学校の第三者評価のガイドラインの策定等に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月19日(金曜日)10時~15時

2.場所

三田共用会議所 第三特別会議室

3.議題

  1. 学校の第三者評価のガイドラインに盛り込むべき事項について
  2. その他

4.出席者

委員

天笠委員、岡田委員、長田委員、風岡委員、神林委員、木岡委員、小松委員、實吉委員、島宮委員、竹原委員、千々布委員、永松委員、浜田委員、葉養委員、日永委員、藤井委員、松尾委員

文部科学省

前川大臣官房審議官、藤野参事官、西田学校運営支援企画官、田中主任視学官、他

5.議事要旨

・前回欠席した委員の紹介が行われた。
 

(1)浜田委員からアメリカにおける学校・地方学区認証評価についての説明。その後、質疑等が行われた。

    (○は委員からの質問、●は発表者からの回答)

○ 浜田委員の説明の補足になるが、文部省のもとに設置された協議会で作成された「中学校・高等学校学校評価の基準と手引き」に基づき、訪問委員会による第三者評価的なことが行われていたが、その後、自己評価を推進する動きの中で、このような訪問委員会による評価は日本から無くなっていった。
   なお、アメリカの認証制度は、入試制度がない中で急速にハイスクールが設立されてきたため、入学生として認めるかどうかを判断する際の、いわゆる指定校制度に当たるものとして始まった。

○ 地域によって違いはあると思うが、評価基準は定量的なものと定性的なものとではどちらが多いのか。改善策については、大学の場合と同じく、まずは自らに考えさせるのか。また、結果の公表については、評価機関の側から直接出されているのか、それとも学校に委ねられているのか。評価を行うことのメリット、インセンティブについてはどうか。

● 評価の基準は定性的なものが中心であると理解している。また、自己評価が非常に重視されており、4段階くらいで細かい項目について評価する。結果の公表については、学校や地方学区の判断に任されている。評価を受けるメリットやインセンティブについては、初等学校レベルでは公立学校よりも、むしろチャータースクール、ホームスクール、私立学校が認証を受けるという意味が大きい。
 

(2)事務局より「学校の第三者評価のガイドラインに盛り込むべき事項」について説明。その後、自由討議が行われた。

○ 昨年度行われた高等学校における学校評価の調査結果について報告する。第三者評価に類似するものとして、教育委員会や第三者機関等が学校の経営改善のために実施する学校評価、いわゆる学校診断が行われている県がある。この学校診断に関する課題としては、多忙化をはじめとして、評価の客観性・公平性の確保、評価結果の活用方法、教育活動に対する評価者の理解不足、評価者による恒常的な学校把握の必要性等が挙げられている。一方、成果としては、意識改革が可能になること、学校運営の活性化等が挙げられている。

○ 自己評価、学校関係者評価、第三者評価にはそれぞれ強みがあるかと思うので、それぞれの在り方をきちんと整理すべき。自己評価、学校関係者評価、第三者評価、それぞれの強みを生かすという構造で評価を進めた方が改善につながりやすくなるのではないか。
  また、第三者評価については、監査的なものか改善を指向するものにするかで方向性が大きく異なる。監査的な部分は全国学力・学習状況調査である程度担保されているため、第三者評価は学校改善につなげて考えた方がいいと思う。第三者評価のメリットをきちんと整理し、改善に役立てるというのであれば、その点を重点化して記述した方が現場にとっては分かりやすいと思う。学校運営協議会、学校評議員制度、学校選択制など様々な制度が動いているので、これらを構造的に整理した上で改善に役立つものにしていくことが重要である。

○ 自己評価、学校関係者評価を踏まえた上での第三者評価という位置づけは堅すぎる。第三者評価を実施することによって、自己評価や学校関係者評価が活性化されたという事例もある。そういった機能も含めて第三者評価の意義をもう少し拡大すべきである。
  また、現在は指導主事の力量を確保することですら難しい状況にあり、評価者の力量を確保することはなおさら困難である。予算を確保して評価者の専門家集団を養成することも考えられるが、現実的には第三者評価の枠組み全体を柔軟に考え、現在いる国内の教育関係の研究者、指導主事、退職校長により評価を行うことについて議論するべきである。

○ 第三者評価は基本的にはコンサルテーション機能を持った専門家による評価が求められていると捉えられる。何をコンサルトするかについては、その学校の課題に応じてである。評価者の確保については、もっと広くスーパーティーチャーや指導教諭を含めた各教職員による専門的な評価を基盤として構想する必要がある。その一方で、校長等を含めた資格制度の確立も課題であると理解している。

