学校の第三者評価のガイドラインの策定等に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成21年12月18日(金曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館(文部科学省)16階 16F特別会議室

3.議題

  1. 学校の第三者評価のガイドラインに盛り込むべき事項について
  2. その他

4.出席者

委員

天笠委員、岡田委員、長田委員、風岡委員、神林委員、木岡委員、小松委員、實吉委員、島宮委員、竹原委員、千々布委員、永松委員、浜田委員、葉養委員、日永委員、兵馬委員、藤原委員、松尾委員

文部科学省

前川大臣官房審議官、田中主任視学官、西田学校運営支援企画官 他

5.議事要旨

(1)事務局より「学校の第三者評価のガイドラインの策定に向けた実地検証(平成21年度)」及び「平成22年度概算要求(学校評価関係)」について説明。その後、質疑が行われた。

    (○は委員からの質問、●は事務局からの回答)

○ 実地検証の評価報告書作成の進捗状況はどうなっているのか。また、評価報告書はどのくらいで対象校に届くのか。

 ● 国実施型については45校で実地検証を行っているが、現在、3分の1程度について既に報告書を確定させており、設置者や対象校に送付させていただいている。対象校等に送付する時期としては、評価活動終了後5、6週間を目途としている。

○  学校の立場からすると、改善に活かすため評価結果を早く知りたいと思うので、評価結果を早く学校に届けられるようにすることが課題。一方で、評価結果を取りまとめる作業は事務的には大変。この作業をいかに簡略化するかということも課題の1つ。

○  実地検証については、試行事業も含めて4年目となり、経験やノウハウの蓄積により、進め方等が円滑になっていることが成果であると思う。
 

(2)事務局より「学校の第三者評価のガイドラインに盛り込むべき事項」及び「学校の第三者評価の実施体制(案)」について説明。その後、討議が行われた。

    (○は委員による発言)

○ 資料4の4ページの品川区の事例について補足させていただく。品川区においては、訪問調査ではなくヒアリングのみによって評価が行われており、このような評価手法もあるということを例示していただきたい。ヒアリングは年4回、校長→主幹・主任→副校長→校長という形で行われる。その趣旨は、4者が学校の中でどのようなコミュニケーションをとっているかということを把握することにある。
  ヒアリングは、事前に提出された資料をもとに、グループヒアリングの形式で行われている。具体的には、1回のヒアリングに3時間かけ、そこで7、8校の学校が各学校の実態を報告し、その上で専門外部評価委員が質問するというやり方をしている。このような形式を採用することにより、各学校間の情報交換が可能となり、また、各学校によるディスカッションを通じて発展的な成果を生み出すことができる。
  ただし、教育委員会の評価としても機能していることを考えると、専門外部評価委員会の権限と責任のバランスをどう考えるかといことが難しい課題である。
  さらに、品川区の取り組みのからいえることとしては、評価者の問題がある。校長経験者を評価者とすることについては、優れた経験値により各学校へ示唆的な提言ができるというメリットがある一方、この経験は過去の経験であり、現在学校が直面している課題にも対応できるか、また、マネジメント全体ではなく細かい個別の授業について評価する方もいるという面もあった。品川区では研究者を評価者の中に入れ、研究的な視点を取り入れることでバランスを取っていた。このような点を考慮せずに校長経験者のみを評価者とすると、むしろデメリットが前面に出てしまう場合がある。大学教授と校長経験者とをひっくるめて外部の専門家と位置づけることについては、疑問があるところである。

○ 資料4の1ページで紹介されている川崎市の事例について紹介させていただく。川崎市は、平成14年度に小学校設置基準等に学校評価に関する規定が置かれた時から学校評価に取り組んでいる。平成18年度以降は、取り組み当初からの成果を新たに見直すという形で取り組んでいる。
  私自身は、平成18年度から川崎市に関わっているが、平成20年度から協力校の学校関係者評価会議のメンバーとしても関わっている。当初は、学校の抱える課題を会議で指摘しても、具体的に学校が変わるという実感は得られなかったが、ある学校で、学校関係者評価委員に実際の授業を見ていただいてから会議で議論したところ、これまであまり意見が出なかった委員から、具体的な意見や学校と関わったことにより得られた気付きが多く出されるようになった。そしてその意見は、そのまま書き出して職員室に張り出した。その3ヶ月後、学校関係者評価会議を開催し、授業の様子を拝見したところ、前回授業を見たときと比べて非常に良くなっていた。この点について、校長に話を聞いたところ、職員の間に評価委員の意見を受け止める雰囲気があり、職員が前向きになったという効果があったようである。今年度は、このような学校関係者評価の実施方法を広げるため、協力校においてなるべく学校関係者評価委員に授業を見ていただき、意見を出していただくという取り組みを続けている。その中で気付いた点としては、授業を見て意見を出していただくことは有効であるが、劇的な変化を見せた学校は、職員の間に意見を受け止める雰囲気があるという下地を共通して持っているということで、同じような変化が全ての学校で見られる訳ではないということであった。
  また、学校関係者評価に学識経験者が関わることにより、学校評価や学校改善自体が促進される効果もあると考える。

