特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第17回) 議事要旨

1.日時

平成21年9月28日月曜日13時30分~16時

2.場所

文部科学省3階2特別会議室

3.議題

  1. 地域における特別支援教育の推進体制について○特別支援学校のセンター的機能について○NPO等との連携について
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事要旨

(1)髙倉座長より挨拶が行われた。

(2)事務局より配布資料の確認が行われた後、説明が行われた。

(3)事務局より資料1及び資料2に基づき説明が行われた後、黒澤委員より資料3に基づき発表が行われた。また、その後、事務局より資料4に基づき説明が行われた後、山岡委員より資料5に基づき発表が行われ、自由討議となった。討議等の概要は以下のとおり。

〔概要〕○:委員◎:ヒアリング者△:事務局

(事務局による、特別支援学校のセンター的機能について)

○資料1P8図3の「情緒障害」の範囲について、教えてほしい。

△本年2月に従来の「情緒障害特別支援学級」を「自閉症・情緒障害特別支援学級」として整理したが、資料1の状況調査を行った時点では、自閉症や情緒障害について整理されていなかった。このため、図3の情緒障害の中には、情緒障害特別支援学級に在籍する自閉症の子どもも含まれているものと思う。

(黒澤委員による、特別支援学校のセンター的機能について)

○市町村の専門家チームや巡回相談員と、特別支援学校で地域支援を行う特別支援教育コーディネーターとの役割分担について、基準等はあるのか教えてほしい。 

◎特別支援学校の通学区域内の市町村によって、調整が行われている。また、同一区域内に異なる障害を対象とした特別支援学校がある場合は、相談の対象となる子どもの主たる障害により分担を行っている。なお、コーディネーター本人のキャリア等を考慮しつつ、調整している地域もある。

○資料3スライド2枚目で、設置者区分が、国立、公立(県・市)、私立とあるが、設置者の異なる特別支援学校間の連絡・協働等の体制について教えてほしい。

◎当市は、国立・県立・市立の特別支援学校があるが、市内の全小・中学校が支援対象として含まれるよう、市が主体となり特別支援学校のセンター的機能を活用した小・中学校等支援の事業を立ち上げて、国立、県立、市立の特別支援学校を活用しながら、小・中学校等の支援に取り組んでいる。

(特別支援学校のセンター的機能について自由討議)

○資料3スライド24枚目の課題2の3つ目のパラグラフ「高等学校への特別支援学校のセンター的機能や支援協力についての周知」に関して、特別支援学校の教員が高等学校での具体的な動きを理解しないと、相互連携はうまくいかない。本高等学校では、特別支援学校の教員を招いて職員研修や授業公開に参加いただき、ケーススタディーを行ったことがあるが、このような取組により連携を進めることが、センター的機能の活用についても役立つと思う。

○資料3に関して、県の特別支援学校や特別支援学級の教員の特別支援学校教諭免許状保有者率について教えてほしい。

○平成20年5月1日時点で、公立特別支援学校の当該種の免許状保有者の割合が64.5%、特別支援学級における特別支援学校教諭免許状保有者の割合が小学校で43.9%、中学校で44.7%となっている。

○特別支援学級担当教員の平均担当年数について、教えてほしい。

○長く担当する者もいるが、多くの者は短い期間で変わる状況であり、平均すると担当年数は短い。

○第14回会議で報告された特別支援学級設置校アンケート調査結果報告(速報版)の特別支援学級担当経験年数によると、3年未満の教員が非常に多い。経験年数については、3年目をピークとして、4年目、5年目と長くなるにつれ減少していく状況が報告された。

○特別支援学級の担当年数は重要なポイントである。この点は、教員の異動要綱との関係が強いと思う。人事異動には、OJTなどの研修の目的もあり、全国的には1校3年を経ると異動する傾向がある。しかし、短期間での異動は、特別支援教育を推進する上では大きな課題となる。その点から、担当年数については、異校種間の異動や、同一校内における教員の在職年数の延長など、人事上の問題を考慮しながら対応する必要性がある。各都道府県の人事に対する考えが強く影響すると思うが、検討の必要があると思う。

