特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第12回) 議事要旨

1.日時

平成21年2月25日(水曜日)16時~18時半

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 高等学校における特別支援教育の現状と課題
  2. 滋野委員による説明
  3. 自由討議
  4. その他

4.議事要旨

(1)髙倉座長より挨拶が行われた。

(2)事務局より配付資料の確認が行われた。

(3)事務局より、1.高等学校における特別支援教育の現状と課題について、2.高等学校における特別支援教育に関する基礎資料について、説明のあった後、自由討議となった。また、滋野委員より説明のあった後、自由討議となった。その概要は以下のとおり。

〔概要〕○:委員 △:事務局

○ 説明のあった高等学校における発達障害支援モデル校の報告について、この報告書は既にきちっとまとまって出ているのか。また、このモデル事業を立ち上げる前に宮城教育大のセンターで全国の実態調査をされたと聞いているが、そのまとめは既に発表されているのか。

△ 報告書について全体としてまとまったものはまだないが、宮城教育大のセンターの調査は発表されており、ホームページ上に載っている。 

○ 今回、特別支援教育の高等学校の課題ということで、推進体制の整備と、入学試験や、卒後対応ということで進路指導の対応などが課題とされているが、指導内容・方法についても課題があるのではないか。例えば今の説明では、ソーシャルスキルトレーニングやストレスマネジメントの実施など、学校側が意図的に設けないとなかなかできにくい課題について説明があったが、そうしたものをカリキュラム上どう編成していくか、モデル校の中でどのような整理をしたのかということについて、具体的な先生方の研修のところでとどまっているのか、かなり突っ込んだ検討がされているのかをお尋ねしたい。

△ 教育内容について、かなり突っ込んだことができているのは研究開発学校。モデル校ではそれぞれに工夫しているようで、ロングホームルームや総合的な学習の時間、保健体育等に何とか位置づけて意図的に指導をしているという例が幾つか見受けられた。それから、少人数指導等についても、実際には研究開発学校等では突っ込んで行っているが、モデル校では、やはり全体の中での指導ということが中心になっている。

○ 新しい学習指導要領案の中では、例えばソーシャルスキルトレーニングやストレスマネジメント教育というのは、とり得るのかどうか。それから、高校の研究開発学校で、通級指導や特別支援学級など、特別の学習課程をとったようなものがあるのかどうか。

△ 現在示されている高校学習指導要領改訂案で、直接的にソーシャルスキルをどこで取り扱うといったことについては記述されてないが、現行でもそのような取り組みを行っている例があるので、ソーシャルスキルを教育課程の問題として取り上げるのか、弾力的な対応として取り上げるのかどうかについてもこの会議での検討が必要と考えている。通級についても、特別の教育課程としてやるのか、あるいは教育課程の弾力的な工夫として取り組んでいけるのかということも含めて、ぜひご議論いただきたいと思う。

○ ここでこれから議論になる枠組みの範囲は、全日制や定時制などいわゆる普通の高等学校での特別支援教育についてということでよいか。愛知県の場合、高等部だけの高等養護学校というのが幾つかできていて、そこが職業訓練校のようみたいになっており徹底的な職業訓練をやっている。高等部だけの養護学校は、入学が一番難しい高等学校になっていて、倍率が6倍ぐらい。一般の通常学校で通常教育を受けてきた子たちも、就職率が9割と高いのでそこに入りたがっている。そういったこともあり、高等養護を職業訓練校としてやっていくしまうのは、高校における特別支援教育のやり方の一つのモデルかなとは思っている。そのため、ここで取り上げる枠組がどこまでの範囲なのかというのを伺いたい。

△ 基本的には議論があまり拡散しないようにということで、まず場は高等学校ということで、その中でも発達障害への対応ということを中心に検討したいと考えているが、今お話いただいたように例えば特別支援学校の高等部では全国でも就労支援を目指した色々な取組がされている。そういった話や、あるいは高等学校の発達障害以外の障害の子どもについても、おそらく課題になると思う。中心としては、高等学校の発達障害とするが、その検討の過程で、そういったことについても当然ご意見を出していただくということでお願いしたい。