○  資料4の1ページで紹介されている市川市の事例について紹介させていただく。市川市においては、平成20年度に市内の小学校を対象に、学校関係者評価と第三者評価を組み合わせたような試みを行った。その際、文部科学省の第三者評価試行事業のフォーマットをベースに評価を行った。評価者には、保護者や地域住民の方数名の他、国立教育政策研究所からも何名か加わった。さらに杉並区の中学校長や市川市の教育長、指導主事にも加わっていただいた。
  市川市の場合は、研修が大きな意味を持つと考えており、評価委員対象の研修会や教職員対象の研修会が何度か開催された。しかし、実際評価を行うとなると、評価委員の立場によって情報量が異なり、特に保護者や地域の方はあまり情報が無く、同じ水準で議論をすることが難しかった。ただ評価するだけではなく、学校を改善しようという評価者間の意識の共有を大事にしなければ成果が生まれないと考える。
  別の地方公共団体の例であるが、学校選択制を採用しており、学校評価において良い結果が出ているにもかかわらず、学年が上がるにつれ、生徒が流出してしまうというケースがある。このように、学校評価だけで学校の置かれている状況や課題を捉えるには、限界もあるということも踏まえるべきである。

○ 本来的な第三者評価を純粋に考えれば、設置者とも対象校とも無関係な者が評価者となるべきだと思う。資料3の9ページであげられている評価者の例のうち、「(公立学校の場合は他の地方公共団体の)教育委員会の指導主事」とされているのは、評価者は設置者と関係のない方がよいという意味であると読めるが、一方では設置者の関係者が評価者になることを許容する記述がある。例えば、資料3の1ページに「各学校と直接の関係を有しない者による」という記述があるが、設置者と直接の関係を有しない旨も加える必要があるのではないか。また、資料3の9ページの「校長経験者や指導主事経験者など」には、同じ地方公共団体の者も入り得ることになるので、統一して見直すべき。

○ 日本の学校は他国と比べると、学校と直接関わりの無い純粋の第三者が評価できる資料が少ないため、現実にはより詳細な情報を得るという観点から、同じ地方公共団体で校長をしていた者等、学校と関わりのある者を評価者に入れる必要があるのではないか。実施体制のバリエーションとしては様々なパターンがあると思うが、柔軟な実施体制も望ましいとしてしまうのか、純粋な第三者評価を目指しつつ現状ではこういう方法があるとするのか、検討する必要があるのではないか。

○ 評価を行う際、地域の事情に詳しい方が1人でも入っていると的外れな指摘をせずに済み、非常に心強い。評価者が第三者性を確保するという姿勢さえ持っていれば、学校や地域の事情を知っている者が評価者に入ってもよいのではないか。

○ 資料4で事例としてあげられている地方公共団体は都市部の基盤がしっかりしているところであり、また、革新的な取り組みをしているものも含まれており、これをガイドラインに入れ込むと、国としてそのような取り組みを全国に広げるものと受け取られかねない。地方公共団体によってはカラーも様々なので、様々な実施例を多く入れ込むような工夫をしなければならないのではないか。
  現在、学校現場は新学習指導要領の実施体制に入っており、授業時数増の対応のため大変多忙である。そのような状況の中で学校の第三者評価のガイドラインを作る場合、現場が柔軟に対応できるものにしなければ機能しないのではないか。
  また、設置者の責任の下で第三者評価を行うことになっているが、設置者自身に課題がある場合も多くあることに留意する必要がある。

○ 資料3は、これまでのものに比べて柔軟で、現場が実施しやすいものになっているとは思う。しかしながら、現在の学校評価ガイドラインには、「必ずこれに沿って実施されなければならないことを示す性質のものではない」と記述されているにも関わらず、どうしても地方公共団体や学校現場は影響されてしまう実態があるため、各地域の実態に応じた学校評価が推進できる示し方を工夫する必要がある。

○ 学校現場においては、特に管理職でない教員や事務職員に学校評価の意義がきちんと理解されておらず、負担だと捉えられることがある。学校評価のメリットや意義をしっかり研修等で意識づけていかなければ、いくら良い第三者評価を行っても現場での改善の力に結びつかないと思う。