○人事異動に関して、年数を定めているものの、校長が教育委員会と相談して数年間延長できるというように柔軟性を持たせている県もある。一方で、厳密に規定されている県もある。経験を積み、センター的機能や校内の教育に能力を発揮できる教員が、規則をリジットに適用されるのはつらいところである。

○人材確保や専門性が不十分ということについて、研修が多く実施されるようになり、特別支援学校の免許状取得率も上がっている中で、このような課題があるということは、免許状の内容に問題があるのではないかと思う。多様なニーズに対応する授業力を身につけるなど、内容を伴った免許状にすることが必要である。30人、40人の子どもを見ながら、衝動性や多動性のある子どもにソーシャルスキルを身につけさせていく。学級、学校全体で取り組んでいく。そのあたりのアドバイスができるような内容とする免許状とすべきである。また、通常の免許状とは別枠の、より専門的な内容が勉強できる免許状も必要と考えている。

○資料1P9図6「相談の対象」について、通常の学級担任、特別支援教育コーディネーターが多いというのは当然と思うが、特別支援学級担任が通常の学級担任の次に多いという点については問題である。特別支援学級担任は、校内の特別支援の相談役や推進役などの専門的な立場の者であるのに、地域のコーディネーターに相談をしているということは、特別支援学級の担任の専門性に問題があるということである。免許状も含めて、至急の対策が必要と思う。

○特別支援教育の担任について、特別支援教育を志す教員の絶対数が少ないとの問題がある。採用面接の際に、特別支援学級や特別支援学校へ配置されることもある旨を説明し、異動要綱においても特別支援教育関係への配置の可能性を明記している地域もある。ただし、配置する際には、教員の資質も求められるので、難しい課題となっている。

○資料1P10の平成18年度と平成19年度との比較で、最も大きな差が生じているのは「就学や転学等についての相談・助言」、続いて「他機関への支援の橋渡し」となっている。これは、ある種の誤解もあるが、特別支援教育に制度が転換されたことで、就学指導のプロセスを経ずに障害のある子どもが通常の学級や学校に入り、そのために学校では困難に直面し、保護者からの理解を得ることや適切な指導体制を整えること、また、体制そのものの築き方が大きな課題となっていることを示しているものと思う。ただし、特別支援学校の中には、橋渡しについて助言可能な学校と、非常に専門的なために橋渡しについての助言が難しい学校とがあるようだ。そのような場合に、特別支援学校のネットワークの中で相談先について具体的に踏み込んだ情報を求めることができるよう、センター的機能を設計していく必要がある。

○専門性については、教員養成や採用、人事異動が強く影響する。特に、特別支援学校枠での教員採用を行っていない地域もあり、人事異動・採用の問題は大きな課題となるものと思う。

○センター的機能の発揮に関して、相談件数は増加しているが、特別支援学校での特別支援教育コーディネーターの配置は若干名である。このため、校長は、専門のコーディネーターの配置が必要と考えている。

○特別支援学校枠で教員を採用する地域は少ない。そのことは教員の免許状の取得率の低さにも関連してくる。特別支援学校の設置数が少ない地域では別枠での採用が難しいため、首都圏での一体化した採用制度を導入すべきとの意見も聞く。人事に関しては都道府県単位となっているが、このような広域単位での採用も検討しなければならないと思う。

○学校には特別支援教育の専門家が必要であるということを、特別支援教育に携わってきた者は意識しているが、そうではない者はあまり意識していない。採用を担当する職員は、特別支援教育に携わってきた者が少ないため、特別支援教育の専門家に対する必要性の認識が薄くなってしまう。この点は対応を考えなければならない。

(事務局による、NPO等との連携について)

○資料4で6団体等に委託とあるが、委託先決定に当たっての基本的な考え方を教えてほしい。

△委託先については、審査評価委員会において、外部の専門委員に本事業の趣旨に合致する団体等を審査していただいた。特に、行政分野からは十分に取り組めないことについて取り組む団体等を選んでいる。

(山岡委員による、NPO等との連携について)

○資料5スライド12枚目にNPO法人エッジの課題として挙げられている「区立の小中学校に通っている児童生徒にしか対応できない」について、現在では私立幼稚園の幼児に対しても様々な支援の取組が始まりつつある。今後の取組の可能性は開けており、そのような取組は住民に還元されるものなので、公の機関もこのような組織の取組を支援することが必要である。

