今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する有識者ヒアリング(第1回) 議事録

1.日時

平成22年4月19日(月曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 1特別会議室

3.議題

  1. 出席有識者からの意見発表
  2. 意見交換

4.議事録

【髙橋財務課長】 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する有識者ヒアリングを開催いたしたいと思います。本日はお忙しいところ、ご出席いただきましてまことにありがとうございます。まず、本日ご出席のお2人の方をご紹介させていただきます。山形県教育委員会教育委員長の長南博昭様でございます。それから、立教大学文学部教授の藤田英典様でございます。なお、大変恐縮ではございますが、本日、川端文部科学大臣は公務のため欠席となっておりますのでご了承いただきたいと思います。それでは、まず、冒頭、鈴木文部科学副大臣よりごあいさつを申し上げます。

【鈴木副大臣】  おはようございます。両先生におかれましては、大変お忙しいところ、本日のヒアリングにご参加をいただきましてまことにありがとうございました。

今日は教職員定数の改善と学級編制のあり方ということでお話を伺うわけでございますけれども、教育はつまるところ、教員の質と数、教員集団としてのいいチームをどうつくっていくかということが一番重要だという認識を持っておりまして、この点につきましては政権発足時の鳩山総理指示でありますとか、民主党のマニフェストに掲げております。

この4月1日から始まりました平成22年度予算におきましても、昨年の5倍増となります4,200人の定数改善を早速実施させていただいたところでございます。しかしながら、OECD平均に比べますと、まだまだ教員配置が少ないと。何とかこの平均レベルまで持っていきたいという、こういう方向性は私どもシェアをしておりますが、これをどういったシナリオと根拠を持って国民の皆さんの理解を得ていくかと、こういうところでございますけれども、ぜひ今日はお2人から、概算要求に向けて、それから今回4,200人になりましたけれども、やはり計画的にやるということが大事だと思っておりまして、7次定数改善計画以降、この空白となっておりました計画的な定数改善を再び──新しい政権ですから第1次というふうに呼びたいとは思っておりますけれども、やりたいと思っておりますので、そうしたことについてのいろいろとご示唆とご指導をいただければ大変ありがたいと思っております。

それと、私の問題意識を申し上げれば、この政権は教職員を増やすという方向は出しているわけでありますが、おそらく小学校のシナリオと中学校のシナリオと高校のシナリオと、小学校でも低学年と高学年と両方あると思いますが、それぞれの実態に応じた国民の皆さんにわかりやすい、説得的なシナリオというのが必要なのだろうと。もちろんクラスのサイズということも非常に重要だと思いますが、学校全体としてそうしたクラスで頑張る教員をどうサポートするのかと。バックアップ体制と、この兼ね合いというものが学校種によってかなり違うと思います。それから、地域によっても違うものかもしれません。そのあたりをやはりきちんときめ細かくイメージしながら、説得的な説明を納税者の皆さんにしていかなければいけないと思っておりますので、そのあたりのお知恵も含めてご指導いただければと思います。 

【髙橋財務課長】  それでは、まず長南様から、資料も今日は配付いただいておりますので、10分程度をめどにご説明のほうをよろしくお願いしたいと思います。

【長南氏(山形県教育委員会教育委員長)】  山形県の長南と申します。よろしくお願いいたします。私は、山形県の少人数学級編制についてお話しをして、今後のあり方について幾つかの点を挙げたいと思います。

山形県では現在、教育山形「さんさん」プランという、少人数学級編制を実施して8年目になります。現在、中学校2年生まで実施をしております。このプランのスタート、起点というのは、資料にも書いてあるとおりに、橋の1本や2本を節約してでも子供の教育を、という平成13年のときの前知事、高橋知事が定例記者会見で発言をしたところからスタートいたしました。その後、13年の9月から14年の2月ぐらいまで文部科学省との話し合いを続け、随分、文部科学省には通ったという思いがあります。いろいろご指導を受けながら、ようやく14年の2月に、前川審議官、当時、財務課長であられましたけれども、ぎりぎりセーフにしましょうという、そういうサインをいただいて、山形県の少人数学級編制はここまで来ているわけです。

21人から33人の学級編制が今進んでおりますけれども、この21と33というのは、当時非常に悩みまして、何人にするのかということで、教育的な判断であることは当然ですけれども、結果的にやはり21という下限を設けなければならないということで、これは多分に政治的判断だったのかなと今、思い起こしております。33人というのは財政的な判断に基づいています。結果的には21から33という数字は、学級としては効率の上がる学級であるというふうに私は今、思っております。実施経過については、ここに14年4月から段階的に小学校の1年生からずっと続けてきております。途中17年4月から22年まで、ちょっと事情があってストップした経過もあります。

この少人数学級編制を導入しようという趣旨は、1つは、義務教育段階の授業は学習集団と生活集団は一体的なものであるという、そういう固い意思が私にはありました。当時、文部科学省は少人数指導という、学習集団に重点を置いた指導があったわけですけれども、最初から山形県の場合には生活集団と一体的にやらなければならないという考え方がまず第一にありました。

