校訓等を活かした学校づくり推進会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年7月16日(木曜日)9時~11時30分

2.場所

文部科学省16階特別会議室

3.議題

  1. 取りまとめ骨子(案)
  2. 校訓等を活かした学校づくりに関するヒアリング
  3. 自由討議

4.出席者

委員

天笠座長、大島委員、西野委員、冨士原委員

文部科学省

塩谷文部科学大臣、金森初等中等教育局長、徳久大臣官房審議官、磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長、粟野児童生徒課生徒指導調査官 他

オブザーバー

山形県鶴岡市立朝暘第三小学校、埼玉県立深谷商業高等学校、大阪府高槻市立第七中学校、鳥取県立倉吉西高等学校、兵庫県立芦屋国際中等教育学校

5.議事要旨

1.開会

2.議事

(1)事務局から「とりまとめ骨子(案)」について説明があった。

(2)ヒアリングが行われた後、討議が行われた。

(3)大臣から挨拶があった。

(4)次回は報告書案を事務局から示すこととなった。

【ヒアリング校】本校は学校教育目標「つよく やさしく かしこく」を総括目標として、3つの目標を上げており、そのうちの1つである「思いやりのある子ども」の具現のための手立ての1つとして「三暘しぐさ」がある。平成18年12月、大人の期待がきちんと子どもに伝えられていないのではないかと問題提起して、各家庭で家訓を持つことを呼びかけた。各家庭から寄せられた家訓は、あいさつや他者への気遣い、品性など本校の目指す子ども像とつながるものが多く、家庭と同じまなざしで学校教育に取り組んでいけることを学校として再確認した。創立100周年の節目にあたる平成19年に、当時話題になっていた「江戸しぐさ」を子どもたちに紹介して、「三暘しぐさ」への取り組みが始まった。20年1月に、「みんなで創ろう!『三暘しぐさ』」ということで、全家庭に作品を募集し、16項目の「三暘しぐさ」を決定した。平成20年度には学校経営全体構想図の中にも「三暘しぐさ」という言葉が位置づけられた。「三暘しぐさ」という言葉と、実際のしぐさの中の言葉は児童会の目標の中に取り入れて、子どもたちへの意識付けを高める取組をしている。初年度に決めた「三暘しぐさ」16項目に加え、子どもたちの意見を取り入れ、あいさつにかかわる「三暘しぐさ」として「ニコニコ 愛さ2(にこにこあいさつ)」を追加した。学校新聞やPTAの広報紙で「三暘しぐさ」を取り上げて、児童会や委員会での子どもたちの活動の様子を紹介し、家庭や地域へ「三暘しぐさ」を広げている。

【事務局】地域・家庭の協力はどうすれば得られるのか。エピソードがあれば教えてほしい。

【ヒアリング校】6年生で、二泊三日で行う海浜学校は、安全面のこともあり、学校職員だけでは行うことは難しく、保護者、地域の方々に一緒に泳いでもらったり、陸上でのサポートをしてもらったりというような協力を得ている。連携して子どもの指導に当たるこの行事は非常に大切で、昭和7年からずっと続いている。

 【委員】今後、校訓を普及していくということだけになるのか、それとも、見直していくようなプロセスがどこかで入ってくるのか。

 【ヒアリング校】「三暘しぐさ」は家訓から発展したものだが、最初の家訓を決めた段階から、「三暘しぐさ」というビジョンがあったわけではない。現在、「三暘しぐさ」は地域にも普及してきた。ずっと同じことの繰り返しにならないよう、新たな手立てを進めながら考える必要があるかもしれない。

