特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG(第1回) 議事要旨

1.日時

平成21年4月27日(月曜日)10時00分~12時40分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 東館16階 文部科学省16F特別会議室

3.議題

  1. 委員紹介
  2. 議事等の取扱いについて
  3. 高等学校における特別支援教育の現状と課題について
  4. 笹森委員からの発表
  5. 中田委員からの発表
  6. その他

4.議事要旨

(1)  斎藤特別支援教育課長より挨拶が行われた。

(2)  事務局より配付資料の確認が行われた。

(3)  宮崎主査により、副主査に岩井委員が指名された。

(4)  事務局、笹森委員、中田委員より高等学校における特別支援教育の現状と課題等について説明された後、質疑応答・自由討議となった。その概要は以下のとおり。

 

〔概要〕

 

○:委員

△:事務局

 

○ 高等学校の話を議論するにあたっては、幼稚園など低学年の段階における議論とも非常につながりが深いと思うが、親会議ではどのような議論が行われたのか。笹森委員からの報告の中で、特別コースについての話があったが、具体的な中身があれば伺いたい。また、高等学校の学習指導要領のポイントに就業体験の充実が挙げられているが、実習の場の確保のためにどのように取り組まれる予定か。

○ 例えば、国語や数学の授業における取り組みの中で、不登校の生徒たちがかなり登校できるようになったという取り組みはあったと思う。

△ 幼稚園・小学校については、親会議の2月の中間取りまとめのなかで、早期の部分を非常に重要視した提言をしているところ。障害のある子供に対する多様な支援を一貫した教育支援ととらえて、個別の教育支援計画の作成活用を通じて、この理念の実現を図っていくために、早期からの教育相談・支援というものを充実していくということ。それについては、教育委員会が首長部局等と連携して、専門家チームの派遣、あるいは教員研修の機会を提供するなど、幼稚園と、保育所等も含めて、支援を充実していくという方向性を明確に打ち出している。

 就学先の決定については、市町村の教育委員会で総合的に判断をしていくという方向性を打ち出している。

 特に居住地の小・中学校とのかかわりについては、特別支援学校に就学する場合にあっても、居住地の小・中学校との交流を深めていくために、東京都の副籍や埼玉県の支援籍などといった取組を国においても十分研究し、指針を示すこと等により促進をしていくといった方向性を打ち出している。

△ インターンシップの実習先の確保については、ある高校では、町の商工会と連携し、毎週月曜日の午後はインターンシップの時間ということで、町内のあちこちの事業所に、2年生全員が出かけていって就業体験をしている。

△ 教育実習先の確保については、特に、特別支援学校では、厚生労働省との連携により、ハローワークが、特別支援学校に対し現場実習先の確保についても、いろいろと配慮してもらっている例がある。

○ 実習の受入側としては、同時期に複数の方から依頼があって、どこを選んでいいかわからない状態になってきてしまっているので、商工会や経済の団体と学校側の教育委員会が、ひとまず整理してもらえると、もう少しスムーズになるのではないか。

○ おそらく、体験活動の充実の職業教育における現場実習等について、今回のWGでも、特別なニーズのある子どもへの支援の仕組みの一貫として、高等学校の中にどう導入するのかというのは大きな課題になるだろう。

○ 教育ジャーナリストの品川裕香さんは、教員の中には特別支援教育を特別支援学級のようなイメージとして認識している者が多いのではないかという指摘をしている。私としても、特別支援教育というのは、ユニバーサルデザインのような側面だという意識までまだいっていないというようなところがあるのではないかと思っており、まだまだ教職員の研修が必要ではないか。

 それから、本校は、全日制と定時制と通信制があって、通信制の入学生の中には、中学校から申し送りの中で、アスペルガーと書いている生徒がいた。そのほかにパニック障害など様々なことが書いてあって、何も書いてないのは半分ぐらいではないかと思う。

 通信制というのは、スクーリング以外では試験を受ける以外ではほとんど通学しないため、実態把握、生徒との接触というのは、絶えず出てくる生徒でないと、ほとんど把握ができない状況。

 また、ある府県で特区認定により学校が認可をされて、全国ネットになっている通信制がある。その私学の通信制に関しては、多分、ほとんど実態把握というのはない状況で単位認定がされて、学力さえあれば、私立の大学とかに、いろんな形の入試で入っていく状況。大学に入学してから、保護者からの相談で、かなりいろいろと対応しないといけないケースが出てくるというのがあるというような話を、私立大学の入試課長から聞いた。

 定時制では、入学式前に保護者と生徒と両方登校させて、全員面談をし、職員会議で、どの生徒がどのような状況かという共通理解をして、それから入学式を迎えるという体制をとっている。入学式後に、全中学校に訪問して、中学校からのヒアリングも行っているが、それでも、かなり中退率が高いというのが定時制の状況。

 長期欠席者の受入れをしている高校の校長は、教員の意識がかなり変わると言っていた。やはり職員の意識を変えるというのを、いろんなケースでやっておかないといけない。中退率の低い学校では特別支援教育に対する意識がまだ十分ではないのではないか。

○ 制度にかかわる特別支援教育を進める場合の問題点という意味では、全日制、定時制、通信制という課程にかかわる課題をどうしていくのか。また、普通科、専門学科、総合学科といった学科ごとの対応の仕組みをどう考えるか。特に通信制の実態把握はなかなかできにくいという問題等が課題として出てくるのではないか。