○ 第三者評価は自己評価と学校関係者評価を補完するものという文言が資料にはあるが、補完する内容や考え方なども含め、3つの評価の関係を明確にする必要がある。

○ 「学校に直接かかわりを持たない」ということと「専門家」ということが並列で記載されているが、学校を支援するような仕組みを考えるのであれば、専門家の方に重点を置くべきではないか。第三者評価にコンサルテーションの機能がなければ学校はやる気が出ないだろうし、実質的な支援にも結びつかない。また、「学校に直接かかわりを持たない」という表現がガイドラインに示されると、この点を重く受け取られかねない。また、専門的評価と客観的評価は区別して考えなければならない。

○ 自己評価や学校関係者評価の結果を第三者に客観的に認めてもらうことに第三者評価の意味があると思う。そのような要素をガイドラインに盛り込む必要がある。

○ 学校関係者評価に参加しているが「辛口の友人」になるには遠慮が出てしまいなかなか難しいと感じてきた。しかし、今年地域のコンサルタントの方が参加し、雰囲気が変わったため、学校関係者評価に専門家が入ることはよいと思う。また、日本では市民が学校の運営そのものを評価するという視点がほとんどないため、学校運営について評価するのは、第三者評価の役割だと考える。

○ 自己評価や学校関係者評価では身内の評価なのでなかなか学校改善に結びつかないというのが現状である。第三者評価は、何のために評価をするのかということを明確にし、評価結果が学校の教育力の向上や地域に信頼される学校づくりに結びつくようにしていただきたい。そのためには、評価結果が設置者による適切な指導・助言や支援などに活かされる必要がある。

○ 実施主体については、市町村によっては過疎地や離島など、1つの自治体や市町村間で連携してもうまくいかない場合があるため、国が責任を負うエリアや、広域的なネットワークなどといったオプションを考える必要があるのではないか。また、その場合、財源についても考えておく必要がある。

○ 品川区では、第三者評価を実施する際、教育委員会は事務局としての役割に徹し、意見等を言うことは禁止されている。評価委員長の裁量の下で進めることにより、相対的ではあるが独立性を担保している。また、そうすることによって、教育委員会評価も学校の第三者評価を通じて行うことができる。

○ 国が評価委員のデータベースを作ることにより、第三者性が担保された評価者の確保にも資するのではないか。
  また、評価委員を派遣するにはコストがかかるため、この点についても考えるべきである。

○ 学校法人と私立学校は非常に密接な関係にあるため、公立学校と教育委員会の関係とは異なるという点を考慮すべきである。

○ 評価主体の独立性をあまり強調せず、配慮が必要という程度でよいのではないか。また、第三者評価が自己評価、学校関係者評価の何を補完するのかということを考えた上で実施主体の在り方について考える必要がある。

○ 自己評価がまだまだ進んでいない現状で学校関係者評価が動いてきている。専門的なコンサルテーションという機能を第三者評価に持たせ、自己評価と学校関係者評価をどのようにかみ合わせるかに焦点を当てて考えることが必要。

(休憩)

○ 学校で1回きり行われるものなのか、継続的に行われるものかによって、第三者評価の考え方が変わってくる。第三者評価にコンサルティング機能を持たせるならば、継続的に学校に関わっていく仕組みが求められる。

○ 学校現場が何を求めているかということが非常に重要。学校としては、改善をするためのヒントを必要としているので、継続的に助言がもらえるようなシステムが必要。評価委員が学校の事情が分かる方だと相談しやすいと思う。
  また、公立の義務教育諸学校は、予算と施設設備の面において、教育委員会との関係が非常に密接であるため、学校が受ける評価は教育委員会の課題としても捉えていただく必要がある。

○ 第三者評価に監査的要素を盛り込む場合、全国一律の監査システムを念頭に置いているとすれば、個々の学校固有の事情を踏まえることが難しくなる。共通性と個々の事情について、どのように考えるか検討が必要。

○ 学校の事務負担が過大にならないようにする必要がある。また、評価は複数の評価者により行われることが必要。独立した第三者的な機関を作ることは困難であるため、現実的には、設置者の主導で評価の仕組みを動かすべき。しかし、指導主事が配置されていないような小規模な自治体では、第三者評価により改善のための課題が明確になったとしても、支援ができる内容は非常に限られたものになる。評価結果を改善に結びつけるには、学校だけを評価対象にするのではなく、設置者の支援体制に対して評価を行うことも考える必要があるが、同時に設置者が支援のためのインフラを持っていない場合もあるということを広く知ってもらうことも必要。

