資料6 言語力の育成に関する主な意見について(議論の整理用メモ)【修正案・反映版】

1.基本的な考え方及び課題

(1)言語力について

 この報告書では、言語力は、知識と経験、論理的思考、感性・情緒等を基盤として、自らの考えを深め、他者とコミュニケーションを行うために言語を運用するのに必要な能力を意味するものとする。
 また、言語力のうち、主として国語に関するものについて論じるが、言語種別を問わない普遍的かつ基盤的な能力を培うとの観点から、外国語や非言語等に関する教育の在り方についても必要に応じて言及する。
 言語は、文化審議会答申(平成16年2月)が国語力について指摘するように、知的活動、感性・情緒等、コミュニケーション能力の基盤となり、文化の継承や創造に寄与する役割を果たすものである。

(2)言語力育成の必要性

 言語に関する豊かな環境が言語力を育てる土壌となる。
 子どもを取り巻く環境が大きく変化するなかで、様々な思いや考えをもつ他者と対話したり、我が国の文化的伝統の中で形成されてきた豊かな言語文化を体験したりするなどの機会が乏しくなったために、言語で伝える内容が貧弱なものとなり、言語に関する感性や技能などが育ちにくくなってきている。言葉に対する感性を磨き、言語生活を豊かにすることが求められている。
 OECDの国際学力調査(PISA)において「読解力」(注1)が低下していること、いじめやニートなど人間関係にかかわる問題が喫緊の課題となっていることなど、学習の面でも生活の面でも、言語力の必要性がますます高まっている。
 さらに、社会の高度化、情報化、国際化が進展し、言語情報の量的拡大と質的変化が進んでおり、言語力の育成に対する社会的な要請は高まっている。PISA調査で要請されている、文章や資料の分析・解釈・評価・論述などの能力は、今日の社会において広く求められるものである。
 中央教育審議会では、学習指導要領の改訂に向けての審議において、今後の学校教育において、知識や技能の習得(いわゆる習得型の教育)と考える力の育成(いわゆる探究型の教育)を総合的に進めていくためには、知識・技能を実際に活用して考える力を育成すること(いわゆる活用型の教育)が求められているとしており、その際、「言葉」を重視し、すべての教育活動を通じて育成することの必要性が指摘されている。

 (注1)いわゆるPISA型読解力は、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力。」と定義されている。

(3)言語力育成の課題

(ア)言語の果たす役割に応じた指導の充実

 言語は、知的活動(特に思考や論理)、感性や情緒、コミュニケーション(対話や議論)の基盤であることから、それぞれの役割に応じた指導が充実されることが必要である。同時に、これらは相互に関連するものであることから、統合的に育成することについても留意しなければならない。

(イ)発達の段階に応じた指導の充実

 幼・小・中・高等学校における幼児児童生徒の発達の段階に応じて、言語による理解・思考・表現などの方法を身に付けさせるための教育内容・方法の在り方について検討する必要がある。同時に、指導に当たっては、幼児児童生徒の発達の実態や経験に応じた配慮を行う必要がある。

(ウ)教科を横断した指導の充実

 言語は、学習の対象であると同時に、学習を行うための重要な手段である。学習で用いる言語を精査し、国語科を中核としつつ、すべての教科等での言語の運用を通じて、論理的思考力をはじめとした種々の能力を育成するための道筋を明確にしていくことが求められる。
 そのためには、国語科及び各教科等で用いられる用語の特質に留意しつつ、育成すべき資質を明らかにしておく必要がある。

2.知的活動に関すること

(1)事実を正確に理解し、正確にわかりやすく伝える技能を伸ばす。

 思考や論理は、正確であることが基礎となる。そのため、事実を記録する、描写する、報告するなどの活動を発達の段階に応じて適宜行い、正確に理解したり、分かりやすく伝えたりするための技能を体系的に身に付けることが必要となる。国語科を中心として、記録文、報告文などを読んだり書いたりする指導が重要である。その際、思いを述べることと、考えを説明することとを区別する指導が重要である。朝の会、帰りの会などで行われている3分間スピーチなどの場を有効に活用することや、英米において行われているショー・アンド・テル(注2)などの活動を参考とすることも考えられる。

