3 学校を支援する体制の充実について

(1)関係機関や専門家とのネットワークの構築

  学校は、多様な関係機関等と連携してネットワークを構築し、児童生徒一人一人の状況に応じて適切な対応ができるよう、相談体制の一層の充実を図ることが大切である。

  • 多種多様な背景を有する児童生徒の諸問題や、問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、学校のみで解決したり、適切な対応を行うことが困難なケースが多くなってきている。このため、必要に応じて、学校が適切な関係機関と連携するネットワークを構築することが大切である。また、個々の事例ごとに、ネットワーク構成する関係機関の中から最もふさわしい機関が連携するサポートチームを組織化して、児童生徒の対応に当たることの有効性については、過去に、「学校の「抱え込み」から開かれた「連携」へ」(平成10年3月 児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議)等においても提言されている。このようなことは、教育相談の観点からも同様に大切であり、学校や教育委員会においては、日頃から関係機関との連携を深めるとともに、専門家が学校を支援する体制づくりが求められる。
  • 学校が連携を必要とする主な関係機関を整理すると、各地域に置かれている身近な教育センターや教育相談所等をはじめとして、例えば次のようなものがある。
    • (福祉関係)児童相談所、福祉事務所、児童自立支援施設、児童養護施設、主任児童委員、民生・児童委員、発達障害者支援センター
    • (保健・医療関係)保健所・保健センター、精神保健福祉センター、病院等医療機関
    • (警察関係)警察署、少年サポートセンター、少年警察ボランティア(少年補導員、少年指導委員など)
    • (矯正・更正保護関係)保護司、保護観察所、少年鑑別所
    • (その他)家庭裁判所、弁護士会、青少年育成団体、関係の民間施設やNPO、ボランティア団体など
  • 児童虐待や薬物乱用等の問題、児童生徒のメンタルヘルスに関わる問題がますます増加していること、また、近年では、児童福祉法や少年法、児童虐待防止法などの法的知識も必要となってきており、学校は、より医療的な側面や司法的な側面での支援体制を強化しておくことが重要である。
  • 児童虐待の深刻化等を背景として、家庭の状況等も考慮した連携の必要性が高い場合など、今後、スクールカウンセラーに加え、スクールソーシャルワーカーのような社会福祉の専門家の配置も、地域の実情に応じて検討することが必要である。
  • 各関係機関等が持っている情報や問題意識を集約し、ネットワーク内において共有することにより、子どものSOSを見逃すことなく、迅速かつ効果的な対応が可能となる。他方、児童生徒の個人情報を関係機関で共有する場合、どこまで情報を提供できるのかという個人情報の保護(プライバシーの保護)の問題が生じる。しかしながら、児童生徒を守り育てるという観点から、関係機関等が必要な範囲で情報交換を行い、相互の認識の共通化を図ることについては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(第8条第2項第3号及び第4号)や個人情報の保護に関する法律(第23条第1項第3号)等により、目的外提供の原則禁止の例外として認められると解され、児童生徒及び保護者のプライバシーの観点にも配慮しつつ、情報の適切な管理と活用が必要である。
  • 学校の教員と児童相談所等の職員との間で人事交流を行うことで、教育委員会と関係部局の連携に効果を得ているケースもあり、関係部局間で人事交流等を積極的に行うことも有益である。

(2)サポートチームの形成について

  関係機関とのネットワークを生かしたサポートチームの形成や、教育委員会等が中心となって「学校緊急支援チーム」(仮称)の設置を検討することが必要である。

  • いじめ等に対して、学校が機動的に対応できなかったり、学校や教員に対して一部の保護者が無理難題を課すなど、日常の学校運営において、一人の教員や学校では対応・解決することが難しいケースが生じている。このため、教育委員会が中心となって、関係機関等による学校のサポートチームを形成する必要性が高まってきている。
      また、多様な相談や意見等に対応し、教育行政に対する信頼を高めるため、教育委員会に相談事務を行う職員を指名し、窓口を明確にすることが必要である。
  • サポートチームを形成することによって、教員が児童生徒に向き合い、声をかけ、関わることがこれまで以上にできるようになることが期待でき、児童生徒の学校生活を安心かつ豊かにすることにも効果を発揮すると考える。なお、学校の主体性が損なわれたり、教職員の責任意識が希薄化することがないように留意する必要がある。
  • サポートチームの形成に当たっては、保護者(PTA)と地域社会の理解と信頼が基盤となることから、十分な理解と協力を図っておくことが必要である。
  • サポートチームの編成や組織化に当たっては、具体的な問題行動ごとに、どのような関係機関等が参加するか、どこがコーディネート役を担うか等を明確にしておくことが必要である。
  • また、学校が中心となって編成するサポートチームに加えて、いじめ自殺や外部侵入者に代表される重大事件や事故等に対して、学校の混乱を最小限に抑え、学習環境を回復し、事実解明を公正・客観的に行うことなどを目的として、教育委員会に「学校緊急支援チーム」(仮称)のような第三者的な支援組織の設置を検討することが必要である。
  • 児童生徒が気軽に相談し、悩みを打ち明けることができるようにするためには、学校等において、児童生徒の良き話し相手、良き相談相手となり、安心感を与えるお兄さん、お姉さん的な存在として、教員志望の学生や心理学を専攻している学生等を「メンタルフレンド」として、小学校や中学校で積極的に活用していくことも有益である。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課