特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG(第4回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月12日(金曜日)10時半~12時半

2.場所

中央合同庁舎第7号館 東館5階 5F4会議室

3.議題

  1. 就労支援を中心とした進路指導について
  2. その他

4.議事要旨

(1)   事務局より配付資料の確認が行われた。

(2)   箕輪委員より「就労支援」について説明がされた後、質疑応答・自由討議を行った。概要は以下のとおり。

〔概要〕 ○:委員  △:事務局 

○ 入社される障害者の方々は、最終的にどこで職業訓練を受けていることが多いか。

○ 新卒の場合は、特別支援学校、一般の高校。4月以外の入社の場合は、地域の就労支援団体やNPOの障害者のための訓練センター、国立職業リハビリテーションセンターなど様々。

○ 発達障害等を持った子どもは、就職する際に、企業側からコミュニケーション能力の不足を指摘されることが多いように思うが、採用時点ではコミュニケーション能力はどの程度採用に影響するのか。

○ 会社で全く育てる必要がないぐらいの人も多い。コミュニケーション能力といっても言葉で発するだけではなく、指示したことが目で見てわかる、耳で聞いたほうがわかるなど、とにかく障害のある者がどうすれば言われたことを理解できて、それを行動に移せるかが重要。そのため、就職前に先生や支援者の方に「この人はどういう伝え方が一番有効なのか」を確認しており、それをコミュニケーションに生かしている。仕事上はあまり話せなくても問題がない、発声する必要があるところには、発声できる人がその仕事に就いている。障害のある部下に限らず、指示を出す側、育てる側のコミュニケーション能力の基礎研修を年間通じて実施している。どちらかというと指示を出す側、育てる側が部下のコミュニケーション能力を引き出す力をつける必要があると考えている。

○ 学校はフルタイムで子どもたちが働くための準備をしているのかという指摘は非常に重要だと思う。どの学校でも生徒にはインターンシップをやらせているが、教員が同じように例えば5日間の職場研修といったものを意外としていない。日数に関わらず教員の職場研修の受け入れをしているか。

○ 昨年度は1回受け入れた。肢体不自由特別支援学校の生徒が研修に来た際に、1日だけ生徒の介助のために同行した教員に生徒と同じことに取り組んでもらった。教員は体験することで、仕事の大変さ、生徒がどれだけすごいかを知ったと言っていた。

○ 発表の中で指摘のあった本人のニーズを聞き出すことは重要だという点は同感であるが、実際に引き出すのはなかなか大変。また高校生活を通じて就労感を持たせることも大変だと思う。過去に何度か中学3年の進路を決める頃や高校に入学したばかりの生徒達に、「どうしてその学校に行きたいのか」や「どうしてこの学校を選んだのか」という質問をしたことがあるが、ほとんどの生徒は先生や母親に言われたことをそのまま語るだけで、自分の気持ちを語ることはできなかった。自分のニーズを自ら語れるようにするためにどのような指導を行っているのか。

○ 最初から自分で語れる人は少ない。やはり人から言われて会社に来たという人が多い。自分の意見を聞くためには「どうして」ではなく「ここで今あなたが何をしたいのか」を聞くこと。最近は実習として高校1年生で見学、2年生で2週間程度の実習、3年生でまた実習という学校が多くなってきており、それを踏まえて就職先を選んでもらっているという実感はできている。自分たちも中学3年の頃に自分の進路をしっかりと考えていたかと言えば、全然考えていなかったと思う。誰かにここがいいだろうと言われて来るのは構わない。大事なのはそこから自分が何をしようとするか考えること。中学3年や高校1年の段階に多くの経験を積んだり情報を持ったりすることによって、「自分にはこれはできないがこれならできる」というイメージを持てる人が増えてくるのではないかと思う。

○ 今回の学習指導要領の改訂を踏まえ、キャリア教育に関する対応の仕組みを高校でどのように作っていくかは、大きな課題になってくるだろうと思う。専門高校ではかなり具体的な対応ができても普通高校ではどうするのか、そこに在籍する発達障害のある生徒に対しどのような支援をしていけばよいのかについては、今後の議論の中で重要な部分。

○ 離職率はどれくらいか。

○ 特に数字を取っていないが、ほとんどの者が定年までいる。離職した場合の理由は、帰郷することになった、長期的入院が必要になった、うつになってしまい医者から仕事を止められたなどで障害のない人と同様だと思う。