 【委員】伝統の継承ということと、「三暘しぐさ」をつくり出して普及を図っていくこととの関係をどのように考えているのか。

 【ヒアリング校】当時の校長は古くて新しい文化を創造していくのだというような言葉で「三暘しぐさ」を子どもたちに話をして普及していった。

 【ヒアリング校】初代の校長が校歌を作詞した際に「質素剛健一筋に至誠の道にいそしまん」という言葉があり、これを本校を訪れた渋沢栄一が気に入った。さらに商業高校だから「士魂商才」が必要であるということで、「質素剛健」、「至誠」、「士魂商才」の3つを筆で書いた。大正末期の開校当初からこの3つが校訓ということで大事に伝えられてきた。この3つをベースにまた新しい言葉に換骨奪胎したものも校内では目標として使っている。卒業生は本校の生徒以上に校訓を大事にしており、「士魂商才」という言葉は市内のいたるところで使われている。郷土出身の渋沢栄一の揮毫を校訓とすることで、校訓を地域と共有している点が特徴である。校訓を活かした本校のブランディング戦略を考えており、また、家庭・地域でも活かしていこうという考えが出ている。校訓はいろいろなところで使っており、自然に本校の校訓はこういうものだと認識してくれている。新入生は校歌を歌うときこれが校訓という理解はしていないが、式辞や祝辞で聞くうち、だんだん理解していく。校訓は知らず知らずのうちに生徒の行動に影響を与えている。校訓があるから学校・生徒・卒業生・地域それぞれにとって自信につながっている。

 【委員】学校の中での校訓の継承はどんな場面でなされているのか。

 【ヒアリング校】強い部活動においては特に校訓を大事にしている。先輩が後輩に対して、おまえたちはこの3つの校訓の学校なんだから頑張れと言っている。

 【事務局】学校案内で、「情熱、行動、創造」という言葉があるが、校訓とどんな関係にあるのか。

 【ヒアリング校】校訓をもう少し現代的にしようということで、かけ言葉で「passion、action、creation」とした。中学校へ行って高校の説明をするときに、「士魂商才」とか、「至誠」とか、「質素剛健」と言っても中学3年でもよくわかってくれないため、校訓をかみ砕いて説明するときに使っている。

 【ヒアリング校】本校のJASMIN運動は、J、授業の時間の時間を大切にしよう。A、あいさつをしっかりしよう。S、掃除をしっかりしよう。Mi、身だしなみを整えよう。N、NOチャイム運動に取り組もうということで、校訓というよりはスローガンの一種のようなものである。5、6年前に学校改革として、生徒の自主性と自尊感情を高める取組を始めた。また、守るべきこと、目指すべきことをメッセージ化し、繰り返し子どもに伝えるようになった。学校改革を始めて1年ぐらいたったころ、生徒の方にもいい学校をつくりたいという気運が高まり、生徒会の執行部がJASMIN運動を考え出した。子どもたちが自信を深めていく中で、2年前、いじめによる自殺の問題が大きく取り上げられたときに、執行部の子どもたちを中心に、いじめ撲滅運動を始めた。「いじめストップシール」というものをつくりいじめをなくす呼びかけを行った。実際に子どもたちの様子が変わってきたことでPTAからも学校を活性化するため協力したいという申し出があり、PTA活動は以前に比べると随分活発になった。たとえば、JASMIN運動にちなんで、ジャスミン植樹祭などを行っている。JASMIN運動をつくり上げていった生徒が卒業し、教員も入れかわる中で、継続の難しさも体験しているが、今後も本物の伝統になるように引き継いでいきたい。

 【委員】継続の難しさは、具体的にどういう点で感じているのか。

 【ヒアリング校】最初の1、2年は盛り上がるが、3年目は子どもたちが、自分たちのJAMIN運動とは感じにくかった部分があるようだ。昨年度末、子どもたちがもう1回、七中のJASMIN運動をしっかりやっていこうというアピールをし、まねではなく、一から自分たちの手でいい学校をつくっていこうという雰囲気が生まれた。

 【オブザーバー】JASMIN運動を支え、充実させていくための教員側の取り組みの特色を教えて欲しい。

 【ヒアリング校】JASMIN運動に沿った委員会活動を展開しようということを毎年、年度初めに学校方針の中で、会議の中で確認をしている。

 【委員】学校目標とスローガンの関係で意識化していることはあるのか。学校目標の「ともに生き、すべてのいのち、輝かそう!」と、いじめ撲滅運動の「味方がいるよ! いじめを許さない!」というスローガンはつながっていると感じる。

 【ヒアリング校】様々な課題を抱える子どもがいる中で、すべての子の能力をしっかり開かせていこうという意味で、「ともに生き、すべてのいのち、輝かそう!」という学校目標になっている。いじめ撲滅については、教師のほうから、これをやろうという提案はしていない。生徒会執行部がいろいろな学校の取り組みを調べる中で、いじめ撲滅運動が広がっていった。

