生徒指導提要の作成に関する協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成22年2月5日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 今後の「生徒指導提要」原稿のとりまとめについて
  2. 「生徒指導提要」素案について 1. 「生徒指導提要」素案の重複部分の整理について 2. 「生徒指導の手引(昭和56年)」との比較による論点

4.出席者

委員

森田座長、麻畠委員、石井委員、市川伸一委員、大橋委員、尾木委員、
 小笹委員、影山委員、梶谷委員、北川委員、木下委員、
 笹森委員、杉原委員、須藤委員、野田委員、野原委員、渡邉委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長、井上児童生徒課長補佐 他

5.議事要旨

開会

議事

(1)今後の生徒指導提要の原稿のとりまとめについて、事務局からスケジュールや手順などについて説明があった。

(2)生徒指導提要素案について事務局から論点の説明があり、その後討議が行われた。

                                        

(1)今後の「生徒指導提要」原稿のとりまとめについて

【事務局】今後の生徒指導提要原稿の取りまとめのスケジュールに関しては、本日の会議において素案の審議をした後、事務局において各章の内容の粗密や言い回しなどを調整する原稿修正作業をした上で、各章の検討作業部会の主査に確認をお願いする。その後、座長と座長代理に確認をお願いし、並行して、発達障害の観点から笹森委員に確認をお願いする。最終的にはすべての原稿について座長にご確認をいただく。最終案については三月末の第6回会議にて提示する。本日は、各章各節の重複部分の整理について議論をいただき、大綱方針を示ししていただいた上で、今後それに沿って事務局で原稿修正作業をやっていく。また、論点の欠落がないかという点についても、確認をしていただきたい。

【委員】表記方法や、文中における用語の修正ポイントなどをメールその他で各委員から提案する機会はあるのか。

【委員】メール等でいただいた意見については参考にさせていただくが、基本的には各検討作業部会の主査にご確認をいただき、各審査段階を経て意見を集約していく手順としている。

【委員】現段階での原稿案では、全体としてのまとまりが見えてこない。これまでの会議において、昭和44年に出された手引には今日的内容が含まれておらず、小学校の先生方への配慮がなされていないということ、教師が活用しやすいものとする必要があること、実践上の課題について応え得る内容とすることなどについて確認してきた。今後の修正では、そういった視点でもう一度全体を見ていかないといけない。

【事務局】これまでの審議の状況も踏まえて作業部会の主査に確認をお願いし、段階を経て確認をする人間を絞り込んでいくことで全体としてのまとまりについて調整するようにしていきたい。

【委員】最初に作業部会の主査による確認をする際にも、担当部分の章だけでなく、全体を展望しながら、確認してもらうとよい。

 

(2)「生徒指導提要」素案について

  1. 「生徒指導提要」素案の重複部分の整理について

【事務局】生徒指導提要の素案について、主な重複部分と編集方針を表に整理している。これを参考にしながら、今後重複部分の整理をどのように行うか議論いただきたい。重複がある部分については、冒頭に出てくるところで概説を行い、詳細な内容についてはその後に出てくる各論的な位置づけの中に落とし込んでいくという方向性で整理している。

【委員】重複がある章の執筆者同士でやりとりをして修正を行うことになるのか。

【事務局】今後の修正作業については事務局で調整を行う。重複部分の整理についていえば、記述の重なりがある章について、前の章で書かれている詳細部分について後の章に持っていくといった作業になる。

【委員】先生方が実際に現場で利用するときに、初めからずっと読んでいくわけではなく、必要な章を部分的に読むということがある。そういうときに、前の章では概要のみで、後の章では詳細に書くということであると、どことどこがつながっているのか読みにくいということが考えられる。「第何章の何々を参照」といった記述を入れるなど、配慮が必要である。

【委員】虐待に関する記述や非行に関する記述のところで、幾つかの箇所に要保護児童対策地域協議会についての記述が出てくる。家庭・学校・地域の連携のために重要であるが、全体を通して読んだときに、要保護児童対策地域協議会とは何をやっているのか、よくわからない構造になっている。コラムなどでまとめて記述する必要があるのではないか。

【委員】学習指導と生徒指導がどのような関係にあるかという位置づけがあいまいではないか。「学校教育において生徒指導は学習指導と並んで重要な意義を持つ」という記述があるが、生徒指導と学習指導が並列的で、別立てのようにも読める。また、学習指導の意味についてもあいまいなところがある。学習指導と授業がイコールであるととらえている人も多いと聞くが、この後の記述を見ると、学習指導は授業だけではないという記述もある。例えば、教育相談の中でも学習面に関する相談が取り上げられている。こうした授業に限らない個別学習相談などを重要な柱として位置付けるのであれば、今の素案では記述が薄い。そこまでは書けないということであれば、むしろ学習指導は別立てのものであるということをはっきり書いたほうがよいのではないか。

