特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第18回) 議事要旨

1.日時

平成21年10月16日(金曜日)10時~12時30分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 交流及び共同学習について
  2. 特別支援教室構想について
  3. 自由討議
  4. その他

4.議事要旨

(1)髙倉座長より挨拶が行われた。

(2)事務局より配布資料の確認が行われた後、説明が行われた。

(3)事務局より資料1に基づき説明が行われた後、山中統括指導主事より資料2に基づき発表が行われた。また、その後、事務局より資料3に基づき説明が行われた後、藤本総括研究員より資料4及び資料5に基づき発表が行われ、自由討議となった。討議等の概要は以下のとおり。

〔概要〕
○:委員◎:ヒアリング△:事務局

(事務局による、交流及び共同学習について)

○資料1P7において特別支援学校学習指導要領解説(案)高等部総則等とあるが、最終的にはいつ完成する予定なのか、教えてほしい。

△本年12月末までに確定する予定である。

(山中統括指導主事による、交流及び共同学習について)

○東京都の「副籍制度」の趣旨について、通常の学級に在籍する子どもの保護者に対する周知はどうしているのか。また、今後の課題であると思うが、就学前の幼稚園や保育所に対する周知についてはどのようなことを想定しているのか。

◎「副籍制度」を活用する際は、まずは学校同士で十分な話し合いをしていただく。保護者に対しては小・中学校から説明していただくようにお願いする。その際に、特別支援学校から説明してほしいとの要請も多く、特別支援学校のコーディネーターが赴いて障害に対する理解などを求める場合もある。そのように、「副籍制度」については、保護者への説明など準備に時間をかけている。また、就学前の周知については、区市町村が就学相談を行う際に制度を紹介するようお願いしている。

○授業に参加する場合の教育課程上の位置付けについて、教えてほしい。

◎教育課程上の位置付けについては、特別支援学校の子どもの場合、個別の指導計画の中に位置付けて行っている。その際、授業に偏りが出ないように配慮することをお願いしている。現状では、総合的な学習の時間や行事において実施しているが、直接授業に参加することはまだ少なく、行事に参加することが多い。毎週のように授業に参加するとなると、教育課程上の位置付けは課題となるので、この点については現在検討を行っている。

○「地域の中で生きていく」ということが目的として設定されていると思うが、学校活動以外の地域での活動についてはどのようにつくり上げていくのか。居住地との交流は1つのきっかけになるとは思うが、地域の中でその地域の子どもが家庭に遊びに来る、あるいは地域の活動に障害のある子どもが障害のない子どもと一緒に参加できる、そのような状況をつくっていくことも必要と思う。そのような取組等があれば教えてほしい。

◎「地域の中で生きていく」という部分については、放課後活動などを「地域の中で生きていく」という部分に結びつけていくことを検討している。

○学校行事への参加が多いということだが、肢体不自由の子どもなどは教科の授業を一緒に受けられるような場合もあるので、一部の地域では、そのような子どもがいわゆる授業交流という形で教員の付き添いの下、地域の学校の中で一緒に教科の授業を受けていることもある。その場合、学校の教育課程を別の場所で行うということになるので、教育課程上は特別支援学校の教育課程として位置付けざるを得ない。このため、教員が付き添い、指導することが原則とされるので、回数が制限されてしまう。東京都の事例で、参考となることがあれば教えてほしい。

◎東京都でもその点は課題である。直接的な交流で子どもが小・中学校に行っている間も、特別支援学校の他の子どもは授業を受けているので、教員が必ずしも付き添えるわけではない。1回目に教員が付き添うことはあるが、頻度が高くなると教員は対応できない。教員の付き添いは今後検討していかなければならない部分である。

