教員養成課程の質的な向上に関する協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成20年11月18日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省東館5階第3会議室

3.出席者

委員

横須賀座長、高岡副座長、梅野委員、小山委員、篠原委員、本間委員、宮川委員、山極委員、油布委員

文部科学省

玉井文部科学審議官、金森初等中等教育局長、德永高等教育局長、前川大臣官房審議官、大木教職員課長、藤原専門教育課長、堀教員養成企画室長、山田教職員課課長補佐、神田専門教育課課長補佐 他

4.議事要旨

(1)山田課長補佐から委員と事務局出席者の紹介が行われた。

(2)金森初等中等教育局長から協力者会議の開催にあたり挨拶が行われた。

(3)事務局からの依頼により座長を横須賀委員、副座長を髙岡委員に決定した。

(4)山田課長補佐より資料2に基づき教員養成の現状について説明がなされた。

(5)梅野委員より資料3に基づき発表が行われた。

(6)篠原委員より資料4に基づき発表が行われた。

(7)各委員より教員養成課程等についての考えが発表された。

(8)自由討議

(9)閉会 

[各委員の発表の概要]

【委員】
・学生からの要望で最も多いことは、本当に教職を希望する者にだけ免許を与えるべきというものであった。
・教職課程の質を保証するために、シラバスモデルや点検項目などを明示して内容面や担当者の改善を促していくことが必要である。
・履修学生の達成感を得ることができるように、教職科目全体もしくは主要科目について、コースワークを学部生に明示することが重要である。空いている時間に履修して免許を取るだけでは学生に自信がつかない。

【委員】
・(今年度の免許状更新講習の試行を行った結果としては)テレビ会議システムよりも対面方式の評価が高かった。
・免許状更新講習(必修講習)の講師については、行政官・若手研究者・ベテラン研究者・校長など様々な人にお願いしたが、評価について相関関係は見られなかった。評価の差を生んでいる要因としては、講習に対するモチベーションが大きいと考えている。
・(試行の結果を見ると)選択講習に比べ必修講習の評価が低く課題である。
・講習の質を高めるためには、シラバスの改善を越えて、共通のテキストを作成することが重要である。
・ベテラン教員の一番のニーズは、生徒指導などについて自分が経験している状況を理論的に説明して欲しいということである。教職大学院も同様である。

【委員】
・教員採用試験に合格した学生は知識を有しているが、条件附任用期間で辞める者やそこまでいかなくても課題のある者は多い。
・養成段階で教職に対する使命感を学生に身に付けさせる方策を検討していただきたい。

【委員】
・大学改革の一般的な議論にある人材養成目標と自大学の養成目標の相違を明確にしないと教員養成は問題をはらむのではないか。
・教職専門が教員養成において教科専門を置き去りにしてはならず、教科専門の教員のキャリア形成が大きな問題としてある。

【委員】
・この授業を受ければどのような力がつきどのような教員になれるのかということが明らかになっている授業が並んでいなくてはカリキュラムとは言えないのではないか。
・シラバスを点検する専門の教員を配置して、授業を実施する教員に授業の意義や他の教科との関係について 聞いていくことが必要である。
・心理学や教育学に関する授業についても教職に必要なものを精選し、時代の要請を踏まえて整理していく必要がある。
・教科専門についても、コアになるカリキュラムを担う教員をきちんと揃えていく必要がある。

【委員】
・教師養成塾に参加している学生は、陥りやすい不安や克服しなければならない課題を解決してくれるカリキュラムが必要だと感じている。また、実践的なカリキュラムをもう少し増やして欲しいという声もある。
・大規模な大学の学生は幅広く学べるという良さを感じているが、学修のプロセスの指導については不十分と感じている。小規模な大学は、手厚い指導をしている反面、過保護なため学生が課題を解決するのに資するようなカリキュラムに追い込む仕組みが足りない。
・実務家教員をもっと活用するべきである。
・卒論と教職の両立に悩んでいる学生に解決の手を差しのべないと、安心して教員になるための学びを大学4年間でできないのではないか。

【委員】
・教員養成大学に対して現場から即戦力を送って欲しいという要請が多く、実践的な指導力を身に付けさせることがクローズアップされてきているが、大学の4年間で身につけた能力で定年まで教員としてやっていこうという考え方は間違っている。実際に学校現場にいってから実践力を身に付けるべきものであり、子どもがいない大学で実践的指導力を身につけることはできるのか。教員養成大学で何を学ぶべきかはっきりさせるべきではないか。
・小学校の教員は理科嫌いが多いが、教員養成大学に問題があるのではないか。子どもの理科離れを防ぐために、各大学が土日や夏休みに子どもを集めて実験学校などを開いているが、本来実施するべき教員養成大学がそれを担っていない状況である。
・教科をしっかり教えられない教員は学級経営などもうまくできない。教科教育をもっとしっかりやらなければならない。教科教育法は指導要領と密接に内容が関わってくるのに各大学でばらばらな内容を実施しているので、国でシラバスを示す必要があるのではないか。

