今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する有識者ヒアリング(第2回) 議事録

1.日時

平成22年4月27日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館16階 特別会議室

3.議題

  1. 出席有識者からの意見発表
  2. 意見交換

4.議事録

【髙橋財務課長】  それでは、ただいまから今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する有識者ヒアリングを開催させていただきます。本日はお忙しいところをお2方、ご出席いただきましてまことにありがとうございます。本日ご出席の方々のご紹介をさせていただきますが、まず、経済評論家勝間和代様でございます。

【勝間氏(経済評論家)】  よろしくお願いします。

【髙橋財務課長】  それから、国立教育政策研究所研究員山森光陽様でございます。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  よろしくお願いいたします。

【髙橋財務課長】  本日、文部科学省側からは、川端文部科学大臣、少し遅れておりますが、この後、鈴木文部科学副大臣、そして、高井大臣政務官、その他関係官が出席をさせていただいております。よろしくお願いいたします。

それでは、早速でございますけれども、まず、勝間様から15分程度ご提言を賜ればと思います。資料2-1というのをいただいておりますので、あわせてご覧いただければと思います。それではよろしくお願いいたします。

【勝間氏(経済評論家)】  勝間です。よろしくお願いいたします。

すいません。私、第1回の内容を完全に把握しておりませんので、重複があったら恐縮ですが、今日お持ちした資料は何かといいますと、実は、200人以上の方が少人数学級について賛成するか、反対するかという意見をまとめたものです。この資料の発端は、私が毎日新聞さんに今、クロストークという連載をしておりまして、こちらのほうの連載内容は、さまざまな政策ですとか、経済上の提言を行いまして、それに対して読者の方々が賛否を表明するというような仕組みになっております。

2008年10月17日ですから、ちょうど1年半ほど前の提言が、まさしくこの学級編制の、特に人数に関するものでした。こちらは、25人学級にしたらどうかというような、かなり大胆な提案をさせていただきまして、根拠といたしましては、やはりOECD比において非常に日本の公教育予算が低いがゆえか、ほかの原因があるのかどうかわかりませんが、基本的には、真ん中にありますとおり、日本の小学校の1クラス当たりの人数が小学校で平均より30%以上大きく、また、中学校では40%ほど大きいということが明らかになっています。

小人数のほうが子どもたちの教育にいいという研究については、もう私がここで申し上げるまでもありませんが、さまざまな実証研究がございまして、結局、この結果、何が起こるかといいますと、日本全体の競争力低下ということを懸念しております。実際に私はオーストラリアに先週ずっと行っておりまして、なぜオーストラリアが元気なのかということについてずっと勉強してきたんですけれども、教育の違いというのは正直言ってあると感じました。とにかく教育投資というのが、家庭においても、公的においても非常に大きくなされている。例えば男女共同参画のほうも私、議員をしておりまして、非常にどうして女性の活躍がなかなか日本で進まないのかということも随分研究させていただいているんですが、例えばオーストラリアのロースクールは大体半々から60%ぐらいが女性だそうです。実際に日本で女性がどのくらいかといいますと、2割いないぐらいだと思います。私、ファイナンスのマスターに行っておりましたが、10%いなかったと思います。結局教育の機会をなるべくさまざまな過程で、性別を問わず、あるいは所得階層を問わず、均等に与えるということを考えた場合には、やはりこれも論証がたくさんありますが、なるべく小さいうちから良質な教育を出すべきだ。

そのためには、正直申し上げて、何と比較するのか、非常に難しいと思いますが、OECDと比較した場合に、はっきりと日本の小中学校というのは人数が多いということがわかっております。こちらのほうについてなぜかということについて、やはり予算不足と言われてしまうんでしょうけれども、この次のページをめくらせていただきまして、まとめと考察ということで、6点ほど議題を出させていただきました。

1つ目が、もうこのように実際にヒアリングが行われているということがまさしく前に進んでいるということですけれども、どうやって国民全体がもっと少人数学級に予算を使っていいんだというようなコンセンサスをもっていくためのプロセスを経ればいいかというのが1つ目です。

2点目としまして、少人数学級がすぐにできなかった場合に、今、実際に行われていますが、正副担任制や習熟度別クラス編制について、これもかなり地域別のばらつきがあるものをもう少し抑えられないかということです。

3点目で、これがすごく私は実はびっくりしたんですが、200人ぐらいの皆さんの意見、これはインターネットのほうにいっていただけると全部出ておりますけれども、意外なぐらい親から教員に対する不信感が高かったということです。25人学級にすると当然教員の増員ということが行われますが、そうすると、今でさえそんなに正直言ってできない信頼関係がますます下がるのではないかといったような意見が非常に多く寄せられて、また、教員のほうの職業としても、40人学級を持って非常に疲弊する中で魅力が低下しているということは否めない事実ですので、親と教員の間のコンセンサスをどうやってつくるかということが必要だと考えています。

4番目については、やはり国民が結局知らないんですよ。幾ら財源がかかるかということがふわふわした議論では、結局、では、25人学級、あるいは30人学級にした場合に追加として何兆円なのか、あるいは何千億円、何百億円の単位なのかというお金の単位の試算というのが必要だと考えております。

5番目として、教員の教育プログラムということに関して、かなり随分議論がありまして、実は、これ、次にお持ちした論理力を高める教育をという話につながっていくんですけれども、結局25人、30人学級した場合に、このような教育プログラムを保障するから、だから、大丈夫だよというような国民の安心感というのが一つ必要だと考えております。