○教員の付き添いは学校が弾力的に対応し、回数を制限していないということで良いのか、確認したい。

◎そのとおりである。少数であるが、保護者が付き添って週に1回定期的に交流している子どももいる。

○現在インフルエンザが流行しているが、交流する際の各学校の危機管理について双方でどのように取り組んでいるのか、教えてほしい。

◎インフルエンザや感染症の対策について、特別支援学校は東京都立なので東京都から連絡が入ることになるが、地域の情報については地域にある教育委員会が最も情報を保有しているので、区市町村の教育委員会に対してもその地域にある特別支援学校に情報を提供していただくようお願いしている。また、特別支援学校も緊急連絡網に含めることをお願いしている。

○バリアフリーなどのいわゆる合理的配慮に関しては、どのように対応しているのか教えてほしい。

◎バリアフリーの点について、施設設備の整備がなかなか進まないため、直接的な交流がうまくいかない場合もある。このため、交流にあたっては、バリアフリー化された校舎のある学校を副籍校としたり、校舎の2・3階に上がらないで済むように工夫するなど、事前の調整を行っている。「副籍制度」の実施に当たってバリアフリー化に対する予算配当までは困難な状況である。

○交流教育に学校保健を関連させていくことも出てくると思う。そのような微妙な部分を広げていかなくてはならない。東京都の現状を教えてほしい。

◎現状では配慮や注意の喚起などを行っている。

(交流及び共同学習について自由討議)

○本市では平成15年度に検討を行い、埼玉県の「支援籍」と東京都の「副籍制度」を参考にして、「副学籍」による交流教育を具体的に進めることとなった。これは、学習指導要領やその解説に示されているようなところを理念としている。小・中学校が、その地域に居住しながら特別支援学校に通学している子どものことを知らないのは良くないということから、居住する地域の小・中学校の意識を変えることが大きな目的であった。現在では、就学相談のシステムとして、特別支援学校に就学する予定の子どもと小学校の校長とが必ず面談することとなっている。就学相談は専門的であるため、全ての校長が対応できるわけではないが、学区に特別支援学校に通学している子どもがいるということを、校長をはじめ教職員が知っていることが基本と考えている。

○交流に関しては、小学部のほうが中学部より高い割合で実施されている状況がある。また、車椅子で校舎の隅々まで行ける学校は珍しく、施設設備面の課題が大きな支障となっている。さらに、障害の種類によっても交流及び共同学習の状況は異なるので、その点も視野に入れる必要がある。日常的に交流する場合においては、教育課程の問題などが大きな課題であると思う。

○インフルエンザなどの発言があったが、特に肢体不自由者を対象とした教育を行う特別支援学校では基礎疾患や命にかかわる重い障害を有する子どもが多く在籍するので、交流にあたっては、常に安心・安全の確保を考えなければならないと思う。

○本市では、送迎は基本的に保護者の責任において行うが、在籍校である特別支援学校の教員も付き添い、指導に当たる。交流及び共同学習は、在籍校である特別支援学校の教育課程として、個別の教育支援計画や個別指導計画に基づいて実施している。このため、交流先は教育委員会が指定し、交流計画書や報告書も教育委員会に必ず提出するようなシステムとなっている。教育委員会では、「副学籍」による交流教育を行っている子どもについて情報を把握できるようにしている。

○小・中学校の管理職や学級担任の姿勢は大きく影響する。小・中学校の管理職や学級担任が、障害や特別支援教育に理解のある者の場合には評価が良い。また、小学校段階では交流が進んでも、中学校段階になると進まないというのが実態である。

○「支援籍」に子どもが出向く際は担任が付き添うので、その学級は手薄となる。その際、県と社会福祉協議会とで連携して取り組んでいる学校支援ボランティア養成講座を修了したボランティアに学校に入っていただくことがある。そうすると保護者も安心する。複数担任なので、残った担任の教員が指導面を行い、ボランティアは部分的に関わる。この点は、非常に評価できる。ただし、ボランティアの養成が進んでいる地域と、十分でない地域とがある。

