教員養成課程の質的な向上に関する協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成21年4月27日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館5階第3会議室

3.出席者

委員

横須賀座長、高岡副座長、梅野委員、小山委員、篠原委員、本間委員、宮川委員、山極委員、油布委員

文部科学省

玉井文部科学審議官、金森初等中等教育局長、德永高等教育局長、前川大臣官房審議官、久保大臣官房審議官、大木教職員課長、義本大学振興課長、日向教員免許企画室長、堀教員養成企画室長、山田教職員課課長補佐、清重教員免許企画室室長補佐、渡邉教員養成企画室室長補佐 他

4.議事要旨

(1)小山委員より参考資料に基づき発表が行われ、その後討議が行われた。

(2)堀室長より資料1に基づき報告が行われ、その後討議が行われた。

(3)山田補佐より資料2に基づき報告が行われ、その後討議が行われた。

(4)山田補佐より資料3に基づき報告が行われ、その後討議が行われた。

 

(1)小山委員の発表に対する討議

【委員】
 一点目として、教員養成の変化として、大学のカリキュラム等があまり評価を受けていないことが背景にあると思うが、採用権者が教師養成塾を作って教員養成に関わっていく流れがある。このようなダブルスクールの形で教員養成をすることについて賛否両論あると思うが、教師養成塾を作ることが致し方ないことなのかどうかお聞きしたい。
 二点目として、現場経験について言及があったが、大学における教職の実践については、教職実践演習や教職大学院など苦労しながら様々な改革が行われているが、それでもまだ不十分だと感じられているかお聞きしたい。
 三点目として、千葉県では中高共通で採用試験が行われているようだが、地元の県の学校現場では小中の異動を大切にしている。採用の段階で中高を共通にすると小中の交流が切れてしまうということと、中高では教員像が違うと思うが、そこについての配慮はなかったのか。

【委員】
 大学等の養成については、大きな課題があるという議論にはなっていない。ただし、学校の現場で、大学等で養成されてきたスキルをさらに伸ばしていくために、養成と言うよりも経験を積んでもらうという形で各学校に学生を配置する教職インターンシップを行っているが、まだまだ不十分だと感じている。しかし、常に趣旨を徹底しながら行っており、定着しつつある。
 現在高校の採用は非常に少なくなっており、年齢がアンバランスになっている。中高の枠で採用した者については、最初の3年間は異動させないが、最初に中学へ配置した者については、その後は本人の希望で高校に戻している。小中の交流ももちろん行っており、それぞれの教員がスタイルに合った学校に勤務することが望ましく、様々な経験をすることは重要であると考えている。高校の現場からは中学校の教員をもっと回して欲しいということを言われている。今までの高校は教科の内容を指導しているところが大きく、その他の様々な課題が出たときに高校の先生だけでは対処しきれないところがあった。中高の枠で採用され、初任の頃に中学校で育つことで、高校に異動すると高校の改革にもつながってくると考えている。ただし、中高枠の採用については、課題があるということも認識しており、受験生本人の意向を反映するよう面接のなかでくみ取るようにしている。

【委員】
 教育実習では教科の指導が中心となっており、現在もほとんど変わっていないことに問題があると感じている。
 教員の仕事は授業を教えるだけではなく、学級経営や事務的な作業など様々な業務があるが、教育実習や大学での教師のイメージというのは、そのような包括的なものではなく、自分の専門教科にあるという実態である。
 最近は実践的な内容を取り入れたりしているが、以前からの教員養成の在り方とはそれほど変わっていないと思う。以前はそれでも通用していたにも関わらず、近年、若い教員が辞めることが多くなったのは、現場が変わったからではないか。以前はOJTで若い教員を育てる雰囲気があったが、現在は仕事に追われており若い教員を育てることまで手が回らなくなっている。大量退職により、今後ますますノウハウが伝わらなくなっていく。
 そこで問題となるのが、実践的な内容を大学でやるのか、初任の間に包括的な仕事があるということが分かるようなOJTで行うのかということを考えるべきではないか。

