資料2 学級編制及び教職員定数に関する経緯

平成10年9月 中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」

はじめに

 6(4)教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担を見直し、学校や地方公共団体の裁量の幅を拡大することが必要であり、行政改革や規制緩和の流れも踏まえ、国や都道府県の市町村や学校に対する関与を必要最小限度のものとするとともに、教育課程の基準の大綱化・弾力化、学級編制や教職員配置の弾力化などの見直しを行うことが必要である。

第1章 教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方について

2 国の役割及び国と地方公共団体との関係の見直し

具体的改善方策
(地方分権の推進の観点からの見直し)
  • カ 「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下「義務標準法」という。)」に定める学級編制の標準について、国がその給与費を国庫負担する際の基礎となる教職員定数を算定するための基準であるという性格をより明確にして、教育条件の向上を図る観点から特に必要がある場合には、都道府県が「義務標準法」で定める学級編制の標準を下回る人数の学級編制基準を定めることができることとするなど、弾力的な運用ができるよう「義務標準法」について必要な法的整備を図ること。
  • キ 「義務標準法」及び「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(以下「高校標準法」という。)」に定める教職員定数の標準は、国がその給与費を国庫負担し、あるいは地方財政措置する際の基礎となる教職員定数を算定するための基準であるという性格をより明確にして、都道府県が弾力的な教職員配置基準等を定めるなどにより、実際の教職員配置がより弾力的に運用できるようにすること

3 都道府県の役割及び都道府県と市町村との関係の見直し

具体的改善方策
(すべての市町村に係るもの)
  • イ 市町村立小・中学校等の学級編制について都道府県教育委員会の認可を必要とすることとしていることについて、地方分権推進委員会第二次勧告をも踏まえ、市町村教育委員会の主体的判断を尊重する観点から、上記2の具体的改善方策カの学級編制の標準の弾力化に係る措置と併せて、「義務標準法」第5条の規定に基づく認可制を事前協議制に改めるか、あるいは届出制に改める方向で見直すこと

平成11年3月 改正公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律成立、公布(施行は平成11年4月から)

 地方分権推進計画及び平成10年中教審答申を踏まえ、市町村の主体的判断を尊重する観点から、公立義務教育諸学校の学級編制について、都道府県教育委員会の事前認可制から、事前協議制とした。

 第五条 市(特別区を含む。第八条第三号並びに第八条の二第一号及び第二号において同じ。)町村の教育委員会は、毎学年、当該市町村の設置する義務教育諸学校に係る前条の学級編制について、あらかじめ、都道府県の教育委員会に協議し、その同意を得なければならない。同意を得た学級編制の変更についても、また同様とする。

平成13年3月 改正公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律成立、公布(施行は平成13年4月から)

 教育の地方分権を推進し児童生徒の実態に応じた学校教育の充実を図るため、都道府県教育委員会の判断により、学級編制の基準の弾力的な設置等を特例的に可能とし、また、常勤の教職員定数を活用して非常勤の講師等を配置できることとした。

第三条 (略)
 2 各都道府県ごとの、公立の小学校又は中学校(中等教育学校の前期課程を含む。)の一学級の児童又は生徒の数の基準は、次の表の上欄に掲げる学校の種類及び同表の中欄に掲げる学級編制の区分に応じ、同表の下欄に掲げる数を標準として、都道府県の教育委員会が定める。ただし、都道府県の教育委員会は、当該都道府県における児童又は生徒の実態を考慮して特に必要があると認める場合については、この項本文の規定により定める数を下回る数を、当該場合に係る一学級の児童又は生徒の数の基準として定めることができる。(以下略)

平成14年10月 地方分権改革推進会議 「事務・事業の在り方に関する意見-自主・自立の地域社会をめざして-」

 都道府県と政令指定都市間の県費負担教職員制度の見直し・学級編制の基準の設定権限の移譲【平成15年度中に結論】

 教職員の任命権と給与支払い権の所在を一致させ、事務の合理化を図るとともに、義務教育経費全額負担を政令指定都市において実現するために、県費負担とされている教職員給与を政令指定都市負担とする方向で見直す。
 それとともに、義務教育に関する権限の政令指定都市への移譲も行うこととし、具体的には学級編制の基準や教職員定数の設定に関する都道府県の権限を政令指定都市に移譲する方向で検討する
 これらについては、平成14年度から検討を開始し、関係道府県及び政令指定都市の教育委員会等関係各方面の理解を得つつ、平成15年度内に意見を集約し、その結果を踏まえ直ちに見直しに着手する。