○知的障害の特別支援学校の場合には行事への参加が多いが、今年度からの事例で、小学部6年生の女子児童が、小学校の通学班と同じ集合場所から仲間と一緒に登校し、小学校の朝の会などの学級活動に参加した後、小学校近くの特別支援学校のスクールバス停留所からバスに乗って特別支援学校に登校するという事例がある。この場合、特別支援学校の教育課程に全く影響せず、教育課程以外の部分で地域の仲間と関われている。そのような取組が進められたらと思っている。

○小学校段階で実施率が高く、中学校段階では低くなるということには、どのような理由があるのか、教えてほしい。

○中学校の教育課程や教科担任制が理由の1つとして大きく影響していると思う。

○バリアフリーについて発言があったが、交流及び共同学習の促進などの特別支援教育の推進を通じて、単なるバリアフリーではなくてユニバーサルフリーという、学校全体の施設改革に転嫁される機運はあるのか、その点についても別の機会に議論いただければと思う。また、インフルエンザについて発言があったが、交流教育などの制度を実施していく中での危機管理体制の構築についても、また別の機会に議論いただければと思う。

○交流及び共同学習は、指導の問題、在籍の問題、教育課程の問題など、様々な問題を抱えている。在籍校の教員が付き添うとなると、頻繁に交流もできない。現在行われているような交流や共同学習は、現行法制度の枠組みの中での過渡期的なものと思える。特別な教育課程を見直したり、学籍の取扱いなどを整理するなど、もう少し制度的に対応していかなければ実質的なものとならないと思う。

○保護者の中には、在籍校の教員が付き添ったら意味が無いとのイメージを持つ者もいる。地元の学校と交流する際は、地元の学校の教員の下で、地元の子どもと交わりたいと思っているので、在籍校の教員が付き添うのであれば、普段と変化が無い。

○障害者の権利条約の批准やインクルージョンの流れを踏まえると、地元の小・中学校に通うことがおそらく権利として位置付けられる方向にいくと思う。ただし、必要に応じて特別支援学校や特別な支援を受けることができるという流れになるとすると、法的な制約があるので、本当に機能的な交流や共同学習の実現、あるいはインクルージョンに応えるためには、法律や制度の改正が必要と思う。

○先ほどの発言は、交流教育及び共同学習について別な角度、別の組織的な形で実施すべきという趣旨であると思うが、交流及び共同学習は従前から進められてきており、現場ではうまく理解されなかったために、検討を重ねてきた経緯がある。その点は踏まえる必要がある。なお、新学習指導要領において、計画的・組織的という表現が使用されているが、この組織的・計画的という流れは、教育課程の編成や突発的事故への対応も含めて、尊重する必要がある。

○交流及び共同学習については、子ども一人一人に対応する教育を推進するというシステムの中で、特別支援学校では対応しづらい要素を、通常教育の教育活動を活用して実施していく、あるいは双方向に実施していくということで行われてきた。その場合には、「副籍制度」や「支援籍」等について保護者の希望を確認したり、またその場合には校長が立ち会ったりと丁寧に進められてきた。今後も、そのような認識を持ちながら取り組んでいくことが、私どもが精いっぱいやる中でのインクルージョンシステムだと思う。

○本日の交流学習の事例からは、受け入れる学校に問題があるのか、それとも送り出す学校に問題があるのか、などの点についてどこまで問題を把握しているのか疑問を感じる。学校の問題だけではなく、保護者の理解や協力も必要であるし、障害のない子どもの理解も必要である。特別支援学校を中心として取り組む時に、地域の学校や居住地の学校と協力して共存できるというところまで進むのだろうかと疑問に感じる。特別支援学校は確かに一所懸命取り組んでいるが、知的障害をはじめとした障害のある子どもが、地域の学校や住民にどこまで理解され、受け入れられているかについては問題のまま残っている。そのような点を踏まえて制度上からも検討いただきたい。