○ 平成17年12月の中央教育審議会答申では、具体的課題としては、「前期中等教育と後期中等教育との接続の在り方」が挙げられているが、それは今回の高校WGの検討課題である「高等学校における特別支援教育の推進体制の整備」に含まれるのか。高等学校の推進体制の整備について、低いというデータだけでなく具体的にどのようなことが課題になっているのか、人の動きの問題を含めたてところ大変参考になった。その中で、教育相談の充実や、教育相談と特別支援教育の連携の必要性が書かれているが、カウンセラーは外部の専門家なのか。それとも教職員の中にそういう方が少しでもいらっしゃるのか、その辺が大変興味深く教えてほしい。

△ 1点目について、確かに中教審の平成17年の答申の中では、前期中等教育、後期中等教育の接続とか、あるいは後期中等教育における諸課題ということで書かれているが、今回は、高等学校における特別支援教育ということで議論が拡散しないように少し狭めに、そこを中心にやりながら、その関連で中学校との接続の問題や、特別支援学校の中学部・高等部との関係といったことについても議論していただければと思う。

△ 資料中のスクールカウンセラーにいては、外部人材という例もあるし、教育相談部の先生がカウンセラーとしての研修を深めて、青年心理に詳しいカウンセラーとして対応しているという例もあったので、必ずしも外からの人を増やすということではなく、高等学校の中の教育相談機能の充実ということでとらえていただければと思う。

○ 資料2-4について、高校段階での発達障害等のある生徒の割合は、ならすと3%程度であり全日制の公立だと少ないようだが、私立では2、3%いるという数字が出ていると思う。全国LD親の会では、会員の構成調査を毎年やっておりそこでは高校への進学率は95%や96%で全国平均とそう変わらず、診断名としてはLD、ADHDとか高機能広汎性発達障害とか、軽度知的障害の方も入っていたりするが、95%以上は進学をしている。そのうち高等特別支援学校に行っている子どもは以前は10%程度で、今は上がって十数パーセント。まだ20%まで届かないような状態となっている。そうすると、要するに8割ぐらいの子どもが、総合学科等色々あるが通常の学校の中の一般の教育課程に行っていることになる。その8割のところの問題が結構クローズアップされていて、大きな中心の課題かと理解した。 

○ 発表にあった京都府の体制整備状況について、本県でも同じような数値で、校内委員会やコーディネーターはほとんど全校で、また、巡回相談も7割近く行われている。ただ、やはり指導計画と教育支援計画がこれくらいの程度の数値におさまっているということで、意識の高まりが大事であると感じている。大学生、大学院生たちの協力について、これは、先生個人の研究室の学生たちがボランティアになっているのか、それとも、学部等と協定みたいなものを結んで常時そういった体制をとっているのか。

○ 個別の教育支援計画のパーセンテージは該当する生徒がいない学校もあり得ると思うので、すべての学校で必ず出てくるというものではないのではないかなと思っている。学生ボランティアは、京都府教育委員会の高校教育課が大学との包括協定を既に結んでおり、府の教育委員会でボランティア登録ができ、交通費も支給されるようになっている。ただ、依頼すれば登録者が必ず学校に来てくれるのかというと難しく、実際には学校の進路指導部の教員が個別に大学を回り、ボランティアをしてくれる学生探しをかなりまめにやった。あるいは、大学の教職課程の関係の先生との話の中で、高等学校の教員を目指す学生を行かせたいという大学の先生がおられ、十数名学生が来てくれている。これはとてもありがたい存在。