○NPO法人エッジの取組については、いわゆる介助だけではなくて学習も支援するという点で、試行錯誤的に実施してきた部分がある。特に、実績が無いことにより、学校教員と学習支援員とで認識に相違があったことは大きな問題であった。しかし現在では多くの問題を解決して、学習支援員の自発的な協力により、校内委員会にも学習支援員が参加するようになりつつある。今後の大きな問題は、教育委員会との関係である。教育委員会では対象となる子どもを知的障害のない子どもに限定している。しかし、障害の有無について判断できない子どもや、障害の状態が軽度である子どもについても、短期間学習支援員が付くことで落ちつく場合もあるので、NPO法人エッジの取り組む個別支援室ではそういうところにも柔軟に対応したいと考えている。この点から教育委員会との関係で問題が生じている。

(NPO等との連携について自由討議)

○聴覚障害を対象とする特別支援学校では、放課後の活動などで、聴覚障害の子どもに対する教育に関する研究会が始められている。その研究会がNPO活動となり学校の教員の実習や、研究の場所になっていると聞いたことがある。

○文京区には、「NPO法人えこお」という組織がある。この組織は、教育委員会と連携を図りながら、特別な支援を必要とする子どもに対してサポートを行うため、大学生をボランティアとして各学校へ派遣している。教育委員会が補助金を拠出する仕組みとなっている。NPO法人ではあるが、大学にボランティアの事務局があり、そこのリーダーが中心となり整備を進めている。配置先の扱いは、NPO法人の役員が主に整理する。教育委員会と連携をした研修システムや、宿泊活動なども行っている。このような活動において最も重要なことは、教育委員会とNPO法人とが連携して仕組みをつくることである。これは非常に重要であり、今後、特別支援教育支援員を整理する際の大きな課題になる。

○様々な形で大学生のボランティアが学校に入る仕組みができつつあるが、支給される金額は、交通費程度の金額に留まる場合もある。このような部分について、全体の中で整理するような仕組みをつくる必要がある。特別支援教育支援員の活用は、各々の区市町村の教育委員会が整理をしているが、今後は、全体をうまく糾合する形の仕組みをつくり、その中で、NPO法人との役割分担を考えていくことが一つの課題である。

○資料1P1の「調査結果の概要」における「都道府県教育委員会の取組」、「特別支援学校と教育委員会の連携」によると、市町村教育委員会との連携も進んでいる。今後は、教育委員会の専門家チーム・巡回相談員と特別支援学校との関係や、巡回相談員や専門家チームの中でのNPO法人や特別支援学校の役割などを、適切に位置付けていくことが必要である。

○本日事例として挙げられた大阪障害者雇用支援ネットワークでは、正式な協議会は公的にあるが、協議会が無いときには糾合して事例検討会を開催するという仕組みができている点で、公的な役割と私的な役割の分担ができており、かつ柔軟な対応を行える組織となっている。このような組織の役割分担や柔軟性は、今後の検討課題として考えておかなければならない。

○今回の資料には無いが、「アスペ・エルデの会」というNPO法人がある。当該組織は保護者のみをメンバーとして運営しており、専門家はディレクター的な存在として参加する。アスペ・エルデの会は、地域企業の助成を得ながら様々な啓発活動を行う一方で、将来、専門家としてサポートする側の人材の養成にも取り組んでいる。学生のボランティアの養成から始まり、学生ボランティアの中で指導的な立場にいる者をサブディレクターに格上げして、さらに療育プログラムなどを作成できる能力がある者をディレクターに養成していく。ディレクターレベルは、大学院の学生や助教クラスの者が担当している。その一方では、親の会からの協力を得ながら、様々なデータを取得して研究活動も行っている。アスペ・エルデの会は、様々な成果を上げているので、一つのモデルとして紹介したい。

○企業の関与に関して、啓発のための場所を提供してくれるなど協力的な企業は多い。企業の反応を見ると、ハンディキャップに対する企業間の温度差が非常によくわかる。

○アスペ・エルデの会ではサポーターは2種類あるが、そのうち1種は学生ボランティアである。サブディレクターレベルの者が、学校に赴き、直接観察を行った上、子どもに対する支援や学校の教員との情報交換を行う。もう1種は、保護者の中に教育委員会と関係のある者がおり、また、アスペ・エルデの会には特別の研修を受けた学校の教員がいるが、これらの者が支援員や指導する者として学校に入ることがある。保護者が支援員として学校に入った場合などは、通常の教員が言わないようなことを言うので、効果が大きい。そのような点で、NPO法人の活動は活用できるのではないか。

