幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議(第7回) 議事要旨

1.日時

平成22年6月30日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階第1特別会議室

3.議題

  1. 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について

4.出席者

委員

無藤座長、榎沢委員、太田委員、岡上委員、押谷委員、神長委員、神村委員、岸本委員、木下委員、河野委員、嶋田委員、奈須委員、北條委員、山本委員、湯川委員、若盛委員

文部科学省

德久大臣官房審議官、濵谷幼児教育課長、先﨑幼児教育企画官、梶山教育課程企画室長、津金幼児教育課教科調査官、湯川幼児教育調査官 他

オブザーバー

(厚生労働省)丸山保育指導専門官

5.議事要旨

  • 事務局からの配付資料の確認の後、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して、本協力者会議における主な意見を整理した資料を基に協議が行われた。その概要は以下のとおり。

【幼児期から小学校にかけて子どもたちが身に付けてほしい力】

○資料1-2の「これまでの主な意見」を整理した資料についてだが、内容的に似ている項目が重複して出てくるので項目を整理する必要がある。また、p2の「小学校1年生の第一歩」に関する意見は、幼児期の教育に関する意見というよりも、小学校教育に関する意見に整理した方がよいのではないか。
○「学びの基礎力」は、学ぶ喜びを体感していくという意味で、こういうまとまりで表現すると非常にわかりやすい。「学びの基礎力」のうち、「興味」の中で「何についても」とあるが、この時期の子どもの興味や関心の持ち方を考えると、興味を持ったものにとか、今までちょっと苦手意識があったものに対する興味ではないか。そういった視点から整理すると方向がよく見えてくるのではないか。
○「これまでの主な意見」を見ると、幼稚園教育要領で重視していることはおおむね各幼稚園でも賛意を得ているのではないか。幼児期から小学校にかけての基礎とは何か。現行の幼稚園教育要領で重視していることはまさに基礎として位置付けられるのではないか。
○小学校1年生に入ってきて、なかなかじっとしてくれない子どもがいても、周りの仲のよい友達が声をかけてあげたりするなどにより、徐々に落ち着きを持つようになる。一人一人にある力や能力を育てようと狭く考えるのではなく、周りとの助け合いや関係の中で変わってくることを考慮すべきである。
○幼児期から小学校にかけて一番重要なのは、子どもがどう意欲的に学習に向かってくれるようになるかではないか。
○保育所や幼稚園で座って授業のような形をとれば、小学校で座って聞けるようになるわけではない。座って聞く態度は子どもたちの意欲の中から出てくると考える。
○教育の構成原理は、例えば、(1)幼稚園教育の目的・目標、(2)教育要領の5領域の教育内容の個別項目、(3)教育内容の個別項目のさらにその下にある具体の活動といった、三つの層に分けて整理しながら考えることが必要である。
○三つの層に分けて整理する場合、抽象度を上げて考えていくと本質的であるがゆえに曖昧性を持つので、結果的に実効性を持たないことになりかねない。幾つかの階層に分けて議論するのと同時に、上の階層のことが下の階層のこととして明確に表れるように配慮しながら議論を進めることが必要である。

【幼児期から小学校にかけて身に付けてほしい力を育成するための活動】

○接続期の単元構成原理は、幼小の中間の部分にあると考える。すなわち、身に付けたい力を意識しながら、子ども、活動、内容という形になっていくのではないか。身に付けたい力と同時に、そのカリキュラムの編成の仕方や指導法を言及することが大切である。
○資料1-2のp3「協同」のところは、育てたい力と育てたい力を育成するための活動が混在しているので、整理が必要である。
○小学校算数の第1学年の目標には「具体物を用いた活動」とあるが、例えば、幼児期と小学校の教育とでこの具体物のイメージを共有できたら、接続としてつながりが持てるのではないか。
○自然や命とのかかわり的なものを見える形で出した方がよいのではないか。自分自身とのかかわり、人とのかかわり、ものとのかかわり、自然や命とのかかわりでまとめることなどが考えられる。
○幼児教育においては「表現」を重視しているので、探究、言語、数量的な思考力などと並んで表現力もしっかり押さえたい。

【幼小の指導観・子ども観などの違い、指導方法・指導体制の工夫の必要性】

○資料1-2のp5にもあるように、小学校低学年の教員が幼児期の子どもの指導法を学ぶ機会がないといけない。
○幼稚園の教員の子どもへの援助や指導の仕方は小学校の教員にとってかなり有益なのではないか。
○小学校と幼稚園や保育所とでは、学習集団の規模の違いがあるため、小学校で、幼稚園や保育所と同じように自由度を高めた遊びを構成するのは難しいが、幼児期の教育の手法を学びながら、小学校で指導していくための方法や手立てを工夫する必要がある。
○接続期の教育については、幼小双方の指導観や指導方法を持った教員が必要であり、そうしたことを学べる機会を設定することが必要である。
○小学校教育で取り組む要素としては、(1)幼児期の子どもの発達特性に応じて、遊びや暮らしから学びを紡ぎ出す発想を持つこと、(2)インフォーマルな知識を足場に授業をすることの2点があげられる。幼児期の子どもが既にいろいろなことを学んでいるということを踏まえて、この二つの考え方を整理しながら、両方をやっていくことで、幼児期と小学校との接続もうまくいき、小学校教育の質の向上にもなる。
○幼児期の教育を学んだ教員は小学校でもよい教育ができるが、小学校低学年の学びまでを考えた幼稚園教員の育成も必要である。

