今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見について(全国市町村教育委員会連合会)

今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見について

全国市町村教育委員会連合会

1 学級編制について

今日の変化の激しい社会の中で児童生徒に生きる力を培うためには、学校が一人一人の多様な能力や創造性を最大限に伸ばす場が求められ、多様な価値観の中で生きる子どもたち、一人一人に、確かな学力をつけ、豊かな心や個性をはぐくむために、子供たちのよさや可能性をより多くの目でとらえ、きめ細かな指導を継続していく必要性が、ますます高まっている。

 児童生徒に、学習の基盤となる生活習慣、学習意欲、ねばり強く取り組む態度の向上も指摘されている。

 また、昨今の児童生徒は、自分の将来に向けて、夢や目標を持たない、持てない傾向も見えている。この傾向は、児童生徒だけに問題があるとは必ずしも言えず、教職員の果たす役割も大変重要である。

 近年、教職員については、学習指導、生徒指導、部活動および事務処理等において質的、量的変化の対応に追われ、また、保護者や地域社会等との対応にも多くのエネルギーを費やし、身体的、精神的負担が過重となっている。本来、教職員は、ゆとりを持って一人一人の児童生徒と向き合い、いわゆる人間力(学ぶ意欲、働く意欲、規範意識、体力)等を身につけさせることが本務であるが、それらを遂行していく上で厳しい状況下にあり、心因性疾患の教職員も増加傾向にある。このような状況下においても教職員は、児童生徒に対して、人間力の修得を基盤としながら、学力および社会性を身につけさせるために日々教育活動に専念しているところである。

 日本の平均学級規模は小学校28人、中学校33人(2009年)と、OECD加盟国中、最も多い国の一つである。

 学級編制は現在40人学級を基本としており、長年改定されていない。少子化、過疎化現象が進み、全国的に児童生徒数は減少しており、さらに、都道府県では地域により実態が大きく異なっている。標準法第3条2項のただし書きにしたがって都道府県では、規定に定めてある標準より下回って一学級の児童生徒数で、基準にしているが、財政力のある地域とない地域との差が生じている。教育水準を一定に保たなければならない義務教育においての大きな課題である。

 いくつかの県、市の例をあげれば、長崎県では、小学校第1学年は30人、小学校第2学年・6学年、中学校第1学年は35人と学級編制の基準が規定されている。また、埼玉県では、小学校第1学年・第2学年においては、35人、中学校第1学年においては、38人学級編制が可能になっている。岐阜市においては、基本的な生活習慣の確立を図るために、小学校第1学年・第2学年では35人学級編制を実施しており、その有効性については実感されておりさらには小学校第3学年、中学校第1学年にも学級編制を拡大できないかという動きもある。

 学級は生徒指導や学校生活の場である生活集団としての機能を主とするものと位置付けられる。学習集団は、学級単位での学習指導が行われる場合が多いとしても、児童生徒の状況や教科等の特性に応じて多様な学習指導の場が設定できるものであり学級にとらわれないとものとして整理することが適当である。学習指導の機能を高めるために学級編制とは別に児童生徒を学習課題等に応じて、グループに分け個別に指導することは従来から可能であり、部分的にも行われてきた。

 さらに、「生きる力」の育成を目指す新しい学習指導要領に基づく教育活動を進めるためには、各教科の指導にあたり、体験的な学習や問題解決的な学習が重視されるとともに、個別指導やグループ別指導、繰り返し指導や習熟の程度に応じた指導、ティームティーチングによる指導など、指導方法や指導体制の工夫改善がますます必要となる。

 また、選択教科においては課題学習、補充的な学習や発展的な学習など、多様な学習が行われることが予想される。特に、小学校においては、従来学級担任教員が大半の授業を受け持っている。今後、特色のある教育活動を進めるためには学級担任に限らず、すべての教職員が校長を中心に一致協力して指導にあたることが一層重要となる。学校外の専門的人材を有効に活用することも必要となる。また、多くの教職員等が指導や評価にかかわることにより様々な観点からきめの細かい指導・評価等が可能となる。こうしたきめの細かい指導を通じて児童生徒の個性を育んでいくためには、できるだけ多くの教職員が一人一人の児童生徒とかかわり多数の教職員がそれぞれの成長発達を見守り、支援していくことが極めて大切である。

 多様な学習集団の編制は、個々の児童生徒にたいして多数の教職員が接する機会を広げるものであり、きめ細かな指導とあいまって生徒指導上の課題にも大きな効果が期待される。今後の学級編制及び教職員配置を考えるに当たっては、このような新しい学級の在り方に対応することが大切である。

 学習集団と生活集団を分けて考え、学級規模を変えないで、必要に応じて能力別の少人数指導を行うことがよいとする考えもある。しかし、義務教育にあっては、多様な仲間との学び合いが大切であり、基本的には学習集団と生活集団は同一であるべきである。したがって、基本的には、少人数学級の実現を目指すべきである。

 しかし、学校の現状をみつめると、落ち着いた学校、学級生活は、学級の人数が少ないほど実現し得るという単純なものではなく、他に、教師の指導力や学級の児童生徒および保護者同士の人間関係、地域特等の諸事情のも大きく影響を受けている。また、教科や活動内容によっては、少人数では意見が多様化しなかったり、練り上げられなかったりする例も見受けられる。

 したがって、学級編制については、学校現場をよく知る校長や市町村教育委員会の考えが十分に尊重される形で実施されることが望ましい。市町村間や学校間による違いが、教育委員会や学校に対しての不信感につながってはならない。ましてや、市町村ごとの財政状況により格差が生じたり競争が激化したりすることは、望ましくない。教職員の給与負担者である都道府県の範囲では統一すべきであろう。具体的には、国として、義務教育の教育水準を今後も維持・向上させる立場から、教員が子供と向き合う時間を確保し、教育に集中できる時間を確保するために35人程度の少人数学級の実現を漸次進めていくことである。