そして2つ目には、教員の達成動機を高め、効力感を味あわせるという。今の40人の標準では、学級編制をしたときには、指導力のある先生はその時間での自分の授業で効力感、達成感を味わえる方もいるのですが、多くの方はどうしてもやっぱり人数が多いということで、以前の子供たちの状況とは随分違いますので、自分でこういう授業をしたいと思っても、なかなか達成感は味わえなかったのではないかということで、当時私は教員の指導力がどんどん低下していくと。そのためにはやっぱり学級のサイズを変えなければならないのではないかという思いもありました。結果的に、実施3年後には不登校の数が減りました。学力の向上も見られました。子供1人1人の1年間の欠席日数も低下しました。そして、当初趣旨に書いてあるように、教員の達成感や効力感も高まってきているというふうに現在のところ思っております。

これからはヒアリング事項の1と2についての提言を幾つかしたいと思います。

学級編制の基準というのは、じゃあ何にしたらいいのかというと、私は33から35人ぐらいが一番いい数字ではないのかと。1人の教員が教壇に立って一度に把握できる人数というのが、33という数字が非常に意義がある数字だと思っております。実は、兵庫県の生野学園という私立の高校があるのですけれども、ここの定員は99名なんですね。1学年33人というので、偶然、学校を訪問したときに、「どうしてここは99人なんですか」と言ったら、校長先生が「実は1人の教員が教壇に立ったときに一度に把握できるのは33人だと私は思っています」という、そういうご意見をいただいて、非常に自信を持ったことがあります。

教室の広さから見たときにも、山形県の実態の場合には、やっぱり30から35、その辺のところもぎりぎりの空間だと思っております。机のサイズも大きくなりましたし、作業スペースも大きくなっておりますので、どうしても40人でもぎりぎりという感じがします。実際にいろいろな学校を回ってみても、やっぱり現在はまだ中学3年は40人で編制していますので、3年生と2年生の教室は随分空間が違います。教室の広さと机の大きさから見ても、やっぱり30人から35人程度なのかなと。

それから、特別支援学級と複式学級の標準を引き下げることを考えていかなければならないのではないかなと。山形県では来年度からできれば実施したいという方向で今、検討をしております。通常の学級よりもはるかに特別支援とか複式学級の場合は先生たちが非常に苦労しておりますので、ここにもぜひこれから目を向ける必要があるのではないか。具体的には、山形県の場合ですけれども、8名を4名から6名に、複式学級の場合には16名から12名ぐらいに引き下げたいなと思っております。

それから、学級編制の標準については、下限もやっぱり考えないと、社会性などをはぐくむときにはあまりに人数が少ないと学級集団としての機能が落ちてくるのではないかというふうな思いも持っております。

(2)教職員定数の改善。これは実際に行うとすれば年次的にしなければならないだろうと。もちろん教員の質を確保するためにも、ぜひ年次的に。実際に実施方法をどういうふうにしたらいいのかということで、今、山形県の場合には小学校1年生から進めてきているわけですけれども、国として進める場合には、大胆な提言ですけれども、中学校からやったらどうでしょうか。逆に中学校から小学校へという、そういう考えも持っております。

それから、クラスサイズが小さくなると、小さくなった時点では、以前とは本当に違った授業になることはほぼ間違いないと思います。ただ、このことがずっと続いていくと、どうしてもやっぱり慣れが出てきて、教員の意識も低下の方向にあるということは山形県の実際の取り組みでわかってきております。ですから、ぜひ制度を変えると同時に都道府県教育委員会の指導体制もしっかりしたものにしていただかないと、学校との関係がしっかりつながっていないと、教員の慣れが出てきて、効果が薄れてくるという、こういう研究をされている方もおります。山形県では少人数学級の研究を全県的に進めております。ですから、ぜひ、制度と同時にこういったソフトも提示していただくといいのではないかと。

(4)施設設備でも実際に山形県では中学校2年生、3年生に、今年から中学1年に導入しましたけれども、教室が足りないという市町村があります。そこのところはどうしても市町村の負担になる可能性があります。教具の不足も多分出てくるのではないかということで、これからの標準のあり方、また、定数改善を進めるときの具体的な留意点として4点を提言したいと思います。

ありがとうございました。

【髙橋財務課長】  どうもありがとうございました。また、後の質疑応答で詳しいお話を聞きたいと思いますが、それでは、次に資料2-2に基づきまして藤田先生、お願いいたします。

【藤田氏(立教大学文学部教授)】  藤田です。どうぞよろしくお願いします。それでは、お手元の資料、かなり膨大なものになっておりますが、要点だけを簡単に説明させていただきたいと思います。

まず、1ページ目、「子どもと学校が直面する現況:難しさの増大」と書いてありますが、学級編制・学級規模を考えるに際して、先進国ほど学校が直面し、対応を迫られる問題、課題は多様化し、増大するということを確認し、前提にする必要があるということす。その理由として(1)から(5)まで挙げてありますけれども、いずれも先進諸国に共通する問題であります。その根拠データとして図表1に文部科学省の調査、作成した資料を掲載しておきました。ちょっと小さくて見にくくて恐縮ですが、既に今回の一連のヒアリングでも資料として配付されているようですから、後ほどごらんいただければと思います。それから、一番下の図表2は私どもが行いました、日本、中国、イギリスの比較調査の結果です。教師を対象にした質問紙調査ですが、その結果を見ましても、イギリスも日本も共通の問題を抱えているということがわかろうかと思います。