○ 協定を結んでいるというのは、京都のコンソーシアムとは関係があるのか。

○ それとは特に関係がない。

○ 夜間や昼間定時制などの学校の中には、学力とか生徒指導上の問題が、発達障害なのか、知的障害のボーダーなのか、家庭環境の問題なのか、混沌としており十分な把握ができにくい状況になっている学校もある。その辺については、まだまだこれからの課題が非常に大きい。

○ 巡回相談の利用について、発表では桃山養護が府の指定でセンター的機能を活用して相談にのっているとのことだが、城陽や西舞鶴も同じように、特別支援学校のセンター的機能を利用されているということはあるのか。

○ 桃山養護が、本校を含む京都市内のセンターになっているが、高等学校の巡回相談の経験というのは以前はあまりなく、19年度から特別支援教育がスタートしたことで高校の中身も知っていただき、だんだんとお互いにスキルアップしているのではないかなと思っている。

○ 特別支援学校のセンター的機能の活用だけではなく、京都府の巡回指導の専門家チームのようなことも活用しているのか。

○ 活用している。

○ 今回説明いただいた高等学校を私どもの教育委員会の指導主事も先週視察し、大変勉強になった。最後の私見の部分で、全体としては気づきの段階であるとか、学校間格差ということがあったが、実はまだ小・中学校段階でも、委員が指摘されたような段階というのはかなりある。特別な支援が必要な子どもについて、本人・保護者への説明と、家庭状況や生育歴に関する情報提供などが当然のことながら必要になってくると思う。高校生ともなると本人のプライドであるとか、難しいところがあるのではと思うが、その辺はどのようになされているのかということを教えていただきたい。 

○ 多分、どの高等学校でも、中間試験や授業の状況、欠席数の増加などがあり、1学期段階で、このくらいになると進級が難しいという話が、ある程度すぐ把握ができるので、その時点で生徒も含めて保護者面談をする形になる。その中で、巡回相談になったケースは、いろいろやりとりをする中で、専門家に検査してもらった結果などを巡回相談員がうまく保護者と生徒に伝えてくれる。私が見た限りでは、巡回相談の方がとてもうまく生徒と保護者に伝えてくれていると思う。

○ 中学校と高等学校との連携が一番気になる。不登校の生徒を10名受け入れており、その子たちが一番メインになって支援が始まったのだと思うが、例えば中学校のほうから、LDやADHDという障害があるということで、先生の学校を受験されるというようなことはあったのか。

○ 発達障害に関してはないが、本校で、肢体不自由の生徒が入学・卒業をし、現在、大学に在学しているというケースはある。京都の公立高校では、合格発表後に可能な職員が手分けをして中学校を回り、配慮の必要なケースを全部ヒアリングをしている。

○ 事例の高校では単位認定にも相当工夫していたと思うが、発達障害の能力のアンバランスな部分と、押しなべた単位認定をしていくことについては、高校の特別支援教育を議論していくときに、課題になると思う。

○ 本校ではレポートが出せない事例が幾つかあった。おそらく随分前では、先生が怒るだけだったと思うが、研修のおかげで、もしかしたらと考えるようになり、生徒を個別に呼んで、具体的に何らかの形で補完するケースがあった。それから、体育の場合授業に出ないと単位が認定されないケースがあるが、集団指導になじみにくい子どもが授業に出たがらないケースはあると思う。ただ、本校は長期欠席者特別入学者選抜を導入した際に養護教諭を2人配置してもらっており、生徒がしんどくなったとき、保健室に行けば、養護教諭のどちらかはいるのでとてもありがたい。単位認定をめぐる部分に関しては、色々なケースがあり試験の点がとれない時点ですぐ1にしてしまう場合もあるが、本校ではある程度の期間を置いて補充をし、それをクリアすれば、1ではなくて、もう少し評価をするといったことを全教科で行っている。

