教員養成課程の質的な向上に関する協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年2月23日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省東館3階第2特別会議室

3.出席者

委員

横須賀座長、高岡副座長、梅野委員、小山委員、篠原委員、本間委員、宮川委員、山極委員、油布委員

文部科学省

玉井文部科学審議官、金森初等中等教育局長、德永高等教育局長、合田総括審議官、德久大臣官房審議官、久保大臣官房審議官、大木教職員課長、堀教員養成企画室長、山田教職員課課長補佐、清重教員免許企画室室長補佐 他

4.議事要旨

(1)山田課長補佐より、資料1に基づいて、第1回協力者会議において提起された論点の説明を行い、討議を行った。

(2)髙岡委員より資料2に基づき発表が行われた。

(3)油布委員より資料3に基づき発表が行われた。

(4)(2)、(3)の発表に関して討議が行われた。

(5)山田課長補佐より資料4~6に基づき教員免許更新制の現状を説明した。

(6)山田課長補佐より教員の資質能力追跡調査を説明した。

(7)(5)、(6)について討議が行われた。

(1)第1回協力者会議において提起された論点について
【委員】
・教育現場や保護者からは、優れた教員を養成して欲しいという要望が多い。
 それに対して、教員養成や研修が応えていないという問題がある。システムの問題なのか、システムを支える大学等の問題なのか、それとも学校現場に問題があるのかなどについてご議論願いたい。

【委員】
・この協力者会議では、教職大学院や教職実践演習などのそれぞれの各論を詰めていくのか、教師育成の全体的なことについて議論していくのか。それとも自由に議論すればよいのか。

【事務局】
・1回目の会議でもお話ししたように、教員免許更新制や教職実践演習などの個別の制度については、2年前の答申で整理をされて、制度化されるなど、下地ができあがってきているところである。制度が動いていくなかでどれにも共通するのがカリキュラムの有効性の問題であるが、それがきっちりと議論されている状況にはない。
 この論点ペーパーは、整理をしすぎているという印象を与える可能性のあるものだが、アウトプットを明確にいつまでに出すということを考えているわけではないので、今後これをさらに深めていってもよいし、他の論点を挙げていただいてもよい。

【委員】
・論点4の教科専門の問題はよく言われることである。教科専門は非常に重要であり、特に中学や高校の養成課程ではここがしっかりしないといけない。教育系の教科専門で欠けているのは、社会関連の側面、すなわち狭い教科だけにとどまらないで学校や社会に還元していくという側面が、工学系などの教員と比べて若干弱い印象を受ける。いわゆるコミュニケーターとしての役割を教科専門の教員に持ってもらえるとよいと考えている。

【委員】
・協力者会議において2時間議論して出てきた上の4つの論点は、20年前に議論をしても出てくる論点であり、古くて新しい問題である。絶えずわき上がってくる問題点として、行政も大学も常に意識化してなくてはならない問題である。
 教員養成は高等教育の一つの機能なのか、もしくは領域なのかという問題が戦後の教員養成の中で明確にならなかった。開放性の原則というのは、基本的に高等教育を卒業するだけの知識や社会性があれば、高等教育のなかで教職科目を少し付加するだけで、教員が育つという高等教育の機能に包含されているという考えに基づいている。目的養成というのは、高等教育における一つの領域制をもつ考えである。その二つの考えが一つの国で併存しているので、絶えず緊張関係を生んでいる。
 ここで議論されている教科専門の質の向上で問題とされているのは、教員養成系の学部である。一方、理学系等の学部で専門科学がどう扱われているのかという問題も現実にはある。ここでの議論は養成系の大学の問題に傾いているきらいがある。
 最近ようやく教員養成の中身の議論ができるようになってきた。それまでは、開放性か目的養成かという制度の問題が議論されてきた。

(4)髙岡委員、油布委員の発表について
【委員】
・教師力をキー概念にしてそれをどうやって育てていくかということをはっきり打ち出した報告と、教師に望まれる力として、現状を分析する力、データや資料を集め、読み、使い、提示する力、論理的にまとめる力などを指摘していただき、それを大学や教育現場でどうやって育てていくかという報告をしていただいた。

【委員】
・二つの報告は、望ましい教師とはどういうものかが明確にあって、それに伴うチェック項目を設けてシートにしているところと、現在ある問題点を一つ一つなくしていこうというところに違いがある。

【委員】
・国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会において、教員養成の議論が変わった。それまでは制度論について議論されてきたのが、教師がどんな力が持つべきかという議論に変わっていった。それをやりすごした大学とそれに受け止めた大学に分かれた。

【委員】
・懇談会で出てきたような具体的な教師の力は総花的になりがちである。科目を増やすとしても、問題解決能力を身に付けるものを入れるべきではないかと考えている。

【委員】
・子どもの学習意欲を高めるためには、小学校から本物に触れさせることが重要である。そのような機会が今は少なすぎる。方法論ばかり議論していくよりも、本物に触れさせるということを考えていかなければならないのではないか。

【委員】
・子ども意欲のあるなしについても、勉強が全然分からなくて意欲の低い者もいれば全く違う理由で意欲の低い者もいる。意欲がないにもいろいろなケースがあるのに、多くの教員は一般的なケースしか考えていない。現状を分析する力を付けたいというのは、このようないろいろなケースがある現場の実情を見るという力をつけさせたいということである。

【委員】
・勉強ができすぎてやる気がでない子もいるが、そのような子には学校外で優秀な方が本物を触れさせるべきで、学校と学校外の役割を考える必要がある。最近は子どもたちを集めて本物に触れさせる大学教員もいるが、本物に触れさせる機会をもっと設けていく必要がある。