平成16年5月 地方分権改革推進会議「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見」

1 事務・事業の見直しや様々な方策による地方の自由度の拡大

1.自由度の拡大のための事務・事業の見直し

(2)地方の自主的な行政運営の確立
イ 教育委員会の必置規制の弾力化

(イ)権限の見直し
 都道府県教育委員会と市町村教育委員会との関係について、学級編制基準及び教職員定数設定、教科用図書採択地区設定の権限については、現在都道府県教育委員会が有しているが、学級編制基準及び教職員定数設定については、都道府県教育委員会との協議の上、各学校の設置・管理主体(小中学校については市町村教育委員会)が行える事とする等、きめ細かな教育を実施できるよう検討することが必要である。
(中略)
 特に、学級編制基準及び教職員定数設定の権限については、現在政令指定都市教育委員会への移管が具体的に検討されているが、更に中核市等についても県費負担教職員任命権と併せてこれら権限の移管を進めることが必要である。

平成16年5月 中教審作業部会報告「義務教育費に係る経費負担の在り方について」

2.教職員給与費負担と学級編制・教職員定数に係る権限の政令指定都市への移譲

 政令指定都市は、財政的に見ても、児童生徒数や学校数などの面から見ても、都道府県と同等の規模を有しているが、現行制度上は、教職員の給与を道府県の負担としつつ、その任命権は政令指定都市が行うこととされており、給与を負担する者と任命権を行使する者が異なるという制度の「ねじれ」により弊害が生じているとの指摘がある。
 この問題について制度の見直しを行うため、当作業部会では、関係の道府県及び政令指定都市から意見を聴取した。(政令指定都市及び関係道府県の意見について、表3(略)及び表4(略)参照)その結果、多くの意見は、次のとおりであった

  • 任命権者と給与負担者を一致させるべきであり、政令指定都市が給与負担を行うよう制度の見直しを行うべき。
  • ただし、税源移譲等により適切な財源措置がなされることが前提。
  • 制度の見直しにあわせて、学級編制基準の設定及び教職員定数の設定の権限についても政令指定都市に移譲していくべき。
  • 給与負担と権限の移譲を実施するためには、給与条例の整備や給与システムの構築等、移行のための一定の準備期間が必要。

 一方、域内に政令指定都市が存在する道府県の中には、道府県内の義務教育の機会均等や教育水準の確保に果たしている道府県の役割にかんがみ、給与負担と権限の移譲については慎重に対処すべきであるとの反対意見もあった。
 意見聴取の結果、方向性としては、給与を負担する者と任命権を行使する者を一致させる方向で見直すべきとの意見が大半であったが、この問題については関係者間でも必ずしも意見が一致していないところもあり、また、政令指定都市が負担する給与費の財源問題の解決なしに結論を得ることは困難な問題である。

 当作業部会としては、給与負担と権限をあわせて移譲する方向で取り組むべきものと考えるが、その円滑な移譲のためには政令指定都市に対する国庫負担が必要であると考える。財源問題について、関係省間で協議の上、方向性が示されることを期待するとともに、権限と負担の移譲に伴う政令指定都市の事務体制の整備に向けた具体的な検討が進められることを期待する。
 なお、中核市など一定規模以上の市についても、政令指定都市と同様、任命権や給与負担などの移譲について、市町村の権限と責任を拡大する観点から、引き続き検討することとしたい。