○従来の交流及び共同学習と異なる要素として、個別の教育支援計画や指導計画というツールがある。小・中学校でもその動きは始まっている。これらを使った学習活動を推進していくと、交流及び共同学習の教育課程上の位置付けは変わってくるだろう。まずはその点を積極的に進めていくという状況の下では、新たな仕組みが必要という理由から唐突に新制度にするというのは無理があるのではないかと思う。現実的な対応としては、現行制度の中に着地点を見いだしながら対応していくべきと思う。例えば、毎週1回ある教科で交流している子どもについては、教科は特別支援学校の教育課程上の位置付けであるが、交流先の学校でも対応している。この場合、本人向けに適切に指導計画を策定することが必要であり、その子ども一人一人に応じて異なる対応をとっていくしかない。具体的にそこまで踏み出していくことは、現行制度でも可能となっていると思う。

○教育課程上の位置付けが今後の大きな課題であると発言があったが、この点については、知恵を出して考えていかなければならない。そのポイントは、個々の対応が可能となる中身を検討することである。学校が、新しい個別の指導計画や個別の教育支援計画などを丁寧に突き合わせる仕組みをつくるのが一番のポイントであると思う。

○先ほどの交流及び共同学習について、現場の感覚からすると、小・中学校にシステム化された形で位置付けるというように感じるが、本日発表にもあったモデル事業を始めた際は、小・中学校からの抵抗が強かった。多忙な学校の中に新たな教育を持ち込むという感覚でとらえられていたこともあり、教育委員会は指定を受けても、校長会に対しては非常に気を遣った。ただし、モデル事業を経た後、実際に教育委員会が動くと、制度のない中で特別支援学校が居住地の小・中学校に交流及び共同学習をお願いするよりも浸透は早かったと思う。

○学校はある程度制度化された中にあるので、制度に基づいて動くということ。将来的な地域との交流を考えると、子どもが交流する際に、相手方のPTAと特別支援学校側のPTAとが一緒に懇談会を開催するというような広がりを持たせる仕組みとすること。具体的には、小学校には青少年対策協議会やPTAなどというような地域に広がる活動があるので、交流及び共同学習を行う際はそこまでも視野を広げて、教育課程の中ではできない部分を、そのような活動から広げていくということ。これらが大事である。課題も多いが、「副籍制度」は、将来的に理解啓発において非常に役立つものと思っている。

○居住地校交流が主に議論の中心となっているが、小・中学校を含め、これまで行われてきた学校間交流や地域との交流も、子ども同士が社会性を養ったり、理解推進を図ったりすることに貢献してきた。そのような学校間交流と、いわゆる居住地校交流とのバランスなどを考慮して、トータルとして組織的・計画的に取り組んでいく必要があると思う。

(藤本総括研究員による、特別支援教室構想について)

○資料5の17枚目スライドの「『特別支援学級』と『通級指導教室』」に緑色で「教科書」、「評価基準」、「介助」、「障害種別の特性」と示されているが、このことは、特別支援教室にも該当する課題と考えるが、その点についてはどう考えるか。

◎指摘箇所で示されている事項は、特別支援学級や通級指導の子どもの課題というよりも、交流及び共同学習に行っている状態のときなど、特別支援学級の子どもが通常の学級で学習している中で異なる教科書を使用する場合にどうしているのか、あるいは実際個人内評価と絶対評価の授業が行われているので、その点をどう対応するかなど、そういう観点でまとめたものである。

○通級指導の子どもに関しては通常学級がベースであるので、例えば教科書とか評価基準等については、現状は特段の問題はない。もちろん特別の教育課程による対応はできる。先ほどの発言は、特別支援学級のこととして考えて良いか、確認したい。

◎そのとおりである。

(自由討議)

○資料3-1のイメージ図で示されているように、現行では特別支援学級と通級指導とがあるが、特別支援学級は基本的には週28単位時間であり、通級指導は若干幅があるものの月1単位時間から週8単位時間といった具合に落差がある。さらに、通常学級の中には、LDやADHD、自閉症その他の障害を持った子どもが在籍しており、個別のニーズに応じた指導が必要である。一人一人のニーズに応じた支援を行うという特別支援教育に転換された現在、落差のある制度をそのまま維持するのではなくて、子どものニーズに応じて、指導時間においても連続性があるところで対応していくという制度にすべきである。

