高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループ(第6回) 議事要旨

1.日時

平成20年12月19日(金曜日)15時30分~18時30分

2.場所

金融庁9階 共用会議室1

3.議題

  1. 拡大教科書の普及推進について
  2. その他

4.出席者

委員

香川主査、井上委員、大内委員、太田委員、土屋委員、永田委員、橋本委員、松浦委員、村上委員、守屋委員、安元委員、宇野委員、大旗委員、齋藤委員、田中委員、千田委員、山田委員、渡辺(能)委員

文部科学省

永山特別支援教育課長、水野特別支援教育課専門官、池尻特別支援教育調査官、矢崎教科書課課長補佐

オブザーバー

澤田東京都立文京盲学校長、三谷東京都立葛飾盲学校長

5.議事要旨

(1)事務局、全国盲学校長会及び2名の委員から、以下の内容について説明があった。

ア 高等学校に在籍する弱視生徒について

  • 高等学校に在籍する弱視生徒は、約400名程度だと推計される。

イ 高等学校及び特別支援学校(視覚障害)高等部使用教科書の普通教育に関する各教科の判について

  • 高等学校及び特別支援学校(視覚障害)高等部使用教科書の普通教育に関する各教科の教科書の判は、B5判、A5判が大半を占めており、ほぼ同数発行されている。

ウ 盲学校・特別支援学校(視覚障害)高等部拡大教科書に関するアンケートについて

  • 弱視生徒のうち、拡大教科書を使用している生徒はわずかで、それ以外の生徒は目を近づけるなどして、そのまま教科書を見たり、ルーペや拡大読書器等の視覚補助具を使用している。
  • 弱視生徒に対して情報を伝えるために優先して行うべきことは、多い方から、1.学校に教科書デジタルデータを提供し、それを元に学校で教材作成すること、2.ルーペや拡大読書器等の視覚補助具を有効に活用して検定教科書を読み取らせること、3.教科書デジタルデータを生徒に提供し、生徒がパソコンを使って見ること、4.小中学部と同様に標準規格に基づいた拡大教科書を提供すること、5.その他、の順であった。
  • 高等部で仮に拡大教科書を提供する場合、その在り方として考えに近いものとしては、多い方から、1.文字の大きさが(14~16ポイント)になるように、検定教科書を単純拡大した教科書を3種類用意する。これでは難しい場合、ボランティア団体等が拡大教科書を作成する。2.レイアウト変更した18、22、26ポイント程度の3種類の教科書を用意する。これでは難しい場合、ボランティア団体等が拡大教科書を作成する。3.レイアウト変更したB5サイズ18ポイント程度の教科書を用意する。これでは難しい場合、ボランティア団体等が拡大教科書を作成する。4.その他、の順であった。

エ 単純拡大教科書作成の工程及び経費について

  • A5判300ページで図版資料の多い教科書をB5判に単純拡大してフォント変更した場合には、しなかった場合に比べて、校正・点検などの固定費単価は7~8倍程度かかることが推測される。
  • 上記の場合、オンデマンド印刷であれば、用紙代・製本代などの変動費単価は、単純拡大と同等の費用がかかることが推測される。
  • 上記の固定費と変動費を合計し、10冊製造した場合の単価は、フォント変更した場合には、しなかった場合に比べて4~5倍程度かかることが推測される。

オ レイアウト変更を伴う拡大教科書について

  • 教師用指導書添付のデジタルデータを基に、国語、数学、日本史について、18ポイントでレイアウト変更を伴う拡大教科書のサンプルを作成した。
  • ルビや参照ページなどは、デジタルデータには入っていないため、後から追加した。
  • ワードでデータを作成する場合には、段組などの作業に手間がかかるため、テキストデータがあれば、それを基にフォントを変更することができて便利であるが、すべての教科書会社に教師用指導書添付のデジタルデータがあるという現状には至っていない。

(2)議題に対する自由討議が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
 デジタルデータの提供に当たっては、特別支援学校(視覚障害)の場合、教師が生徒にその取扱いについて指導がなされるが、高校の場合、教師からの指導が十分に行われないことも考えられる。そのため、高校の生徒に対してどういうやり方でサポートできるのかということを考えて、デジタルデータを生徒に提供できるようにすることが重要である。

【委員】
 高校にデジタルデータが送付された場合、学校ではどのように対応すればよいか分からないこともあり得る。そのため、デジタルデータの提供先は、まずは、特別支援学校(視覚障害)とするのがよいのではないか。

【委員】
 特別支援学校(視覚障害)がセンター的機能を発揮して、県内の高校すべてに対してサポートをするような体制をつくることが考えられる。

【委員】
 ほとんどの都道府県には、特別支援学校(視覚障害)が1校しかないので、この1校で高校に在籍するすべての弱視生徒に対して支援を行うことは困難である。さらに、実際に高校に支援を行っていると、高校段階から特別支援学校(視覚障害)に入学する生徒も増えてきているという実態もでてきている。