 【ヒアリング校】創立70周年である昭和59年に、生徒が特色のある学校づくりを自分たちの手でやりたいと、生徒総会で、校則である生徒心得の見直しの議案を可決させた。そして、生徒・保護者・教職員全員からアンケートをとり、生徒と教員で数ヶ月かかってまとめ作業が行われ、自律的な人間を目指すための生徒憲章が制定された。そのことで学校が1つになり、生徒の自主性・学力の向上、部活動の活性化という効果が上がった。現在は、生徒憲章の趣旨を活かし、現在の生徒の実態に合うよう知・徳・体のバランスのとれた育成を図る「倉吉西夢きらりアクションプラン」で9つの事業を行っている。生徒憲章を通して本校が変化し、発展した理由は、生徒が活躍する場をその時期、その時期に生徒の実態に応じて積極的に提供し、伴走教育により教師が生徒の夢をかなえるために土台となって、信頼関係を築いてきたためである。

 【委員】生徒憲章を生徒たちが決めようとする前の職員と生徒の関係について詳しく教えてほしい。

 【ヒアリング校】当時、生徒心得を守らせることに教員はエネルギーを費やしていた。生徒たちはそれに反発し、夢のある決まりが欲しいということを数年前から言っていた。70周年という機に生徒たちが自分たちの手で学校をつくり上げたいという思いを教員にPRし、当時の校長が生徒心得の廃止を決断した。すると、教員が、生徒たちがやろうとすることに対して下から支えるように変わっていった。そうしたら、部活や勉強や貢献活動に生徒のエネルギーが向けられるようになった。

 【オブザーバー】26年にわたってこの活動のエネルギーが継続している秘訣はどこにあるのか。生徒会の活動なのか、あるいは学校運営や先生方の教育活動なのか。

 【ヒアリング校】生徒憲章の文言そのものよりも、その趣旨を活かした企画が継続していることが大きい。上級生が下級生を教えていくシステムを知・徳・体でバランスよく入れている。そして教員は土台となって生徒を下支えをしていくという姿勢をずっと維持している。

 【委員】この先の生徒憲章の展開をどのように考えているか。時代によって次第に変わっていくものなのか、あるいは普遍的であってそう大きく変わるものではなのか。

【ヒアリング校】時代によって生徒たちの実態に合った事業はいろいろ考えられるが、生徒憲章は生徒を導く指針であるであるので、100年、200年たっても教育目標として生き続けていくのではないか。

 【ヒアリング校】本校の教育目標は、言語環境や文化的背景の異なる子どもたちの相互啓発により、ともに生きる心を育み、多文化社会に生きる人間形成を図ること、個に応じた指導の充実により、基礎・基本を確実に身につけ、それをもとに、みずから学び、考え、判断し、行動する力を養うこと、さらに、コミュニケーション能力や異なる文化を理解、尊重する態度など、豊かな国際感覚を備え、国際社会に貢献できる子どもたちを育成すること、この3つである。校訓としては、お互いを尊重し合うRespect、共生の心を育むIntegration、地域や国際社会に貢献する力を養うContribution、の3つを掲げている。校訓は、本校の設立趣旨から、外国人の生徒でもわかる校訓で、国際的に通用するものとして職員が案を出し合い決定した。校訓の実践のため、国際教育を総合的な学習の時間のテーマに掲げて、芦屋インターナショナルタイム、AIタイムという名称で実施している。このプログラムは、日本の伝統文化についての理解を深め、また級友の母語等をともに学ぶ時間を設けることにより、自分の国の文化や異文化を調べようとする姿勢を培うとともに、互いの文化を理解し、尊重し合う態度を養うことを目的として行っている。そのほか、様々な海外経験を持つ保護者の方々を講師として招いたり、地域の協力を得ながら安全教育を行ったり、保護者や地域の方々の教育力を活用した教育実践を行っている。 

【委員】国際、多文化という中で学校をつくるときに、今さら校訓というものは必要ないと考えるのか、だからこそ校訓というものが必要と考えるのか。

 【ヒアリング校】国際交流がすごく叫ばれる昨今だからこそ、こういう学校については、こういった校訓が当然必要であり、それを推進していかなければならないと考えている。

 【委員】学校教育目標と校訓との関係を明確化する必要があるのではないか。また、校訓を浸透させるために生徒会活動、児童会活動などの中でどのように具体的にしているのか。

 【委員】同じ目標に向かって学校や子どもたちが1つになるために、校訓が大きな手がかりになっていることを学んだ。校訓の活かし方として1つは、伝統として、生活の隅々に校訓が浸透していて、それを常に見直しながら大事にしていくやり方と、もう1つは新しくつくる活動を通して学校が1つになり、子どもたちが1つになるというやり方がある。どちらにしても、教師も子ども入れ替わる中でどうやって活動を継承するかが課題と感じた。