○中央教育審議会答申では検討という扱いになったが、その後も交流を増やす、共同学習を進めるという形で現行制度の中で取り組まれている。特別支援学級に在籍しながら頻繁に交流する子どももいれば、通常の学級に在籍しながら特別支援学級にたまに通う子どももおり、当然ながら状態に応じて多くの時間を特別支援学級で過ごす子どももいる。通級指導についても弾力的に運用されている。このように、先ほどの特別支援学校の交流及び共同学習もそうであるが、努力を重ねられ非常に良い方向に向かっているが、制度としては一つの壁に当たっている。これは一から制度をつくるということではなく、現行の制度を発展させるという意味である。交流回数を多くするなどの努力がなされているところではあるが、一人一人の子どものニーズに応じて、連続性を持たせることのできる制度にすべきである。そのために、特別支援教室を設けるというだけではなくて、在籍や教育課程、あるいは特別な場における指導の考え方、指導の担い手など、非常に難しい問題ではあるが検討を行うべきである。

○可能な限り早期に特別支援教室構想が実現することを願っている。平成16年から始まった研究について課題も整理されてきていると思うが、国立特別支援教育総合研究所から見て、現在最も課題になっていること、また制度上検討しなければならないことなどを教えてほしい。

○国立特別支援教育総合研究所としては現行法制度の中でどこまでできるかという研究を行ってきた。その点から言うと、指導要録の問題がある。指導要録に記載する評価について、障害のある子どもは個人の到達度などを文章により表記していくが、通常の学級では絶対評価によるなどと評価のシステムが異なっている。そのため、教員は扱いに困ってしまう。いわゆる情緒的・芸術的な内容については絶対評価できるが、国語や算数などの教科の学習では文章表記がなされている。その点を整理する必要がある。

○特別支援学校の交流及び共同学習でも触れられてきたが、教育課程上の位置付けや、教科指導する際の評価方法については課題であった。学籍上の問題はひとまず置いておいて、教育課程上の位置付けについての弾力化をどのように図っていくかということについては、制度上学籍のある特別支援学校において、評価基準や授業の在り方について具体的に整理をしながら、通常の学校での授業をうまく反映させる仕組みをつくらなければいけない。これは大きな課題になると思う。特別支援教室においては、従来の特別支援学級での在り様と、通常の学級での授業形態や評価方法等とを整理して制度化しなければならない。通級による指導の延長と表現すると語弊があるが、そのような指導形態をさらに押し進め、また通級指導の考え方を学級に広げていくような仕組みをつくらないと、発展しないと思う。つまり、授業の形態、評価の仕組み、指導方法、指導対応者など全てにわたって、特別支援教室の3タイプに共通したフォーマットをつくっていく必要がある。先ほど弾力運用と発言があり、幾つかのタイプが示されたが、当然のことながら子どもの状況は一人一人異なるので、様々なタイプが出てくることはやむを得ないし、それが本旨であると思う。このあたりは通級による指導や特別支援学級をすり合わせながら、弾力化の仕組みをつくらないと、一層の推進は厳しい。そのようなすりあわせがないと、特別支援教室構想はできない。

○通級による指導の考え方を発展させていく方向性については賛同するが、現行制度上、通級による指導の対象に知的障害はない。このため、知的障害のある子どもの教育課程をどう考えていくのかは検討課題である。通常の学級における教育課程と知的障害の教育課程について統合というか、どのように整合性を図っていくか、課題になっていくと思う。

○仮に統合という言葉を使って発言をいただいたところだが、教育課程について一貫性のある指導や支援などをどうするか、ということになると思う。

○小学校の交流及び共同学習の関係から、ある小学校で知的障害を対象とした学級の子どもを通常の学級にある程度の時間参加させるという学習形態について研究を進めたことがあるが、知的障害の場合は確かに課題がある。国語や算数は学年で合わせることが難しく、美術や音楽での対応となる。