【委員】
・学校現場を実際に見る機会を学生に与える必要があると思い、実習の時間を大幅に増やした。附属学校のような比較的行儀のよい子どもが多いところで実習するだけでは、現実の学校現場を知ることはできない。
 現在、教育大学でも教員養成嫌いな教員がいるが、組織でもっと教員養成を考えるようにしていかなければならない。教育大学でも一般大学でも、一人の教員を育てるのにどうしたらよいかもっと考えていかなければならない。

【委員】
・2つの発表の違いは、実践知と理論に対するウエートの違いにあるように思う。体験的な実践知を重視した発表と、体験だけではなく、一定の課題解決の方法や目的に向けた枠組みを重視した発表というところに違いが出たのではないか。

【委員】
・国立大学の教育学部と私立大学の一般学部とでは異なる問題があるが、教員採用試験は県ごとに行われ、免許を持っていれば誰でも受けることができ、合格すれば採用されるという制度を取っているので、免許を取得するための課程をどうするのかを基本的に議論すればよいのではないか。

【委員】
・ある大学に行ったとき、プロファイルシートとして(授業の内容を)見える形にしていることに驚いた。教科専門の授業内容を免許との関係を項目別にチェックするようにしていた。本来ならば教職課程認定の教科専門の科目内容のチェック項目を設けるべきだと考えている。教職実践演習や教職大学院の内容は中央教育審議会の答申で具体的に示されたが、その他の科目の内容については、課程認定においてチェック項目を設ける必要がある。現在の議論と課程認定のチェック項目の水準との関係を合わせて議論していく必要がある。

【委員】
・かつては、大学の教員にとって教育をするための研究の現場が学校ではなかった。自分の研究のフィールドをそのまま持ち込んで教員になる学生に教えていた。しかし、今は教育をする現場が理科の先生でも社会の先生でも学校にあるということについては同意している。それをどうやって(教育内容に)実現していくのかが課題である。
 授業内容にチェック項目を設けることはいい取組だと思うが、大学の方針としてどこに丸をつけるのが望ましいかを決めることで、はじめて大学として教員にこれだけの力をつけて欲しいのかというメッセージになる。教員に対して、ここに丸をつけてなさいと言っていくことがこれからの課題であると思う。また、学生に事後評価をさせた後で、ここが足りないと言ってきた学生がいた場合、こういうことをやった以上もう一度カリキュラムを保証するための取組を行わなければならない。
 理論を持ってきて事実に当てはめるのではなくて、一つの事実を分析して問題点はどこにあってどうやって解決していくのかという研究力を大学のなかで身に付けさせるのかということは大学の課題であると認識した。

【委員】
・議論を聞いて、教科内容やカリキュラムの内容を是正していくことが必要だと感じた。

(7)教員の資質能力追跡調査について
【委員】
・教員の追跡調査については、個別の教員で行われたり、狭い地域で行われたりはしていたが、本格的な調査は行われてこなかったように思う。本格的に調査を行うことは、大事なことだと思う。
 調査はある個人に対して行うのか。

【事務局】
・プライバシーの問題に気をつけて行わなければならないと考えているが、教育委員会で採用された地元の国立養成系大学の出身者などを調査する。教育委員会と大学がペアになって調査することを考えている。学生のころの学びの状況や採用試験をくぐり抜け初任者研修を経てどのように育っていくか3年ほどかけて検証していきたい。

【委員】
・調査人数に関しては、5人ぐらいを考えているのか、それとも50~100人ぐらいを考えているのか。

【事務局】
・50人から100人ぐらいにしたいと考えている。学校種ごと、国立・私立の別など何本か柱を立てて比較できる形で行いたい。

【委員】
・調査数が50人から100人ぐらいということは、統計的な有意差を出すことは考えていないのか。

【事務局】
・結果として統計的な結果が出てくればよいと考えている。しかし、一つの大学の教員養成の規模を考えると統計的な結果がでるほどの人数を調査するのは、なかなか難しいと考えている。

【委員】
・50人から100人を調査数とした場合、どのようなことを重点的に見ていくのか。

【事務局】
・ある程度の傾向を見ていくことを考えている。

【委員】
・教育委員会としては県単位として考えているのか。

【事務局】
・都道府県教育委員会と大学が連携して行えばよいものができるのではないかと考えているが、まだ決めているわけではない。

【委員】
・どのぐらいの大学を考えているのか。

【事務局】
・すべてを網羅すると、幼・小・中・高・特別支援で、国立と私立や大学と短期大学などの別で調査することになるが、どこまで行えるかは分からない。

【委員】
・最大で10単位ぐらいの調査が行われ、調査の人数がそれぞれ50人から100人ずつであれば、統計的な意味のある傾向を掴むことができるだろうと思う。

【委員】
・ある研究機関の調査で出身学部ごとの卒業者の満足度を調べたところ、教育学部は他の学部よりも高い満足度を感じていた。満足度というものであれば、高いものが出ることが予想される。どのようなことを調査するのか。

【事務局】
・満足度を測るつもりはない。どのような資質があってどのように伸びていくのかを感覚ではなく、データとしてでてくるといいと個人的に感じている。

【委員】
・この調査は、文部科学省自身で行うのか、それとも委託するのか。

【事務局】
・委託する。

【委員】
・どこに委託するのか。

【事務局】
・大学と教育委員会とセットにして調査してもらうことを考えているが、メインは大学にお願いする。

【事務局】
・協力者会議では、折に触れて報告するようにする。

 

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文部科学省初等中等教育局教職員課

(文部科学省初等中等教育局教職員課)