【事務局】
 どんな時代でも教職に向かない学生がいるが、それは例外的なものなのか構造的に抱えている問題なのか、この20年間の間にどういう変化が起こっているのかをご議論いただきたい。

【委員】
 指導力不足教員が40代から50代に多いが、採用された段階から何らかの問題があったがそれを隠しきれなくなった部分もあるのではないかと思う。
 構造的な問題なのか、非構造的な問題なのか一言で申し上げることは難しいが、ある程度構造的な問題であると考えており、教員免許状が資質能力を保証するものになっていないのではないか。

【事務局】
 優秀な教員の確保のためには、養成・採用・研修などそれぞれのステージがあるわけなので、どこかの段階ですべてを行うことはできないと考えている。また、教員免許状の考え方についても、今までは各教科を履修したことを集めたものに過ぎなかったが、教職実践演習が導入されたことにより、必要な資質能力が身についたか確認することになった。教職実践演習が導入される前と導入された後を混同すると議論が混乱するので整理する必要がある。

【委員】
 離職率が2%という数値だけでは、それほどミスマッチが起こっているとは言えないと考えている。自分の実感からも、大学での学生の育ち方と実際に採用される学生がそれほど乖離していないと感じている。
 相変わらず、構造的な問題として養成と採用の間に溝がある。養成と採用について、大学と県教委がコンソーシアムを作って、養成して欲しい人材や送り出している人材について、お互いに情報交換をし、一緒に教員を育てていく必要がある。
 教師養成塾については、採用側が大学を信用していないから教育委員会が作っているように大学側からは見えてしまう。教師養成塾の実施について大学との連携が必要なのではないか。養成から採用につないでいく仕組みを作っていくことが必要なのではないか。
 現場が大学で学生に身に付けてもらいたいものは「知恵」であるが、大学で学生が学んでいるものは「知識」のレベルを超えることがなかなかできていない。それを大学の養成段階でどのように「知恵」に変えていくかが課題である。

【委員】
 離職率が2%というのは少ないと思うが、1人でもそのような者がいると影響が大きい。
 今回の改訂の教職実践演習でどれだけの改善ができるのか課題がある。教職実践演習は、教職課程全体での到達点を確認する科目であるが、現実には2単位の科目構成を考えるだけ手一杯のところがある。まだ、教職課程全体の改善には結びついていないのではないか。
 教育実習の改善はここ10年で進んできているし、教科専門の授業についても実験などが少人数で作られてきた。しかし、教職課程の中核である教職専門については、まだ多人数講義で行われている場合が多いなど問題がある。教職実践演習は2単位の問題だけでなく、教職課程全体の改善につながると思うのでそれをどう実質化していくかという議論もしていく必要がある。

【委員】
 医学部だと大学で講義を行っている教員が附属病院で患者を実際に診察しているが、大学の教科専門の教員はそのようになっていない。もっと、教科専門の教員が附属学校の教育実習等に関わり、教員になる学生を教える力をもっと強化していなくてはならない。教員免許更新制が実施され、大学教員がベテランの教員を教えることになるが、今のままではそのときに反発を受けるのではないかと思う。このようなことを考えると、教員養成大学がもっと現職研修の機能を果たしていく必要があると考えており、そのことによって教員養成大学の重要性が明確になると考えている。

【委員】
 不適格な教員は50代に多いが、この年齢だと転職が難しい。30代ぐらいだと転職を勧めることもできるが、結局問題があっても50代ぐらいなってから出てくる。
 教員養成学部に入学しても教員に向いていない者がいるため、教員免許を取得しなくても卒業できるようにしていくべきである。
 教育の意義についての科目は非常に重要であると考えている。教員養成大学が立派な教員になるためにはどうすればいいのかということを朝から晩まで学生に考えさせるようなシステムを、非常に難しいが、作っていくべきだと考えている。教員養成学部では、全員運動クラブに入るということを義務づけるというぐらいのことも個人的には考えていくべきではないかと思っている。