【事務局】この1章1節の部分については、全体の縮図を示す部分であるということもあり、今示しているものは骨子案である。骨子案としては学習指導要領の解説を下に書いているが、同様の指摘を検討作業部会でもいただいており、もう一度学習指導の記述については整理したい。

【委員】1章については概念的に整理されればよい。学習指導についての記述を厚くするということであれば第5章の「教育相談」のところで、学習相談という柱を立てるとよいのではないか。今は実践や研究が薄い分野ではあるが、学習上の問題については授業の中だけで対応しきれる問題ではなく、今後重要となってくる分野である。

【委員】この提要は、学校現場にとっては生徒指導の本当に基本的な手引になる。現場での使われ方を想像すると、教員の経験や必要性に応じて、各章、各節ごとに読んでいくのだろう。また、必ず読まれるのは、「生徒指導とはこのように考えるものである」という最初と最後の部分である。そういった読まれ方に対する配慮をしてほしい。

【事務局】昭和56年の手引きには索引がないので、今回の提要では索引を設けて、困ったときに検索できるようにしたい。

【委員】カタカナの単語が多く出てくるが、学校に文化として根付いているものと、あまり知られていないものがある。スクールソーシャルワーカーなどは、コラムのような形で入れてほしい。章によって微妙に使われ方が異なる言葉が幾つか出てくるので、定義を示してもらえるとよい。

【委員】教師、教員、教職員という言葉が色々なところで出てきているが、それぞれの使い方が適切か確認が必要である。

【委員】青少年健全育成についての記述のところで、今度の4月から施行される「子ども若者育成支援推進法」の扱いをどうするのか。今後制度の枠組みが変わる可能性がある。

また、今回の提要と昭和56年版の手引きの変更点について、発達障害に関する記述は大きなところであるが、もう一点、より踏み込んだ地域・関係機関との連携については重要な点であると考える。見出し部分で「学校中心の」という書き方になっているところがあるが、この書き方では学校が抱え込むことを推進しているともとられかねないので、配慮が必要である。

【事務局】子ども若者育成支援推進法については、コラムでとりあげたい。「学校中心」という書きぶりについては、関係機関との連携の際に学校が参画意識を失わないようにするという趣旨かと思う。どのような表現が適切か、もう一度検討したい。

【委員】「児童生徒」と書かれているところと、「子ども」と書かれているところについて書きぶりを統一してほしい。

 

2. 「生徒指導の手引(昭和56年)」との比較による論点

【委員】今回の素案について、旧手引との比較において、抜け落ちていると思われる4つの論点を表に整理している。それぞれについて、記述すべきか、しないべきかについてご議論いただきたい。

ア)第3章4節の「児童生徒理解の資料とその収集」について委託

【委員】生徒指導に結びついた児童生徒理解が重要であるということについて触れるべきである。生徒指導をするにあたっては、当然、生徒理解が必要であるが、その生徒理解は、対象である子ども自身の自己理解につながり、それを発展させ、またそこから新たな生徒理解が必要になってくる。そうした、生徒指導は生徒理解に始まって生徒理解に終わるという基本を書き込んでほしい。

【委員】生徒への理解については、一方では資料収集・調査の側面があり、一方では、ここで示しているような、子ども自身の自己理解の方向性とあわせたトータルな生徒理解がある。この点は重要である。

【委員】生徒指導は自己理解に始まって自己理解に終わる。そのらせん状に、より広い意味での生徒理解について考えていくと、他者理解、集団の中での自己理解というものも含めた自己理解という観点と生徒指導における生徒理解という面との両面の絡み合いが必要になってくるだろうと思う。また、今回の生徒指導提要においては、新しい学習指導要領や教育基本計画等を受けた形で、社会を形成していく主体形成という観点が重要であり、そういった点も加味して生徒理解を位置付ける必要がある。

【委員】そういった点が打ち出されれば、生徒指導が単に問題解決のためだけのものではないということが伝わるのではないか。

イ)第5章3節「教育相談の進め方」について

【事務局】旧手引ができた時点では、まだ生徒指導資料集といったものがなかったので、教育相談室の運営と施設整備などについても手引の中に色々と盛りこまれている。今回の提要ではどこまで盛りこむべきか検討が必要である。

【委員】旧手引では、時代背景として、個室型のカウンセリングベースのイメージに非常に特化していた。現在では、別室の相談であるとか、廊下の片隅でちょっとした立ち話として行われる教育相談の形もあり、そういう多様性から見れば、一定のライン示すことには難しさも感じる。一方では、施設面で、完全に音響的に守秘ができることの重要性はあるので、もし書く余地があるなら、環境的な要因のポイントを示してもよいのではないか。

【委員】教育相談の章では、いわゆる教育相談と学校教育相談の違い、特に担任のやるべき範疇について明確に示してほしい。また、生徒指導とのかかわりについて、生徒指導として教育相談をとらえるのか、それとも生徒指導を補完し、生徒指導のねらいを達成するための教育活動として教育相談を位置づけるのか、明確にしてほしい。

