生徒指導提要の作成に関する協力者会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成21年9月3日(木曜日) 10時~12時

2.場所

場所:虎ノ門パストラル「ミモザ」

3.議題

  1. 生徒指導上の課題・子どもをめぐる状況等に関するヒアリング 1.小笹典子委員(聖霊女子短期大学付属高等学校・中学校養護教諭) 2.北川洋一委員(広島県立三原高等学校長)
  2. 生徒指導提要に掲載すべき項目(案)への委員・関係団体からの意見募集結果について
  3. 「生徒指導提要」の作成の手順について(案)
  4. 「生徒指導提要」の執筆作業について(案)
  5. 生徒指導提要執筆要領(案)について

4.出席者

委員

森田座長、麻畠委員、石井委員、市川宏伸委員、市村委員、
大橋委員、尾木委員、小笹委員、影山委員、北川委員、
木下委員、小林委員、櫻橋委員、笹森委員、杉原委員、
須藤委員、野田委員

文部科学省

徳久大臣官房審議官、磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長
井上児童生徒課長補佐 他

5.議事要旨

開会

議事

(1)事務局から資料について説明があり、その後ヒアリング、討議が行われた。

(2)事務局から 提要の作成の手順、執筆作業、執筆要領(案)について説明があった。

                                       

(1)小笹典子委員(聖霊女子短期大学付属高等学校・中学校養護教諭)からのヒアリング

1. ヒアリング内容

【委員】養護教諭は、保健室を拠点として学校保健活動を担当している。平成10年度からは単独で教科保健の授業も担当できるようになり、また、平成7年からは保健主事への登用の道が開かれるようになった。スポーツ青少年局で設置した「心の健康つくり推進委員会」の全国調査では、次のような結果が出ている。結果を紹介したい。

 1.メンタルヘルス問題を持つ子どもが非常に多い、2.医療機関の受診を進めなければならない子どもが多い、3.子どものメンタルヘルスに関する校内組織がない学校があったり、あっても十分に機能していない現状がある、4.保護者及び地域の関係機関との連携に対する認識不足がある、5.保護者の考え方が多様化し、共通理解が困難になっている。

 小学校では発達障害に関する問題への対応が非常に増えており、中学校・高等学校は人間関係とか身体症状から来る不安や悩みと思春期の問題が多い。

 保健室利用状況調査の結果では、平成18年度結果と平成13年度結果を比べると、小学校では明らかに増えている。また、大規模校と複数配置になっている学校とを比較すると、複数配置校の方が対応人数が増えている。慢性疾患、糖尿、腎臓、心臓のほか、アレルギー疾患など、色々な疾患を抱えた生徒たちが普通学校にも増えている。養護教諭が対応している心の問題には、身体症状から来る不安や悩み、いじめ、友達との人間関係、虐待、家族との人間関係、摂食障害、睡眠障害、性に関する問題、自傷行為、リストカット、精神疾患、発達障害など多岐にわたる。

 メンタルヘルスとは、精神的健康の回復・保持・増進にかかわる事柄を総称する言葉であり、メンタルヘルスは、1.心理社会的な要因と、2.子供自身が持つ精神的素質や内科・小児科疾患などの生物学的要因と関連した医学的な問題、の大きく二つに分かれる。

 心理社会的な要因に基づく問題は、本人の心理的葛藤や外的環境の問題の背景に、家庭の経済状態や家族の人間関係、家族の健康状況、交遊関係、地域性などが複合的に絡んでいる。生物学的要因に基づく問題には、脳の医学的問題、身体疾患など境界領域にあると考えられており、早期発見、早期対応のためには、組織的に対応することが求められる。 メンタルヘルスについては、今まで心理社会的な要因のみにより理解しようとした傾向もあったが、子どもの心の問題は近年深刻化しており、医療を必要とするケースが非常に多くなっている。

 保健室の特質としては、1.全校の子どもたちの入学時から経年的に成長・発達を見ることができるデータの管理・活用を行う、2.だれでもいつでも利用でき、子どもたちにとっては安心をして話を聞いてもらえる、3.健康診断や救急処置を通して虐待を発見しやすい、といったことがあり、養護教諭の職務の特質としては、一番問題を早期発見しやすいということがある。

 反社会的な行動及び非社会的な行動の背景には発達障害や精神疾患がある場合があるということがわからないままに対応がおくれてきた事例は多い。改正された学校保健安全法には、相互に連携した健康相談や児童生徒の健康状態の日常的な健康観察について書かれている。校長先生のリーダーシップや養護教諭のよりきめ細やかな対応のもと、組織的に推進していく必要がある。

2. 質疑応答

【事務局】養護教諭のコーディネーター的役割とは、ケース会議などの場での議事進行を行うということか。

 【委員】会議が体制として整備され、その立場にあるときは議事進行役としてまとめる役割を持つことに加えて、チームとしてどう対応していくかというところへの配慮が非常に重要である。そのために、必要に応じて関係者に情報を伝えて情報を共有するための「つなげる」という役割を日常的に果たしている。

【委員】問題行動を起こす背景として発達障害がある場合があるが、それが分からずに処遇に苦慮する。卒業した後などに、中学校へ行って当時の様子を聞いたりすることは出来るか。

【委員】発達障害に関する理解は進んできているが、まだ適切な関係機関につなぐことがスムーズに行かないことはある。個人情報保護との関係もあり難しい面もあるが、学校に問い合わせがなされたら、積極的に連携を取っていく意味で、校長の判断で話せる部分もあるのではないか。