○特別支援教室構想の中でもタイプ1から3まであるが、特別支援学級に相当する考え方も同時に存在する。特別支援学級を否定するのではなく、特別支援教室構想においても多くの時間をその中で過ごすという仕組みもあって良いと思う。

○知的障害のある子どもも通常の学級で学べるよう、教科によって対応を考えるなど弾力的な仕組みをつくらなければならない。このため、全ての教科にわたって現行の通級による指導の形態をとるこということではないと思う。

○平成5年に通級指導が導入された際に、知的障害のある子どもは断片的に特別な指導を行うよりも総合的に指導した方が効果的であるということから、通級指導の対象には含まれなかったと理解している。それを踏まえると、特別支援教室構想においても特別支援学級のようなある程度総合的に指導ができる学級がなくていいのか。また、現行の特別支援学級では担任の教員がおり、全体的な指導の中で教科によっては交流という形で総合的に指導していると思うが、このような構想を考える際は、誰がどのように関わっていくかも踏まえて必要性を考えるべきである。

○今後の流れ次第では、重度の障害のある子どもも通常の学校に就学する可能性もある。その状況を想定した場合、特別支援教室構想においては、日常の介助を含めた学校生活全般を通しての対応を考えていかなければ専門性、質の高い教育について非常に懸念される。また、資料3-2P2の検討課題に対しては、特別支援学級の教育上の効果について整理することや、重度重複障害のある子どもへの対応の在り方を考えることが必要である。さらに、資料3-2P2の特別支援教室1、2、3のスタイルが各学校で対応できるように、人の配置も検討する必要がある。担当する教員は何でも対応できるとは思わないので、その点も整理する必要がある。

○40人や35人で通常学級が編制される中で特別支援教室を導入することは、現実的には非常に厳しいと思う。40人学級の中で可能なのかを検討する必要がある。

○資料3-1の「対象:従来の特別支援学級、通級+α」について、現行制度上において特別支援教育の対象となる子どもが約2%おり、さらに平成14年の調査で、LD・ADHD・高機能自閉症等の可能性のある子どもが推定で約6%あり、特別支援教育の指導を受けていない方がおそらく約5%程度となると思うが、それらの子どもがαとして含まれるということで良いのか、確認したい。

△そのとおりである。

○特別支援学級の対象とならないような、いわゆる軽度な知的障害のある子どもも通常の学級に在籍しており、その中には国語や算数において2年以上遅れのあるような子どももいると思うが、そのような子どももおそらく資料3-1のαに含まれてくるものと感じた。

○資料3-1の特別支援教室構想1は、法的な位置付けや子どもの立場からは、現在の特別支援学級に在籍しながら交流も行っている子どもと変わるところはないと思う。2の通常の学級で授業を受けつつ障害の状態に応じて特別支援教室で指導を受けるというのは、現在の通級による指導を弾力化したものとほとんど変わらないと思う。つまり、制度上通級指導と特別支援学級が分かれていることに対する無駄な部分や弾力的に対応できない部分が、特別支援教室になることで解決される。

○国立特別支援教育総合研究所はナショナルセンターとしてあるので、現行制度の中で検討・研究するだけではなく、現行制度を変えるようなことも考えながら、文部科学省に提案できるような研究を行っていただきたいと思う。

○当市では、平成19年度から特別支援教育実践推進校事業を立ち上げ、その事業の中で、小・中学校におけるいわゆる「特別支援教室」の全校設置に取り組んでいる。このため、本市の小・中学校の全491校に「特別支援教室」がある。そこでは、物理的な場の設定や、指導者の確保、さらには指導内容や評価の問題などと様々な課題が出ている。
また、学校として子どもにどのようなシステムを提供できるのかという部分については、おそらく子どもの状況によって異なってくる。去年良かったら今年も良いかというと、それも非常に難しい問題であり、毎年の検討が必要である。そこまで対応して初めて成果が出るものと思っている。
なお、本市の「特別支援教室」は現行制度の中で取り組んでいる。そういう意味では、現行制度の中でも可能であるということを証明しているのかもしれないが、制度上の発展があればさらに充実するのかもしれない。ただし、特別支援学級と「特別支援教室」が併存しているという状況であるという点で、資料3-1のイメージ図とは、大きく異なる。本市では、通常の学級・特別支援学級・「特別支援教室」・通級による指導と4つの場が用意されていて、子ども一人一人に合った場を提供している。このような点も含めて検討していただきたい。