6番目としまして、これは非常に私は、学校の先生に申しわけないなと思っているですが、友人にかなり中学、小学校の先生がいます。彼ら、彼女たちが嘆いているのは、ほんとうにはしの持ち方から指導しなきゃいけないと。食事をするときにはちゃんといすに座っていなさいとか、ほんとうにとんでもないところがら始めなきゃいけないということをふだん嘆いておりまして、単に少人数学級であるとか、学校教員の増加だけではなくって、これをどうするかということについて議論の必要があると思います。親の教育というのをどう行うのかということを同時にカリキュラム化なり、予算化なりすることによって方策を立てないと、学校だけではなかなか補え切れないポイントがあると考えております。

次のページから、200人の意見を主にざっくりまとめたものです。なぜ少人数学級に反対するかという点については、やはりコストの問題と教育水準の問題についてかなり懸念が上がっておりました。どちらかというと反対という意見においては、今度コミュニティの問題を指摘していまして、やはり生徒や児童に対してもある程度の人数が必要ではないかということ、あと、非常に多いこれは意見だったんですが、自分たちが60人学級や40人学級で大丈夫だったから、今の子どもに25人学級にする必要はないだろうという意見が非常に多かったんですね。ただ、それは戦後のほんとうに学校も教員数も足りないころの時代の話で、一端には話はできないだろうと思ったんですが、意外と多かったです。大体賛成のほうはまさしく私が申し上げたことなんですけれども、家庭の教育費の削減であるとか、あるいは子どもたちがそれを望んでいるという声や、お金や人手をもっとかけるべきだという意見が多かったです。

次のページの4ページ目に、現場の先生がかなり細かいお答えいただきました。教室のほうはリフォームで対応できるんだから、コストコストと言わずに、能力差その他に関して、少人数学級にして一人一人をもう少し視野に入れて考えるべきだろうということであるとか、あるいは家庭との役割分担において、親との経済関係というのが非常に大きいという意見が出ております。これはちょっと私ごとの経験なんですが、今の私の子どもは港区の公立小学校に通っております。約30人ぐらいの学級なんですけれども、実はほとんどの子どもが塾に通っているような地区におります。それで何が起こるかといいますと、ほんとうに2人ぐらい全くついてこれない子どもが出ているそうです。先生はその子どもにかかり切りになるし、逆に塾に行ってしまっている子どもたちにとってはほとんど授業中やることがないんだそうです。なので、非常に不幸な状態になっておりまして、ですので、ぜひ、ある程度の塾に行かずとも子どもたちがついてこれるような人数というのはどういう体制なのかということについて、もう少し考えさせていただきたいと思います。

ちなみに、これ、今回の、私、親としての気持ちなんですが、うちの子、どういう状態になっているかといいますと、今、小学校6年生なんですけれども、中学受験をするんですけど、週に5回、いわゆる日能研のような大きな塾に通いまして、週に1回個別指導の塾に通って、夜帰ってくるのは毎日毎日9時過ぎなんですよ。そうすると、もう朝起きられないんですね、もうたたき起こさないと。たたき起こすんですけれども、そうすると、大体1週間に1回ぐらいくたびれて寝坊したり、半日ぐらい家でぶらぶらしないといけなくなる。何でそんな状況なのかということを考えつつ、親としてとめるべきかと思うんですが、自分の子どもの友達がみんなそれをやっているので、自分だけそのレースからおりるのが嫌だと子どもが言い張るんですね。そうすると、私としても、子どもが行きたいと言っている塾を止めるわけにはいかないので、そこでそういう状況に参加せざるを得ない。この状況が正常なのか異常なのかと聞かれたら、やはり異常ではないかと言わざるを得ないと思います。その背景としては、私どもでやはり、これは親としての意見なんですけれども、今の公立中学に対してあまりにも教育のばらつきが大きいので、私立中学に入れてばらつきを、いわゆるくじ引きになることを抑えたいというのが正直な気持ちです。

反対派への反論というのを幾つかいただいておりまして、近年の変化や国際競争に対する対応ということで、昔、行われた教育と今、必要とされている教育は違うんじゃないかという議論が出ておりました。また、ほんとうに多人数が必要な体育のようなプログラムについては、2クラス合同で行うことによって補えるのではないかという意見もいただいております。

次のページからは、これは補足です。すいません。5ページ目はちょっと一回飛ばしていただいて、7ページ目ですね。これはつい最近、2月の議論でして、もともとゆとり教育というもののねらいもありましたけど、論理力の思考を養成するような教育をということで、どうやってもっともっとロジカルシンキングができるようなことを教育体系として入れるかということを提案させていただきました。その結果としてのご意見が、あと、9ページ目からは、また別の意見としましてまとめさせていただいたんですけれども、どうやって教員がそもそもそのようなロジカルシンキングに対応できるような教育のプログラムをつくるほうがやはり必要ではないかということ。

私、すいません。ここ、専門ではないんで、片耳に挟んだだけなんですけれども、検定教科書の制度がこれほどしっかりしているのは、実は日本だけで、各国においてはシラバスのようなものがあって、そこに対してかなり柔軟なテキストの選択については、ほとんど教師の方に任されていると聞いております。ですので、まさしく教師のほうもどうやって柔軟な思考でもって子どもたちを個別に指導できるかということをやっていかないと、なかなか同じ両輪ですから、クラスばっかり小さくなっても、家庭と教員の育成をどう行うかということをまとめないとなかなか難しいのかなと考えております。

最後は、10ページ目でして、結局、最後の出口がどうしても、私が先ほど中学受験と申し上げましたけれども、センター入試であったり、大学受験というのが教育の出口になっておりまして、結局、教育の出口でもって、私たちが申し上げたような少人数制や論理力があると有利になるような出口がないと、なかなか現場も動かないということを考えておりまして、それとあわせて議論をさせていただければありがたいと思っております。

