常用漢字表のところをごらんいただきたいんですが,括弧のついている最初からの17ページあたり,このデザインの問題を検討していかなきゃいけないと思うんです。17,18,19のところ,さらには明朝体と筆写の楷書との関係,このあたりがかなり出ていまして,今の千々岩委員のご発言と兼ねまして,こういったところを実際に学校教育の中でどう考えていくかというのは,非常に大きな課題になってくるなと思います。

 特に活字体。例えば文化審議会の漢字小委員会の中でも,てへんのはね,とめをどうするか。活字の場合には,実はあれははねてないんですよね。だけれども,学校教育の中では手へんのはねは,はねないとバツになるといったような事例も出てきていますので,ぜひそういったことも考えてまいりたいと思っております。

【吉田(和)委員】

 私は196字追加されたものについては,基本的に何と言ってもいいんですけれども,一般的にスタンダードというか,基準みたいなもの,手書き字体みたいなものをやはり明示する必要があるんではないかなと思います。というのは,いろんな字が許容されることは,私は基本的には問題ないと思うんですけれども,指導するに当たって,あるいは子供たちが実際に目にするに当たって,教科書上とかさまざまなメディアを通して目にする場合もそうなんですけれども,一応標準的なものを明らかにする必要があるのかなと思います。

 これは必ずしも今髙木先生がおっしゃったように,調べてみますと,明朝体というわけではないようなんです。したがって,そこのところをもう少し吟味する必要があるかなと思います。しいて言えば手書き文字体みたいなもので,それを出していく必要があるかもしれません。今までの1,006字についてもおそらくそういうことは言えると思うんですが,この追加した新しい196字については,特にそのような指導上の基準が必要ではないかと思っています。

【武元委員】

 次回の議題というか,話題の中に含めていただきたいという意味で申し上げます。つまり今回の改定では,二点しんにょうとしょくへんのものだけここに挙がっていますけど,問題になるのはこれだけじゃございませんで,「賭ける」とか「箸」であるとか,嗅覚の「嗅」であるとか,点があってもなくていいもいいというものまで,実は含まれているわけです。おそらく筆写文字としては,ほかの同一部分を持つ漢字に合わせる形で示すことになると思うんですけど,ここで問題は,教科書上で使用する明朝体,ゴシック体等の漢字においてどれを使うのか。つまり表外漢字の形のままのものも使うべきなのか,否かということなんです。

 私の考えを言ってしまうとおかしいんですけど,社会一般で目にする文字と教科書で目にする文字とが違ってしまうというのは,私は避けたほうがよいと思います。ということは,教科書上で使用するそれらの文字については,一応字体を合わせたものを使用するという方針を出していただかないと,教科書が混乱するということでございます。それをぜひ話題に入れて。

【飯田委員】

 小学校の教科書文字,教科書体,これはやはり一番の教師が子供たちに指導していく標準的な文字としてとらえますので,教科書体だけは出版社のほうできちっとしていただきたいと,そう思っているところです。それがやはり評価するときの基準になっていくのではないだろうかと思っているところがありますので,一言だけ。

【金武委員】

 この問題はいろいろ議論があると思いますので,次に時間をかけてということだそうですので,簡単に申し上げますが,今までおっしゃったように,漢字というものは活字体と筆記体とは昔から違っているわけですから,相当の許容範囲があって,ほんとうは採点のときも,先生がある程度弾力的な考え方を持っていられるといいんですが,実際の現場の立場としては,基準がないと非常に採点がしにくいということはわかります。

 そしてまた今回,しんにゅうとかしょくへんで許容字体が入ってきて,しかもこの字体についての解説では,筆記をする場合はこう書いてもいいという例が,この前の常用漢字表のときよりはるかに多くなっておりまして,特に22ページの3においては,字体の違いに及ぶものが随分入っています。これも書くときはこれでいいという示し方になっていますので,教科書体というものが筆記体に基づいてつくられているとすれば,少なくともしんにゅうについては,ここにもありますように一点しんにゅうでそろえるほうが,子供にとっては非常に覚えやすいだろうと思いますが,明朝体その他についても,教科書体で一点しんにゅうで,明朝体だと二点しんにゅうにしたほうがいいのか悪いのかということも,教育上は非常に迷うところもありますので,これはこの次,いろいろご意見を伺っていきたいと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。ご意見を伺うという形で,次回に送りたいと思います。

【千々岩委員】

 これはお願いなんですけれども,専門の「専」という字,それから博士の「博」という字,ここに点があるかないかというものは,字源をたどればもともとの字が違うということで,学校教育上処理ができると思うんですけれども,嗅覚の「嗅」という字の「犬」なのか「大」なのかということについては,字源をさかのぼってもこれは説明のしようがない。とすると,学校教育上どのように先生方に指導していけばいいのかということを考えるための手がかりとして,できれば文化庁のほうで,この手書きということを,「犬」でも「大」でもいいということをお考えになった根拠みたいなものをお示しいただけるのであれば,次回資料としていただけないかなというお願いですが,無理であれば結構です。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。今の有無も含めて,できるもできないも含めて次回へという形にしたいと思います。すいません,最後の4番目は,できたら付録のような形で,メインは次回へと考えていたのですけれども,委員のお気持ちとしては,むしろ4番目こそメインだったのかもしれません。白熱した議論をいただきましてどうもありがとうございました。

 今日は中学校の読みの割り振りをどうするかというところから,字種,それから音訓,そして入学試験,あるいは教科書への波及,さらに最後に字体。漢字の一番基本にかかわるところを話題にしていただいたと思います。

 時間が参りました。余裕がない進行で,大変申しわけありませんでした。では,これで本日は閉じたいと思います。

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