校訓等を活かした学校づくり推進会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月29日(月曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省旧庁舎2階第2会議室

3.議題

  1. 校訓等を活かした学校づくりについて
  2. 自由討議

4.出席者

委員

天笠座長、大島委員、冨士原委員

文部科学省

金森初等中等教育局長、徳久大臣官房審議官、磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長、粟野児童生徒課生徒指導調査官 他

5.議事要旨

1.開会

2.議事

(1)座長に天笠委員(千葉大学教育学部教授)が選任された。

(2)議事の取扱いについて了承された。

(3)座長から挨拶があった。

(4)事務局から資料について説明があり、その後討議が行われた。

(5)次回はヒアリングを行うとともに、骨子案を事務局から示すこととなった。

 【委員】校訓を活かした学校づくりはこれまであまり関心を持たれてこなかった。学校の伝統を生かすとか、学校のモットーを大切にした取組ということだが、改めて校訓という言葉でくくられて、そのもとに学校をつくっていこうという視点は、とにかく見落とされがちなところがあると理解している。このような観点から、どんな学校づくりができるか等について興味を持っている。

 また、カリキュラムを研究する立場からすると、校訓という存在は興味深い対象である。30年ほど前にヒドゥン・カリキュラムということが話題になり、現在に引き続く1つの研究テーマであり続けていると考えている。いわゆる学習指導要領等が表のカリキュラムとするならば、表とは違った角度から子どもたちを育てるもの、学校を育てるものというのがあるのではないかと思う。それは教師の立ち居振る舞いや、学校の雰囲気などを指すが、この校訓も、表の姿でもあると同時に、もう1つは隠れたカリキュラムという両側面を持ったものとして、学校の中に存在しているのではないか。表からだけでなくいわゆる隠れたカリキュラムという面からも追求し、今の時代の学校づくりにどのような位置づけを与えていくかということは、今日にとって大切なテーマになり得るのではないか。

 【委員】校訓や校歌、記章については、歴史的に法律で定められているものではないが、日本はどこの学校に行っても必ず校訓や校歌がある。それらが学校教育あるいは地域の教育にどういう影響を与えているかという研究の蓄積というのは、実態としてほとんどなされていない。学校を基底のところで支配している、影響を与えているのが、校訓あるいは校歌という存在だと思う。それほど日本に特徴的な制度となっているものを、現場でどのように活かしていったらいいのかということではないか。

 【委員】都道府県からの事例としてまとめた資料について、どういう方法で情報を集めたのか。

 【事務局】都道府県の教育委員会に照会をして、県内の教育委員会所管の小・中・高等学校、あるいは中等教育学校において、校訓に基づく取り組みが行われている事例を収集し、文部科学省で1冊の資料としてまとめた。

 【委員】小学校・中学校・高等学校の整理は考えなくていいのか。事例の情報収集の際に、小・中・高等学校の別に情報収集したのか。

 【事務局】小・中・高校それぞれについて、特徴のある取り組みを都道府県から事例を紹介してもらっているが、小・中・高等学校を分けた形で情報収集をしていない。小・中・高について分けて整理するか等も含めて議論していただきたい。校訓等を活かした学校づくりについては、過去に情報収集して整理したものが全くないという状況であったので、教育委員会の負担を軽減する観点から、小・中・高混在でも構わないということで、データを集め、事務局でさらに類型化して、とりあえず3つのタイプに分類した。

 【委員】まとめを行う際に、校訓がその学校に根づいている学校と、これから根づかせる努力を住民と一緒にしていく学校と分けて考えるということが必要なのではないか。

 【委員】校訓と学校教育目標と、目指す生徒像とか、目指す育てたい子ども像とか、実態としては混在していると思うので、整理の仕方を考えることも大切なのではないか。今回の取り組みの対象として、校訓のみに着目して整理していくのか、それとも望ましい生徒像等も包括的にとらえて、その中で校訓というものを見ようとするのか。