以上、駆け足でしたが、まとめますと、私の意見としましては、少人数制が望ましいと考えています。ただ、そのためには、国民のコンセンサスについて、自分たちがそうではなかった、コストがかかるんではないか、ほんとうに必要なのかというような議論がまだまだありますので、その部分について、特にGDP比、日本の教育費というのは非常に低いものしか配分されてないということについてもっと市民が理解をして、教育費を増やすということに対して理解を得ること。その上で家庭、教員、そして、大学入試に対する出口の改変までセットで訴えることによって、この学級編制の少人数化と教職員定数の増加ということは可能になるのではないかと考えております。

以上になります。

【髙橋財務課長】  どうもありがとうございました。それでは、引き続いて、山森様から15分程度お願いいたします。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  国立教育政策研究所の山森でございます。担当している学問領域が教育心理学でございます。教育心理学というのは一番子どもに近い学問ということもありますので、今回は学級規模と子どもということに限って、先行研究と、私どもで最近取り組んだ調査結果等についてお話したいと存じます。

早速ですが、1枚目の資料をご覧ください。学級規模に関する調査研究は諸外国でも大変盛んですが、最も有名なものとして、テネシー州のスター計画というのがございます。これは、実験的な研究という点で非常に評価が高い研究でございます。このデータに対して多くの研究者が分析をして、その結果を論文にまとめております。その結果、学級規模の縮小は学力向上に効果があるだろうということ。学習に積極的に取り組むようになること。協同的で子どもが互いに助け合うような学級の雰囲気ができること。また、児童同士のまとまりが強くなるといったことなどが明らかになっております。

そのほか、学力と学級規模の関係というのは、いろいろ研究結果があるわけなんですが、2枚目に、学級規模と学力の間の部分についての先行研究をもってまいりました。これらの先行研究を概観いたしますと、小規模学級ほど子どもの学習態度がよいこと。小規模学級ほど学級の雰囲気が落ちつくこと。子どもの行動が向社会的な行動、助け合ったりとか、励まし合ったりとか、また手を差し伸べたりといった行動が多く見られること。また、子ども同士の競争であるとか排他的な行動というのは少なくなるといったことが明らかになっています。その背景として、おそらく学級規模が小さくなるほど、子どもの学級に対する帰属意識が高まることで学習に積極的に取り組むようになり、ひいては学力が上がると、そういった図式になるのではないかといったことが考えられるということでございます。

一方、私どもでまとめた調査結果というのもございまして、それが3ページ目にございます。先に述べました先行研究を踏まえまして、中学校2年生を対象にその調査を行ってみました。ここの図にあるように、この調査対象地域というのは、平成20年度まではすべての学校で何らかの形の少人数学校をやっていました。しかし、平成21年度2年生になったときに、8校だけが33名以下学級、残りは、いわゆる通常規模学級に変わってしまったと。そういった地域において調査を行ったわけでございます。

この地域の学校に対してどんな調査を行ったかというと、子どもの家庭学習について、宿題をしてきますか、宿題以外の家庭学習をしていますかということを先生方に子ども一人一人について回答していただいて、7月と1月の2回調査を行いました。その結果、7月と1月の間で宿題とか、宿題以外の家庭学習をしてくるかという、家庭教育の取り組み状況の変化に対して学級規模が与える影響を検討してみたわけでございます。その結果なんですけれども、37名以上、それから、37名未満の大規模、中規模な学級規模の学校の子どもでは、基本的には7月と1月の間で変化はみられませんでした。家庭学習の取り組みというのは変わらない。しかし、33名以下学級の子どもについては、7月よりも1月のほうが家庭学習をしてくるようになったと、そういう結果でございます。これは、例えば33名以下学級の学校というのが、宿題を一生懸命出したとか、そういったことなのかとも思ったんですが、そうではありませんでした。ほかの学校と基本的には同じことをやっている。それから、宿題以外の家庭学習というところも聞いて、それを込みにした形でこういった結果ですので、小規模学級の中学校2年生というのは、より家庭学習をするようになるだろうと、そういったことが示唆されます。

4枚目に移りたいんですけれども、この調査と同時に、学年主任の先生に対して、学年全体として生徒が先生方に何でも話せる雰囲気がありますかということを聞いています。「あてはまる」というふうに回答した学校の割合がここに載ってございますが、33名以下学級の場合だと88%、ほとんどの学校はそういう雰囲気があると。一方で、33名を超えた学校というのは5割以下であるというように、少人数学級をやっている学年の雰囲気というのは、ほかの規模の学年の雰囲気と比べて、教師と生徒との関係が良好ではないかといったことが考えられるわけでございます。こういった2つの我々の調査結果というのは、先ほど最初のほうに紹介いたしました先行研究との結果とも照らし合わせて妥当な結果であるというふうに私どもは判断してございます。

次に、5枚目に移りたいわけでございますが、この調査では同時に、学年の学級数と学級規模がクラスがえによる生徒指導上・人間関係的問題の解決に与える影響を検討いたしました。5枚目の左側にクラスがえの実際というのを少し載せてございます。学校にとってクラスがえをどうするかということは、企業秘密のような内容でもあるので、あまり表ざたになるということではないのですが、実際にまさに先生方がやっている場所に三、四時間張りついて、そして、記録をとらせていただいたんです。そうすると、まず、一緒にしちゃいけない子ども同士の名前をリストアップしていって、この子とこの子は一緒にしちゃいけませんよということで、この子とこの子は離そうということをまずやる。それから、一緒にしなきゃいけない子は一緒にする。また、リーダーをばらけさせる。学校によってはピアノが弾ける・弾けないによって、ピアノが弾ける子は最低一クラス1人ずついるようにしようとかというふうにしてやっていくわけなんですが、この1校の事例でいっても、これは37名掛ける4学級の学年の中学校なんですが、一緒にしちゃいけない組み合わせというのだけをとってみても13通りあるわけで、なかなかうまくクラス替えというのはできない、難しいなということであります。そこの学年主任の先生にお伺いしたところによると、2学級だったらクラス替えをしてもあんまり意味がない。3学級は何とかできる。4学級だったら、何とか理想的なクラス替えができなくもないと、そういったお話がありました。