平成17年10月 中教審答申「新しい義務教育の時代を創造する」

第3章 地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高める

-学校・教育委員会の改革-

(1)学校の組織運営の見直し
ア 学校の自主性・自立性の確立
  • 学級編制を含めた指導方法の工夫改善については、各学校がそれぞれの実情に応じて個別に判断することが適当である。このため、各学校が個別に学級編制を行うなど学校の判断が尊重されるよう現行の学級編制の仕組みを見直す必要がある
(3)国と地方、都道府県と市区町村の関係・役割
ア 基本的な考え方
  • 義務教育については、今後の分権改革の重点は、都道府県から市区町村への分権、教育委員会から学校への権限移譲であると考えられる。
     地方の中でも、義務教育の直接の実施主体である市区町村や学校に権限の移譲を進めるとともに、市区町村が設置者としてその地域の状況に応じて独自の教育方針や基準を設定するなど、地域の実情に応じた教育を実現できるようにしていくことが必要である。これに対応し、都道府県は、広域人事など市区町村間の調整や小規模市町村に対する支援にその役割を一層重点化し、市区町村の自主性を尊重しつつ、義務教育の質の保証・向上に責任を果たしていくことが求められる。
イ 地方の主体性を生かした教育行政の推進
  • 国の定める教育内容、教職員配置、学級編制などに関する基準を、できる限り大綱化・弾力化したり、最低基準性を明確にするなど、地方の裁量を拡大することが必要である。
エ 教職員配置の改善と市区町村、学校への学級編制に係る権限の移譲
  • 今後は学校の判断により地域や学校の実情に合わせた指導形態・指導方法や指導組織とするため、現行制度を見直し、学級編制に係る学校や市区町村教育委員会の権限と責任を拡大する必要がある
     例えば、義務標準法による教職員の標準定数について都道府県ごとの算定から市区町村ごとの算定に改めることや、学校や市区町村教育委員会の判断で学級編制が弾力的に実施できるようにすることなど現行の学級編制の仕組みを見直す必要がある
     また、学校や市区町村教育委員会の判断で少人数学級編制を可能とすることができるよう、これまで例外的な措置とされていた40人学級を下回る学級編制が自由に選択できる制度とする必要がある
     その際、各都道府県に対し教育上の特別な事情に基づきさらに必要とされて加えられる定数(いわゆる教職員定数の加配定数)について、その配分と運用ルールの見直しを検討すべきである。

第4章 確固とした教育条件を整備する

-教育の質の向上、財源確保の確実性・予見可能性、地方の自由度の拡大-

(1)教育条件整備に関する共通理解
  • さらに、教育条件の整備に関連しては、以下も重要である。
    • 教育の分権改革を推進するため、教育内容、学級編制、人事、予算の執行等について、できる限り市区町村や学校の裁量を拡大する必要がある

平成19年11月 地方分権改革推進委員会「中間とりまとめ」

学級編制と教職員定数にかかる権限と責任の拡大

 地域や学校の実情に応じた教育条件を市町村の判断で整備できるよう、人事権の移譲とあわせて、学級編制や教職員の定数に関する市町村の権限と責任を拡大する必要がある。
 以上の点を踏まえ、早急に人事権の移譲、給与負担のあり方の見直し、学級編制や教職員定数に関する市町村の権限と責任の拡大について関係者間の意見調整を図りつつ実施すべきであり、少なくとも中核市等の一定規模を有する地方自治体において先行して実施することとすべきである。

平成20年5月 地方分権改革推進委員会「第1次勧告」

  • 現在、県費負担教職員の人事権と給与負担は基本的に都道府県となっており、そのため、公立小・中学校の教職員は市町村の職員でありながら、地域に根ざす意識を持ちにくくなっている。県費負担教職員の人事権について、広域での人事調整の仕組みにも留意した上で、市町村に移譲する方向で検討すべきである。あわせて財源の確実な確保をはかることを前提に、人事権者と給与負担者が一致するように人事権移譲に伴う給与負担の在り方も適切に見直すべきである。
  • 県費負担教職員の人事権の移譲と給与負担については、都道府県から中核市に人事権を移譲するとともに、すでに人事権が移譲されている政令指定都市と中核市において人事権者と給与負担者が一致する方向で検討し、平成20年度中に結論を得る。
    あわせて、現在都道府県の協議・同意が必要とされている学級編制や都道府県が定めている教職員定数についても決定方法を見直す方向で検討し、平成20年度中に結論を得る。

平成20年6月 地方分権改革推進本部「地方分権改革推進要綱」

第2 地方分権のための制度・運営の改革の推進

(1)くらしづくり分野関係

【教育】
  • 県費負担教職員の人事権の移譲と給与負担については、広域での人事調整の仕組みにも留意した上で都道府県から中核市に人事権を移譲するとともに、既に人事権が移譲されている政令指定都市と中核市において人事権者と給与負担者が一致する方向で検討し、小規模市町村を含めた関係者の理解を得て、計画の策定までに結論を得る。
     あわせて、現在都道府県の協議・同意が必要とされている学級編制や都道府県が定めている教職員定数についても決定方法を見直す方向で検討し、関係者の理解を得て、計画の策定までに結論を得る。
     〔文部科学省〕

平成20年7月 閣議決定「教育振興基本計画」

基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

1.教育委員会の機能を強化するとともに、学校の組織運営体制を確立する

◇市町村への権限の移譲

 県費負担教職員の人事権を移譲することについて、すべての市町村において一定水準の人材確保を図ることができるよう、小規模市町村の行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担、学級編制、教職員定数の在り方などとともに、引き続き検討する。

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初等中等教育局初等中等教育企画課

(初等中等教育局初等中等教育企画課)