 【事務局】学校の活動のあり方を評価していく必要があると考えている。校訓は1つはスローガンとか目標であり、実際にそのスローガン、目標をどのように活用して、生徒指導や学校運営に反映させることができるかを検討していただきたい。実際の取組については、次回ヒアリングを行い、学校運営に従事されている教職員からその実態について説明していただく過程で、どの程度校訓というものが具体に実現されて活かされているのか見ていただきたい。

 【委員】校訓はだれが決めたのかということと、いつ決めたのかということが重要だと思う。子どもたち自身が決めている場合、校長と地域の人とのアンケートで定められている場合などもあるが、旧制中学校とか旧制高等学校の場合は校長の一存で決めてそれが今まで続いている場合が多いのではないか。そういった学校で、ただ単なるお飾りの校訓ではなくて学校経営に反映されたり具体化されたりしている場合や、戦後にできた学校で、学校教育目標等として校長がつくっている場合や、地域の願いを取り入れた場合、子どもたち自身がつくっていたりする場合などがあり、だれが定めたのかについて具体化の度合いや思いも違うのではないか。また、特に高等学校は、小中とは性質が異なるのではないか。

 【委員】取組を丁寧に整理して、区分けをして、そして現代の意味における校訓のあり方を丁寧に示ししていくことが大切ではないか。やはり高等学校と義務教育段階の違いを考えることも一つの整理の仕方ではないかと思う。

 3つ目のタイプの学校は、多様性とか共生とか今日的な課題を抱えている学校の事例である。今もしくはこれから先に同じような悩みを抱えている学校もり、どうこれを超えていくのかということは現代的な課題だと思っており、その中で校訓がどう生きていくのか、あるいは生かしていくのかということは、現代の課題への一つの対応につながっていくと思う。どういう校訓というもののあり方が、このような課題を背負っている学校で意味を果たしていくのかというのは、見ておく必要のあるテーマであると考えている。また、教育目標とか望ましい生徒像とか、校訓というものの相互の意味合いとか、関連づけも大切だと思う。もう一つの観点としては、現実にどのように校訓等が生きているのか活かしているのか等も大切なのではないか。

 【事務局】資料6のタイプ3については、特殊な例で、1つしか例が出てきていない。その他は大別してタイプ1とタイプ2に分けているが、タイプ1は、校訓等が伝統的にあって、地域とか家庭、特に小学校とか中学校ですと親もそこで教育を受け、子どもも同じ学校で同じ校訓に接することにより、伝統としてこれが根づき、その校訓のプレステージ・信頼性、権威等ができているところもあるのではないか。

 タイプ2はむしろ生徒自身が自分たちで決めたことは自分たちで守るという、どちらかというと法律や規則をつくるときのコンセンサスの過程を重視して、コンセンサスがある場合にそれを守って活動に生かしているであろうという事例を類型化した。

 この2つの方向性について、どちらが優れているとかいうことは、価値評価となるので難しいのではないかと思う。どちらのタイプであっても、目標が定められて、その一つの目標に向かって生徒、教職員、地域や社会全体がそれを後押ししてくれるとか、活動が円滑化されることがあれば、積極的に評価をしていいと考えている。

 【委員】学校経営の観点からは、伝統に基づいてこういう校訓を特に展開してるということだけであると、やや物足りない。例えば、伝統はどのようにするとつくられていくのか、どのように物事が継承されていくのか、継承する際に、気配りとか経営上の配慮等の観点をどのように行っているのかということが情報の中に入ってくると、他の学校へ示唆するものになるのではないか。学校の、歴史や地域とか条件は違うけれども、示唆するものが読み取れるどうかが、他の学校にとっての意味ある情報になるかならないかの大きく分けることになるので、どの程度報告書でまとめられるか、あるいは載せられるかが一つのポイントになってくるのではないか。