○ 評価を受ける学校の校長の立場で意見したい。資料3の5ページで「過度に学校の事務負担が増えないよう配慮」とあるが、事前準備にあたり、既存の資料で対応できるのであればよいが、新しく資料を作成するとなると負担がかかる。資料の作り方など、事務的な配慮について具体的にご検討いただきたい。
  また、6ページに「学校側の意向のみにとらわれず、設置者が必要と判断する事項についても評価していくことが求められる」とあるが、学校が改善を希望する項目を聴かなければ意味がない。学校の意向を十分汲めるような配慮ができないか。
  さらに、7ページにおいては「事前に十分な余裕を持って評価者が評価対象校の情報を得られるよう配慮」とあるが、主幹・主任といった中間職にヒアリングを行わなければ学校の動きを十分把握することができない。しかしながら、このような教員は授業を持っており、事前に調整を行うことは負担になるのではないか。
  それから8ページに「教職員等からのヒアリング」とあるが、児童生徒が帰った後の放課後でなければ、時間を取ることは難しい。また、放課後でも会議等が入ることがあるので、この点について配慮することができないか。
  また、11ページに「評価対象校が評価結果を適切に理解し」とあるが、各学校が評価結果を提示されるところから実際の改善サイクルが動いていくため、その後のプロセスについて具体的に示していただきたい。
  最後に14ページに「特性への配慮」について記述されているが、具体的にどのような配慮をすべきか参考となる事例を集めていただきたい。

○ 資料3は、教育委員会や学校にとって取り組みやすい案になってきていると感じている。学校の第三者評価の質を高めることは教育委員会や各学校にとってメリットがあること、大事であることを全面的にアピールする必要がある。
  また、第三者評価において、自己評価や学校関係者評価とは異なる視点による評価として、具体的にどのようなものがあったのか、そしてそれが設置者や学校にとってどのように役立ったのかという事例に触れられるとさらによい。
  さらに、第三者評価を意味のあるものとするためには、評価者と学校、保護者、設置者等との間で課題や学校を改善したいという思いが共有されている必要がある。

○ 現在、学校事務の共同実施により地区全体で事務の効率化を進めている。このような組織的な取り組みの中で、学校のデータ管理を進め、評価に必要な資料を提供するための仕組みを作ることができるのではないか。また、学校評価に関する事務を事務職員が行うことによって教員の負担が軽減できるという考え方もあるのではないか。

○ 学校関係者評価の主体は学校であり、第三者評価の主体は設置者であるとされているが、今回新しく示された学校関係者評価と第三者評価の両方の性格を併せ持つ評価については、誰が主体になるのか。
  両者の性格を併せ持つ評価により学校関係者評価が機能すれば、大変良いこと。このような評価を導入することにより、第三者評価に一気に移行するのでなく、段階を踏むことが出来てよいのではないかと思う。

○  第三者評価においては、学校の課題を評価するのか、良いところを評価するのかという点を明確にしていただきたい。その際、第三者評価が、学校や設置者にとって実施してよかったと思えるようなものにするという視点が大切である。
  また、文部科学省のガイドラインというものは、現場にとって拘束力が強いものであると思われる。このため、資料3の1、2ページで第三者評価の意義を示し、これに即して地方公共団体が実施の是非や在り方を検討することとするなど、どこまでが第三者評価の枠組みとして譲れないラインなのか、どういったことが地方公共団体や学校が裁量で行うことができるのかを明確にする必要があるのではないか。

○ 評価結果を学校の改善に結びつけるためには、評価の有用性を学校が受け止めることが大事。評価が児童生徒の成長に結びつくと、教員にとっては最も有用性が感じられると思う。このため、評価項目については、授業改善や教育活動の改善といった視点を入れることが必要だと思う。

○ 第三者評価を議論する上では、児童生徒がよりよい教育を受けるために、学校や設置者は何が出来るかという視点が大切である。第三者評価が教員にとって負担感となっては意味が無い。第三者評価を受けることによって、学校や教職員、児童生徒にとってよかったと思えるようなものにしていくことが必要。

○ 第三者評価を学校の改善に生かすためには評価者への情報提供が重要である。情報提供を担当するのはおそらく校内では副校長になると思うが、副校長は多くの事務処理を抱えており、さらに負担が増えることになる。これを改善しつつ、どのように評価者に適切に情報提供するかが課題である。
  また、校長の立場からすると、学校が抱える課題に対応した助言をもらいたいため、第三者評価を行うに当たっては、網羅的な評価より重点的な評価を行うことを検討すべき。

○ 私立学校は公立学校と学内組織の違いがあるため、評価の項目立て等の面でもいろいろ難しい点があるのではないか。

○ 実施体制について柔軟性がとられたことはよいことだと思う。第三者評価が定着すると、学校間で評価項目や評価基準が統一される可能性がある。その場合、学校間の比較という問題が出てくるが、資料3の12ページに「学校の序列化助長の可能性」とあるとおり、最大限配慮すべきであると考える。

○ 今年4月の文部科学省内の組織改編によって、学校評価を学校運営支援担当の参事官が所掌することとなり、行政組織上、学校評価は学校運営を支援するものとして位置づけられていることに留意すべき。また、学校評価は公教育の質の向上に極めて重要な役割を果たすことをガイドラインに盛り込むべき。

○ 地方公共団体の取組事例をガイドラインに掲載することについては、参考事例であっても1つの型として受け取られることもあるため、その取扱いについては検討が必要。
  また、国として、市町村で行われている学校評価の情報をどのように収集し、普及していくべきかについても検討すべき。

 ・事務局から今後の会議の予定について説明があり、閉会した。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)