 【委員】どの学校もすべて校訓等を職員、生徒、保護者で共有をして学校づくりの根幹にしている。具体的ではないが、古くからあるものが校訓になっているケースもあれば、生徒がつくった、より具体的なものが校訓となっているようなケースもある。校訓は卒業した子どもたちにとっても、人生で迷ったときに、学校時代を思い出し原点に立ち返ることができるような、影響を与えるものでありたい。

 【委員】目標や、目指すべき価値、規範を持つことの大切さを感じた。学校が一人ひとりを大切にしていく環境を整えていく上で、学校、地域、社会の環境を一体としてつくっていくことが大切だと考えるが、そのためには、今まで見過ごされがちだった目標や、象徴的な校訓の存在に光を当てて、どう機能させるべきなのかということがそれぞれの発表事例の地域的・歴史的事情を踏まえて出されたのではないか。

 【事務局】伝統的な校訓と、自分たちでつくった校訓と両方あるが、一度つくった校訓でも、つくり直したほうがいいようなこともあるかどうか。また、取りまとめの骨子案の中で、校訓等を活かした学校づくりで1、2、3と分けているが、3つ目の「多種多様な背景の児童生徒を統合する取組」を独立した項目として上げることがいいのかどうか。

 【委員】生徒たちがつくったものであっても、生徒憲章のように、ある種、普遍的な価値を含んでいるものは、その都度、見直していくというタイプのものではないと思う。一方で、JASMIN運動のように、できたものをその都度、実態に合わせて見直しをしていこうという動きがあるものもある。「校訓等」あるが、それぞれ異なるタイプのこと指しているという気がする。

 【委員】骨子案の校訓を活かした柱立てにはいろいろなレベルのものが混在しているような形になっていて、もう少し整理する必要がある。校訓がつくられていく過程自体がさまざまで、そこに重要な意味を持っていることを押さえる必要がある。また、校訓を浸透させるためのさまざまな実践の工夫という整理の仕方等もあるかと思う。

【ヒアリング校】生徒憲章ができて5,6年は教員も生徒も保護者も熱意、勢いが継続したが、教員もかわり、校長も何代かかわっていくとその勢いは薄れた。そこで、校訓をどのように、生徒たちにもう1回、理解させて、趣旨をどのように活かすかということで大議論があった。その時代の生徒の実態に合った方策で工夫し企画していくことが大事であると感じている。

 【委員】生徒憲章は憲章として文言化されているが、変動を経て生き残ってきた理由には、実は言葉にならないが、より、基盤になる、見えない校訓というものが生まれて、それが支えてきたからではないか。

 【委員】骨子案の3つ目に関しては、先ほどのお話のように、2つ目の中に入れ込む形のほうがいいと思う。

 【委員】この取りまとめをする際に、校訓とは何かという定義も大切だが、校訓というのが今の学校教育にどのような役割を果たせるのかというメッセージが大事だと思う。なぜ校訓を学校づくりで大事にしていかなければいけないのか。そのことでどんな成果が学校に上がるのかというところを大きく出したい。

 【委員】校訓が生まれた目的やその背景、継承することの難しさなど、どんなドラマがあったのか、そういうダイナミックなところを載せていけるようなまとめ方というのが望ましいのではないか。

 【委員】なぜ校訓「等」というのをつけるのか。

【事務局】「校訓等」と「等」を入れたのは、標語やスローガン等を活用して学校づくりをしているのであれば、そこは厳密には校訓とは言えないかもしれないが、活動に着目して取り上げていったほうがいいのではないかという趣旨である。さまざまな取り組みを広く評価をようということである。

 【委員】タイトルに「校訓等」という「等」をつけるのではメッセージが弱まってしまう。はっきり定義がないものであれば、我々のほうで、校訓ということでこういうことを含めるとし、校訓と呼んで学校づくりに活かしてこうという方向性もあるのではないか。

 【事務局】「校訓等」とあるのは、学校では校訓とは呼んでいないけれども、校訓と同じような役割を果たしているいろいろなものがあるので、それも含めるという意味では校訓等と言うほうが正確だろうというのでこうした。わかりやすさから言えば、おっしゃられることも大事だと思う。

  

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