こういったことを踏まえて、私たちはどういったことを調査してみたのかといいますと、1つは、同じ学級に所属させると生徒指導上不都合が生じると思われた生徒というのは、同じ学年の中にいた生徒にとって、学年の学級数が多いと、生徒指導上の問題であるとか、または人間関係的な問題が解決しやすいのではないか。または、そういった子どもたちにとって、学級規模が小さいほうが人間関係的な問題は解決しやすいのではないかといったことを調査してみたわけでございます。

6枚目に、その具体的なデザインが載っているわけなんですが、調査対象としては、先ほど紹介した調査と同じデータを使っていますが、少人数学級をやっていた学校というのは省いてございます。要は、比較の条件をそろえたいということで、2掛ける2のデザインをつくりたいということで、この4つのグルーピングをして、それぞれの生徒指導的な、または人間関係的な問題の解決率というのを出したわけでございます。そうすると、データが得られたのは5,818名分のデータなんですが、同じ学級に所属させると生徒指導上不都合と思われる生徒が、同じ学年の中にいた生徒というのは、全体の中の13%弱、750名程度ということで、数は少ないんですけれども、とはいえ、この1割ちょっとの子どもたちが安心して学校生活を送れるということは、ほかの8割以上の子どもたちにとってもやっぱりいいことなんだろうというふうに思います。

その結果というのが7ページにございまして、この図を見ていただきますと、例えば学年が2~4学級の場合、学級規模が37名であっても、または37名以上であっても、生徒指導上、または人間関係的な問題解決の割合というのはあまり差はありません。一方、5~7学級というところを見ていただきますと、学級規模が37名以上、かつ学年の学級数が5~7学級のところでは、人間関係的な問題の解決率というのは、2~4学級のところと大した差はないんですけれども、学級規模が37名未満、かつ学級数が5~7というところを見てみますと、人間関係的な問題の解決率が上がっていきます。この結果から何が言えるのかといいますと、学級数を多くして、学級規模を小さくするということが、子どもが安心して学校生活を送れるようになる一つのきっかけにはなるんじゃないかといったことでございます。特に、仮になんですが、現行よりも小さい基準で学級を編制するということになりますと、必然的に学級数は増えるということになるわけで、極めて端的に言うならば、学級規模の縮小に伴う学級数の増というところにもいい点があるのではないかというのがこの結果のいうところだろうと思います。

以上、先行研究であるとか、または私どもがつい最近まとめた結果というのを紹介しながら、少人数学級の効果ということを駆け足で紹介してまいりましたが、8枚目にありますように、ものすごくまとめて言うならば、学級規模を縮小すると、私たちの調査結果では、家庭学習によく取り組むようになるだろうということが言えます。先行研究とかの結果とかも突き合わせてみるならば、学級規模の縮小自体が生徒の学習行動を望ましい方向に変化させるのではないかという点でございます。

2つ目の学年の学級数が多く、かつ学級規模が小さいほうが生徒指導上の問題、生徒同士の人間関係にかかわる問題が解決しやすいということで、そこが指し示しているところというのは、学級規模の縮小と学級数の増によって、生徒が安心して学校生活を送れるのではないかということが言えるわけで、先行研究であるとか、また、私たちの調査結果の一部から学級規模を縮小するといいよということも言えるわけなんですが、それに加えて、いわゆる学級編制基準を仮に小さくして、学校数が増えるということになったときに、学校数の増というところにもやっぱりいいところがあるだろうということで、学級規模の縮小と学級数の増、その両者に利点があるのではないかというのが現時点で私たちが持っている結論でございます。

以上でございます。

【髙橋財務課長】  どうもありがとうございました。

それでは、後半30分ほどは質疑応答にしたいと思いますが、大臣、副大臣、政務官などから何かございますでしょうか。

【鈴木副大臣】  山森さんの研究、これは小学校ですか。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  これは中学校です。

【鈴木副大臣】  中学校。そうすると、これは合併をしたほうがいいということなんですね、学校数を増やそうと思うと。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  合併をしたほうがいいかというところまでは、それは政策的な判断だと思うんですけれども、研究者的に言うならば、学級数はある程度多いほうがいいだろうというふうには。

【鈴木副大臣】  5はあったほうがいいということですね、少なくとも。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  そうですね。

【鈴木副大臣】  わかりました。

【川端大臣】  勝間さん、きょう、ありがとうございます。山森さん、ありがとうございます。

親が先生にいろいろ不信を持っているというのはどういうものという感じがありますか。

【勝間氏(経済評論家)】  やはりどうしてもだれでも不信は持ちますよね、子どもに対して親は心配ですので。ただ、そのときにほんとうに、例えば今の30人、40人を25人、20人にしたからといって、教育の質が上がるということに対して親が自信がないようです、あるいは信頼がないようです、正直申し上げて。今現在だって、そんなにすごくうまくいっているように見えないのに、逆にそれが人数が減ったら、かえって先生の数が増えて、変な先生が来てしまうのではないかというのがこの親の不信感の理由です。

【川端大臣】  今の先生にベースとして非常に信頼が欠けているみたいな感じですか。

【勝間氏(経済評論家)】  そこまではないですけれど、ただ、今の先生がほんとうに少人数でうまくのかなという点と、あと、さらにこれより落ちるんでしょうというニュアンスですね、主に。人数を増やすということは、今の先生よりも確実に下がるのではないかと。すなわち、少人数制によるメリットよりも、教員の質が下がるデメリットのほうが大きいんではないかという懸念が親にあるということです。

