今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見(全国連合小学校長会)

平成22年2月9日

文部科学大臣
川端 達夫 様

  全国連合小学校長会長
向山 行雄

今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見

 貴職におかれましては、今般、「平成23年度以降の学級編制及び教職員定数の在り方について本格的な検討を行う」とし、教育関係団体から意見聴取されますことについて、感謝しております。

 全国連合小学校長会としては小学校教育の充実を目指し、各会員の力を結集して実践に努めてきたところであります。しかしながら、今年度、本会において行った「教員が子どもと向き合う時間」の実態調査では、9割以上の都道府県の小学校長から「向き合う時間が少なくなっている」との回答が寄せられております。諸外国に比べ、法定勤務時間が年300時間も長く、また、文科省調査にもありましたように月平均34時間の残業をこなしている教員の多忙感は、ますます増加している現状にあります。

 また、今日の学校教育を取り巻く環境の変化として次のような状況が見られます。

1 不登校や問題行動の増加

不登校児童の割合は平成3年度と平成20年度とを比較し、2.3倍増加しています。学校内での児童の暴力行為の件数は平成9年度と平成20年度とを比較し、4.6倍増加しています。また、子どもの携帯電話所持率の増加、インターネット活用率の増加などに伴う新たな問題に対する指導も大きな課題となっています。

2 発達障害のある児童への対応

どの学校にも6%程度の特別な支援を要する児童が在籍するとされております。主要先進国に比べ、教員以外の専門スタッフが少ない我が国の現状においては、これらの児童に対する指導、保護者や関係機関との連携や協議などに担任が多くの時間を要し、一人では十分対応しきれていない状況もあります。

3 保護者の価値観の多様化

先述の調査では保護者が変化し、「保護者にかかわる個別の対応が増加している」という回答が5割以上あります。給食費等の未納、理不尽な要求の増加など社会問題化した状況もあります。保護者の高学歴化とあいまって、保護者が多方面にわたって厳しく評価するようになり、学校に対する姿勢が変わってきました。

4 保護者への個別対応の増加

子どもどうしの些細なトラブルについても深刻化することが多く、学校は保護者間の仲裁をするなど、保護者との信頼関係を維持していくために、十分な時間をかけ対応しなければならなくなっております。

5 週当たりの授業時数の増加

40年ぶりに指導時数や授業内容が増加し、教職員の負担感は大幅に増加しています。さらに、外国語活動など新たな学習内容の増加、体験活動の充実、宿泊学習の実施など、子どもたちに充実感のある活動をさせていくために、膨大な時間が必要となっています。

学校が抱えるこのような諸課題に対応しつつ、学校がその特色を生かし、きめ細かな指導を可能としていくためには、学級編制の標準の見直しや教職員定数の改善が欠かせないところであります。本会は、これまでも教員の定数改善や諸条件の整備について要望してきたところであり、今後の学級編制及び教職員定数の改善について下記のとおり意見を表明いたします。

1 国の学級編制の標準の今後の在り方について

(1) 「教員が子どもと向き合う環境づくり」という視点から学級編制の標準を見直し、配置率の改善を図ること。

ア 少人数学級の成果と課題

これまで多くの道府県において少人数学級が実施されてきた。例えば、「教育山形『さんさん』プラン」においては、67人超の学年において21人から33人規模の学級を編制している。少人数学級編制の効果として、学習形態の多様化、児童の発言回数の増加、教員の児童へのかかわりの頻度と質の向上等が見られるとともに、標準学力検査における学力の向上、児童の欠席率の減少などが報告されている。また、児童数30人以下の学級が7割を占める秋田県においても、学力・学習状況調査等において同様の結果が出ている。

 しかし、少人数学級編制を行う多くの自治体は現定数内の配置で実施しているため、教員数に余裕がなく、学校運営力の低下、教員の多忙感の増加などの課題がある。

イ 少人数指導の成果と課題

少人数指導は全国すべての都道府県において実施されており、児童一人一人にきめ細かな指導を行うことを通して、総じて児童の学力向上に効果があると評価されている。今回の学力・学習状況調査においても、特に低学力層において習熟度別少人数指導を受けた児童の方が、受けなかった児童よりも正答率が高い傾向や無解答率が低い傾向が見られるなど、学力の底上げにも効果が上がっている。

 しかし、現状の加配では実施学年や実施教科に制約があり、更に改善が必要である。

(2) 学校のマネジメント機能の強化という視点から定数改善を図ること。

校長のリーダーシップの下、組織的・機動的な学校運営を推進することが求められている。学校の組織体制を整え、教員どうしの役割分担と連携を強化し、子どもと向き合う時間を確保し、地域や保護者などへの対応を組織的に行い、人材や時間を有効に活用するためには、主幹教諭の配置を拡充する等、学校の組織力の向上を図る定数改善が是非とも必要である。

(3) 自治体や学校の弾力的運用を尊重すること。

学級は児童の社会性を培う場であることを配慮し、一定の規模以上であることが望ましいと考えられる。このことに配慮した学級編制の標準を設定することが必要であるが、1学級あたりの児童数の下限をどの程度とするかについては議論が必要である。

 また、児童の転出入により、学級の統合や分割を繰り返し、児童の人間関係に混乱や不安が生じないようにするため、市町村や学校が1学級あたりの児童数を弾力的に運用できる制度とすることが必要である。

 また、教職員定数の改善については、標準定数の算定を都道府県ごとから市町村ごとに改め、きめ細かく行うことにより、地域や学校の実情に合わせた指導形態・指導方法の改善が可能となると考えられる。

 学級編制の権限を市町村に委譲することや教員の活用に係る学校・校長の裁量を拡大することは望ましいが、市町村間の財政力の違いによる格差が更に広がることのないよう、財政的保障を伴う権限委譲とすることが必要である。

2 教職員定数の改善に向けた、具体的要望事項

  上記1の趣旨から以下のような施策の計画的な推進を求めたい。

(1) OECD各国平均である1学級あたりの児童数21.4人を目途とした、教職員定数の改善

(2) 学校規模ごとに定められている小学校教員配置率(乗ずる数)の引き上げ

(3) 教頭の全校配置と複数配置の拡充

(4) 養護教諭の全校配置と複数配置の拡充

(5) 事務職員の全校配置

(6) 栄養教諭等の配置拡充

本件の問い合わせ先
全国連合小学校長会 対策部長
露木 昌仙(練馬区立上石神井小学校長)
電話番号 03-3920-1013

お問合せ先

初等中等教育局財務課