【委員】
 高校における弱視の生徒の支援について、すべてを特別支援学校(視覚障害)に依存するのではなく、デジタルデータの最初の提供先を特別支援学校(視覚障害)にしてはどうか。例えば、特別支援学校(視覚障害)が、高校の特別支援教育コーディネータを対象に、デジタルデータの活用の仕方について講習会を開催するなどして、それから先は、特別支援学校(視覚障害)が高校に対して、必要に応じて、助言や援助を行っていくということが考えられる。

【委員】
 提供するデジタルデータは、全教科、すべての内容というのが原則ではないか。データの形式は、生徒がどのように活用するかと大きくかかわることであり、検索などを考慮するとテキストファイルが適切ではないか。

【委員】
 デジタルデータの提供は法律で発行者に義務付けられており、できる限り対応可能な規定にしていただきたい。発行者にとっても、PDFデータであればほぼ対応可能である。さらに、発行者は、デジタルデータの提供後、どのようにPDFデータを活用していけばよいかについて周知を図ることが大切である。

【委員】
 デジタルデータは生徒の希望を聞いてから作成するのか、それとも、あらかじめ作成しておき、生徒が希望すれば提供するということか。

【委員】
 小・中・高校でかなり多くの教科書があるため、そのPDFデータを一度に作成することは発行者にとっても大変な負担である。一方、PDFデータの作成は、一冊当たりそれほど時間がかかる作業ではないため、生徒の希望を聞いてから一定期間でデジタルデータを提供することが現実的な対応だと考える。

【委員】
 デジタルデータの提供について生徒から希望があったとしても、提供について許諾を取る必要があり、この時間についても考慮する必要がある。

【委員】
 法律の適用範囲内でデジタルデータが有効に活用されるということについては賛成であり、大いに活用していただければよい。ただし、デジタルデータの提供先が学校や生徒となった場合、責任の所在があいまいにならないよう、データ流出の防止策をしっかりと講じる必要がある。

【委員】
 デジタルデータの提供の一つに絞り込むのではなく、拡大教科書、単純拡大、デジタルデータ、視覚補助具など、様々な環境を整備していくことが大切である。

【委員】
 高校における弱視の生徒の中には、途中から視力が急に落ちてきた場合など、十分な教育を受けていない者もおり、拡大教科書が何か分からなかったり、何ポイントがよいか分からなかったりすることも考えられる。そのような場合、生徒が自己決定できるようなシステム作りが必要である。

【委員】
 高校において、単純拡大した教科書を作成するにしても、レイアウト変更した拡大教科書を作成するにしても、公費で経費を保障する仕組みを作る必要がある。また、経費の観点から教科書保障を議論するのではなく、弱視の生徒の教育を保障する観点から、教科書の提供はどうあるべきか議論するのが適切ではないか。

【委員】
 高校の段階では、単純拡大で効果のある生徒とレイアウト変更した拡大教科書で効果のある生徒、それぞれについて調査研究を進める必要がある。まずは、教科書会社で単純拡大した教科書を作成して、それが効果的かどうか、検証することが現実的ではないか。

【委員】
 来年度に向けて、新たに6社で拡大教科書を作成しているところである。編集は、小学校、中学校の教科書のレイアウトを変更して行っており、かなりの苦労を伴っている。高校については、小中学校に比べて、教科・科目数も増え、技術的な困難も伴うことが予想されることから、まずは、単純拡大から始めて、レイアウト変更を伴う拡大教科書については、著作権補償金の問題等を含めて時間をかけて検討していく必要がある。

【委員】
 弱視生徒の中には、確かに18ポイント以上の文字の大きさを希望する者もおり、これに対応していく必要があると認識しているが、高校において、レイアウト変更した拡大教科書についての標準規格を今すぐ提案することは無理がある。どのような在り方がよいか検討することが重要である。

【委員】
 拡大教科書については、発行者側に発行予定はない場合に需要が来て、それに対する対応が困難であれば努力義務が果たせないことになってしまう。需要調査を行う時期など、この仕組みについて十分に検討する必要がある。

【委員】
 平成21年度は、特別支援学校(視覚障害)については、受験で必要とする5教科において、標準規格に基づいた拡大教科書を作成し、その他の教科については、22年度から同様に拡大教科書を作成するようにしてはどうか。
 また、高校については、実態把握を行う必要があり、まずは、PDFデータで単純拡大した拡大教科書を作成するのがよいのではないか。それから、実態把握に基づき、対応を検討し、22年度から具体的に対応するようにしてはどうか。

【委員】
 段階を踏んで進めるべきである。レイアウト変更を伴う拡大教科書についても第1段階として、特別支援学校(視覚障害)高等部の生徒の実態把握から始めるのがよい。第2段階として、高校に在籍している弱視の生徒の実態把握を行うのがよいのではないか。

【委員】
 ボランティアが作成した拡大教科書がその生徒だけでなく、他の生徒にも活用されるようにすることが望まれる。作成されたり、出版されたりした拡大教科書の種類や文字の大きさなど、情報が共有できるようになればありがたい。

(3)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

(以上)

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