 (注2)ショー・アンド・テル〔Show and Tell(見せて教える、の意味)〕…特定のテーマに沿い生徒等が持参したものをクラスで見せながら発表する活動。

(2)自らの考えを深めることで、解釈や説明、評価や論述をする力を伸ばす。

  1. 学習が進むにつれて、根拠や論理(推論)に基いて、筋道を立てて考えを説明することへと思考の質や客観性を高めていくことが必要となる。学習の内容についても、個別的・具体的な事象から、一般的・抽象的な概念が多く含まれてくるので、例えば、概念の意味を理解し、その概念を用いて説明する、情報の意味を解釈し、説明することなどが重要となる。数学、理科、社会科などで学習上の基本的な概念を理解させたうえで、具体的な事象にあてはめて説明させる指導などが重要となる。
  2. さらに学習が進むと、クリティカル・リーディングの考え方によって、自らの考えを深めること(自己内対話)が求められる。具体的には、与えられた情報や資料について、目的意識をもって、自らの有する知識・経験と結びつけて分析・評価する、比較考察や批判的検討を加える、自分なりの意見を論述する、客観的に論証することなどが重要となる。そのためには、例えば、国語科では、段落相互の関係や論理の一貫性など、文章の内容や展開、構成等に留意しながら、論証の確かさや説得力などについて評価を行った上で論文を書かせる指導、社会科では、対立する見解を分析し比較検討させる指導などが必要である。
  3. 今後、PISA型読解力の考え方を踏まえ、資料や文章を読んで、情報を取り出す、解釈する、熟考・評価する、論述するなどのプロセスに即して、それぞれのプロセスに必要な技能、それを伸ばすために必要な言語活動について、発達の段階を踏まえて教育内容に適切に位置づけていくことが必要である。

(3)考えを伝え合うことで、自らの考えや集団の考えを発展させる力を伸ばす。

 自らの考え、あるいは集団の考えを発展させていくためには、考えを伝え合うこと(他者との対話)によりお互いの考えを深めていく活動が重要である。その際、問答やディベートなどの対話や議論の形式を用いることも有効である。例えば、ディベートの形式を用いる場合には、自分の判断を保留し、肯定と否定の両方の立場から議論を作ることで、主観と客観を意識させるプロセスが重要である。
 なお、発達の段階に応じた指導は重要であるが、小学校の段階でも、論理的な思考に基づく議論の力を付けていく、そして中・高等学校と進むにつれて他者の考えを汲み取って議論を練り上げていくような指導を考える必要がある。

(4)指導方法

 上記(1)(2)(3)の力を養うための指導方法については、例えば、各教科等での指導なども含めて、次のような意見があった。

  • 書かせる指導がより一層必要である。記録文、報告文、説明文、物語文、生活文また論文などを書く機会を児童生徒の状況に応じて多様に設定することが重要である。また、書いたものを分析することを通じて、自分の考えを自分自身にフィードバックさせるべきである。例えば、総合的な学習の時間などで体験活動を行う場合には、自らの考えを深めるため、活動を振り返り「学んだことを書く」という指導が必要である。その際、実感し、思考を深め、自らの生き方を考える、という段階を意識させる指導が重要である。
  • 論理的思考は、例えば、「事実と意見との区別」や「判断と根拠」、「原因と結果」、「比較・対照」という観点から考えることができるので、こうした観点を基にして、国語と各教科等との分担や連携を図りつつ指導を充実する必要がある。
  • 例えば、国語科の読みの指導においては、文章を分析するだけでなく、自らの知識や経験に照らして文章の内容を評価し、自らの考えを表現する、いわば文章と対話するような指導をすることも重要である。
  • 例えば、理科の観察の活動において、観察したことを基に説明するときに、「なぜ」という観点を補うよう指導することや、視点を変えて多面的・多角的にものごとを見るように指導することが重要である。
  • 例えば、社会科の学習において、同一の事象や出来事について、さまざまな立場の人が書いた文章を読んで比較することで、社会の仕組みの長所短所を理解したり、比較したり、より良くするための議論をしたりするなどの活動が重要である。
  • 日常生活の中で、新聞を読んで、自分の意見を話したり書いたりすることも大切である。日常生活の中での論理的思考の育成が必要である。
  • 指導方法を明確にするために、ワークブックなどの教材や教員の研修が必要である。また、各学校における実践事例の集積・共有の努力も求められる。