そういうことで、上のほうにゴシック体で書いていますように、(1)学校に対応を期待される、あるいは学校にしか有効な対応を期待できない問題や課題が多様化し、増大しているということです。これはこの二十数年、世界的に共通するところであります。もう一方で、学校教育の自明性、正統性の低下と実践基盤の揺らぎが起こっておりますから、学校運営上の難しさ、教育実践上の難しさが増大していると言えます。そういう中で先進国ほどきめ細かな指導、ケアと、それを可能にする小規模学級、そして教職員の増員の必要性が高まっているということです。

次ページに、至るところで引用、言及されておりますOECDのデータを示してあります。これは「図表で見る教育」2009年版のデータですが、この十数年、同じような傾向が続いております。先ほど、鈴木副大臣も言及されたところでありますが、ごらんのとおりであります。

その次、3ページは学級規模の基準(国際比較)についてで、これも文部科学省の調査データでありますが、明らかに欧米先進諸国、そこに挙がっている国だけでなく、多くの国では、学級編制の基準は日本よりも小さな規模を設定しております。

それから、下の図は、私ども「日本の教育を考える10人委員会」が行った調査の結果です。委員長は元京都大学教授の佐和隆光先生で、私もその委員の1人ですけれども、2008年度の教員を対象にした調査結果をごらんいただきましても、小学校、中学校とも、大半の教師が20人から30人の間の学級規模が望ましいというふうに回答しております。

そこで、次の4ページでありますけれども、学級編制についての考え方についてまとめてあります。先ほど長南先生のほうからも言及がありましたように、学級と学習集団を概念的にも、実践的にも区別する必要があることは周知のところですが、学級は学校生活の基礎となる集団として、そこに(1)から(5)まで書いてありますようなさまざまな点で重要な集団の単位であります。もう一方で、学習集団は学習活動の基礎となる集団であります。伝統的には学級と基本的には同じでありましたけれども、この二十数年、世界的に学習集団は小規模化する傾向にあります。学級をさらに分割して、小規模な学習集団に編成し、少人数で授業をするという傾向が世界的に広まっていることは周知のところであります。

そういったことも踏まえて、学級編制に際しての考慮事項と適正規模について、次の諸点を確認することができます。まず1点目として、上記(1)~(5)等を考慮して、小中学校では20人~30人ぐらいが望ましいと考える教師が圧倒的に多いということ。2点目に、多様な活動の展開とそれらの活動の活性化やクラスの活気・活力の維持・向上を図ることも重要であること。3点目、基礎的な生活集団における人間関係の多様性とダイナミズムを考慮することも重要であること。4点目、児童・生徒の属性や人格特性の多様性を考慮することも重要であること。5点目、現代において1人の教師が掌握・配慮可能な適正集団規模はどのくらいかということ考慮することも重要であること。以上のようなことを種々考慮いたしますと、小学校では20人から30人ぐらい、中学校では25人から35人ぐらい、高校では30人から40人くらいが世界的にも先進諸国では学級の適正規模として見なされているるようだということであります。

ただし、米印(1)に書いてありますように、活動の画一性や統制性が重視され、かつ可能な場合──途上国や60年代ぐらいまでの日本のように、40人から50人でも不可能ではありませんが、現代の日本や先進諸国では、40人というのは非常に厳しい数字だと言えます。とはいえ、アメリカでもカトリック系のハイスクールでは40人以上でやっている高校もかなりあります。また、日本でも高校では、学力選抜が行われていますから、40人以上でも問題ないと考える教育関係者も少なくないかもしれません。高校の場合、効果的な授業の適正規模は教科や単元によっても、また、例えば受験向けの授業のような授業の目的・内容や生徒の習熟度レベルによっても、適正規模は違ってきます。

それから米印(2)に特定業務遂行集団の上限規模は15人程度と書いてありますが、これは経営学等では1960年代から言われているところであります。特に軍隊をはじめ、命令指揮系統や連携・意思疎通が重視されるさまざまな集団や職場について言われてきたことであります。

もう一方で考慮する必要があるのは学習活動の内容・形態と集団規模と教師の教授能力の関係であります。少人数指導については、1点目として、学校・学年段階が低いほど重視され採用される傾向があります。2点目として、教科・科目や単元・テーマによって適正規模に違いがあり、特に系統的積み上げや実験・体験が重要な教科(数学、外国語やプロジェクト学習など)では少人数指導のほうが適合性、有効性が高くなると言えます。

3点目として、学力のばらつきの大きい学校では、少人数指導の必要性、有効性が高くなります。

欧米先進諸国では学級を10人から15人ぐらいの学習集団に分割・編制している学校が目立つように思います。

他方、習熟度別指導については、この間、全国的にも非常に広まっておりますが、系統的積み上げが重要な教科で学力のばらつきが大きい場合に採用される傾向があります。ただし、習熟度別指導と少人数指導のどちらがいいかについては見解が分かれるところでありまして、私は後者を支持しております。この点については、OECD教育調査団が1970年に日本に来ましたけれども、その報告書『日本の教育政策』の中で次のように指摘していることは注目に値すると思います。

