今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見骨子(全国教育管理職員団体協議会)

今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見骨子

平成22年3月2日

全国教育管理職員団体協議会

 今回、2006骨太方針 行革推進法からの脱却し、「教員が子どもと向き合う時間を確保し、教育に集中できる環境をつくるため、経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国平均水準並の教員配置(教員一人あたり生徒16.2人)を目指し、少人数学級を推進します」(INDEX2009)という方針にそって、学級編制の標準及び教職員定数の改善に踏み込もうとしていることは、大いに評価する。

現在、各小中学校は改訂学習指導要領の移行過程から本格的実施へと指導計画の作成、教材の準備、そのための指導力向上をめざした研修などを精力的に取り組んでいる。

 しかし、文部科学省の調査でも明らかなように、月34時間に及ぶ時間外勤務、肥大した職務内容、職責は、改善されることなく勤務実態をさらに過密化、深刻化させている。

 学校の目的は、教育基本法にある人格の完成にあり、教育目標具現化のための教育課程の円滑実施にある。しかし、かつて、あたりまえのように前提としてあった、一定の生活習慣や生活規律を培ってきた家庭の教育力は変化し、より攻撃的で病んだ一部保護者の存在に加え、多様な課題を抱える児童生徒など、新たな教育課題への対応に、教員は多忙感を極めている。加えて、勤務時間の短縮、改訂学習指導要領実施に伴う悉皆研修など、時間的にも、内容的にもかつてない困難な状況を迎えている。

 全国教育管理職員団体協議会は、かねてより、学級編制の標準の引き下げと教職員定数の抜本的改善を求めてきた。特に教職員定数改善にあたっては、小学校で学級数の1.5 倍、中学校で2.0倍の教員配置とし、その校内配置は学校の裁量とするよう一貫して要望してきた。この方針は、現在も変わることはない。学級編制の標準は、教職員の配置の基礎であり、また、教職員給与の負担金の算定基準でもあるが、そのことをもってして、一律に1学級の児童生徒数を固定化するものとせず、各学校の状況に見合った最も効果的効率的な人材配置を学校長の権限とすべきであると考える。以下、その考え方について述べる。

〔1〕 学級編制の標準を引き下げる根拠として、1学級あたりの児童生徒数や教員一人当たりの児童生徒数の国際比較が挙げられることが多い。どちらをとっても、その国の歴史や文化と深く関わる事柄であり、単純に数値をもって比較するべきものではない。公教育の集団教育主義を根幹としてきたわが国の教育と文化の中で考えるべき事柄である。

〔2〕 「日本の教育を考える10人委員会」2007年の保護者アンケートでは、保護者が適正なひとクラスの児童生徒数を30人と考える比率が、ほぼ半数を占める。しかし、現在、学級に在籍する児童生徒が36人以上である学級、小学校の19%、中学校の42%の学級については、引き下げは直接的に有効である。しかし、35 人以下の小学校81%、中学校5 8%の学級にあっては、単純にひとクラスの人数を引き下げることの有効性より、たとえば、専科教員による指導が十分に行われてはいない小学校高学年では、同じ定数内の人員を学級数より教科担任の配置とした方が、より専門性が高く、授業効率を高めた授業を児童は請けることができると考える。

〔3〕 仮に30人に学級編制の標準をおく場合、最少として15 人学級が存在することがあり、さらにその中で男女の区別があることが、集団教育として良さを発揮しうるか疑問が残る。

〔4〕 特別活動や体育、音楽などは教科の特性上、一定の学習集団の数が必要とされ、また、生活集団と一体となった学習集団での学ぶべきものもある。一方、学力格差が拡大する算数、数学、英語などの学習は、生活集団と離れ、少人数で、習熟度別の学習が効果をあげるものもある。発達年齢とのかかわりの中で、学習集団と生活集団を柔軟に考えることができる学校裁量の配置が求められる。

〔5〕 小学校では、前回の学習指導要領改訂から音楽、図工の授業時間が削減され、事実上担任が指導する授業時数が拡大してきた。そのため、教材準備や児童のノート点検、作文等の添削や採点などの事務に費やす時間がなく、結局は時間外勤務、土日の出勤を余儀なくしている。児童生徒と向き合う時間の確保の視点からも、より専門的な授業の質を高める上からも、必ずしも学級編制の標準引き下げによる増員が、ひとクラスの児童生徒の削減と直結させる必要はない。

〔6〕 「学習指導要領の大綱化」(INDEX2009)の中では、「設置者及び学校の裁量を尊重し、地域・学校・学級の個別状況に応じて、学習内容・学校運営を現場の判断で決定できるようにします」との方針が述べられている。このことを「学習指導要領の大綱化」と称するかは別として、特色ある学校づくり、個別事情に配慮した学校運営は、義務教育の均一性、一律性を考慮しても、なお重要な視点である。各校が児童生徒実態に即して。校長の裁量権とし、人員配置は行うことは教育の責任所在を明確にすることである。

 

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