3.感性・情緒等に関すること

 様々な事象に触れて感性を磨くことは、豊かな人間性を育成する上で大切である。例えば、喜怒哀楽の感情をどのように言葉で表現するかということを考えるとき、身体表現や文化的背景との関わりなどについても考える必要がある。音読・暗唱などの指導や古典の教育の充実が求められる。
 情緒を育てる場合において、論理と情緒とを対立する問題としてとらえることは適当でない。ものごとを直感的にとらえるだけでなく、分析的にとらえることも情緒を豊かにすることにつながるからである。例えば、絵画の説明や分析などの活動も、感性・情緒を豊かにしていく上で有効である。また、物語、小説などの文学的な文章を読むときに、内容や表現についての討論を前提として、登場人物の関係性や作家の発しているメッセージを分析することなどの活動も有効である。
 国語科においては、さまざまな言葉や文章を聞いたり読んだりする機会を充実し、文章の内容だけでなく表現・修辞から生じる感性・情緒にも目を向けさせる必要がある。生活科や総合的な学習の時間などにおいては、体験活動等を通じて子どもたちが驚いたり、疑問に思ったり、感動したりして発する、実感の伴った言葉を豊かにしていくことが求められる。
 また、音楽、図工、美術、道徳での指導との関連を深めていく必要がある。

4.他者とのコミュニケーションに関すること

 人々の共同生活を豊かにするためには、個々人が他者との対話を通して自己を表現し、考えを明確にし、あるいは他者を理解し、他者と意見を共有し、お互いの考えを深めていくことが重要である。日常のコミュニケーションから協同的な関係を築くよう勤める必要がある。
 指導方法としては、ペアや小グループでの活動を含めて、学級内での異なる考え方を相互に取り入れ深めていくなど、教室内の日頃からのコミュニケーションの充実により、集団としての学習力を高めていくという視点が重要である。その際、教室内での議論から置いていかれる子どもが出てくることは避けなければならない。積極的に発言することだけでなく、相手の発言をしっかりと受け止めることを含めて、すべての子どもが偏りなく授業やコミュニケーションに参加し、互いに理解し合えるような配慮が求められる。
 また、同級生だけでなく、異年齢の幼児児童生徒、地域の人々など様々な他者とのコミュニケーションの機会の設定も重要である。
 対話を促進するための具体的な授業の展開としては、正解が一つに絞れない課題を考える必要がある。社会科、理科、家庭、技術・家庭科などでは、例えば、環境問題に関して10年先、20年先の状況について、根拠を示しながら予測する、未来予測の授業など正解が一つとは限らない問いが重要である。また、結論は同じでもプロセスが多様である課題について議論しながら学習を積み重ねていくことも重要である。
 我が国においては、対話や議論は、とかく対立ととらえられがちであるが、対話する、議論することが自分の力を伸ばすし、他者とかかわる楽しさが味わえるという意識を培うことが重要である。具体的に、例えばKJ法(注3)やディスカッション、ディベートなどを通じて、意見の異なる人と協同的に議論する態度を育成することや意見の対立が生じたときの解決の仕方を身に付けさせることを重視すべきである。
 我が国の言語文化の優れた点を継承しつつも、対話や議論に関する新たな文化を創造することを目指す必要がある。その際、多様な発想を互いに披瀝しあうことで新しい認識、総合的な認識が出来上がっていくことを実感させたい。