【幼児期の教育と小学校教育の連携・接続の在り方(接続期など)、教育環境等との関連(養成、研修、保護者の理解等)】

○過去に比べると、幼稚園が参加しなければならない地域の連絡協議会が非常に増えている。協議会を形式的につくるだけでは連携疲れが起こるだけで、物事が進まない。教育委員会が積極的にコーディネーターの役割を果たしていくことが必要である。
○質の高い教育をどう捉えるか。教育基本法では、人格の完成を目指すということが示されており、乳幼児期の教育においても、人格の完成という視点を忘れてはいけない。乳幼児期は無意識の活動から始まっていくが、それを意識化していく部分で発達に応じたサジェスチョンが必要になる。学びの連続性を視野に置いた接続のスタイルをつくっていくことが重要である。
○小学校でスタートカリキュラムがつくられるようになったことは大きな前進だが、教科の指導方法や指導観があまり変わっていない現状がある。スタートカリキュラムを考えるときには、教科の学習についても考えていくことが必要である。
○小学校低学年でも、体育の運動遊びや図画工作の造形遊びなど、幼児期の教育とほとんど違いがないぐらいに自由度の高い創作活動を子どもたちは行っている。幼児期の教育の中でも、例えば数を数えることができるなどといったことを試してみることも必要ではないか。
○3歳、4歳ぐらいまでは個人差が大きく、個別の支援が必要だが、5歳児の秋頃になると、友達の話を聞いて自分の課題として考えることができたり、6人以上で集まって遊びが成立したりするようになってくる。
○「与えられた課題を自分の課題として取り組む」、「目当てを持って、追究する」、「時間が来たら、気持ちを切り替え、集中する」といったことが幼児にいつ頃芽生えるかというと、5歳児の後半では、こうしたことに対する芽生えが見えてきている。この頃から子どもたちは変わっていき、小学校へとつながっていくのではないか。
○幼稚園や保育所から小学校に行って、新しい文化、新しい認識が行われるが、こうした文化の違いを共有できる時期、個人差がある程度解消される時期が接続期と呼ばれる時期の終了の時期になるのではないか。子ども個人や子どもの集団を見ていくことで、始期と終期が見えてくるのではないか。
○幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、幼児期の教育と小学校以降の学校教育は、整合性・一貫性を確保しつつ、体系的な教育が組織的に行われることが必要である。
○過去の幼稚園教育は小学校と連携・接続したいと小学校に求めてきたため、幼稚園側が譲歩しながら小学校とつなげる努力をしてきたが、これは結果的に幼稚園自体を就学準備教育に傾斜させることにつながった。平成元年改訂の幼稚園教育要領は、幼児教育の基本に立ち返って、就学準備教育でない幼稚園教育本来の在り方を取り戻そうと努力した結果、本来の幼児教育を取り戻すという点では意味があったが、小学校との接続の観点や教師の指導性を低く抑えてしまったため、小学校との段差が余計にできてしまった面がある。
○幼稚園でどういう力が育っているのか、小学校の教員等に分かる形で提示してこずに、幼稚園の中で閉じていたところがある。幼稚園教育で育っていることが小学校の学びにどうつながるのかを小学校の側にも分かるような形で示していくことが必要である。
○スタートカリキュラムは幼小接続の小学校部分だということ強調してほしい。でないと小学校の教員は自分たちがスタートだと思ってしまう。スタートカリキュラムがなぜ考えられたか、それは幼小の接続が必要だから出てきたことだと分かるようなアピールが必要である。
○子どもに共通に求める一定のレベルを示して、一人一人がそれを身に付けられるようにすることが基本となるが、その一方、小学校に入ってきた子どもに対して、必要に応じ、個別の指導計画や支援計画をつくって対応していくことも考えていく必要がある。
○接続期の時期の捉え方は、(1)年長の3学期と小学校1年生の4、5月頃、(2)年長の2、3学期から1年生の1学期、(3)5歳児と1年生、(4)幼児期の3年間と小学校6年間などいろいろな捉え方ができる。小学校を意識する時期としての議論は必要だが、その背後に幼稚園や保育所での教育を含めた大きなつながりがあることを十分意識する必要がある。

  • 座長から、次回は本日の各委員からの御意見を整理した上で、更に議論を深めていきたい旨、発言があった。
  • 事務局から次回の会議の開催日時について説明があり、閉会した。

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初等中等教育局幼児教育課