 【事務局】伝統的な校訓であっても、現在の人がそれをどのように受けとめて、現状とのマッチングをさせて継承しているのかというところがポイントだということなので、次回、ヒアリングを行う際に、事前にそういった観点についても説明した上でヒアリングを依頼したい。ヒアリング候補の学校は資料にまとめたが、目安として、二、三校程度に絞ってヒアリングを行うことを考えている。

 【委員】資料に挙げられているのは、比較的歴史や伝統がある学校が多いと思うが、これから、学校づくりを進めようとしているような学校からもヒアリングを行えるといい。

 【委員】校訓「等」ということになっているが、学校教育目標や学校の生徒会の目標と、校訓というのは別の存在と感じている。その学校の生徒の行動の基準や、こういうことをすることが価値のあるものだということ、またそれを子どもたちや子どもを預けている家庭も、みんながそう思っているというようなものを校訓だと思っていたが、校訓というものを広げて解釈していっていいのか。校訓と、学校教育目標や生徒会のスローガン、目標とかというものの区別はどう考えているのか。

 【事務局】「校訓等」は、校訓という言葉の社会通念から少し範囲を拡張したいと考えている。これは、すべての学校でこうした活動ができるというような提言にしないと、伝統ある校訓があるところはいいが、ないところはこれからつくる必要が生じる。実際には活動の成果が大事であり、例えばスローガンや学校教育目標といったものについても、ご議論いただいて、それを生かした取り組みのあり方としてご提案があれば、幅広に載せていきたい。

 【委員】学校教育目標を生かした学校づくりとはすべての学校で取り組んでいるという言い方もできなくはないかと思う。生徒指導等も学校教育目標とのかかわりの中で進められている。そうした場合にその学校が掲げる理念的な部分というものの存在や位置づけ、意味ということを明確にして取り組みに目を向けていくことも意味があるのではないか。

 【委員】学校教育目標を実現するために日々の教育活動をしていくが、その学校教育目標を実現する大きな後ろ盾となるようなものを教員も生徒も保護者も持てるといいのではないか。この校訓等を活かした学校づくりを全国に発信することで、より効果が出ると思う。

 【委員】報告書の中では校訓とはという定義を行う必要がある。その場合、教育目標を実現するための後ろ盾となるものということも一つの表現の仕方かと思う。その後ろ盾ということを明確にしていくという形をとることによって、校訓の概念規定をよりわかりやすく明確にしていくことにつながるのではないか。

 【委員】特にこれからの教育目標や学校教育目標を検討したり設定したりするときに、すでに校訓がある学校と、新しくこれから校訓をつくるところと、違うタイプとして分類するといいのではないか。校訓を後ろ盾としているかどうかは、校長先生の解釈とか思い入れが大きいのではないか。それを時代に応じて自分なりにどう解釈して、教職員と共有していくか、そして教職員が今度はそれを子どもたちや地域とどう共有していくかがポイントではないか。ヒアリングの際に聞いていきたい。

 【委員】校訓というのはつくるものなのか、つくられるものなのかとか、そういうことも書き込む必要があるのではないか。そういう点では、例えばタイプ1の(3)の鶴岡市の小学校の例は、地域的な背景としてそういう歴史的な積み重ねが地域とともにあって、学校も歩んでいき、その中で自ずから校訓というものも培われているのではないか。一方、新興住宅地における取組などもある。それぞれの地域的な事情等々の背景の中で存在があり、それにより意味付けや位置付けに違いがあり、そういう点ではまさに地域の風土とか歴史を背景にした中で生まれてくる校訓の持つ意味や意義を改めて学校関係者、あるいは地域の保護者に見つめてもらい、多くの関係者が再確認していくこと自体が実は意味を持つのではないか。それが学校地域が連携を図っていくということにつながると思う。

 校訓は子どもを育てるための一つの大きなバックグラウンド・バックボーンだというならば、もう一つのテーマとして、地域との関係をつくっていくという点から、学校のバックグラウンド・グランドデザインとのかかわりの中で校訓の位置付けをしていく必要があると思う。そのような観点を踏まえると、この報告書をつくる際に、現代社会やこれからの学校教育における校訓というものの意味とか意義についての書き込みがより大切になってくるのかなと感じている。