 (注3)KJ法…文化人類学者の川喜田二郎氏(東京工業大学名誉教授)がデータをまとめるために考案した手法であり、データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめてゆく手法。KJとは、考案者のイニシャル。

 (※上記3、4は、人間関係に関する指導等との関連でさらに検討が必要。)

5.指導に当たっての配慮事項等

(1)語彙について

 児童生徒の現状を見ると、生活体験が不足し、感情を直接的に表現する言葉が多用され、語彙が乏しくなっている。実生活の中で、あるいは読書や遊びを通じてそれを充実させる必要がある。
 論理や情緒に関する高度な語彙を身に付けさせることは、思考力を高めたり情緒を豊かにしたりすることにつながるので、各教科等で養うべき語彙を整理して明確化する必要がある。

(2)言語運用法について

 従来の教育においては、情緒・感性の面に重点が置かれ、論理や表現法に関する配慮が不足していた。義務教育の段階で、言語運用法の指導を体系的に行う必要がある。
 また、文や文章の構造と機能についての理解と自覚を深め、効果的な言語運用を可能にする力を育成することが重要である。文法についても、国語(言語)の特質の理解を進めるとともに表現や対話に役立つ実用的・実践的なものとなるよう見直していく必要がある。

(3)教材について

 主たる教材として重要な役割を果たす教科書については、その質・量両面での充実が必要である。
 また、国語の学習を通じて日本のことを深く理解するために、教材として日本の文学作品を重視すべきである。子どもが熟読する対象となるような古典を教材とする必要がある。
 さらに、言語運用法に関する教育を充実するため、言語の技能としての説明や報告を子どもたちに何回も実施させ、質を高めていくための教材も必要である。

(4)読書活動について

 言語力の育成のためには、読書するための基礎・基本の力を養うことが重要である。国語と他教科等とのねらいの違いを認識した上で、各教科等において、どのような読書活動を推進し、どのような読書指導をするのか明確にする必要がある。
 また、学校での朝の読書、日常生活の中での読書など、教科等の授業時間以外の幅広く継続的な取組が重要であり、これを促進する仕組みを検討する必要がある。

(5)言語生活について

 言語力は、豊かな言語生活の基となるものである。そのように言語生活を豊かにするためには辞書、新聞、図書館など、様々な言語的な道具や場の利用法について指導することも重要である。
 また、言語力を用いる際のモラルや、それに伴う責任を併せて教えることも重要である。

(6)評価について

 上記に関連する指導を実施した後、子どもたちの変容などを把握し、それらに対する評価を適切に行う必要がある。また、評価を行う際には、評価に基づいて指導を改善し、指導のさらなる充実につなげていく視点が求められる。

6.発達の段階に応じた指導の充実の考え方について

(1)基本的な考え方

 言語力の育成に当たっては、子どもたちの発達の段階に応じて指導の重点を工夫しつつ、より効果的に育んでいくこととしたい。子どもたちの意欲ということに留意しつつ、体験や指導を通して、言語に関する様々な約束事(型)に気づかせ、その約束事(型)を使ってものを考える機会をもち、それが身に付いてくるに従って約束事(型)の意味を理解し自分の技術として使えるようにすることが求められる。
 発達の段階に即して教えることと、同じ内容を繰り返して教えることとを組み合わせて、指導内容を配列していくことが大切である。
 小学校では、特に低学年で聞くことに関する指導が重要である。他者の話に耳を傾けることは、人間関係の基本であることから、形式面だけにとらわれずに、実感を持ってその重要性を理解させる必要がある。