○ 資料の参考データの5ページの右上の棒グラフは、企業が採用するにあたって、技術や作業効率については譲歩できるが、性格や人柄の部分は譲歩できないと理解でよいか。

○ そのとおり。性格や人柄は書類選考や30分程度の面接ではわからない部分なので、先生や支援者が、実習の機会などに本人にいかに接触するチャンスを作れるかが大事だと思う。

○ 今回発表のあった事例は、特別支援学校に通う生徒を対象にしたものであり、また非常に優れた事例ではあるが、極めて珍しい事例である。その点も踏まえて一般の高校に通う発達障害のある生徒への支援のために何を取り入れられるかを検討する必要があるのではないか。

○ 社会人として求められる基礎的な力は、新卒の大学生でも同じ。障害の有無にかかわらず、基礎的な力が育っていない人や知識はあるが社会人としてうまく活用する力がないためにうまくいかない人もいる。

○ 私は高校で進路指導を長くやってきたが、定着させることは大きな課題。私の高校では、過去20年間で80名から100名くらいの発達障害のある生徒を卒業させてきたが、これらの生徒は就職後、ほとんど離職せずに定着している。それは、その場にうまく合ったということもあるし、そこでなければできないという彼らなりの感情も働いているのかもしれない。それに比べ一般の生徒の離職は高い。本人の希望や適正と仕事とのミスマッチもあるが、離職をなくすためにはスキルを高める必要があり、そのためには障害のある生徒も含めて職業訓練、あるいは専門学校、短期大学、大学での教育がもっと必要ではないかと思う。また、特別な支援を必要としている子どもたちがいること、それをしっかりと受けとめている方々がいることを啓蒙していくことも必要ではないか。進路指導にあたっては、フルタイムの指導は非常に重要だと思う。多くの場合、教員はこの会社はこういう会社ですよ、こういう仕事ですよと説明はするが、実際に一日中立って作業をやる指導はやったことがない。

○ 高等学校に在籍する発達障害等の生徒の就労支援をどうするか考えた場合、やはり3年の教育課程のなかで就労支援をどのように組むかが重要なポイントだと思う。学習障害の子をいわゆる高等養護学校に受け入れてほしいという声がある。高等養護学校であれば、実習をきちんと積み重ねて進路指導をし、卒業後のケアも実施している。しかし、一般の高校ではそれがなかなかできていないためである。

○ 私の高校では、アルバイトをやっている生徒が多いため、そのアルバイトを1つの教材にして、例えばピザの配達中に転んだ場合に、この医療費はどうなると思いますかという形の授業を実施している。この授業の際に、やはり回答の出し方等で気にかかる生徒が出てくる。そういう生徒に対しては、これはこういうことだからと丁寧に教えるなど、生活に即した場面をうまく使いながら教えていくということが有効ではないかと思う。これは障害の有無にかかわらず言えることだと思う。私の高校では、1年生の夏休みに職場見学体験として1日実際に働くというプログラムを実施している。大体240人参加し、そのうち20人くらいに、職場に行けない、行かないなど予測できないことが起きるため、生徒と話し合う中で、どのような教育が必要なのか考えていくことを実践しているところ。

○ 普通科への進学者が7割を超えている。その多くは、目的を持ってどこの高校へ進学したというわけではなく、何となく普通科に進学したというのが現状。彼らの意識は将来の自分や職業観、勤労観に対して必ずしも培われていない。高校としても、インターンシップを1週間程度実施したくても、特に地方の場合、例えば本県では有効求人倍率が0.2という状況であり、受入側の企業の状況が厳しく、せいぜい2、3日にとどまっている。特別支援学校高等部では作業現場等における実習や校内実習など、さまざま計画を立てて作業学習に取り組んでいる。本県の場合、高等養護学校等に障害者に非常に理解のある企業人などによる支援組織があり、就労支援連絡会等がそれぞれの地域にできているなど、企業側がバックアップする仕組みがある。これらのノウハウを発達障害等、普通の高校に通う生徒たちのために活用できるのではないか。新しい高校の学習指導要領に、特別支援学校等の助言・援助の活用について記述されたところでもあり、特別支援学校のセンター的機能を活用した発達障害のある生徒等への支援の仕組みづくりも必要ではないか。