○ 単位認定の配慮や全教員が気づきの段階で色々なことを行っていくためには、学校規模が重要になってくると思うが、先生の学校はどれくらいの規模の学校か。

○ 京都府の中では、1学年10クラス規模が一番多いが、本校は、ほぼ中くらいだと思う。教員数は実習助手や養護教諭を除いて45。

○ 個人的な推測のレベルだが教員数45名が大きくなってくればくるほど、全員に徹底していくのがなかなか難しくなってくるので、校内委員会というシステム整備や全教員の意識の高さという2つの課題があるように思う。

○ 今までの仕組みでは発達障害がある場合、能力があっても、社会に出る際にミスマッチを起こして苦しんできたと思う。説明いただいた学校では大変すぐれた実践をしているがもっと多様な対応を今後考えていかなければならない。我々はその入り口に立っており、大変なこと。

○ 大変いい発表をいただき高等学校は頑張っているなという感じを深く持った。生徒理解の共有化という看板に向けて全教員がまとまった形で取り組んでおり、大変感動した。特別支援教育の指導や、小・中・高校での教育指導は、子どもがいかになるかというのが勝負であり、それにどれだけ教職員の力が結集するかということ。この学校の場合、校内委員会は、改めてつくるのではなくもともとあったというか、教育相談の機能を有するまとまりが校内委員会にスライドしてきたということだと思う。

○ 実は、校長がこういうふうにしろと言ったわけではなく、校内の中でいろいろ検討する中で、こんなふうに動いていっただけなのでそんなにすばらしいものではない。職員の中では色々な意見もあるし人事異動で教員もかわるので、研修はやり続けないといけない。全員が中退せずに卒業できたわけではないし、すべてきちんと対応できているかというと、そうではない。

○ 3つあるうちまずは1点目。資料2-7の1に、ソーシャルスキルトレーニングやストレスマネジメントということが書いてあるがこれは高校でやることなのか。これは、特別支援教育を受けてきた子どもたちが高校でやるということではなく、おそらく通常学級の中できちんとケアされていなかった人が高校に上がってきた際に、高校で何ができるのかという1つのモデルだと思う。本来の特別支援教育の下から上に上がっていく連続性ということで言うと、どこでどういうことをやっていくのかということを考える必要があると思う。

  2点目が、変わった子たちに対するほかの生徒の理解について、中学レベルだと、もっといじめなどが問題になると思うが、高校だからこそ、生徒間同士であまりトラブルが起きないでいっているのか、それとも、生徒に対しての特別な働きかけが可能であったのかどうか。

  3点目として、高校の特別支援教育には2つテーマがあると思う。1つは、発達のでこぼこに対する支援のあり方。今までの日本の特別支援教育というのは、全部発達の谷間の方ほうにだけ視点が当たっていた。しかし、高校の特別支援教育といった場合には、山の方ほうにも視点を当てる必要がある。この部分が今までの議論に欠けているように思う。

○ 1つ目のソーシャルスキルトレーニングについて、これは現場とはかなり乖離していると思っている。社会性を身につけるには、ホームルームや行事といった授業の中での中身のほうが非常に大切ではないかと思っている。また、高等学校でも1年生の段階で、中学校から引きずってくるものや、メールやブログでのトラブルというのが出てくる。1年生の初めの段階での相談体制というのをある程度しっかりつくると、他の生徒の理解に関する部分というのも、あえて障害のある人についての授業をやらなくても可能なのではと思っている。発達の山と谷の部分については、実際に入ってきた生徒を見ていると、いいところを伸ばしていくと、谷の部分がほとんど見えない形で動いてきていると思う。長欠は100日以上あるのに学力は結構高いという子どものトラブルというのは、中学校のとき2次障害でトラブルになっていたか、あるいは、部活動の中で色々あったケースなど、いろいろある。中学校から高校に来る段階で新たにスタートを切ることを決意しているので、そのときにいかにいい部分を私たちが見つけてやっていくかだと思う。