「われわれは自分たちの国に比べて、初・中等段階での日本の成果がいかに大きいかに、深く印象づけられた。……日本の人々に役立つようなことをこちらから指摘したり、示唆するよりも、むしろわれわれ自身の方から学ぶべき立場におかれている」「日本は、15歳まで、すなわち中学校段階まで、差別的な教育はやらないように細心の努力を払ってきた国の一つである。コースの分化をさけ、……優秀な子どもには、おくれた仲間の学習をたすけさせるという中学校教育のあり方は、もっとも魅力的で人間的な教育の特質として、われわれの心をとらえた」と述べています。このコメントは二回も、このOECD教育調査団のレポートに出ています。この調査団のメンバーはエドワード・ホールでありますとか、ライシャワー、それからジョセフ・ベン・デイヴィッドとか、ロナルド・ドーアさんとか、そうそうたる人たちでした。

それから、教授・学習形態と教師の教授能力の関係も考慮すべき重要な点です。個別学習では一般に、児童・生徒の学力、ニーズに応じた指導能力が問われますが、グループ学習、プロジェクト学習では、テーマ設定や事前準備などと助言力や促進的な指導力が問われます。それに対して一斉授業では、これは必ずしもマイナスの意味ではなくて、個別作業やグループ学習を含むクラス単位での授業をここでは一斉授業と呼んでおきますが、教材理解や事前準備と授業力が問われます。この点で日本の教師の授業力は世界的に見ても非常に高いというのが諸外国での一般的評価であり、そしてその一つの基盤として、日本の教師の授業研究などが効果を上げているのではないかというのが、この20年ほどの世界の評価であります。

次のページ、5ページの参考のところ、シンガポールの事例については飛ばして、以上を考慮して3の学級編制標準の改定と教職員定数の改善について、要点を述べます。まず1)学級編制の改定と標準的教員定数の算定方式については、以下のような選択肢を組み合わせて検討することが望ましいように思われます。学級編制の標準としては、財政事情も考慮する必要がありますが、選択肢としては、(1)小中高とも一律35人を標準とする案、(2)小学校30人、中学校・高校35人を標準とする案、(3)小学校25人、中学校30人、高校35人を標準とする案など、いろいろな選択肢があり得ると思いますが、財政事情も含めて、十数年から20年くらい先までは、(2)案でもいいのではないかというのが私の個人的な意見であります。

次に標準的な教職員定数の算定方式ですけれども、「学級は同学年の児童・生徒で編制する」という規定に基づいて、従来は各学校に配置される教職員定数を学年単位で算定していたと思いますけれども、次に述べます「加配と弾力的運用」との関係も考慮して、むしろ学校単位で算定する方がいいのでないかと思います。学年単位での算定ですと、現行法では1学年41人の場合2クラスになりますが、1学年39人、40人の場合1クラスとなり、大きな違いが生じますけれども、学校単位での算定であれば、基礎的な配置定数は均されることになりますから、学校単位では標準定数に近い人数になります。そうなれば、学級規模40人は大きすぎるということになるでしょうから、標準定数を引き下げるべきだとの意見も強まり、政策化しやすくなるのではないかと思います。

そこで次に、加配と弾力的運用についてですが、基礎的加配数というのを考えるのが望ましいのではないかと思います。従来のように(1)の申請・折衝方式ではなくて、(2)の、学校規模に応じて、すなわち全児童数、生徒数と学級数に応じた加配数を基礎的加配数として設定するという方式にしてはどうか。それに加えて、各学校の特殊事情に応じた特別加配数を配分してはどうか。年度ごとに算定、調整するものとして、各学校の特殊性、外国籍児童・生徒や特別支援が必要な児童・生徒の数等を考慮した加配と、それから教員の長期研修や出産・育児休暇などへの対応その他を考慮したもの等を含む特別加配を設定してはどうか。

加配についてはさらに、従来のようにTTをやるから配分するとか、少人数指導や習熟度指導をやるから加配するといったカテゴリー別の加配ではなくて、以上のような基礎的加配と特別加配として設定し、算定された数を一括、各学校に配分し、その加配教員をどう運用するかは各学校の裁量に任せるというのが望ましいと思います。

他にも特殊な事情や教育上の考え方や配慮すべき事項があるかもしれませんが、その他の加配については、各教育委員会の裁量で考えればいいことだと思います。

次に、教職員定数の改善についてでありますけれども、教育活動の総合性、教職の包括性、教師の多忙な実態を踏まえ、教師が困難や憂いを抱え込むことなく、誇りと自信を持って日々の授業、教材研究や児童・生徒と向き合い、教育実践に専念できる条件整備が急務でありそのためにも定数改善は不可避です。その根拠として、以下、私たちが行った国際比較調査のデータを紹介していますが、時間も限られておりますので後でごらんいただければと思います。

次のページの図表8も同様でありますが、その表の下のところに、以上の図表7と8より、(1)日本の教師は、中国、イギリスの教師と比べて、所定の勤務時間外も学校で仕事をする傾向があること、及び(2)勤務時間外の学校での作業と家庭に持ち帰っての作業に費やす時間の合計は日中英とも大差なく、かなり膨大な時間を教師は時間外に学校の仕事に費やしているということ、学校ないし家庭で費やしているということであります。