○ 先ほどの発表は特別な事例ではないかという意見もあったが、確かに先進的な取組をされてはいるが、最近の企業は特例子会社も含め、障害のある方の雇用について勉強しているし、相互に情報交換もしているというのが現状だと思う。特別支援学校のセンター的機能を活用し、特別支援学校と高校と連携を進めていくということもこのワーキンググループで検討していく必要があるのではないか。

(3)事務局より、WG報告とりまとめに向けた検討課題(案)についての説明がされた後、自由討議を行った。概要は以下のとおり。

〔概要〕○:委員  △:事務局    

○ 教員が企業で実習を受けることにより、進路指導をより良いものにすることが可能になると思うが、教員が企業である程度の期間実習できる仕組みは全国的に整っているのか。特別支援学校に限らず進路指導の教員がいろいろな仕事のイメージをできるかどうかでアドバイスの仕方が変わってくると思う。教員が研修を受けるとなると教員の補充も必要となのかについても教えていただきたい。

○ 本県の場合、高等学校であれば、普通高校や総合学科、専門学科があるが、学科の種別を問わず、教員が3カ月、さまざまな別の企業の研修を受ける制度がある。専門高校の場合には、5日間のインターンシップを生徒にやらせる学校が増えており、教員も例えばその内の3日は生徒とともに企業実習をするということが可能。普通高校については、そもそもインターンシップをしている学校が少ないことと、教員が様々な学年の授業を担当していることから、生徒と一緒にインターンシップをすることが困難な状況。

○ 本県の場合、小中高、特別支援学校問わずいわゆる初任者研修、10年次研修の一環で、民間企業等に行く教員がいる。また、特別支援学校、高等学校の教員に対して1年間の民間企業研修を実施している。この場合は代替の教員を補充している。また、特別支援学校の教員は、各校から教員が2人ずつ参加し、3日間特例子会社で実習を行っている。この実習は、夏期休暇期間中に実施しているため、教員の補充は不要。

○ 本県の場合もほぼ同様。教頭など管理職も対象にした研修も実施ししている。また、私の高校の場合、職場見学体験を実施しているため、生徒がいろいろな会社に行くことから、事前や事後に教員がそれらの会社に訪問し、会社から意見を聞く機会を設けており、教員にとっては非常によい研修になっている。

○ 発達障害のある生徒の場合、7、8割は普通科の高校に進学するが、普通科では職業教育や就労支援の課程を置くことは難しいと思う。その中の6、7割はさらに短期大学や大学、専門学校に進学しているが、これも行くところがないのでやむなくだと思う。高校の中でも社会性やコミュニケーションに関する教育などいくつか出来ることもあるとは思うが、発達障害のある生徒の場合、高校卒業後に、1年あるいは2年程度、就労に向けた教育を受けないと就職できないことが多いのではないかと思う。そのため、発達障害の生徒にあった就労支援のための課程が用意された教育機関があると非常によいのではないか。一般の高校だとやはり卒業するまでいたいということになるが、高校卒業後の就労課程のようなものであれば、就職が決まれば途中で就職しても良い。高校在学中であれば、例えば特別支援学校に行き、設備を活用して1週間程度作業学習を行うということも考えられるのではないか。

○ 先ほどの発表を聞いて、働くための目標や働きがいが出てくるためには、どのような要素があるのかが気になった。パソコンを使う仕事が非常に多いことから、今後、高校においても、必要な教材を確保していくことが必要ではないか。高校の教員も発達障害の状況はかなり見極めているようだ。これまでの会議の中でも何度か出てきているが、研修を受けたことが子どもたちに対する気づきに結びついている。やはり研修を定着させることが必要ではないか。教育課程の編成に当たって、就労支援に関わる内容をどのように盛り込み、また、どのように弾力的な運用をするかということも考えなければならないのではないか。

○ 就労支援・職業教育だけではなく、進学に対する支援、高大連携についても、検討する必要があるのではないか。また、数年前に文科省が厚労省と一緒に、専門高校における日本版デュアルシステムというのを事業化したのではないかと思うが現状はどうなっているか。

△ 日本版デュアルシステムは、ものづくり人材育成事業という名前で、産業教育を所管している児童生徒課産業教育振興室が実施している。生徒自身のインターンシップだけでなく、教員が企業研修を長期間受けることも内容として盛り込まれている。

○ 進学支援については、まだ十分に検討していない。今後、ご意見を出していただけるとありがたい。

(4) 会議の運営について説明があり、閉会した。

 

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