資料3 県費負担教職員の人事権等に関する経緯

平成17年10月 中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」

 県費負担教職員の人事権について、中核市等一定規模の地方公共団体に移譲し、併せて給与負担も適切に見直すことを提言。また、学級編制や教職員定数についても学校や市区町村教育委員会の権限と責任を拡大することを提言。

第3章 地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高める

-学校・教育委員会の改革-

(3)国と地方、都道府県と市区町村の関係・役割
ウ 市区町村への教職員人事権の移譲
  • 現在、県費負担教職員の給与負担(給与の支出責任)と人事(任命)権は、基本的に都道府県にあるが、例外的に政令指定都市については人事権が、中核市については人事権のうち研修に関する実施義務のみが、都道府県から移譲されている。
  • これについて、義務教育諸学校は、市区町村が設置し教職員も市区町村の職員でありながら、給与負担と人事権が都道府県にあるため、県費負担教職員が地域に根ざす意識を持ちにくくなっていること、また、より教育現場に近いところに権限をおろすべきであることなどから、人事権についても都道府県から義務教育の実施主体である市区町村に移譲する方向が望ましいと考えられる。
  • とりわけ、中核市については、既に研修実施義務が移譲されており、これに加えて人事権全体についての移譲を求める意見が強かった。また、大都市周辺部等には、中核市相当やそれに準ずる規模を有する市区も多いことなど、一定の規模を有する市区町村についても人事権の移譲を求める意見があった。
  • 一方、とりわけ町村には小規模なところも多く、給与や人事権の行使に伴う負担には耐えられないとの意見や、中核市など大規模な市区町村抜きでの広域の人事異動は考えられないなどの意見、また、県内に一又は複数の人口50万人程度の広域連合による「教育機構」を作るなどの意見があった。
  • これらの意見を踏まえ、教職員の人事権については、市区町村に移譲する方向で見直すことが適当である。
     一方、現在の市区町村の事務体制で人事関係事務を処理できるか、離島・山間の市町村を含めた広域で人材が確保できるかにも留意する必要がある。
     このため、当面、中核市をはじめとする一定の自治体に人事権を移譲し、その状況や市町村合併の進展等を踏まえつつ、その他の市区町村への人事権移譲について検討することが適当である。
     また、人事権の移譲に伴い、都市部と離島・山間部等が採用や異動において協力し、広域で一定水準の人材が確保されるような仕組みを新たに設けることが不可欠である。
     なお、教職員人事権を市区町村に移譲する場合には、その財源保障は安定的で確実なものであることを前提に、人事権者と給与負担者はできる限り一致することが望ましく、人事権移譲に伴う給与負担の在り方も適切に見直すことを検討する必要がある。
  • さらに、人事権が移譲されない市区町村でも、現在、構造改革特別区域において行われている市町村費負担教職員任用事業の全国化により、市区町村独自の教職員の任用を可能とすることが適当である。
エ 教職員配置の改善と市区町村、学校への学級編制に係る権限の移譲
  • 義務教育のナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための諸条件を整備する観点から、国が学級編制及び教職員配置についての基準を明確にすることは重要であり、早急に次期定数改善計画を策定する必要がある。これにより、少人数教育の一層の推進や、学習指導や特別支援教育の充実、養護教諭、栄養教諭、事務職員、司書教諭の配置充実、外国人児童生徒への支援の充実など、今日的な教育上の課題に迅速かつ適切に対応した教職員配置の改善を進める必要がある。
  • その上で、今後は学校の判断により地域や学校の実情に合わせた指導形態・指導方法や指導組織とするため、現行制度を見直し、学級編制に係る学校や市区町村教育委員会の権限と責任を拡大する必要がある
     例えば、義務標準法による教職員の標準定数について都道府県ごとの算定から市区町村ごとの算定に改めることや、学校や市区町村教育委員会の判断で学級編制が弾力的に実施できるようにすることなど現行の学級編制の仕組みを見直す必要がある。
     また、学校や市区町村教育委員会の判断で少人数学級編制を可能とすることができるよう、これまで例外的な措置とされていた40人学級を下回る学級編制が自由に選択できる制度とする必要がある。
     その際、各都道府県に対し教育上の特別な事情に基づきさらに必要とされて加えられる定数(いわゆる教職員定数の加配定数)について、その配分と運用ルールの見直しを検討すべきである。

平成17年11月~18年12月

人事権の移譲について、各教育委員会関係者を集めて意見交換(計8回)

 →関係者間で意見の隔たりが大きく、結論が得られず

移譲に賛成
 中核市教育長、特別区教育長、指定都市教育委員・教育長、都市教育長
移譲に反対
 都道府県教育長、町村教育長、へき地教育関係者

平成18年3月 改正市町村立学校職員給与負担法成立、公布(施行は18年4月)

 原則として市町村立学校の教職員の給与は都道府県が負担することとされていたものを、義務標準法の規定に基づき都道府県が定める定数に係る教職員については都道府県の負担とすることとし、それ以外の教職員の給与を市町村が負担することを可能とした。

  • 第一条 市(特別区を含む。)町村立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の校長(略)、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、寄宿舎指導員、講師(略)、学校栄養職員(略)及び事務職員のうち次に掲げる職員であるものの給料(略)並びに講師(略)の報酬及び職務を行うために要する費用の弁償(略)は、都道府県の負担とする。
  • 一 義務教育諸学校標準法第六条の規定に基づき都道府県が定める小中学校等教職員定数及び義務教育諸学校標準法第十条の規定に基づき都道府県が定める特別支援学校教職員定数に基づき配置される職員(義務教育諸学校標準法第十八条 各号に掲げる者を含む。)