○ 本県の場合、高校で大きな課題になっているのは、校内委員会とコーディネーターは2年ほど前に100%になってはいるが、なかなか十分に機能していないということ。

  専門性の高い教員が小・中・高校ともにおらず、継続して研修、それから、コーディネーターをより専門性の高い形に持っていくというリーダーづくりが課題。

 また、教員や副校長として特別支援学校の勤務経験がある校長は、高校の中の特別支援教育をリードする。校長がかわると学校も変わるので、管理職の配置の工夫というものをしていかなければならないのではないかという話が出ている。

 数年前から本県では支援員を小・中に、今年度からは高等学校と特別支援学校にも配置した。学校からは、支援員にも専門性を求められているが、適当な方が少ない。

 高等学校の校長の経験からすると、高校卒業後の自立、あるいは就業の問題がある。これは、企業の理解がまだまだ少ないというだけではなく、学校におけるソーシャルスキル教育が進んでいないこともある。

○ 高等学校における特別支援教育の推進体制の整備というのがかなり進みつつあるが、実態としてはなかなか機能してないという現状。具体的にどう機能させていくかというノウハウも提供していくという必要性があろうと思うが、そのあたりについて、またここでいろいろご議論をお願いできればと思う。

 それから、管理職に関して、人事管理に及ぶ問題を提起していただいたと思う。いろんな障害種を経験した人が高校に来た場合、特に特別支援学校での経験がこの推進には役立つのではないか。

○ 笹森委員から報告があったとおり、高等学校においても小・中学校と同じシステムでいくことがいいのかどうか。

 それから、入学試験の配慮については、高等学校の先生方には本当に配慮いただいており、中学校から見るとかなり充実してきていると言えるのではないか。

 また、特別支援教育の捉え方を、もう少し私ども自身が校長のリーダーシップを発揮して、全職員に対して、特別支援教育は特別な支援を必要とする子供だけではなくて、通常の学級の中にもそういう生徒がいるのだということをしっかりと伝えていかなければいけないと思う。

○ 入学試験への配慮というのをどこまで、どんな形で対応していって、ここでは考えていけばいいのかというのは大きなポイントになろうかと思う。

○ 昨年、管理職の研修などにおいて、私は県内の地区ごとの校長や教頭の会を回り、高等学校での特別支援教育というのは、今の授業よりも、よりわかる授業を目指すというのが特別支援教育の具体的な目指す姿だということを話した。今年度は、本県は総括指導主事というのが地区ごとにいて、いわゆる管理職の学校経営に対するアドバイスを行うという役割を担っている。この方たちに特別支援教育についての情報提供や研修を実施し、学校へ行き、管理職に対するアドバイス際に役立ててもらうということを考えている。

 進路に関しては、高等学校にもジョブサポートティーチャーと言われている方を配置しているが、この方たちが進路開拓等でかなり力を発揮している。そういった進路指導主事とは違う形の人が学校の中に入って、幾つかの学校をかけ持ちで支援していくというシステムができつつあるかなというのが県内の状況。

○ 高校と言っても、いろんな学科を選んでおり、高校だけではなく、専門学校に行っている者であったり、高等専門学校であったり、各種ばらばらに分かれているが、入学はでき、卒業もできる。ただし、卒業した後、困っているケースが結構多い。

 今回、テーマとしては3つ与えられて、入試における配慮や生徒の指導、進路指導と書いてあるが、特に生徒の指導について、今後どういう体制をとって、何をしていくか、特別な教育課程をどのように高校に置くかということを、ぜひ議論いただきたいと思っている。 

○ ちょうど3年前、文科省のほうからモデル校の指定を受けたときと前後して、独自の研修会を開いたところ、地域社会、中学校、教育委員会などから5、60名の参加があったが、全く発達障害について浸透していなかった。福岡県の私学は取組が遅れており、啓蒙啓発活動、情報発信が特に求められているのではないかと思っている。

○ 3月まで県にいた関係で話をすると、いわゆる通常の教育を担当する義務教育指導課、高校教育指導課の指導主事たちの意識として、特別支援教育は特別支援教育課の仕事だという意識が強い。

 専門家チームの派遣要請が高校でも昨年度、何件かあったが、その学校の校長や教頭がやっぱり特別支援学校の管理職経験の学校だったということがあった。

 高校の教員の週当たりの持ち授業時数というのは、小・中学校に比べると圧倒的に低い。例えばだが、週の1時間、高校の教員が特別支援教育にかかわることで時間を提供してくれて、その学校にいいコーディネーターがいれば、通級指導教室のようなものは高校の中ですぐ立ち上げられるかもしれない。

○ 心理職の立場で都立高校の巡回相談をやっているが、研修の成果か、アスペルガー、ADHD、LDというものについては、先生方よくご存じである。先生方は、保護者へどう説明するかについて非常に不安が強いようだ。場合によっては、どうしても保護者の了解が必要になってくるケースもあるのではないかと思っている。そのため、生徒指導の中に、保護者へどう対応するかというようなところも検討に入れていただけると、先生方の力になれるのではないか。

○ 視覚障害や聴覚障害の方々で高校に現実に入っていらっしゃる方は相当数いる。こうした人たちへの対応というのは、実は、学校としての仕組みやこれまでの就学にかかわるさまざまな課題に関して、共通理解ができている部分、かなりあるのではないか。そういった対応が、発達障害のお子さんにもかなり具体化して対応できる、具体的な手だての問題などは、そういったことが影響するのではないかなと思う。

 そのあたりの対応状況等も踏まえ、今後の高校の特別支援教育をどう進めていくかということの検討をしていければよいのではないか。

(5)  事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)