図表9は、教師の仕事は、授業だけでなく、多様かつ膨大な付随的業務を含んでいるということを示しています。そこに挙げてあるような業務でありますが、ごらんのとおりで、一番下に要点をまとめておきました。(1)実施頻度の多い「生徒の提出物の添削・点検」「試験・テスト採点」「日記・連絡帳」といった作業は、学級規模が大きいほど大変な作業となる。(2)図表7に挙げた作業だけでも週平均12回程度行っているから、それらの作業を毎日最低2つは行っていることになる。授業と教材準備や学級活動、生徒指導や学校行事や部活動などの日常的な業務に加えての作業であるから、教師の日常業務がいかに多いかということを示しています。

それから、次のページの教師の日常と心境でありますが、「慢性的な疲れを感じている」という項目では、日中英とも9割以上が「あてはまる」ないし「ややあてはまる」と答えております。「毎日が忙しい」についても日中英とも9割以上が「あてはまる」ないし「やや当てはまる」と答えていますが、特にイギリスでは中学校で96%、小学校で98%が「あてはまる」と答えております。「冗談じゃない、こんなばかげたこと聞くな」とでも言わんばかりの回答結果になっております。教師の日常がいかに大変かということがおわかりいただけるのでないかと思います。

次の8ページは、日本の教育を考える10人委員会が行った教員に対するアンケート調査の結果ですが、教員がどういう業務に負担を感じているかを示すものであります。これも後ほどごらんいただければと思います。そういったことを踏まえて専任教職員の定数改善について、次のように言えると思います。(1)以上の調査結果が示すような教育活動および教師の仕事の多様性、総合性、包括性と多忙な教師の実態、及び(2)学校運営、生徒指導、進路指導、教科外活動等はすべて主に専任教員が担当している構造と実態を踏まえて、専任教職員の定数改善を図ることが重要である。

鈴木副大臣も最初に言われましたように、民主党連立政権になって、教育予算増も、教職員の定数改善も優先され、少し進みましたけれども、非常勤の数が圧倒的に多かったのも事実だと思います。しかし、それでは十分な対応にはならないと思います。非常勤教職員の増員も重要ですが、まずは専任教職員の増員が必要です。

そこで、専任教職員定数改善の主要な基準について、四点挙げておきました。(1)学級編制の標準の速やかな改定とそれに基づく教員定数の改善。(2)新学習指導要領の改定による授業時間増に対応した教員定数の速やかな改善。(3)上記の(a)基礎的加配数に相当する教員定数の確保。特に副担任・少人数指導、学校の規模によっては教頭や副校長の2名配置、専科教員と特別支援教育担当教員、さらに免許外教科担任の数も相当の割合にのぼっておりますから、その解消のための改善、あるいは司書教諭の拡充など。さらに、事務職員、養護教諭の拡充と全校配置など。

もう一方で、非常勤教職員の拡充も重要でありますが、特にこの場合に複数校担当とか、センター方式や巡回方式なども含めて検討したほうがいいと思いますが、資料には(1)から(4)まで挙げておきました。

そういった改善・拡充の根拠として、次の9ページに幾つかデータを示しておりますが、これは先ほども紹介した日中英比較調査の結果です。図表12に示されていますように、図書室の運営については、中国もイギリスも専任スタッフを配置している割合が非常に高い。それに対して日本はほとんど教師が担当しております。

次の図表13は、総務的な仕事でありますが、これも中国はほとんど専任のスタッフと回答しておりますが、日本では84%が教師が担当していると回答しています。イギリスでは58%となっております。いかに日本の教師がさまざまな仕事をしているか、総務的な、あるいは事務的な仕事も教師がしているかということがおわかりいただけると思います。

以上のようなことを踏まえて、10ページにその他の政策事項を含めて、私見をまとめておきました。「再確認する必要のある重大事項」については、既に時間も超過しておりますので、後でお読みいただければ幸いです。その他の関連する政策事項について4点挙げておりますが、簡単に説明させていただきます。第一に、国による確実な財源保障については、特に義務教育費国庫負担制度を堅持し、かつ義務教育費(人件費)を全額国庫負担とすることが重要だと思います。これは、特に、市町村への権限移譲ともかかわって重要な点です。2番目の丸ポチに書いてありますように、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の権限関係にかかわる問題の一面が全額国庫負担にすれば解消されると考えられるからです。そういった意味でも、この全額国庫負担とすることは、全国どこにでも確実に教育予算を確保することと同時に、こういった教育行政上のメリットやその他のメリットもあります。

それから(2)として、義務教育国庫負担金に教材費、給食費、修学旅行の基礎的費用、学校図書費、教育活動上必要な事前調査の出張旅費などを含めるのが好ましい。そして、この部分については、私学に対しても助成金として配分すべきであろうと考えます。

その他いろいろ挙げておりますが、特に教員養成制度、教育委員会制度、それから高校教育の無償化について私見を列挙してありますので、後ほどお読みいただくか、あるいはまたご質問いただければと思います。

どうもありがとうございます。

【髙橋財務課長】  どうもありがとうございました。それでは、あと15分ほどではございますけれども、質疑応答に移りたいと思います。まず副大臣のほうから何かございますでしょうか。