○ 評定を付けるのではなく、各学校が達成すべき基準を定め、もし基準を満たしていなければ設置者や学校に対してコンサルテーションを行うようなものが必要。

○ 学校は既に教育委員会レベルによる監査が行われているので、それとの関係も踏まえた上で監査的なものが必要か議論すべき。

○ 民間会社では、第三者である監査法人が会計検査などを行っている。教育界においても、自分の仕事を第三者に認めてもらうという仕組みが必要。

○ 全ての学校を対象にしてチェックするというのは、コスト的に現実的ではない。法令の適合性については、ほとんどの学校においてはきちんとやっているが、マネジメントに問題がある場合がある。今必要なのは、そのことに焦点を当てた第三者評価であり、監査的な第三者評価はその後に考えればよいのではないか。

○ 教育委員会の自己点検評価が行われている中で、それに加えて監査的な第三者評価を行うとなると、教育委員会との関係では二重に評価を行うことになりかねない。両者の関係については整理すべき。

○ 第三者評価に監査的要素を盛り込むべきかについては、現在どこまで学校に対する監査が行われているかということをまず考えるべき。
  また、3つの評価類型を提示しつつ、評価の手法を1つだけとしているところに無理があると感じる。第三者評価の目標によって評価の在り方が変わるため、あれもこれも目指した評価というのはうまくいかないと思う。

○ 評価手法については、ごく当たり前の一般的な記述となっているため、具体的な記述を検討すべきである。

○ 第三者評価に監査的要素が全く無くてもよいとは思わないが、地域差や学校間の差が大きい中で、最低基準というのを全国一律に設定して監査を行うことは難しい。
  ただ、現実的には学校との関係で設置者は非常に強い立場であるため、学校側のニーズを設置者に認識させるための手段として、監査的な評価があってもよいと思う。

○ 学校教育には、子どもがある一定レベルの知識、体力、感性を身につけることを期待しているため、それが達成されているのかということをチェックするという意味で、監査という言葉を考えるべき。

○ 学校教育に期待されているものは公立、私立、あるいは学校種によって異なるため、これらを一緒に議論することは難しいと思う。

○ 「専門的・客観的」と「直接関係を有しない者」をどこまで重視するのかが分かりにくい。客観性よりもむしろ専門性を重視するほうが、改善に対する支援的な機能が果たせると思う。ただし、「専門家等」という場合、一体何の専門家を指しているのかというところは非常にあいまいであるため、何らかの見解を示しておくべき。

○ 現在、指導主事の総数は減少する傾向にある中で、学校評価に関する専門家を別に確保することは困難である。また、旅費の確保の問題もある。
  このような状況の中で、新たに予算を獲得するという戦略で行くのか、今あるリソースでやれることを探すという戦略で行くのか、方向性を明らかにすべきである。

○ 評価される立場からすると、経済界から経営面の専門家に入ってもらえると、学校にとって新たな刺激となることがある。

○ どの範囲まで評価を行うかによって専門家を確保できるかどうかが変わってくると思う。評価の範囲をある程度限定的にした上で、専門家という考え方を少し緩めて実施するということでないと、評価者の確保は現実的には厳しいと思う。

○ 評価者の研修については、教職大学院のコースとして設置するなど長期的な見通しを持ちながら考えていく必要がある。評価者の第三者性や利害関係者性について分析を行いながら、今の自己評価や学校関係者評価の中で何が欠けて、さらにどういう視点が必要となっているのかを分析した上で、第三者評価のあり方を考えるべき。そのためにも段階的な第三者評価の導入について、ガイドラインの中で表現できたらいいと思う。

○ 評価者のすそ野を広げるための戦略などを明示してもよいと思う。評価者の確保のところでは、国や都道府県だけではなく、学会や教職大学院、民間の方に評価に関わっていただいたり、あるいは評価する力を身につけていただくような言及も必要ではないか。

○ 学校評価について理解していない現場の教員も多いので、教員を対象とした研修も大事である。また、コーディネーターの役割を担う人材の育成が課題である。

○ 初等中等教育段階では評価の専門家が不足しているので、大学のようなピア・レビューは難しい。
  また、教員免許講習の例のように、私学団体が主体となって私学の視点からの第三者評価を行うことは考えられる。
  私学においては、いわゆる顧客満足度というのが一番重要であり、一般の企業に近い面もある。そういう観点からも、公立学校と私立学校では評価の仕方は異なってくると思う。

○ 継続的な評価を行うのであれば、改善した点についての背景要因等の分析を評価結果に盛り込んでいくとよいのではないか。自己評価や学校関係者評価では評価結果の分析まで行われることは少なく、改善に結びつけるための情報量が少ない。第三者評価には専門家が入るので、改善に役立てられるよう専門的な分析を行うことも考えてほしい。

○ 評価である以上、完全に客観的な評価というものはあり得ないが、評価の透明性を高めること等を通じた社会的公正性の担保が重要である。そういう観点からすると、評価を受けた当事者に対して結果をフィードバックして意見を聞くなどした上で、公表できる範囲についても議論されていくのではないかと思う。