【川端大臣】  なるほど。要するに、先生の数が増えるということに対して質の保証がそんなに見込めないようなニュアンスがある。

【勝間氏(経済評論家)】  ニュアンスです。今まで、昔は「でもしか先生」という言葉がありましたけれども、そういう人たちが増えてしまうんではないかと。あと、実は、アメリカのほうの実証研究で、すいません。これ、すぐにちょっと文献を思い出せないんですが、おもしろい研究がありまして、男女共同参画が進んだことにより、実は小学校の教員の質が下がったという研究があります。これは何かといいますと、昔、男女共同参画がないころは、優秀な女性が先生にならざるを得なかったんだ、職業選択として。逆に、すごく小中学校に優秀な人が集まったんだけれども、男女共同参画が進むことによって、普通の民間企業にどんどん出ていくことによって、その教員の、いわゆる質というのをどうやってはかったかというと、高校のときのグレードみたいなものではかっているんですけれども、どのぐらいの成績をとっていたかと。それが下がったことによって、アメリカの教育が下がったんじゃないかという仮説があります。

【鈴木副大臣】  今の親の教師不信なんですけど、どういう点が不信というか、逆に言うと改善されるのでしょうか。

【勝間氏(経済評論家)】  一番大きいのはばらつきです。結局、学校の先生にいる人たち本人が実はもう子どもを公立中学に入れてないんですよ。自分が小学校、中学校に通わせている教師たち自身が。それはなぜかというと、やっぱりばらつきです、一番の理由は。先ほど山森さんがおっしゃったクラスのばらつきも一つあって、学校崩壊しているクラスがあまりにも多いということ。その学級崩壊しているクラスに対して先生の制御ができてないという、この2つの意味から、どんな子どもと当たるかわからない。しかも、その当たった子どもに対して制御できる先生かどうかわからないということに対する不信です。

【鈴木副大臣】  逆に崩壊を制御できるということが大事なメルクマールなわけですね。

【勝間氏(経済評論家)】  ばらつきを制御するということですね。ですので、例えば少人数学級になっても、その当たり外れのクラスが多少あっても、そんなにひどく違わないと。実際に今、先ほどの学校選択制の話も実はありまして、私、港区なんですけれども、何が起きているかというと、みんな1学級しかないところはどんどん逃げているんです。結局、子どもの数も少ないので、2学級か、3学級しかつくれないんですけれども、それでも、みんな2地区、離れたところで子どもたちが大体みんな15分20分歩いてやってくるという状況です。それで、1学級のところというのは、これもすごく矛盾していると思うんですが、教育熱心でない親が入れるんですよ、1学級のところに。教育熱心な親は、15分、20分歩かせてもそっちの2学級、3学級あるところに入れるんで、ますます1学級のほうは教育熱心じゃない子どもが集まってしまうんですね。それで、クラスの崩壊が加速するという循環になっておりまして、非常に見ていて、ほんとう親の立場として懸念をしているところです。

港区が悪いんじゃないで、私がたまたま住んでいるだけですから。はい。

【高井大臣政務官】  ありがとうございます。ちょっと今の話で、私は徳島県のほうなので、すごい小さな町なのですが、また都市部と親御さんの立場やタイプや求めることも多分ひょっとすると違うのかなと思いながら、今もお話をお聞きしていたんですが、教師に対する不信感というか、ばらつきを感じるというのは、親御さんが子どもからそういうふうに聞いているということなんですが、参観日とかに行ってごらんになって、何というか、要するに、一番教師に親たちが求めているものって何でしょうか。

【勝間氏(経済評論家)】  やはり口コミですね。結局2クラス、3クラスあるときにあっという間に回るんですよ、みんながどっちのがいい先生だとか、どっちがいまいちだとか、外れだ、当たりだと言って。

【高井大臣政務官】  子ども同士で、ですか。

【勝間氏(経済評論家)】  いや、親同士が。親が子どもの意見を聞きながら。やはりしかるばかりでなかなか子どもを伸ばせない先生もいますし、逆に、上手にクラスをまとめていく先生もいますし、それは仕方がないと思うんですよ。ただ、親はすごくぜいたくですから、同じ学校で同じ時間を使っているんだったら、よりよい先生に当てたいというのが正直なところで、さらに、公立はそのばらつきが制御できないから私立に行く、余裕があるうちは私立に行くという循環になっていると考えています。

【川端大臣】  学級、クラス替えのときに先生が決まったときに、もう瞬間に親同士で外れとかやっていますよね。

【勝間氏(経済評論家)】  やっています。あっ、何とか先生だと。

【川端大臣】  それを子どもが見ていますから、もう初めからだめになるというケース、非常によく聞きますね。

【勝間氏(経済評論家)】  実際にその外れのクラスは確かにうるさいんですよ、授業参観に行くと。

【高井大臣政務官】  ああ、なるほど。

【川端大臣】  さっきの話で、私なんかは50人クラスだったですけども、その数というよりも、今と圧倒的に違うのが、私のときの親の学歴と今の親御さんの学歴って圧倒的に違うんですよね。さっきの男女共同参画とも同じなんですが、先生になるという人は高等教育を受けているという人が、私が子どものときは世の中にそんなにおられなかったから、ほとんどの親から見て大変立派な学歴のある尊敬すべき人であったと思うんですけれども、それ、ものすごい変わってしまったんですけど、そういうのはやっぱり背景に、親と教師の距離感みたいなの、評価みたいなのはお感じになりますか。

【勝間氏(経済評論家)】  正直言ってあると思います。特に私は都市部なので、両親とも四大卒だったり、下手すると大学院卒だったりするケースがありますので、そうすると、やはり二十三、四の新卒の先生を見ると、ちょっと大丈夫かなと思うところはありますし、実際に当たり外れのときの基準としまして、経験年数というのは随分私たちも議論になっています。もちろん経験年数が少なくてもいい先生はたくさんいらっしゃるんですけれども、相対的に年数が高くて、信頼おける先生のほうが人気がある。