【鈴木副大臣】  ありがとうございます。

お2人に伺いたいのですけれども、典型的なのが藤田先生の9ページですが、要するに授業以外の仕事に教員が追われているというのはおっしゃるとおりだと思います。藤田先生の研究でもこれが裏づけられているのだと思いますが、もちろん、ありとあらゆる職種をいっぱい増やしたいというのはあるのですけれども、優先順位として、例えば、結局、図書館の司書をちゃんと増やすとか、あるいは総務にかかわる責任者を職員室に置くと。あるいは保護者対応の専門を置くとか、そういうバックオフィス、あるいはそれぞれの養護教員とか実習教諭とか、もちろん100・0の話ではありませんが、定数改善を3年でやるのか5年でやるのかということですけれども、緊急性、重要性のウエートからすると、そういうバックオフィスを、今も日米比較なんかをしますと、いわゆる教員をサポートするスタッフの数が全然、日本は足りませんよね。比率としてもいびつな構造になっていますよね。

ここの是正がやはり、この間、いろいろな方々のお話を伺ってきて、実は土曜日も熟議の民主主義のアプローチで、200人ぐらいの方々に小学校、中学校どうするかと。スーパー事務室みたいなコンセプトで、バックオフィスをちゃんと充実してあげたほうがいいと。ちゃんと教員も入って、いろいろな人たちの議論の中で、おのずとそういうのが出てきたのですけど、私もそうかなという気も大分してきているのですけれども、そのあたりの優先順位ですね。

財源が無限にあれば何でも一遍にできるのですけれども、ここ3年とかここ5年の優先順位ということで、ちょっとお2人からお話をいただきたいと思います。

【藤田氏(立教大学文学部教授)】  まず、司書につきましては、中学、高校とか、校種が上の段階になればなるほど、専門の司書というのは必要だと思いますが、専任で置く必要があるかどうかというのは、欧米の場合でも非常勤というかパートの場合が結構多いと思います。ですから、もちろん専任で置ければそれにこしたことはありませんけれども、非常勤ないしパートであってもいいのだろうと思いますが、いるといないとでは随分違うと思います。

それから、さまざまな総務的な仕事や教師の支援という点では、事務職員の拡充は重要です。これは単に旧来型の事務というだけではなくて、さまざまな対応能力、機能を備えた事務室の整備、充実というのが必要だと思います。

それから、保護者対応という点については、欧米の場合は副校長が担当しているというのが一般的ですけれども、副校長や他の専任スタッフを各学校に配置する方式と、もう一つは、センター方式にして教育委員会レベルで充実を図る方式があると思います。いずれにしても、教師の専門性や教育実践の一環として対処すべき問題や学校で対応できる問題と、法的な問題も含めて対応する必要性のある問題、あるいは臨床心理的な問題も含む専門的な対応が必要な問題を分けて考えることも重要だと思います。あとの二つについては、センター方式で集中的に対応するというやり方と、それから、問題への対応の仕方について専門的に適切なルールのようなものや、スタンダードをつくっていく必要があると思いますね。その点、欧米では、けっして十分ということではありませんが、対応の仕方について、標準化が進んでいると思います。

【髙橋財務課長】  お願いします。

【長南氏(山形県教育委員会教育委員長)】  ちょっと乱暴な言い方かもしれません。今、山形県で私が学校の教員または校長たちに話をしていることというのは、本当に忙しいのですか、何が忙しいんですかと聞くと、わからないんですね。ただ忙しい、忙しいと言うんです。でも、何が忙しいのかわからない。ですから、県全体としても多忙化解消に向けては取り組みはしているのですけれども、一向に進まないんですね。やっぱり一番大事なところは、学校自身、学校1校1校で校長が本気になって取り組みをしない限り、多忙化というのはなかなか解消しないんじゃないか。

それから、もう一つ、それは予算があればいろいろな整備をしてもいいと思うんです。でも、整備をすれば、また、サポート体制を確実なものにすればするほど、実は教員の意識は下がっていくのではないかなと。だれかに頼めば何とかなりそうだとか、要するに外注になってしまう。教員の意識をもっと高めて、本来の仕事をしっかりできるような意識を高めることが先であって、その後、もしサポート体制がとれるとすれば、それはそれでいいと思いますけれども、まず私は、一番もとになるところの力はつけたいなと思っています。

【髙橋財務課長】  ありがとうございました。そのほかいかがでございましょうか。

【清水文部科学審議官】  お2人の話の中で、つまり生活集団の問題と、学級を考えるときに学習集団の問題というのがあるんですよね。藤田先生のほうからおもしろいというか、算定方式として定数を学校単位で、学年単位で考えないほうがいいんじゃないだろうかというご提案で、藤田先生は、多少ばらつきがあるからというお話でしたね。学年ごとによって。結局、学校の、いわば最も肝心な部分は、課程修了というふうに、つまり学年の課程、あるいは学年の課程の積み上げによって全課程修了という、ある種のドグマですよね。ドグマで、実際上は、だからそこの問題が実は最も一番、我々、見なければならない問題かもしれないなと。つまり課程修了と言いながら、実はかなりの子供が、教科によって違いますけれども、課程修了に終わらない。終わらないまま、やったことになっているという、その問題ですよね。