平成19年3月 中教審答申

「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」

 人事権の移譲については、広域的な人事調整の仕組み等とともに引き続き検討することとされ、制度改正は同一市町村内の教職員人事について当該市町村の意向をより反映させるための改正を行うことを提言。

3.責任ある教育行政の実現のための教育委員会等の改革(地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正)

(3)留意事項

  • 県費負担教職員の人事権については、平成17年10月の中央教育審議会の答申において、既に、より教育現場に近いところに権限を下ろす方向が望ましいとの考え方の下、「当面、中核市をはじめとする一定の自治体に人事権を移譲し、その状況や市町村合併の進展等を踏まえつつ、その他の市区町村への人事権移譲について検討することが適当」との考え方を示したところである。
     しかしながら、人事権を全面的に移譲することについては、依然として関係者間での意見の隔たりが大きく、全ての市町村において一定水準の人材確保を図る上で支障が生ずるという懸念が大きい。このため、今回は前記のとおり、同一市町村内における転任については、市町村教育委員会の意向に基づいて都道府県教育委員会が行うこととし、人事権全体の移譲については、小規模市町村の教育行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担の在り方などとともに、引き続き検討していく必要がある。
     なお、教職員人事については、学校長自らの教育方針に基づいた学校経営が可能となるよう、市町村教育委員会は、内申に当たっては、できるだけ学校長の意見を尊重するよう努めることも必要である。

平成19年6月 中教審答申に基づく改正地教行法成立、公布(施行は20年4月)

 県費負担教職員の人事について、同一市町村内の転任については、市町村教育委員会の意向を一層重視する趣旨から、市町村教育委員会の内申に基づき行うこととされた。(実際には再来年度人事(平成21年3月頃)から行われる)

地方教育行政の組織及び運営に関する法律(※昨年の法改正により、第2項を新設)

市町村委員会の内申

  • 第三十八条 都道府県委員会は、市町村委員会の内申をまつて、県費負担教職員の任免その他の進退を行うものとする。
  • 2 前項の規定にかかわらず、都道府県委員会は、同項の内申が県費負担教職員の転任(地方自治法第二百五十二条の七第一項の規定により教育委員会を共同設置する一の市町村の県費負担教職員を免職し、引き続いて当該教育委員会を共同設置する他の市町村の県費負担教職員に採用する場合を含む。以下この項において同じ。)に係るものであるときは、当該内申に基づき、その転任を行うものとする。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
    • 一 都道府県内の教職員の適正な配置と円滑な交流の観点から、一の市町村(地方自治法第二百五十二条の七第一項の規定により教育委員会を共同設置する場合における当該教育委員会を共同設置する他の市町村を含む。以下この号において同じ。)における県費負担教職員の標準的な在職期間その他の都道府県委員会が定める県費負担教職員の任用に関する基準に従い、一の市町村の県費負担教職員を免職し、引き続いて当該都道府県内の他の市町村の県費負担教職員に採用する必要がある場合
    • 二 前号に掲げる場合のほか、やむを得ない事情により当該内申に係る転任を行うことが困難である場合
  • 3 市町村委員会は、教育長の助言により、前二項の内申を行うものとする。
  • 4 市町村委員会は、次条の規定による校長の意見の申出があつた県費負担教職員について第一項又は第二項の内申を行うときは、当該校長の意見を付するものとする。

平成19年11月 地方分権改革推進委員会「中間とりまとめ」

 人事権の移譲等について関係者間の意見調整を図りつつ実施することが提言された。

教職員人事権の移譲と給与負担

 現在、県費負担教職員の人事権と給与負担は、基本的に都道府県となっているが、例外的に政令指定都市については人事権が、中核市については人事権のうち研修に関する実施義務のみが、都道府県から移譲されている。
 こうした状況に対しては、小・中学校は、市町村が設置し教職員も市町村の職員でありながら、人事権と給与負担が都道府県となっているため、地域に根ざす意識を持ちにくくなっていること、また、より教育現場に近いところに権限を下ろすべきであることなどから、人事権を市町村に移譲すべきである。あわせて、人材確保のための広域での人事調整の仕組みや財源の確実な確保にも留意したうえで、人事権者と給与負担者が一致するように人事権移譲に伴う給与負担のあり方も適切に見直すことが必要である。特に既に人事権が移譲されている政令指定都市については、早急に人事権と給与負担の一致をはかるべきである。

学級編制と教職員定数に関する権限と責任の拡大

 さらに、地域や学校の実情に応じた教育条件を市町村の判断で整備できるよう、人事権の移譲とあわせて、学級編制や教職員の定数に関する市町村の権限と責任を拡大する必要がある。以上の点を踏まえ、早急に人事権の移譲、給与負担のあり方の見直し、学級編制や教職員定数に関する市町村の権限と責任の拡大について関係者間の意見調整をはかりつつ実施すべきであり、少なくとも中核市等の一定規模を有する地方自治体において先行して実施することとすべきである。

平成20年4月 中教審答申「教育振興基本計画について」

 人事権の移譲等について、広域での人事調整の仕組みや給与負担、学級編制、教職員定数の在り方などとともに、引き続き検討することが提言された

第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

(3)基本的方向ごとの施策

基本的方向2 個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる
4.教育委員会の機能を強化するとともに、学校の組織運営体制を確立する

【施策】
◇市町村への権限の移譲
 県費負担教職員の人事権を移譲することについて、すべての市町村において一定水準の人材確保を図ることができるよう、小規模市町村の行政体制の整備の状況を踏まえつつ、広域での人事調整の仕組みや給与負担、学級編制、教職員定数の在り方などとともに、引き続き検討する

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初等中等教育局初等中等教育企画課

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