今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見(全国町村教育長会)

文部科学省
川端 達夫 文部科学大臣 殿

                                全国町村教育長会
会長 髙橋 健彦

今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する意見

 現在,学校では,基礎学力の定着,豊かな心の教育の推進を始め,いじめ・不登校の問題,理不尽な保護者からの要求に対する対応,特別支援教育等,喫緊の課題を抱え日々の教育活動に努力しているところです。しかし,社会の急激な変化による,教育課題の多様化と深刻化から,個に応じた指導等のきめ細やかな教育を十分に進めることが困難な状況です。

 このようなことから,現在,公立義務教育学校の学級編制の基準では児童生徒数を40人としていますが,上記のように複雑で多様な教育課題が山積している中では現行の40人学級の編制基準を見直す必要があると考えます。諸条件を考慮して,当面は35人とし,将来的には30人程度が適当と考えます。

 教職員の定数に関しては,本則定数以外の加配措置があり,現場として非常に救いとなっております。学級編制の基準が変わることによって,この加配の枠が減少することのないように願っております。

1 国の学級編制の基準の今後の在り方について

(1)義務教育法による学級編制基準を当面は35人にして,将来的には30人に改善していただきたい。

  • 保護者のニーズの多様化への対応や個に応じた指導のため少人数学級が必要と考えます。
  • 必要な教員数の確保や施設設備面の整備が必要となるため,状況を勘案しながらの改善が必要と考えます。

(2)特別支援学級における定員を現行の8人より減じていただきたい。

  • 特別支援学級の編制については,10人から8人へと改善されているが,特別支援を必要とする児童生徒は増えつつあり,しかも重複障害のある者や症状が重い児童生徒も多くなってきているので,より手厚い指導が必要と考えます。

(3)一人の教員が二の学年を同時に指導する複式学級の標準を10人程度にしていただきたい。

  • 一人の教師が複数学年の児童生徒の教育効果を同時に上げるには,現行の16人では困難であると考えます。(特に個に応じた指導,学力向上等を考えると指導が多岐に渡る)

(4)学級編制については,地域や学校の実情に応じて弾力的に運用できるようにしていただきたい。

  • 地域や学校によって,物的・人的環境が違います。それぞれの実情に即して対応できるようにすることが望まれます。
  • 上限を35人程度とし,1クラスの児童生徒数の下限を25人程度とするなどとして人数の幅を持たせると,無理のない学級編制ができると考えます。

2 計画的な教職員定数の改善を行う場合の具体的要望事項について

(1)教職員定数については,地域や学校の実情に応じて弾力的に運用配置ができるようにしていただきたい。

  • 地域や学校によって児童生徒の状況や地域の特色も違っています。それぞれの実情に応じて,教員の活用を地域や学校が選択できるようにすれば,より実情にあった,校内体制が作れると考えます。
  • 学校の状況に応じて,少人数学級編制をするためにクラスを増設したり,増設せず複数担任制や複数指導制にしたりするなどして,教員の弾力的な運用が有効であると考えます。
  • 中学校では,教科等の免許外担当が生じないようにするのが難しく教員の確保が難しくなっています。
  • 小1プロブレム,中1ギャップに対応する教員の特別配置を考えるのも一策だと考えます。
  • 児童生徒や保護者の支援のためにもスクールカウンセラーの全校配置が必要となっていると考えます。

(2)小学校の教科指導の充実のため,専科教員(音楽・図工・理科・外国語活動・体育・ICT)の加配的措置をお願いしたい。

  • 中高学年の専科制を今以上に導入し,授業の充実を図るとともに,教員の負担を減らすことができると考えます。専門的知識技能を生かした,豊かな心の育成や感性の構築は小学校時期には大変重要と考えます。
  • 一人の教師が全ての時間に関わって指導するより,多くの教師が児童と関わることにより,教師や児童にとって心理的にも支援することができるので,学習指導も充実することができると考えます。
  • 教科担任制の指導を行うことにより,中一ギャップの問題にも対応できると考えます。

(3)特別支援を必要とする児童生徒が通常学級に在籍する割合に応じて複数担任制や介助員・生活指導員などの配置をしていただきたい。

  • 通常学校に在籍する特別支援を必要とする児童生徒は,年々増加し程度も重くなっています。本人や周りの児童生徒の安全と学習の保障をするためにも複数担任制や介助員・生活指導員・(看護師)などは必須になってきているのではないかと考えます。

3 その他

(1)法改正により給与を市町村が負担することにより,独自に教員採用が可能になったが,町村の財政はどこも厳しい。全国一律の教育水準の維持向上の観点から,義務教育費国庫負担法に基づいて財政面で支えていただきたい。

  • 教育効果を図るために教員を増やしたり,少人数の学級編制を実現したりする事が,地域の財政により実現できたりできなかったりすることのないようにしていただきたい。

(2)6-3制の見直しについて

  • 学習指導要領の改訂による,指導内容や指導時数を見直すとともに,従来の6-3制をもう一度再検討していく必要があると考えます。5-4制 5-2-2制 など,現在の子どもたちの発達段階を考慮した学制の検討をしていただきたい。
  • 学制については,社会情勢や現在の子どもたちの発達段階にあった学制の研究をして,検討をしていただきたい。

(3)特別支援を要する児童生徒のためのセンター的な施設の設置について

  • 障害の状況が重度・重複化,多様化していることから,専門職種(看護師,言語聴覚士,作業療法士,理学療法士,臨床心理士等)が必要に応じて活用できる,センター的な施設が各市町村に設置していただくよう検討をしていただきたい。

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