(2)学校段階ごとの指導の特質

 幼児期から小・中・高等学校へと発達の段階が上がるにつれて、具体と抽象、感覚と論理、事実と意見、基礎と応用、習得と活用と探究などについて認識や実践ができる水準が変化してくる。それに応じて、指導内容や言語活動の特色付けをしていく必要がある。この点については、例えば、次のような意見があった。今後更に議論を深めたい。

  • 幼児期は体験を共有している人に伝えること、小学校では、体験を共有できていない人に伝えることが重要。また、幼児期や小学校低学年では、体験したことを子どもなりの表現で伝え合ったり、話し合ったりすることを楽しむ時期である。小学校高学年ではものごとを多面的・多角的に見ることにより論理的な思考を身に付けさせることが大切である。
  • 小学校では観察・実験において丁寧に見て、記録することが重要。中学校では、問題を発見・検証して他人に説明すること、高等学校では、なぜかと問いながら活動し、事実判断に加えて価値判断を自分の言葉で他人に伝えることが大切である。
  • 幼稚園は先ず体験する時期、小学校は体験を組織化して目的に応じて整理できる時期、中学校は自らの考え方を主体として論理的に考える時期、高等学校は妥当性をチェックし論理的に表現できる時期である。
  • 小学校段階では、観察・見学・事象の表現。高学年になると、具体の世界から抽象の世界に渡ることができる。意図の推測もできるので、目的的行為の説明などが有効である。中学校段階では、問題・仮説・検証過程の表現が重要。留保条件付きの判断も重要。高等学校段階では、自己の判断根拠の表現が重要。いずれの段階でも、なぜと問いながらの活動は重要。
  • 幼児期には、イメージの形成が中心であり多くの体験が重要である。小学校低・中学年では具体的な思考が中心となるので、事実の正確な理解・記録・伝達が重要である。小学校高学年では形式的・抽象的思考が中心となるので、概念の意味を理解したり、概念に基づいて説明することが重要である。中学校・高等学校では、より高度な形で自分なりの考え方を形成することが可能となってくるので、文章や資料を読解し、評価し、自分の考えを論述することが重要である。
  • 言語に関する感覚や思考力を高めていくためには、メタ認知能力(注4)を育成することが重要である。特に小学校段階から各教科で振り返りの時間を授業に組み入れることも考えるべきである。例えば、小学校であれば、その日の授業について家族に手紙を書くことなどが指導に当たっての工夫として考えられる。

 (注4)メタ認知能力:自らの思考や行動を客観的にとらえて、自覚的に処理する能力。(P)

7.教科を横断した指導の充実の考え方

(1)基本的な考え方

 国語科を中核としつつ、すべての教科等での言語の運用を通じて、論理的思考力をはじめとした種々の能力を育成するための道筋を明確にしていくことが求められる。これまでのところ次のような議論があった。

(2)教科・領域ごとの特質

国語

  • 国語科で育成を図る言語力については、他教科等での活用も視野に入れ、基礎的・基本的な知識・技能を習得することと、それを活用して課題を探究することが重要である。
  • 言語力を育成するため、「受け答えをする」「事実を正確に伝える」「要点をまとめる」「相手・目的・場面を考えて情報を理解したり伝えたりする」「多面的・多角的に物事を見る」「情報を的確に分析する」「自らの知識や経験に照らして情報を評価する」などの技能や能力を育成していくことが重要である。このため、発達段階に応じて重点化を図りながら、適切な言語活動や言語運用法の指導を組み込んでいくことが重要である。
  • 文章や資料を活用し、論理的に考え、表現する力を育成するためには、「情報の取り出し」から「解釈」から「熟考」から「論述」という、いわゆるPISA型読解力のプロセスを参考として指導することが重要である。
  • 伝え合う力を育成するため、相手の立場を考慮しながら双方向性のある言語活動をしたり、建設的な合意形成を目指した言語活動をしたりする技能の育成が重要である。
  • 我が国の文化や伝統を継承・発展させるため、近現代文学や古典をはじめとする言語文化に親しむ態度や、日常的に読書をしたり表現したりする言語生活を構築する態度の育成が重要である。
  • 今日の情報化社会の中で、複数のメディアやテキスト等を活用して、メディアの特性を踏まえた情報評価能力の育成が重要である。