そこの部分で、例えば、学習集団というものを考えたときに、むしろ系統的積み上げが必要な教科によっては、もう異学年も含めてという形の学習集団を編制するということも、むしろ考えたほうがいいのかもしれないとは個人的に思っているんですけどね。そこのところを、今度、定数の問題で考えたときに、何がファクターになるのかなという場合には、1つ、方式としては、学校単位でというのは、それは1つの契機になるかもしれないなとも思ったりするんですが、このあたり、学習集団、いわゆるホームルーム、生活集団、そして学校はいわば小学校も含んで学年で構成する。このあたりを定数の場面で見てみた場合に、何かお考えがあったらお2人からお伺いできればと思います。

【藤田氏(立教大学文学部教授)】  先ほどのデータの中に、説明は省きましたが、留年についての比較も乗せてあります。イギリスももちろん多いですし、中国も多いのですが、フランスとか他のヨーロッパ諸国も多いですよね。これにつきましては、フランスなどで十数年前から拡大している傾向は、日本の履修主義を評価する方向での考え方や対応の仕方です。留年させても、留年した子供は、決して次の年によくなるのではなくて、また低空飛行を続ける。だから、留年させるよりも日本のように、何とか努力させて、頑張らせて、進級させていくほうが好ましいのではないかという方向に動いていると思うんですね。

日本はそういう意味で習得主義ではなくて履修主義を基本としてきたと思いますが、それは基本的に好ましいと思いますし、今後も堅持するほうがいいと思います。もう一方で、今の場合、教職員の定数、あるいは学級編制の基準ですから、その際の学校への教員の配置総数をどういう方式で算定するかですが、学年別にしますと、やはり多い、少ないが出てきますけれども、全校生徒であれば、ならされると思いますので、学校間の格差が小さくなると思います。しかし、ならされて、多くなるのか、少なくなるのか、ちょっと私も計算していないのでシミュレーションしてみないといけないと思うのですが、たぶん少なくなるのでしょうから、それに先ほど説明しました基礎的加配と特別加配を加えることで、全体に各学校の教員数を増やし、それをどう使うかについては学校の裁量にゆだねることで弾力的運用を可能にし、同時に、教師にもっとゆとりをもたせるというのが良いのでないかと思います。

それとサポーティング・スタッフについて、先ほど長南先生の言われたこととちょっと関係するのですが、事務室体制やサポート体制を充実することは必要かつ重要ですが、そうは言っても教師自身がやらざるを得ない仕事が多いことも事実ですから、そうしますと、教員をむしろ増やすことでその部分もある程度カバーし、なおかつ子供と向き合う時間の確保と、授業、教材研究やその他の付随的な業務に割く時間の確保を両立させるほうがいいのかもしれないとも思います。

十年ほど前に行った調査で、日本の教師はとにかく1日中、分刻みで動いていることが明らかになりました。朝は、まず朝会があります。朝会の前に子供たちへの対応をして、それで10分の朝会で十幾つの報告があって、それぞれどういう対応をしなければいけないということを端的に確認して、それから放課後になるまで分刻みと言ってもいいようなスケジュールで活動しています。私たちは幾人かの先生に終日張り付いて、トイレまでついて回って1日のスケジュールを計算したのですが、本当に分刻みで仕事をしている教師が多いですかね。もちろん個人差はありますし、学校によっても違いはありますけれども、そういう状況をやはりもう少し改善できると、ゆとりが生まれて、子供との関係もさらに豊かになるというふうに思います。

【長南氏(山形県教育委員会教育委員長)】  学級集団のことですけれども、私は以前から授業というのは最初の段階は、やはり学習と生活を一体的にして、学級集団として授業を進めるべきだと。ある程度の時間がたって、1人1人の子供の進みぐあいに大きな差が出てきたときには、そこで新たな学習集団をつくって再度スタートすればいいのではないかというふうな考えを持っておりました。ですから、やっぱり学級集団、生活、学習イコールの授業をもっともっと進めるべきだというふうに思っています。

それから、また多忙化に関係するのですけれども、今、先生たちは教材研究ができない。する時間がなくなっている。なぜないのかというのは、本務以外のところで時間を使ってしまう。要するに、周りの動きに左右され過ぎている。例えば、保護者の要求にすべてこたえていたら、これはもう教材研究ができる時間はないですね。ですから、そこのところは、やっぱり家庭と地域、学校との境目をしっかりつくって、校長がリーダーシップをとって、その学校としての方針を示していかない限り、ずるずる引っ張り込まれてしまって、結局は本務のことが抜けてしまうという。ですから、そういうことをやっぱりしっかり考えて進めていかないと、なかなか解決というのは難しいのではないかと思います。

【髙橋財務課長】  ありがとうございます。では、次官、それから局長と、お願いいたします。

【坂田事務次官】  学級の規模、今おっしゃった学習集団、生活集団というとらえ方ですね。1人の先生が把握できるのは33人ぐらいとおっしゃって、我々のころは55人ぐらいでしたからね、あのころ先生はどうしていたのかなという感じもあるのですが、確かに学習だけじゃなくて、あれだけ芋の子を洗うような中でも結構、みんな楽しく、切磋琢磨してお互いの関係をつくっていましたね。

そういうことを考えると、下限ですよね。社会性の観点からとおっしゃる。これは、小学校、中学校で多少下限の数字が違うのか、どの辺を考えれば社会性という観点からいって最低限度このぐらいとなるのか、その辺ちょっとご意見があればお伺いしたいのですが。