【川端大臣】  その先生の、少人数ですと数を増やさなければいけないけど、当然今でいうとグレードを上げなければいけないというときに、経験年数というのはまさに経験なんですけども、それ以外で、例えば教員になるとき、あるいはなってからの部分で、先ほど、まとめられる力とか、いろいろおっしゃいましたけど、そういうようなものというか、要するにスキルアップする、グレードアップするというのは、どういうところでそれを上げていけばいいのか、もうなってしまってからでは遅いのか、どうなんでしょう。

【勝間氏(経済評論家)】  正直申し上げますと、やはり教頭、校長、特に教頭のポストが足りないと考えています、先生の中で。教頭試験を受けるのがもうほんとう40過ぎとか、45、50近くになって、で、せっかく教頭試験を何年も苦労して受かったけれども、教頭の口がなくて、このまま待機しているような先生たちが多い。結局、もちろん子どもが大好きでボランティア精神があって、子どもの教育だけでうれしいという先生たちもいらっしゃるんですけれども、多くの先生はやはり出世したいとか、ある程度リーダー層に立ちたい、スキルアップをしたいというような望みがある中で、うまく学校数のヒエラルキーができていないんですよね、主任がなって、教頭になってというようなスキルアップの手順が。また、そうすると、結局、これもちょっと先生たちの意見なんですけど、まじめにやると損をするような状況になってしまう。結局、子ども一人一人全部40人面倒見た上に、クラブ活動までやって、試験問題をきっちりつくって、合宿とか連れていって、一生懸命やるともうへとへとなんですよ。だったら、もうある程度ちょっと手抜きをしながらというのは失礼ですけれども、手抜きというのは失礼かな。ちょっと力を制御しながら、長くゆったり続けられるようにしようとするのは、私は、先生たちの非常に自然な行動だと思います。だから、ある意味、過超労働になっているわりには出世の道がないというのが、多分今現在の先生たちの閉塞感だと考えております。

【鈴木副大臣】  だから、頑張った人は早く教頭になれるようにしてあげるって、そういうことですね。

【勝間氏(経済評論家)】  そうですね。そういったことが必要ですし、あとは、校長先生ももう少し民間の方を招くような形で、もう少し風通しのいい雰囲気をつくらないと、なかなか学校の閉塞感というのはすばらしいものがあるようで……。まあ、いう中で。

【前川大臣官房審議官】  我が国の場合、明治以来ずうっと教育と国の成長といいますか、国の発展というものが不可分の関係できていて、特に戦後の高度成長なんかも教育が支えたのは非常に大きいと思っているんですけれども、昭和37年だったと思いますけれども、『我が国の成長と教育』という白書を出していたりするんですが、私どもの教育行政をやっている立場からすると、教育と経済成長というのはもう明白な関係があると思っているんですが、なかなかそこが世の中にわかってもらえないと。そういう、例えば新しい成長戦略をつくるというときに、教育が何よりもそのベースになるべきだというふうに主張したいと思うんですが、なかなかそれがわかってもらえないと。どういうふうにそれを説明すれば、その成長戦略の中で教育が大事だということを世の中にアピールできるかと、ちょっとそのお知恵を拝借したいと思うんですが。

【勝間氏(経済評論家)】  例えば論理的な思考もありますし、あと、日本の場合、圧倒的に修士と博士の数が少ないというようなデータも多分あると思うんですよ、実際に。結果が国際競争力において、いわゆる今も第3次産業がそれ以降に進んでいる中で、ある程度もう学士ではなかなか足りないような分野というのが増えてきてしまっている。なぜ、では、高等教育がなかなか受けられないかというと、日本は圧倒的に対GDP比で、特に高等教育に対する公的支出が低いわけですよね。そうしますと、裕福な家庭しか、今のところ大学や大学院に進めないという状態になっていて、非常に限られた家庭のほんとうに一部の人しか行けないから、なかなか、ほんとうはすごく能力があるんだけれども、たまたま所得が低い家庭に生まれてしまって、能力開発ができない人が山のようにいるから、日本は競争力がないんだと、私はこう理解しているんですけれども、これを淡々と説明するんじゃだめなんですか。

【鈴木副大臣】  それを勝間さんにどんどんどんどん……。

【前川大臣官房審議官】  小中学校の教育と成長とどう結びつけたらいいかというところになると、どうなりますかね。

【勝間氏(経済評論家)】  難しいのが、小中学校は、実はそれほどひどく予算がないわけではないんですね。どちらかというと、高校以降にがーっと日本の場合は対公的予算がなくなるんですよ。ただ、これも随分実証研究があるように理解しておりますが、小中学校の時点でかなり所得階層であるとか、家庭教育、影響を与えてしまって、それによって高等教育の進学率が随分ばらつきがある。それを抑えるためには、やはり小人数学級で、生まれた家庭を問わずしっかりとした基礎学力をつけられるような環境を整えないと、高等教育以降にも影響するよ。せっかく、だから、高校教育、今度無料にしますけれども、公的なものを。それをそっちを無料にしたって、手元がぐらぐら崩れていたら意味がないということを説明する必要があるかなと思っております。

【山中官房長】  先ほど教員の数、小人数にするとかいうと絶対数が増えるんです。そうすると、質が下がるだろうと、こういう不安があるというのが親の意識だということなんですけど、どちらかというと、子ども、数が増えると、子どもを教え込むというか、教育するという立場にとると、コントロールする数が少なくなるものですから、それほど質が高くなくても、50人を教えるよりも、20人を教えるほうが、教える能力が同じだとすれば、おそらく効果は高まるんじゃないかという気がするんですけれども、そういうことは親としては、当たり外れのほうのばらつきのほうがやはり教育の質の面で大きいというふうに意識しているんでしょうか。