○ 1人で行動しているとか、授業中いつも落ちつきがないとか、保健室対応が非常に多いとか、小学校と同じような姿が見られるので、その場合その生徒に対する周囲の生徒の理解がどの程度で、どれだけ温かく受けとめ支援をしてくれるのかというところが気になる。そういうことも含めた人権教育、道徳や基本的生活習慣、清掃用具の中のほうきやちりとりをどう整頓しているかなどの環境整備の問題などは、特別支援のベースになる学校としての土壌であるので、どのように取組んでいるのか教えてほしい。また、一般の保護者への啓蒙はどのように行っているのか、誰でも学べる授業づくりなど授業改善の問題についても教えてほしい。

  それから、先ほど話のあったソーシャルスキルトレーニングについては、先日私は通常の学級の6年生の教室へ行って出前授業をしたところ。時間割としては道徳でやっている場合や総合的な学習の時間でやっている場合もある。

○ 実は、周囲の生徒に特別なことは何もしていない。人権教育は、毎年テーマを変えながら1年生から3年生まで系統的にいろいろやっている。高校なので、一般の保護者への話などは全くできている状況ではない。

  授業改善に関しては、年間2回、教員同士で授業公開をやっている。授業を見た人が、必ず授業のコメントを集めて、担当がペーパーにして配るということはずっとやってきている。それから本校が京都府教育委員会から、学力向上フロンティア校としてお金をもらっている中身では、生徒のプレゼン能力を高めるような授業に取り組むための研究を今年1年やっている。

○ 高等学校段階の気になる子というのは、おそらく幼稚園とか小・中学校の段階でも、何らかの芽を出していたのになかなか気づかれなかった子どもなのではないか。例えば、小学校6年生で厳しい課題に直面している子どもを見ると、なぜ1年生のときにもう少し適切な指導・支援ができなかったのかと思う。そのことからすると、高等学校での課題は、長年の積み重ねで来ている部分があるので厳しい部分があると思う。

  ただ、逆に、今日の説明を受け、小・中のこれまでの特別支援教育とは違った高等学校ならではのアプローチの仕方の可能性も感じた。高等学校は小・中に比べてある程度柔軟な対応が可能な部分があると思うので、小・中から学ぶというよりも、高等学校独自のアプローチが模索されていいのではないかと感じた。 

○ 先ほど事務局から入学試験における配慮について説明があり、それぞれの障害に応じて配慮した受験体制を整え、能力が十分発揮できるような環境の中で受験させてあげたのだと思うが、大きな意味がある。また、例えば受験体制を整えた結果合格して、LDであっても受け入れるということであれば、高校は単なる教育課程だけではなく、その子が生活上の困難を克服していけるような指導内容を用意していくということが当然必要になってくる。

○ 私の学校には定時制と通信制があるが、通信制だと状況把握が難しいです。定時制は、今、大体、夜間定時制で5割くらいは不登校の子。以前と違って、勤労青年ではない。きちんと把握をすると、かなりの割合で発達障害の可能性は出てくると思う。その中で、本校の定時制の教員は文化祭などの行事でいろいろ役割を与えて、何とか来させようとしてみたりしており、やめそうだった子が続き始めたりなどしているが、すべてまではなかなか手が回っていない。

○ 先ほど、中学で不登校の子について、入学が内定した時点で中学校を訪問するという話があったが、先生と生徒の間に何があったかなどについては話してもらえなかったというケースもある。障害があるということについて中学から高校側に伝えていくということが大切。そうでなければ、高校で改めて気づいていかなければならない。

○ 京都の事例について、このような学校ばかりだったらいいなと思うぐらいに学校全体での共通認識を持ちながらやられているが、残念ながらモデル校の中に広島県がないので、ぜひ全国の地方の学校にもこれから進めていっていただきたい。

  就労支援について、実は特別支援学校から受けた就労・生活支援センター等の話を聞いていると、卒業した方々の社会性や仕事をすることについての意識づけがすごく弱いと聞いる。京都の高校の場合にはどのように考えているのか教えてほしい。