2 教職員定数の改善について

 昭和33年の義務教育標準法制定以降、7次にわたって定数改善計画が実施され、教育条件の充実に寄与しいてきたが、第8次教職員定数改善計画(18~)は見送られたうえに、行政改革推進法や政府の「骨太方針2006」等により教職員の負担が増大している現状がある。(事務・報告書等の業務・残業時間・病休者等の増加)

 児童生徒の問題行動や保護者対応が、多様化、深刻化してきており、教員が抱える教育的課題が山積している。

 第7次の定数改善計画では、一部を都道府県に任せる弾力的な運用が可能となったが、地方の財政状況等による地域間格差が生まれている。教育の機会均等と義務教育水準の維持向上を保証する意味からも、国が主導して教職員定数の改善を図る必要性がある。

 現状は学級数に応じた教員定数が基本であり、学年2クラス計12クラスの小学校の場合、児童数が246人から最高480人の差があっても、学級担任の数は12人で変わらない。従って学級数だけでなく、全校の児童生徒数いわゆる学校規模による加配も定数の上に加味する必要がある。

 とくに小学校については、小規模校において、学級数と同数の教諭すしか配置されていないので、児童生徒指導時や緊急対応時に、人員不足で非常に苦慮する状況がある。したがって、特に小規模校の学校に対して教員定数を増加させる必要がある。

 あるいは、小中学校等旧職員定数の標準を定めた法律第7条に関わる表に掲げる「乗ずる数」を大幅に高め、数年間の段階を踏んで改善を図ることが必要である。

 通常学級におけるLD、LDHD、高機能自閉症等の児童生徒対応のための特別支援教育担当教員の配置を図る必要がある。

学校教育法が改正され、第37条第2項において、副校長や主幹教諭、指導教諭の配置が可能にとなった。しかし、標準法第6条において『副校長、教頭、主幹教諭、教諭、助教諭及び講師の数は…  』と規定されており、『教頭及び教諭等』の定数の中で位置づけられている。

 各県においても、小・中学校に主幹教諭が平成21年度より配置されるようになったが、各県の市町村立小・中学校県費負担教職員配当基準では、やはり基準教員数のなかに主幹教諭の数が位置付いている。つまり、定数上の増員が無く、職だけ増えていることとなり、そのしわ寄せが一般の教員数に来てしまっている。

 そこで、新しく位置付けられた副校長、主幹教諭、指導教諭置については、定数上の優遇措置をし、学校組織がさらに充実されることに努められたい。

 中学校については、生徒指導上の問題発生率が増加し、それに対する取り組みに対しても、大きな労力を必要とする事例が多くなってきている現状を改善する上で、複式学級が存在しないすべての学校に対し、生徒指導専任教員を配置し、さらに大規模校に対しては、複数配置できるよう教員定数を改善すべきと考える。

 計画的な教職員定数の改善を行う場合基本的にしっかり押さえるべき点は「教育振興計画の策定に伴う教職員定数増および新学習指導要領の全面実施による授業時数や指導内容の増加に見合う教職員定数の改善」と「多様な教育活動を推進するために各学校が弾力的に活用できる教職員定数の配置」の2点については、都道府県が独自の配置基準を作り、基準に見合う学校に計画的に配当できるよう、国が定数を確保し必要数を都道府県に配ることができるようにすべきである。

 国は、予め改善計画年数の全体数を把握し、単年度ごとに必要数を確保し、都道府県に配れるようにすべきである。

 学校図書館法上5条において、「学校には、学校図書館の専門的職務を掌らせるため司書教諭を置かなければならない」と規定されている。各市町村において、小・中学校に司書教諭を配置しているが、ほとんどの者が、学級担任をもっているなど、司書教諭としての機能を十分に果しきれていない現状にある。

 そこで、司書教諭に係わる定数上の措置を行い、司書教諭が専門的に職務にあたることで学校図書館教育の充実を図れたい。

 標準法において、小学校教員の定数の見直しについて、「国、の学級編制の標準の今後のあり方について」の項目において前述しましたが、学校においては、個々の学力や学級で発生する問題が多様化してきている。しかし、小学校においては、現在の定数上では、担任以外に配置できる教員数はごくわずかに限られており、結果的に担任一人で教育業務を抱えてしまうことが多い。

 ここで、各学年に副担任を配置できるような教員定数がよいと考える。定数上での増員を行うことで、複数教員での授業実践や生徒指導対応など、柔軟な発想と機動力を発揮できる学校経営を構築できるよう改善されたい。

3 学級編制及び教職員定数の改善に伴う施設や設備

(1)学級増に伴う条件整備済みの教室の確保が必要になること。

[1] 教室増

    校舎内に余裕教室がない場合
    教室増のための土地購入
    校地・運動場の減少
    体育授業への影響
    部活動への影響

[2] 机・イス・下駄箱・ロッカー等を含む校具
[3] 児童生徒用の玄関の拡張工事
[4] 教育の目標を達成するために選択された教育の具体的内容及び文化的素材
[5] 教授と学習効果のために利用される教育用具(教具)
[6] 教職員増に伴う条件済みの職員室の確保(職員室の整備)
[7] 教科書・パソコン等備品の確保(教職員の勤務条件に係わる設備負担〉
[8] 教職員の給与及び福利厚生

(2)きめ細かな教育計画の必要性

(時間表)・・・・・・・・体育館・音楽室・理科室・図書館
(強化指導計画への教材備品活用の位置付け)
(教材・教具利用の調整)

(3)学年経営・教科経営・計画・充実・浸透

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初等中等教育局財務課