【勝間氏(経済評論家)】  おっしゃるとおりでして、やはりベテランの先生でないと、40人しか制御できないかもしれませんけれども、二、三年目の先生でも15人だったら何とかなるわけですよ。それこそ塾の先生なんかそんな感じですよね。学生バイトだってやっているわけですから、少人数でしたら。なので、その関係についてちゃんと親に説明するというのは十分にあり得る施策だと思います。

あと、給料の問題ですね。結局日本の教員の給料は高くもなく、低くもなくという理解をしております、諸外国比。それに対して、じゃあ、幾らぐらいのコストがかかって、その結果どういうメリットがあるのかといったようなものの試算がある程度必要かなと考えております。短く言いますと、教員数を増やせば、クラスが充実し、あなたの塾代が減りますよみたいな話がちゃんと家庭にわかればいいということです。

【髙橋財務課長】  そのほかいかがでしょうか。

じゃあ、ちょっと山森先生に1つ、きょうは中学校の研究成果の発表だったんですが、小学校の低学年とか、高学年、あるいは中学校というように、ある程度学年発達段階を考えたときに、特にこのあたりを少人数学級をやるとより効果が高いとか、そういう優先順位の観点から何かコメントがありますでしょうか。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  学校の先生方が、例えば低学年こそ少人数をやるべきだとか、いろいろ意見を持っていらっしゃる方がいると思うんですけれども、研究的に何人学級がいいというその適正な規模を出すというのは非常にテクニックとしては難しいし、また、それに耐えられるだけのデータというのをとるのは非常に困難であります。なので、一概に言うことはできません。現状よりも少ないほうがいいだろうことは間違いなく言えるということと、それから、先ほど勝間さんの資料で25人学級という話がありましたが、私がこういった研究をずうっとやっていて、学校もあちこち回ってみました。そこで、先生方に何人学級がいいですかということを聞くんですが、あっ、この先生の授業、うまいなって思った後で、その先生に何人学級がいいですかと聞くと、24という数字が特に小学校ではね返ってきます。

それは何でかというと、3人グループと4人グループの両方ができて、いろんな形のグループ学習ができると。特に5人班、6人班になると、グループ学習しても2人ぐらいは何かぼーっとしているとかということがやっぱりあるわけですよね。その話を先日とある小学校の校長先生にしたら、昔、45人、50人ぐらいの学級規模のときには、今年は36人学級がやりたかったのになーということを昔は思ったもんなんだということで、やはりグループ学習とかがいろんな形でできるというような数字というのが、参考にはなるかなというふうには思います。

【髙橋財務課長】  あと、まだ10分ぐらいありますが、ほかにいかがでございましょうか。

【清水文部科学審議官】  勝間さんのお話を聞いて思っていたんですけれども、我が国の学校、あるいは学校活動に対する親の目という場合には、おそらく学校というものがどういうスタイルでの活動を行うかというイメージがあるような気がする。つまり、一つの、例えば歴史が例に挙げられていましたけれども、歴史という部分は、通史として必ず古代から近代まで行うべきものであり、知識のおそらく体系というものがあり、その知識の体系がまず、そして、そこの中でおそらく思考力とかも養う。という体系ですね。だから、教科書も、授業の要項、モデル型だし、親はここまでしか教科書を終われなかった先生というふうなイメージで常に評価しがちと。一方で、優秀な子たちにはむしろそういうことを自分で学んでいるということを前提に、それぞれ自由な活動をかなり、例えば特に高等学校段階とか。それをむしろ同質的な子どもたちの間で今度いろんな思考力の深さ、分析の深さを競い合う。そういう環境をつくってやる。おそらく親たちの見る目というのは分裂しているんですね。

ただ、問題なのは、日本の学校教育を見る目というのが、例えばイギリスのように、歴史のところでは、特定の王朝のクロムウェルと王党派の戦いの部分だけやって、そこの、いわゆる議会派と王党派の争いをどう分析してどう見ていくかという、歴史に対する目を養えば、それでいいんだというアプローチとは全く違う。つまり、ここのジレンマなんですね。だから、勝間さんが言われた論理的思考力という話は、ある部分で一定の知識の体系を前提とした上での論理的思考力で、論理的思考力というのを入学者選抜の中でほんとうにはかろうと思ったら、SAT型に、いわゆるもうあとはいろんな言葉の分析と、SATとか、LSATとかありますね、アメリカの。いわゆる、どちらかと言えば、適性試験スタイル、知能試験スタイルという形に向かう。そうすると、結局、日本で大多数の方々が学校に求めているのは、常に知識の体系であり、努力が報われる世界でありという部分で、ここのおそらく教師に対する期待、学校に対する期待というものを見るときに、そこのところを、そういうものをどう変わっていき、変わっていくことを望むのか望まないのか、ここなんだと思うんですけどね。

【勝間氏(経済評論家)】  今回、このクロストークで提案させていただいたのは、極端な話、インターネットで検索できるものはざっくり知っていればいいんではないかというニュアンスでして、ほかのものについて、インターネットで得られない情報や隠れている問題発見能力を補うようなカリキュラムというのが、やはりおっしゃっていただいたように、どうも高等教育に欠けているのではないかというのが大きな疑問点だったんですね。ただ、それがあったからといって、じゃあ、大学入試に役に立つのというと、英語入試に役に立つかもしれませんが、センター入試にはおそらく役に立たないだろうと。別にインターネットの検索マシンを持ち込めるわけではないですから。なので、そこのバランスをどうとっていくかというのは、実は出口として非常に大きいと考えております。もし、それを実現するとなると、やはり少人数学級というのは必須になってきますので、その組み合わせの中で、一気に動かすのは難しいので、徐々に動かしていくことかなと、先生への教育も含めて考えておりますが。