  それから、教育相談の充実のところにスクールカウンセラーについて記述があるが、親としてはすごく相談しやすい人の中に、臨床心理士という方がいるが、どういう資格なのか教えていただきたい。

△ 臨床心理士とスクールカウンセラーは全然別のもので、スクールカウンセラーは資格ではないが、スクールカウンセラーになるための要件の1つとして臨床心理士の資格を持っていることが挙げられていると思う。 

○ 国立特別支援教育総合研究所は、義務教育を中心に研究・教育をやっていくということで高等学校にかかわる問題は弱いのだが、今年2月に高等学校の発達障害という形でセミナーを開いた際、非常に沢山の方が来た。小・中学校で問題になっているような問題があり、義務教育段階のような形のものが、そのまま高等学校に移譲しながら出てくるように感じた。

  また、高校特有として、単位の関係で退学になったり、通信制に回されてきたとか、総合単位制のところに行かされたというような形で、たくさんの子どもが渦巻いている状態であり、その子どもたちの問題をどう取り上げていくのかというのが一番必要なことではないか。例えば入試の対応について、全日制、通信制、総合単位制で共通の何かを見つけ出していくのがいいのかについては議論が必要で、軽々に1つにしていいのかどうか。もう少し幅広いさまざまな、事例をたくさん挙げ、その中に見出せるものがたくさんあるのではないか。あまり議論を集約してしまってやるというよりは、もっとモデルで学ぶという形の中に見出せるものが存在するのではないかという気がする。

○ 『実践障害児教育』という雑誌に1年間ギフテッドについて連載した。日本と、他の先進国との特別支援教育の一番大きな違いの1つは、天才児への特別支援教育のシステムが日本にはないということ。日本では、中学校から高校が関所になっており、そこで輪切りをするが、このシステムというのは、結局、認知の山のところに焦点が当たらない。キーワードは2E(Twice-exceptional child、二重に例外的な子どもたち)で、認知の山の部分と谷間の部分の両方を持っている子どもがいる。この子たちはおそらく小学校の低学年からいろいろな2次障害を起こしやすいので、この子たちへきちんとした教育が小学校低学年からできると、独創性が十分発揮されてこなかっただけだと考えることができるのではないか。 

○ 高校での特別支援教育を何のためにやるかについて、高校全入時代において、発達障害の子や不登校の子など色々な子どもたちをどのように扱うかではなく、どう支援するかということであって、特別支援教育の出発点は子どものニーズ。

  ソーシャルスキルについては高校ぐらいになると社会性の問題などが目立つようになるが、高校卒業後就労する場合に、特別支援学校高等部ではなく高校を出た場合には、一般の教育課程なので、ソーシャルスキルも自己認知もない。そのため、発達障害の子どもが高校を卒業するとソーシャルスキルやコミュニケーション能力に非常に問題が出てくるので、就労に必要なことを高校の教育課程でできないのだろうかと思う。

○ 高等学校における特別支援教育の課題について、どこから出発をしなければいけないか考えてみる必要がある。そういう意味で、全日制、定時制などさまざまな学校が選ばれている19年、20年のモデル校の実践の中から具体的な共通項を洗い出す必要性がある。発達障害の子どもが一番スムーズに溶け込むのは、具体物を使った農業高校や商業高校などの専門高校で、卒業率も高いということを伺っているので、その理由について少し見ていく必要がある。

  生徒指導については、実は、特別支援学校高等養護部や高校の生徒にも読める中身になっている『目で見るソーシャルスキルトレーニング』という本が、1カ月で5,000部売れておりニーズが非常に高いということも事実としてある。また進路指導でも就労と高等教育への進学では焦点のあて方が違ってくるのではないか。生徒たちが青年期になって自我が芽生えてくるので、高校だから取組める中身を少し検討する必要がある。 

 

(4)事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

 

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)