○ アメリカのアクレディテーションでは、適正手続きが重視され、結果についても基準に適合しているかどうかだけが公表される。重要なことは、評価が適切になされているというプロセスの部分をオープンにしていくことであろう。

○ 評価結果を公表するのであれば、評価をする側、される側の双方が納得いく形にする必要がある。

○ 学校の第三者評価が学校運営または教育活動の改善に生かしていくものだという前提に立つとするなら、評定というのはなじまないと思う。

○ 例えば私立学校の場合、第三者評価を理事会側が求める場合は学校側に何かを求めており、学校側が評価を求める場合は理事会側に何らかの行動を期待している。また、幼稚園や特別支援教育等でも複雑なものがあり、一元的に評価のあり方を論ずることはできないと思う。

○ 評価を導入することによって学校改善がなされることを期待し、積極的に評価を行っている学校もある。学校が内発的に評価を行えるようにするため、ガイドラインだけでなく先進事例集のような資料も作ってもらいたい。

○ 第三者評価には幾つかのタイプがあり、それぞれのタイプに対応してメリットとデメリットがある。これらをマトリックスにして、タイプごとの留意点、メリットやデメリットをガイドラインにまとめていくと分かりやすくなると思う。
  また、文部科学省の委託研究で第三者評価手法や、先進的な第三者評価事例なども収集されてきているかと思うが、そのようなものもガイドラインに組み入れていくと分かりやすくなると思う。

○ 公立の小中学校では、学校財務についての共通性がないと感じている。
  また、専門性については、教育活動内容の専門性、マネジメントの専門性、財務の専門性など様々なものがあるが、オールラウンドな専門家を想定しているのか、チームとしてそれぞれの専門性を活かしていくのかについても考えていかなければならないと思う。
  また、学校財務というのは、学校の教育活動を支える資源の中の1つであるため、それぞれの領域に財務的な視点というものが織り込まれている必要がある。

○ 評価項目が網羅的だと学校の負担が大きくなるので、きちんと整理すべき。
  また、評価者は設置者と学校の両方と関係を持たないという条件は非常に厳しいので、実際に設置者が評価者を確保できるのか見直すことも必要である。

○ 自己評価や学校関係者評価が適切になされていないから第三者評価をしっかりやらなければならないという流れではなく、第三者評価を導入した場合のメリットを大いに強調するガイドラインでなければならない。
  また、評価項目や評価委員の条件等については、一律に定めるのではなく、地方の判断である程度幅広く選択できるようにすることが必要。

○ どういう要件が満たされたときに学校が自ら積極的に第三者評価を求めるのかといったことについても、ガイドラインをまとめるに当たって整理し、第三者評価のメリットとして記述に反映させることができるとよい思う。

○ 私学にとっては、厳しい財政状況の中で評価をするに当たっての費用を捻出することはなかなか大変である。
  また、私学においては顧客満足度を把握するため、生徒、保護者、卒業生、学校通学路も含めた近隣の評価、塾の評価、あるいは学校に生徒を送っている公立学校の先生等に評価をお願いしているということをご理解いただきたい。

○ 学校にとって自ら積極的に第三者評価を受けたいという動機づけになるのは、学校の中だけでは解決できないことについての援助が受けられるということであると思う。研修に参加できたり好事例を紹介してもらえるといったコンサルテーションのようなものを受けられることが第三者評価のメリットとして考えられる。

○ アメリカのアクレディテーションのメリットの一つとして、会員同士の相互援助が挙げられる。
  どのような評価を行うかにより結論は変わると思うが、第三者評価は周期的に行うのかどうかについても明確にした方がよい。
  「客観性・専門性」という言葉については、この2つは並列ではなく、客観的な材料を用いながら専門家が評価するということになる。重要なのは、評価のプロセスについて可能な限り客観性を保つということである。あまり評価自体の客観性を強調し過ぎると数値基準ということになってしまい、逆に専門性を必要としないものになってしまう。

○ イギリスでは、第三者評価を行い、基準を満たしてなければ改善、是正の指示が出て、それでも改善されなければ廃校になるという仕組みになっているが、学校から反発があり、支援機能を備えるべきであるという議論になった。
  一方、ニュージーランドにおいては、イギリスの仕組みを取り入れて失敗したという反省に立ち、支援機能を強化した評価プログラムに変えていたが、その際、評価機関であるレビューオフィスは同時に支援を担うのか、それとも支援機関は別にするのかというところが議論となり、結果的には、評価機関と支援機関を分けることになった。このように、第三者評価とそのための支援機関というものをどう考えるかということが重要である。
  また、改善のための予算措置を必要とするものだということを位置づけないと、評価はうまく機能しないと思う。

 ・事務局から今後の会議の予定日時について説明があり、閉会した。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)