(2)北川洋一委員(広島県立三原高等学校長)からのヒアリング

1. ヒアリング内容

【委員】広島県では、各地区において生徒指導委員会をつくり、生徒指導主事やその他の教員が集まり、生徒指導についての実質的な研究を行った。その結果を、県として「生徒指導の手引き」にまとめた。これにより、かなりの部分が変わっていった。授業が成立していないような生徒指導重点校においては、1.学校の教育活動そのものを充実させることを学校経営の基本に置く、2.教職員がベクトルをそろえて、それぞれの立場でそれぞれの役割を果たしていく、ということに取り組んだ。理念を共有して、問題行動を起こした子どもたちと最後までかかわりきるという姿勢をとった。それまでは、家庭反省が基本であったが、家庭に教育力がない場合には効果が見られなかった。自己存在感、共感的な人間関係、自己決定、という生徒指導の三機能を基本に学校反省を行っていった。生徒指導資料にも書かれているとおり、問題行動が起こらないための手立てを考えていくことは、究極的には学校教育の本質を考えること、学校生活を意義深く過ごし得る条件をつくり上げていく積極的な立場から考えていくことが大切である。教科指導、部活動、学校行事、特別活動といった学校教育そのものをきちんとすることにより、問題行動への対応や他の生徒指導も充実していく。高等学校の場合には、特定の学校に集中して問題が生じるということが悩ましい。また、それに対応できる、指導できる教員がなかなか育たない。長い年数かかって保護者対応、鑑別、保護司、家裁等との連携もできてくる。

 また、小学校からの生徒指導が大事である。小学校からの指導をきちんとしないと、高校では対応できないことがある。

2. 質疑応答

【委員】子どもに「かかわりきる」という姿勢が、他の教員に共有されていったプロセスはどのようなものだったのか。 

【委員】問題行動があった場合に、それまではずっと家庭反省をしていた。まずは、学校で子どもの話を聞くことが大切だと考えた。声をかけて、自己存在感を与えていくことによって子どもは変わってくる。子どもが変わっていくことにより、取組が広がっていった。県の生徒指導主事研修会等で取組事例が発表され、輪が広がっていった。

(3)生徒指導提要に掲載すべき項目への委員・関係団体からの意見募集の結果について

1. 事務局から説明

【事務局】提要に掲載すべき項目として抜け落ちがないかについて、委員・関係団体から意見を聞いた。主な意見には、「規範意識の醸成について体系的な記述が必要である」「生徒指導とキャリア教育について記載すべきである」「建学の精神と生徒指導について記載が必要である」「社会的養護が必要な子どもたちの背景について基本的な理解を持つことが必要である」などがあった。それぞれ、どこの項目で分類すれば書けるのか、対応策を検討し、整理を行った。

2. 質疑応答

【委員】タイトルの表現の仕方と内容との整合性について、今後変更の可能性があるか。

【事務局】項目名や章立ての順序については、作成の手順の中で調整が必要になると考える。

 【委員】提要では、各学校のスタンダードな部分について示すということでいいのか。専門的な記述等が入ると、学校としてどこまで生徒指導として取り組むべきかという懸念が出てくる。項立てではいわゆる問題行動対症療法的な事例が多いが、発達的な生徒指導とのバランスについてどうなるのか。また、生徒指導の意義について、人格の完成に生徒指導がどうかかわるのかといったことや、社会的な自立や社会に参画する態度の育成といった観点からの自己指導能力の育成についてどのように書いていくべきか、より詰めていく必要がある。

【事務局】生徒指導提要は共通の理解のための基本書として位置づけていくものであるので、執筆者のいわば独自の見解であると問題がある。統一的な見解として学校教育全体で基本方針とすべきものを厳選してつくっていかなければならない。作成の手順としては、執筆後、委員で作業部会をつくり、執筆者と会議の委員とで議論する過程が必要ではないかと考えている。

【委員】生徒指導の分野での、一定の人間モデルや育成モデルといったものを確立していかなければならない。それが今後の生徒指導という教育活動の分野のバックボーンになっていく。

【委員】「問題がある」というときに、表に出てきた問題だけでなく、生徒一人一人の抱えている問題という視点を入れてほしい。学校生活を送っている間において、先生から問題ないというふうに思われて、見過ごされてしまう子が多い。

【委員】非行、虐待、発達障害等への対応において、保護者が拒否されてしまうとアプローチできなくなるという課題がある。児童相談所や市町村、要保護児童対策地域協議会といった外部機関があり、本人や保護者が支援を拒否していても、学校とつながるネットワークはある。提要では、専門機関についての項と地域ネットワークの項に分けられているが、うまく関連を持たせて書いほしい。

【委員】児童福祉法など制度的な法的な基盤をしっかりと示すことで、専門機関との連携の重要性は強調できる。

【事務局】それぞれの項で重複する部分があっても、単独の項の記述だけでは伝わりきらない項目については重複して記載して強調する必要がある。

(4)生徒指導提要の作成の手順・執筆作業・執筆要領(案)について

【事務局】主な執筆内容を決定した後、執筆者を選定する。執筆者は、協力者会議の委員が直接書く場合と、執筆協力者として別の方に書いていただく部分と、両方必要だと考える。9月下旬ごろに一度執筆者を対象に説明会を行い、執筆作業に入る。執筆内容の検討については、検討作業部会をつくり、委員の審査を経て、調整を図っていく。その後、指摘を踏まえて、各執筆者において加筆・修正作業を行う。修正済みの原稿を足し合わせたものを全体の会議で審議を行う。生徒指導提要の項目の案ごとに、主な執筆内容の案を示し、また、委員・団体意見の中で参考にすべき項目を整理している。この整理に従い、執筆作業を進めていただきたい。執筆要領(案)は、執筆をスムーズに進めるために、生徒指導提要の作成の目的やイメージ、作成に当たっての留意事項を示したものである。

閉会 

 

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初等中等教育局児童生徒課生徒指導室