「今後の学級編制及び教職員定数の改善」に関する意見(全国特別支援学校長会)

平成21年2月10日

文部科学大臣 川端 達夫 様
文部科学副大臣 鈴木 寛 様
文部科学大臣政務官 高井 美穂 様

                             全国特別支援学校長会
会長  岩井 雄一

「今後の学級編制及び教職員定数の改善」に関する意見

 このたび、貴職におかれましては、本会に意見聴取の機会を与えていただき、ありがとうございます。本会としての意見を述べさせていただきます。

 全国特別支援学校長会としては、特別支援教育の推進と充実を目指し、約1000名の会員の協力を得ながら実践に努めてきています。

しかしながら、特別支援教育が実施されてから、特別な支援を要する児童生徒の実態が明らかになり、どの小・中学校にも発達障害を有する者が約6%在籍することが分かりました。

 また、特別支援学校には、在籍児童生徒の教育に加え、これらの小・中学校の児童生徒や教職員を支援する、センター的機能の発揮が求められています。

 このような、特別支援教育の充実に向けた制度が改革されるに伴い、学級編制及び教職員定数の見直しが行われることは大変重要なことと考えます。

1、国の学級編制の標準の今後のあり方について

 小・中学校等において、発達障害の児童生徒を個に応じた配慮をしつつ指導していくためには、少人数学級を推進することが重要であり、計画的に少人数学級を実現するための定数改善の実施を要望します。

(1)特別支援教育学校における教員の専門性の担保と質と量の確保

 特別支援学校には、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、知的障害、病弱虚弱やこれらの障害に発達障害を併せ有する児童生徒が在籍していますが、その障害の程度は重く、多様化、重複化しています。

 これらの児童生徒の指導には、教員の障害特性に対する専門性の担保が喫緊の課題ですが、特別支援教育の専門性を持つ教員の確保が難しい現状があります。

 本会の調査によれば、平成21年度80%以上の都道府県で採用不足が生じていました。また、そのうち80%の都道府県が、臨時任用の教員で補充していました。

 それぞれの障害に対応できる教員の配置が必要です。特に複数の障害を併せ有する児童生徒が在籍する学級への教員配当が必要です。

 また、特別支援教育の免許を持つ教員の配置や教員養成課程におけるカリキュラムの見直しを図り、全ての教員の専門性向上が求められます。

(2)特別支援教育の制度改革に伴う教員の増員

 特別支援教育のセンター的機能を充実させるためには、特別支援教育コーディネーターの定数配置が必要です。これまでも定数改善がなされていますが、さらなる改善が必要です。

 現在は、各特別支援学校においては、それぞれ1~5名程度の特別支援教育コーディネーターが担任を兼務しながら、地域の小・中学校の要望に応じて特別な支援の必要な児童生徒や教職員の支援を行っています。

(3)複数の障害種別を併せた大規模校の学校経営に見合う定数改善

 様々な教育課題に対応するには、校長のリーダーシップの下、組織的かつ機動的な学校運営が求められています。

 しかしながら、小学部、中学部、高等部と3学部を設置する学校や複数の障害種別を併せた学校など、教職員が100名以上を越す管理スパンの学校も少なくありません。

 学校の組織力を向上させるには、副校長の複数配置や主幹教諭の配置の拡充が必要です。

(4)健康・安全教育や食育の推進を図るための教職員配置

 心の病や健康上の配慮が必要な児童生徒が安心して学習するために養護教諭の複数配置が必要です。特に児童生徒数の多い学校に対する配置が必要です。現在の公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律では、学級ごとに乗ずる数を決めているため、実際の児童生徒の実態にそぐわない面があります。弾力的な配当基準の制定が必要です。

 また、摂食指導など生きるための基盤となる食育の推進のための栄養教諭の配置も重要です。

2、新学習指導要領の円滑な実施など教育課題に対応した教職員定数の在り方について

(1)指導内容の充実を図るための非常勤講師の配当時間数の増加

 基礎基本の充実を図るには、授業時間の全てに対して教員が配置されるべきです。

 しかし、病気休職者の後補充は非常勤講師が配当され「教科の指導」が中心で、特別支援学校で行われる「領域・教科を合わせた指導」などの児童生徒が学ぶ全ての授業に対しての講師配当は行われていません。講師配当時間数を、特別支援学校の実態に応じた基準に改正する必要があります。

 また、学校教育法第37条第16項の「講師は、教諭又は助教諭に準ずる職務に従事する。」と定められていますが、授業の実施については、「教諭と同等に講師単独で行うが、校務運営の関与については教諭の補助的な職務しか行わない」と解されます。

 定数上は教員が配置されていても実質の業務を遂行するだけの人的、時間的配当はありません。講師の職務についても検討をお願いいたします。

(2)キャリア教育の充実

 特別支援教育におけるキャリア教育は、社会自立と共生社会への参加を教育目標とするうえで重要な課題です。

 進路指導担当の定数配置や小学校段階からの指導内容の整理に従事する教員の配置が必要です。

(3)保護者との連携を重視する教育の充実

 特別支援教育では、個別指導計画や個別の教育支援計画を一人一人に作成し、保護者や福祉・医療・労働等の関係機関との連携の中で指導してきています。

 学習指導以外の支援に関する資料の整理や連携のための会議等に時間を要しています。児童生徒の支援に関する学級事務作業に対する保障も重要です。授業軽減の措置を講じるとともにそのための非常勤講師の配当が必要です。

(4)教材・教具の開発と準備時間の保障

 児童生徒としっかり向き合うには授業の準備が重要となります。特に特別支援教育においては、個に応じた指導を充実させ、確実に成果を上げるには、児童生徒一人一人の個別の教材・教具の開発や準備が必要となります。多様なニーズに応じた手作りの教材の作成時間の確保が必要です。非常勤講師などの配当による教員の活動時間の確保が必要です。

以上

 

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