【委員】
・教育の単科大学にいた経験から、教科専門と教職科目の先生との対立は大きい。
・コアカリキュラムプロジェクトに参加した経験から、教員養成の単科大学を念頭において考えていると、私立大学の教職課程が成り立たない場合がある。また、初等教育と中等教育の教員の養成は同時には論じられないのではないかと考えている。議論をするときにはどこに焦点を絞るかを明確にすることが必要である。
・学校のなかで優れた教員とそれにぶら下がっている教員がいる。ぶらさがっている教員の力をどうやって引上げていくのかが重要な問題である。大学の教員養成課程でどの程度の力をつけるべきなのか、そして教員生活においてはどのような組織がどのように関与するのか、全体として誰が責任をもつのかということを考えていく必要がある。
・教員になりたい学生はボランティアなどの形で学校に行っている場合が多いが、本来ならば教員がするような仕事までボランティアがやらされており学校に利用されている状況にある。学校に利用される形ではなく、違う形で実施できないか考えていく必要がある。
・優れた教員は色々な知識を持ちながら相手に合わせて瞬時にどれが良いか選択する決定力を有していると言われているが、それが即戦力の中身ではないかと考えている。ただし、社会が揺らいでいる現在においては、即戦力になる力だけではなく、方向性を自分で考えていく力が必要であるが、そのためには日常に没頭しているだけでなく物事を広い視野から相対化して見ることができる能力が必要である。教員養成系大学のカリキュラムにはこの力がきちんとした形で身につくものがあまりないのではないか。

【委員】
・学校現場と大学が離れすぎているということと個々ばらばらの授業を履修して教員の資質が身についているといって送り出すのはおかしいのではないかということを主張してきた。平成に入ってから風向きが変わってきた。教職実践演習の導入など改善が進んでいるが、制度としても内容としてももう一押しの状況である。教員養成が教育課程改革とどのように足並みをそろえていくのか大きな転換点にきている。

[自由討議の概要]

【事務局】
 教職課程のモデルとして教職大学院の制度が創設されたが、教職大学院のいいところを既存の大学の教職課程に拡大していくことを政策的に考えていかなければならない。
大学の第三者評価については制度ができた当初は反対があったが今は認証評価制度がはじまってもそれほど反反対があるわけではないので、教職課程の取消しもできないことはないと考えている。
 教員養成学部の理科の教員が教員養成に誇りを感じていないところがあるが、教員養成学部ならではの理科教育に関する研究と教育について専門家としてプライドを持てるように教育研究分野として確立することが大切なのではないかと思っている。

【事務局】
 会議の趣旨としては、一つめに、初等中等教育局と高等教育局が協力して教員養成について考える、二つめに、制度改革について考える前に、現在あるいろいろな手段の質を見極める、三つめに、授業の中身の質について踏み込んだ議論をしていただきたいということである。
 現役学生や現職教員に対して大学の授業がどのくらいのレベルでかみ合うのかを検討していただきたい。

【委員】
 教職大学院のシンポジウムに行ったが、ほとんどが教職専門の教員であった。教職大学院を担っているのはほとんど教職専門の教員で教科専門の教員がついて行っていないか無視しているという状況になっている。教科専門と教職専門の教員はキャリアが違うのだからしょうがないという話に落着くが、教育学部の教師論について本気で考えるべきでないのか。
 この会議の場で(委員の先生方が)言われていることを大学に持って帰って広めることでしか養成教育は変わっていかないのではないかと思っている。

【委員】
 小学校の教員になるためには、物理学・生物学・化学のどういう力がないといけないのか教科専門の教員が検討していかなければならない。同じことは社会などでも言える。検討しないのであれば、他の大学の教員に来てもらえばよいということを教科専門の教員に言っている。

【委員】
 (教科専門と教職専門の教員の対立など制度の改正などによっても触れることができない領域が今回議論になっている。今回は制度の話は置いておいて、教科専門と教職専門の関係性について実践においてどのように展開していくべきなのか、教職大学院や教員免許更新制の場面も含めて、今の対立が解消できるヒントについていくつか議論の中から抽出できるように方法論的なことについて議論していくべきではないか。

【事務局】
 法的な仕組みなど様々な施策の組合せにより、大学教育の質を保証する仕組みを作ってきた。大学の中身やファカルティー・ディベロップメントの問題だから制度や予算と関係ないということではない。制度というと教員免許更新制の導入などをイメージするが、大学政策で言うところの制度はもっときめ細かいところについて行政手段を通して大学がそれを実施するようにもっていくのかということもやっていかなければならない。

【事務局】
 今仕掛けが整ってきた中で教員養成の質がどうなっているのかを率直に出していただくと、次の議論につながると考えている。

【事務局】
 次回以降はシラバスのチェックなどもしていただこうかと考えている。

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局教職員課

(文部科学省初等中等教育局教職員課)