【委員】教育相談に関しては、これまでの協力者会議の報告等もあるので、それらを十分踏まえる必要がある。この提要は、各教育委員会や教育センターが主催する研修の会又は校内研修で活用されることになると思う。研修の際には、提要の各部分が抜き刷りされて使われるということになるだろう。そうした活用場面を考えて最終調整をする必要がある。

ウ)第6章4節「問題行動の早期発見と効果的な指導」について

【委員】子どもが自分自身を自己理解し、また他者理解をして最終的には自己実現に向かっていく。そのためには、問題行動を起こした中の指導の一環の中で、希望を持たせる指導は当然必要になってくる。今回の素案では、「希望を持たせる指導」は項目立てしていないが、その趣旨は本文の中に書き込んでいる。

【委員】将来の希望という点については、この章に限らず、生徒指導とは何かという論点の中で必要なポイントであると思う。

エ)第8章2節「組織的対応と家庭・地域・関係機関等との連携」について

【委員】生徒指導上の課題を持っている子どもたちの生活背景をしっかりととらえ、保護者を啓発し、協力しながらやっていくという視点は大切であると思う。ただ、ここの章に入れるのがよいのか。学級担任あるいはホームルーム担任の役割に関する記述のところにも入ってくるのではないか。

【事務局】どこに盛りこむべきかということに加え、旧手引には、家庭に問題がある場合にはそれを直すという視点も含めて記述されていたが、今回の提要でそこまで強くいえるかどうか検討が必要である。

【委員】どこまで書き込むかという課題はあるが、実際に現場の先生方にとって保護者対応は一番悩みのある点であるので、各章の関係する記述ともリンクする形で、一箇所にまとめて書かれているとよい。

【委員】啓発という意識で教員が課題がある生徒の保護者と対応していたら、連携はうまくいかない。書くにしても、表現を気をつけないといけない。

【事務局】現在では、「家庭支援」という書きぶりを家庭への啓発という意味も込めて使っていることが多いのではないか。問題を抱える家庭に対しては支援が必要であるという言い回しで書いていくことも考えられる。

【委員】支援、援助、助言など、色々な場面によって使い分けをすればよい。啓発という言葉は高圧的にとられかねないので、書きぶりは工夫する必要がある。

【委員】第8章第4節「非行少年の処遇」については、記述が足りないと感じる点がある。

例えば、保護監察官や保護司は、少年の保護観察事件については、守秘義務との関係で、学校へ直接、こちらから、だれだれを担当しているということについて通知はしない。また、遵守事項を守って良好な状態が続けば、良好措置というものがあり、保護観察を解除されるということについて記述してほしい。子どもがそういういい状態のときに、学校の先生も子どもを認めて励ましたりして希望を持たせるというかかわり方をしてほしい。その他、保護観察について他の生徒に知られないよう配慮することや、法改正により保護観察官や保護司が保護者への適切な指導を行えるようになったことについても触れてほしい。

【委員】今までの生徒指導資料や学習指導要領と今回の提要のかかわりについて、もう一度整理をしてほしい。「開かれた生徒指導」や、サポートチーム、SSNについて今回の提要には記述がないが、今まで出された資料と整合性をとる必要がある。

 また、いわゆるガイダンスの機能の充実についてであるが、記述が少ないので、改めて集団場面における生徒指導の一形態としてガイダンス機能の充実について十分に書き込む必要がある。

 教科指導については、教科においての学習習慣の育成や、その過程の中で個々の不適応の解消を図るという学業指導についてはしっかり位置づける必要がある。

 生徒指導の用語について、直接的・間接的、積極的・消極的、基盤、助成、特別な指導、様々あるが、用語の多義性を踏まえた上で、使用については注意が必要である。

【委員】昭和56年版の生徒指導の手引の考え方はずっと現場に生き続けている。その考え方を三点に絞ると、一つは対症療法としての生徒指導ではなく、積極的な生徒指導の重要性に言及していること、二点目は、生徒指導は全教育活動にかかわる機能であるといころ、三点目は、生徒指導で育てる力は自己指導能力であるということである。今回提要が出来るにあたり、現場は、生徒指導の一番根本的な考え方は56年版と変わったのか、変わらないのかというところが気になるであろう。研修で用いられる際には、こんなふうな考え方に変わったとか、56年版のことが徹底できていないからこういう記述になっているといった整理がされることを現場は待っている。また、ぜひ現場が元気になるような記述にしてほしい。現場は現場視線を大事にしてほしい思っている。

【事務局】示していただいた三点については、基本的に、この協力者会議を設置したときから一貫して旧来のものの基本的な考え方は変えずに、ただ徹底できていない部分や情勢の変化により改めて詳しく述べることが必要であるという部分について補充するというスタンスをとっている。また、現場の人に知識を与えて、さらに元気にやってもらうこと意図するところであるので、指摘を踏まえ、今後の作業に臨みたい。

 閉会

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室