【清水文部科学審議官】  もう一つちょっとよろしいですか。いわゆる望ましい教員養成のあり方、あるいは望ましい教員というのはどんなふうにお考えか。山森さんもちょっとそのあたりご意見があったら教えてください。勝間さんと合わせて。

【勝間氏(経済評論家)】  北欧なんか、結構給料を上げちゃったわけですね、要は、やったことは。だから、そういうようなかなりラディカルなことをしてしまうかどうかということだと思います。ある程度ワーク・ライフ・バランスが保てて、そこそこの給料がもらえてやりがいがあるんだったら、みんなこぞっていくと思うんですよ。じゃあ、なぜ今、こぞってみんな小中高の先生になりたがらないかというと、やっぱりそこの部分が欠けているからですよね。多くの就職の選択肢の一つでしかない。なので、待遇面の改善と、あと、やはり過超労働になっている部分の改善、この2つを変えることによって、私は、市場原理で勝手に優秀な人が集まるんではないかと考えております。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  多くの国立大学の教育学部では充実していますが、私立だと結構ばらつきがあるので、せめて国立大学と同じような水準で教育実習ができるような形というのはあってしかるべきだろうと思います。

それと、先生になった後の話なんですけれども、個人的には、日本の先生が何で今まですばらしいと言われていたかという一つの理由としては、やはり45人、50人のクラスで授業ががちっとできたということがあげられます。これは日本の先生方のよさだろうと思うし、そういったところは日本の先生の力として維持していく必要があると思うんですね。なので、仮に学級編制基準を小さくして、小さい学級ができたとしても、結局どんどん小さい学級になれてしまえば、指導力が落ちていってしまいますので、そういった措置があった学校には、年に1回は2クラス合同の、例えば50人、60人学級で1回だけ研究授業をやってみて、そこで大きな学級規模と小さい学級規模との違いというのを先生方に明確に実感としてわかってもらうと、そういうようなこともシステムとして入れるといいのではないかと思います。

あと、先ほどの課長の質問について若干の補足なんですけれども、いわゆる学年の話なんですが、例えばアメリカのスター計画というのは、就学前のところから小3まで入れて、その小4からは通常規模に戻すんですけれども、学力についてはわりとその後も効果があったと。しかし、その学習行動の面ではどんどん効果が薄れていってしまうというところは指摘されています。また、私たちが以前やった調査では、小学校2年生とかでは、いわゆる少人数で、なおかつ先生たちがきっちりと指導方法、工夫改善というような形で教えたときには、学力の底上げ、つまり、もとは低学力だったんだけど、半年後はわりといい線いったというようなことにつながっているのが、小学校2年生ではそういう現象が見られたんですね。しかし、小5、中2になるにつれてそういったことって見られなくなってしまう。ということを考えると、一回低学年で少人数学級を入れたとしたならば、それをきちんと中学校3年生まで維持をするというような仕組みをつくらなければならないと思います。例えば突然中学校2年生で、いきなり少人数学級を始めたとしても、あまり効果は期待できないかなと思います。

【勝間氏(経済評論家)】  いいですか。最後に。

【髙橋財務課長】  はい、お願いします。

【勝間氏(経済評論家)】  要は、基本的に、私は、教育はもっとお金をかけろということだと思います、純粋に。私、ニューヨークでナレッジ・イズ・パワー・プログラム(KIPP)という、ある意味実験的な学校を見学してまいりました。こちらは、いわゆるハーレム地区であるとか、ヒスパニック地区のほんとうに貧しい子どもたちを、希望者を募りまして、1人頭プラス1万ドルぐらいするんです、お金をかけて、ニューヨーク市やその他のNPOが。で、ものすごい少人数で、かなり1.5倍ぐらいの授業数をがーっとやるんですね。そうすると、大体その子どもたち、普通8%ぐらいの大学進学率の地区なんですけれども、その子どもたち80%ぐらい大学進学します。ですので、子ども1人当たりプラス1万ドルでこれぐらい上がるわけですから、とにかく私はどうやって教育予算を獲得することを国民のコンセンサスとして理解してもらって、もっともっと子どもたちに教育をかけることが、おっしゃっていただいたように、日本の成長なんだということを理解するというような、ある意味プロパガンダづくりが一番きくんではないかと考えております。

【髙橋財務課長】  はい、ありがとうございました。間もなく予定の時間ですが、最後にどなたかございますでしょうか、お願いいたします。

【高井大臣政務官】  最後に、親教育のことをおっしゃっていたので、ちょっと逆に今度教師の側とか、我々の側からできる親教育というか、何かご示唆があったら教えていただきたいんですが、どうするのがよいのでしょう。

【勝間氏(経済評論家)】  これですね、私の提案としては、やっぱり食育が一番簡単かなと思います。結局あまりにも親が子どもと一緒に食卓を囲まないことと、あと、お父さんがいないということ、あと、ほんとうに親が手づくりの食事をつくらなくなっていくということで、どんどん崩れていますので、子どもと御飯を一緒に食べれば、いやが応でも話ししますと、はしの持ち方ぐらい見せますし、子どもがばっかり食べしたら、これはしかりますから。なので、食育の時間をもっともっと増やすということが一番簡単な家庭のしつけの時間になるかなと考えます。

【髙橋財務課長】  大臣、副大臣、よろしいでしょうか。はい。ありがとうございました。それでは、予定の時間になりましたので、勝間様、山森様、本日は貴重なご意見をありがとうございました。これで第1部を終了したしたいと思います。

【勝間氏(経済評論家)】  ありがとうございました。

【山森氏(国立教育政策研究所研究員)】  ありがとうございました。

― 了 ―

5.出席者

勝間 和代 氏(経済評論家)、山森 光陽 氏(国立教育政策研究所研究員)

お問合せ先

初等中等教育局財務課