○現行制度をベースにして考えるのか、その場合においては現行制度の弾力的適用として考えるのか、もしくは新しい制度を構想するということで考えるのか、この問題については、改めて議論いただきたい。

○特別支援教室構想が各学校に設置されると、一人一人学び方が違うということの理解が、校内の児童生徒は当然のことながら、地域や保護者に対しても広まることが期待される。さらに、教員間の交流が深まることで、共通認識、共通理解及び共通指導などといった今後求められるようなスタンダードづくりに貢献できると思う。通級による指導を受けている子どもや、そうではないが一部特別な支援を必要とする子どもにもメリットがある教育の場になるものと思う。

○特別支援教室構想を実施に移すには、特別支援教室を運営・担当する教員の専門性向上や研修の内容改善など課題は大きい。特別支援教育コーディネーター研修なども2年間積み重ねられているが、一般的な指導法において現場の校内委員会が円滑に機能するところまではなかなか進んでいない。研修の内容を見直し、具体的かつ実践的なものとしなければならない。また、特別支援学級担当の教員の経験年数について3年から5年の者が多いが、その教員が一番困難となるところは、全体指導を進めながら個に応じた指導を行うことである。交流の場面における個別指導計画に基づいた目標設定や具体的な支援などの細かい専門性についても進めいく必要があるし、通級による指導でも4日間は通常の学級で授業を受けるわけだから、わかりやすくてユニバーサルな視点を持った授業を進めないといけない。一人一人の違いや、誰にも苦手なことがあることを認めるなど、心のバリアフリーについても進めていいただきたい。

△教員の配置は非常に重要な課題であり、特別支援教室について議論する際にも一番のポイントになると考えている。制度的な改正を議論する場はあると思うので、その際は定数や、通常指導を含めた配置、また特別支援教育に関する専門性について考える必要がある。おそらく一番大きな課題は、知的障害の扱いである。要するに、現状のような区分された別の教育課程、あるいは教室を柔軟な仕組みにすると同時に教育課程についても、幾つかの教科は一緒に行い、幾つかの教科は違った形で行うというような柔軟化した教育課程の設定など、入れ物だけ変えても意味はないと考えている。その点は、非常に大きな課題かつ時間を要する検討課題と認識している。

○特別支援学校、特に肢体不自由は重度化が進み、病弱に近い体力的な問題もあって交流や居住地校交流は進んでいないのが現状である。地方自治体の受け入れ先で保健など対応がわからないため、親も常に付き添わないと交流できないとなると、直接交流は進まない。

○国立特別支援教室総合研究所では、最先端の研究や新しい提案も行っているが、障害児の教育にかかわる問題はすべてが古くて新しい問題であり、過去から積み上げてきたものを次のステップを踏むための大事なものと考え研究している。そういう意味で、研究所としては、即座に新しい方向へ目を向けるというわけではなく、古い部分を大事にして、なぜこの部分が求められ、どのように積み上げられてきて、どう次に移行しているのかというあたりを見ながら調査研究を大事にしたい。交流及び共同学習といった部分や特別支援教室というのは共通の問題が背景にはあるが、少なくとも対応しなければならない問題は、現在の学級の存在について何を積み上げてきた結果なのかということを位置付けることであり、十分な検討をせず、特別支援教室へ移行したり交流及び共同学習を推進したりして、多くの子どもに迷惑がかかることは避けなければならない。研究所で一番大事にしなければいけないのは、子どもに迷惑をかけないために、これまでの積み上げについて適切に報告することだと思っている。

(4)事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)