【長南氏(山形県教育委員会教育委員長)】  少人数学級編制を導入した県は平成14年のときには幾つかの県があったわけですけれども、下限を設けた県は山形県だけだったと思います。ほとんどの県はみんな上限だけ切って、35人程度、25人程度と。山形県は21人という下限を切ったんですよね。というのは、先ほどお話ししたように、21人という下限は、実は政治的な判断もあったと思います。自民党の県議から、20人以下はだめだと。そういう意見をいただいて21人という下限をつくった経緯があります。でも、結果的にやはり21人という、20人程度の下限をつくることによって学級集団としての社会性を維持するときには必要な数字じゃないのかなと。あまりにも少ないのもいろいろな機能が低下してくるのではないかというふうに思っております。

【藤田氏(立教大学文学部教授)】  私も、先ほど小学校は30人、中学、高校35人を標準とするというのがいいのではないかと言ったのですが、標準を30人にしますと、実質的にはもう少し小さい数字になってきますよね。それに基礎的加配や特別加配が配置されると、専任教員一人当たりの児童数、生徒数は二十数人になるのだろうと思います。それだけ配当されれば後は学校の裁量で判断して決めればいいことで、小学校低学年、特に1年生、2年生は15人とか20人という学級規模でもいいように思うのですが、3年生、4年生になるにつれて30人から35人いるほうが生活集団としては好ましいと思います。それと同時に、教科によっては少人数指導をかなり取り入れるほうが効果的だということも既に明らかになっていることですから、そういう点で学級は30人、35人であっても、学習集団としては少人数指導を2クラスに分けるとか、2学級を3グループに分けて授業をするというようなやり方をするのもいいのではないかと思います。

【金森初等中等教育局長】  お2人にそれぞれお教えいただきたいのですけれども、長南委員長のほうで、山形県、21人から33人の少人数学級でかなり成果を上げたというお話だったのですが、ご提言では33人から35人というご提言をいただいておりまして、33ではなくて35というご提言は何か理由があるのかということでございます。それから、藤田先生のほうは、先ほどもお話が出ていましたが、標準的教職員定数の算定方法で、現行の学年単位で算定する方式から学校単位で算定する方式ということは、違う学年で学級を編制する、複式学級をもっと柔軟に認めていこうと、こういったような趣旨があるのでございましょうか。ちょっとその点を確認させていただければと思いました。

【長南氏(山形県教育委員会教育委員長)】  33から35という提言をいたしましたけれども、やっぱり本来は33で提言したいところです。次回、第2回で山森さんがきっとお話しされると思うのですが、今年度、山形県をフィールドにして、33人が基準ですので、その前後でどれぐらい効果があるのかということを調査したんですね。その結果、33という数字は非常に意味のある数字だということもわかったんです。そういうことからすると、私は33を提唱したいと。でも、やっぱり一気に33までとなると非常に財政的に難しくなるのではないかと。35がやっぱり1つの段階としては数字として出るのでないかという意味で言ったわけです。

【藤田氏(立教大学文学部教授)】  私は、複式学級をやらざるを得ないところは、地域によってはそういうところはありますから、それはいいとしても、その必要がない規模の学校であえて複式学級にするのは好ましくないだろうと思っています。ですから、先ほど申しあげたのはあくまでも、入学年次による大きな違いをなくすという趣旨です。例えば2年生から6年生までは2クラス編制になっているのに、新1年生は40人ぎりぎりで1クラスにしかならないというのでは困るだろうし、途中まで2クラス編成だったのに、転校で生徒数が減ったからといって1クラスにするわけにはいかないだろうということです。学年によって40人の学年が一方にあり、もう一方で、二十数人の2クラスになっている学年があるというのはいかにも学年の格差がひどすぎますよね。ですから、そういったものを解消する手立てが何かないだろうかということですね。

【金森初等中等教育局長】  ありがとうございました。

【髙橋財務課長】  ありがとうございました。それでは、時間ですのでよろしいでしょうか。すみません、最後に長南さんに1つだけ、藤田先生から小中で学級編制の標準を変えるやり方もあるのではないかというご提案があったのですが、小学校と中学校、あるいは低学年と高学年での人数というのは一律、あるいは変えるというあたりについては何かお考えございますでしょうか。

【長南氏(山形県教育委員会教育委員長)】  それは多分、すばらしい案だと思います。ですから、国としてはやっぱりある程度1つの数字で標準をつくって、それで教員を配置していただく。あとは、学校に任せたほうがいいのでないか。一応の数字は示して、その学校の校長の判断によって、例えば小学校だったらうちの学級は33で基準にしますよ、30人基準にしますよという、そういう考え方で進めてもらうと私はいいのではないかと。でも、国としては1つの数字で標準をちゃんと示して、標準で配置するしかないのではないかなという感じがしますね。

【髙橋財務課長】  ありがとうございました。実は、まだまだお聞きしたいことがたくさんあるのですけれども、この後がございますので、第1部はこの程度で終了したいと思います。本日はまことにありがとうございました。

― 了 ― 

5.出席者

長南 博昭 氏(山形県教育委員会教育委員長)、藤田 英典 氏(立教大学文学部教授)

お問合せ先

初等中等教育局財務課