社会、地理歴史、公民

  • 社会科、地理歴史科、公民科では、身近な地域の観察・調査などを行う学習において、的確に記述し解釈を加えて報告すること、法則性や概念を基に事象を説明すること、価値判断が必要な場面を設けて各自の解釈・判断を論述したり、意見交換したりすることなどが重要である。
  • 社会科、地理歴史科、公民科では、言語力や教科が求める思考力の育成のために、様々な資料を的確に読むことや、比べて読んだり、批判的に読んだりすることが重要である。

算数・数学

  • 算数・数学科では、算数・数学を活用する活動に重点をおき、その活動がよりよく行われるよう筋道を立てて説明したり論理的に考えたりして自ら納得したり他者を説得したりすることを大切にし、予測や推測を生み出すための指導が重要。
  • その際、帰納的な考え方や類比、予測や推測を後付け検証するための演繹的な考え方をはぐくむ必要があり、それらの考え方をよりよく用いるために言語力は重要な役割を果たす。

理科

  • 理科の場合、小学校中学年では、例えば植物の観察などにおいて、問題意識や見通しをもちながら視点を明確にして、差異点や共通点をとらえ記録・表現すること、小学校高学年では、例えばものの溶け方などにおいて、条件や規則性に着目して事象を説明することが重要である。中学校から高等学校の段階では、観察、実験の結果、状況により資料等を加え考察し、科学的な概念を理解し、実証性・再現性・客観性などの視点から評価、論述したり、討論したりすることが重要である。
  • 理科では、発想した予想や仮説の検証方法を考察する場面で、それぞれの予想や仮説と検証方法を討論しながら考えを深めあうこと、結果の解釈場面で、結果の確証や反証を基に観察・実験の方法や、発想した予想や仮説の真偽を検討しあうこと、そうした指導の充実がコミュニケーション能力の育成に有効と考えられる。

外国語

中・高等学校
  • コミュニケーション能力の育成と文法指導を対立的に捉えることは適当ではない。ルールとしての言葉の仕組みの理解と、ルールに基づく創造的な言語運用について、両者を関連付けた指導を充実することをめざす必要がある。
  • 外国語の学習を通して思考を知覚の対象とし、思考に対して注意を払うことにより、言葉を焦点化したり修飾関係をとらえたりして、メタ言語能力を高め、言葉に対する感性を磨く必要がある。
  • コミュニケーション能力の向上や思考力の向上のためには、言語の基盤となる語彙力の充実が求められる。その際、語彙を機械的に覚えるだけでなく、実際に使用するなど積極的に活用させることが必要である。
小学校
  • 小学校の英語活動等においては、体験的な活動等を通して言葉の持つ意味、言葉の大切さ(言語による相互理解等)、日本語との違いなどに気づかせたりすることが可能となる。このことがメタ言語能力の芽生えを形成する上で重要である。
  • 小学校の英語活動等においては、コミュニケーション能力を養う上で必要となる積極的な態度の育成が可能である。中学校以降続く英語教育にも資するものである。また、非言語を含めて、コミュニケーションを図るために、言語力を総動員することの大切さを理解させることができる。
  • 小学校の英語活動等は、小学生にとって自己を表現したり、言語やコミュニケーションに関する感覚を養う体験的機会と捉えることが可能である。また、他の言語にふれる体験を通して、日頃用いている日本語の特性について気づいたり、日本文化について発信したりするなどの機会ともなる。

 (※ 特別活動等との関連について、さらに検討が必要。)

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)