○特別支援学校のセンター的機能の中には、特別支援学校内での役割もある。個別の教育支援計画を作成する段階での外部の専門家との連携においての校内支援も含まれていると認識している。

○小・中学校等の支援の将来的な方向としては、小・中学校自体がレベルアップすることも必要である。特別支援学校と小・中学校とが相乗効果により双方の質を高め、その上で、特に困難な事例等については特別支援学校が高い専門性から支援するという仕組みに移行していくものと考える。そう考えた時、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターは特定の役割に特化するのではなく、様々な支援ができることが必要である。その点から、コーディネーター本人の専門性を低下させないためにも、ある程度授業を担当させることも必要であるし、また、コーディネーターが単独で活動するのではなく、組織としてコーディネーター業務を行えるよう考えることが必要である。

○学校教育法上、特別支援学校にセンター的機能が位置付けられたので、定数配置上の整理が今後必要になると感じている。

○特別支援教育コーディネーターの位置付けに関して、学校では教員の定数が決まっている。学級担任の教員は学校内で業務があるが、そのような教員が外部に対して業務を行う場合、その業務は定数上どう整理されているのか。過去に通級指導が導入された際に、週当たりの授業時数の半分程度は担当しなければならないとの議論もあったと思う。この点について、小・中学校の支援に出向くときの業務を、配置上の位置付けとしてどう整理して考えていくのかが疑問である。

○NPOに関して、保護者の立場にある者が中心となったNPOが行政的な役割を担うことは、保護者の新しい役割として非常に評価できることと思う。ただし、そのような団体は教育委員会と話ができるようになってきている一方で、学校が様々な問題を抱えているため、学校とは本音で話しにくいところがある。それを改善していくことは必要である。

○専門性に関して、障害者団体の立場から学校現場を見ると、専門性のある教員は少ないと感じる。一般に教員は通級指導を積極的には担当したがらないので、新規採用者が担当することになってしまう。そのため、子どもが十分なケアを受けられなくなってしまい、登校拒否や引きこもりに入ってしまうケースがよくある。専門家の養成や人材の確保については、現場の末端まで対応できることが必要である。資料に挙げられる事例は大都市圏の好事例が多いが、そのような事例は全国の中では少ない。

○資料3の地域の啓蒙について、小学校の統廃合により空き施設となった校舎を活用して、それまで地域になかった特別支援学校が設置された事例がある。特別支援学校が設置されるまでは、小学校の運動会や文化祭と、地域の町民運動会や町民文化祭とが合同で開催されるなど、少人数の小学校の機能が地域の中で役立っていたが、特別支援学校となってからは、地域から苦情が寄せられ、合同の運動会についても競技が選別されるようになるなど、地域の取組と特別支援学校の取組の間でギャップが生じてしまった事例がある。特別支援学級や特別支援学校の地域との連携の推進にあたり、そのような事例は、改善を検討していく上でのきっかけになるのではないか。そういう事例が他にあれば、教えてほしい。

○様々な事例が挙げられたが、全体として良い事例が多い。うまくいっていない事例についても検証を行い、取り組むべき課題を明確にしていく必要がある。

○特別支援学校のセンター的機能の取組に関する状況調査は、当初は特別支援教育への移行に対して、どの程度センター的機能について理解が図られているのかという調査であった。しかし、センター的機能に対するニーズが高くなってきたため、特別支援学校がセンター的機能を担っているとの理解のみでは十分ではなくなり、センター的機能に対する質が議論されるようになってきた。これは、特別支援学校のセンター的機能が次の段階に入っていることを意味しているものと思う。次段階においては、質に対しての皆の認知度が一致していなければならないなど、高度な条件での質の設定が求められていく。いずれにせよ、センター的機能については、次の段階に入っているという視点で、見てもらいたい。

(4)事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

 

 

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初等中等教育局特別支援教育課

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