 【委員】埼玉県の事例として、非常に歴史がある商業高校で、学校創立のころからあった校訓を今日に活かしている学校がある。15年ほど前に、入学試験の倍率が下がり、そこで商業高校としては、その当時としては珍しい取り組みとして、会計コースと幾つかにコースを分けた。生徒に、実際に社会に出て役に立つものを身につけさせようということで、資格を取ることに非常に力を入れて、その学校を立て直していく段階でも、この校訓が生かされていったと考えている。

 【委員】校訓等が昔に一方的に校長が決めたものであれ、校長先生が子どもたちの実態に応じて自らリーダーシップを発揮し、そこに願いが込められて、それが徐々に教職員や子どもに浸透させていくという取組を行っていくというプロセスについては、貴重な事例だと思う。

 【委員】校訓がどう受けとめられているのか、どう浸透しているのか、どう共有されているのかというところをどう見ていくのか。学校評価の項目等に、校訓が生かされているかという項目を仮にその中に設けたとしても、おそらくそれだけではなかなか見届けられないということがあると思う。どこを見ると、あるいはどこを押さえていくと校訓が共有されている、浸透しているということになるのか。校訓を見つめる目が一つ問われる。一つは子どもたちの間で、あるいは地域の人たちの間で、教職員の間で共有されているということがあるかということでないか。例えば子どもたちが、うちの学校は質実剛健とか、文武両道とか、こういう言葉を何かのときに語り合うというような状況や、またもう一つは教育課程の中にどのように位置づけているのかというようなことに現れてくる。おそらく特別活動とか、総合的な学習の時間や学校行事などに取組の姿が見えるのではないか。あるいは地域とのかかわりの中で総合的学習の時間を進められていく中で、その題材とかテーマを求めていくときの、まさに後ろ支えとなる理念的なものとして存在するなども考えられる。もう一つは、保護者の人が学校の教育の方針などをとらえる際に、地域の人の場合は学校を見つめる際に、歴史的に積み重ねてきた基盤となる部分が、学校や先生方を見つめる目のもとになっていく場合があるのではないか。校訓が内包している教育的な価値観や、学校の姿勢が、子どもたちの状況や教育課程・授業への現れ方と、それから地域の人が見届ける目の中に現れるのではないかと思う。

 先生方がどれほど教育に向かって校訓等を共有しているのかどうなのか。通常は校訓を共有するという言い方は、あまり先生の世界では使われず、むしろ教育目標の達成を目指してという言い方が先生の世界の中では一般的だと考える。その場合、教育目標と校訓との関係がどう整理されるか。このような点が、校訓がどれほど浸透しているかどうかを見るときの一つの見方、学校評価の基準の一つになるかと思う。

 【事務局】スケジュールについては、全体3回の会議を予定しているので、第2回には報告書の骨子案をお示しして、校訓の位置づけとか意義についても整理して、検討いただき作業を進めていきたい。

 【委員】可能な限り、できるだけ多くの多様な条件のもとで実践している学校のヒアリングができればいいかと思う。

 【事務局】「5つの提案」の中では校訓を「見つめ直し、実践する」ということ中では、どちらかというと、伝統的な校訓を中心に提言されている部分があるが、本会議では、教育目標的なものも含めて校訓等ということでいいか。

 【委員】校訓が、伝統的に積み重ねたものがあるというのは紛れもない事実だが、ただそれだけで校訓を語り、意義づけをしてしまうというのでは、本委員会としては、その役割の半分を答えるということになる。長い歴史を持っていない学校も現実にはさまざまに存在しており、そういう学校における校訓のありようとか校訓というものに対する考え方、学校づくりに関する視点も持つべきではないか。そういうある種の全体としてのバランス感覚が必要ではないか。

 【委員】本会議の取りまとめを全国に届けるので、教育目標等も含めて幅広く受け入れられるものがふさわしい。

 

 

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