【委員】
 今までの制度改革と違い、今回の制度改革は学生の個別の知識だけではなく全体的な改善を図ろうとしている。

【委員】
 学校現場でのOJTの機能が弱くなっているのは確かである。教育の専門家といえるような内容を指導案に書けていないことがある。例えば、子どもの実態を指導案に書かせたときに、子どもの実態になっていないことがある。目の前の子どもたちが今までどのようなことを学んできて、これからどのようなことを学ばせればよいかという見立てができない。そのような訓練をする必要があるということを大学で指導してもらい、教員研修等で徹底してそのような勘を身に付けさせなければならない。学校現場で形式知を暗黙知にするようなプロセスがないため、若い教員が育たないのではないかと考えている。
 学校の課題に迫るような研究を行っている教員が多い大学とそうではない大学に分かれている。学校現場で起こっている問題を解き明かすような研究を大学には十分に行っていただきたい。

【委員】
 在り方懇談会においても、教科専門についてはいろいろと議論となったが、教職専門科目についてはあまり議論されてこなかった。教職専門科目を担当する大学教員の養成も大きな問題があると感じており、議論しないと前に進まないと感じている。

(2)国立大学附属学校の新たな活用方策の報告についての討議

【委員】
 国立大学附属校の在り方については、教授会の構成員から附属学校の校長を選ぶという組織運営の問題があると考えている。このシステムを変えようとしたことがあるが、附属学校からは、役に立たない教授が校長になり、実質的には副校長が学校をマネージメントする方がよいと反発された。
 また、教育委員会から教員が送り込まれており、教員は地元の中核的な学校の1つと考えている。そのため、附属学校としてのアイデンティティーがない。

【事務局】
 附属学校へのマネージメント改革については、教員養成学部では遅れているが非教員養成学部では進んでいる。大学によっては、附属学校教育長に大学の理事を送りこんでいるような大学もある。
 また、地域運営協議会を作って附属学校の位置づけを検討してもらうように考えている。

【委員】
 大学のなかで附属学校は忘れがちになっている状況で、このような報告書が出てきたことは意味がある。
 教育実習に対して附属学校が全面的に協力する体制にあるかというとそれはあやしい状況にある。自分の大学では、附属学校に同じ生徒を継続して見られるように教育実習を行うようにさせて欲しいと言ってきたが、当初は附属学校から反発を受けた。附属学校の教員には、研究授業をどんどんやるべきだという意識があるが、附属学校の教員の能力を持っていれば、5~6人の学生を指導することはそれほどたいへんなことではないと言ってきた。

【委員】
 この報告書について、附属学校の側から見ると、今のままであまり問題ないという認識を与えてしまうのではないか。

【委員】
 新任の大学教員を附属学校で1学期間研修するということを行っている。今は義務ではないが、今後義務づければどこの附属学校でもできるのではないか。問題は、大学の教員がいらないと言われるのではないかということである。特に教科専門の教科は学校で研修を行うことは難しい。

【委員】
 地方の教員養成系単科大学の附属学校は、現職教員の研修等という点では機能していたのではないかと感じている。
 教育実習に附属学校がどれだけ寄与するかということが課題である。教育実習のための実験校という位置づけが附属学校と大学で共有するためには、保護者などから抵抗を克服していく必要がある。学生が効果的な実習を行うためには、附属学校と大学の距離の問題、学事歴の問題、実習を介在とした共同研究を行うための体制の問題などがある。

(3)平成21年度免許状更新講習の認定等の報告についての討議

【委員】
 予備講習での不認定者が0.08%という数字は少なく感じる。

【事務局】
 予備講習を受けた者は志が高い者が多かったのではないかと推察されるが、今後どのようになるかはまだわからないのが実情である。

(4)教員の資質能力追跡調査事業の報告についての討議

【委員】
 教師養成塾に行っている大学4年生と行っていない大学4年生などシステムに関わる比較を行うべきではないか。

【事務局】
 公募で求めている条件はミニマムなものであり、大学側からプラスアルファの要素を示していただくことは可能である。

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局教職員課

(文部科学省初等中等教育局教職員課)