高等学校におけるキャリア教育の推進に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成18年6月23日(金曜日)10時~12時

2.場所

丸の内仲通りビルK6会議室(地下1階)

3.議題

  1. 報告書(案)

4.出席者

委員

渡辺(主査)、新井、上田、鹿嶋、玄田、西山、の各協力者

文部科学省

坪田児童生徒課長ほか

5.議事要旨

 報告書(案)につき、鹿嶋ワーキンググループ主査から説明後、自由討議が行われた。

 報告書(案)第1章に関しては、キャリア教育の現状の指標が他にあれば付け加えたいと思うがどうだろうか。高等学校におけるキャリア教育の現状に関して書かれているが、他にも付け加えるものがあるだろうか。

 報告書(案)第1章はインターンシップの記述に偏っているのが気になる。インターンシップ以外の指標は他にないだろうか。例えば「産業社会と人間」をうまく活用している事例などはどうだろうか。「産業社会と人間」が総合学科だけではなく例えば商業、農業、専門学科、普通科でもやっているという可能性があれば付け加えることができるのではないだろうか。

 実施している学校数まではない。一時期、高等学校教育の改革に関する状況を昔の高校課にあった改革推進室が年度ごとに毎年つくる中に「産業社会と人間」を普通科で導入している学校が毎年載っていたので、あれを年次で追っていくというやり方もある。しかし数字を具体的に出せるか分からない。

 「産業社会と人間」以外に、キャリア教育に相応しいあるいはそれを目的とした試み、総合的な学習の時間などでも結構だが他にないだろうか。

 広島県が総合学科を設けた数も多かったが、普通科に産業社会と人間を導入しているということも調査で分かっている。県教育委員会は「産業社会と人間」をどれだけ普通科に導入しているかについて知っていると思う。

 「産業社会と人間」を行ったことについて生徒の反応などがデータであればいいが難しいだろうか。「産業社会と人間」を行っているだけではあまり意味がないだろう。

 スクールカウンセリングというのは広い意味でキャリア教育に入るのか。キャリア教育に含まれるのであればインターンシップや職場体験など、核となるもののデータだけではなく、スクールカウンセリングの現状などもデータとして入れることはできないだろうか。

 スクールカウンセラーの不登校生徒に対するキャリアの視点を取り入れたカウンセリングが成功したという報告が学会などで実践事例として報告されてくるようになってきている。しかし、スクールカウンセラー自体がどれくらいキャリア教育の問題に取り組んでいるのかについての数字的なデータはない。

 キャリア教育の必要性の中に、個のキャリア形成に関わる専門家が不足しているということを提言として入れるのはどうか。
 スクールカウンセラーそのものの中身を見ると、臨床心理士の資格の中に産業界についての知識が必要だと言い出して、資格認定の科目の中に「産業心理学」、「キャリア発達についての理解」を入れることを言いはじめてはいるが、実際には知識として入れる程度である。

 インターンシップ、職場見学という言葉を並べるとそれをやりさえすればキャリア教育を実践しているような印象を与えてしまうのではないか。そのような事例を提示することは重要だと思うが、キャリア教育を個別的・持続的・包括的に実施していくうえでのキーワードとなるような表現を入れる必要があると思う。そのキーワードの中でインターンシップ、職場体験を実施することに意味がある、という構成にすべきではないか。
 提言書を作る際に、過去に提言したことをもう入れる必要はないと考えるのではなく、何度も言葉の繰り返し表現を用いるなど提言書に入れる必要があると思う。そうしなければ分かっているのは専門家だけということになってしまい、結局「キャリア教育」の意味が正しく伝わらない可能性がある。

 具体的な策ばかりではなく、核となる理念を常に共通用語をして入れる必要がある。
 第2章に関してだが、提言3:キャリア教育に関する教科・科目あるいはその内容の必修化に向けての検討、とあるが、「産業社会と人間」のような科目を新たに設けなければならないような印象を与えてしまう可能性がある。教育活動全体をキャリア教育の視点から行っていくという非常に漠然としてはいるがそこに包括性がある。こういうものを通してキャリア教育の軸を創っていくとか、キャリア教育の核として広げていくとか、そういった表現にすべきではないか。

 総合学科でも原則入学年次で「産業社会と人間」をやって、3年で課題研究を行うが、その間が続かないというのがしばしば言われることである。「産業社会と人間」の成果を次の学年につなげていくためには2年生でもう一つ科目を設けなければならないと思う。

 提言が幅広く、誰に対して提言を行っているのかが分からない。提言16、17においては、国に対する提言であるし、提言1、2では高校に対する提言になっている。また、ある部分では教育委員会に対する提言も含まれている。さらには学校、教育委員会などの既存の組織ではなく、別の組織を作らなければならないと言っている提言もある。提言をしっかり覚えてもらうためには対象を明確にすべきではないか。
 また、提言16に関しては、予算をとって追跡調査をしっかり行ってキャリア教育は効果があるということをしっかり示すべきだと思う。

 追跡調査は金がかかる。しかも、予算は単年度主義の立場に立っており、10年間追跡調査を実施するとすれば10年度分の予算をまとめてとる必要があるため難しいと思う。

 追跡調査の場合、追跡調査される側も自分の過去を追ってくれたこと、また過去を振り返ることができる機会ができることに関し、うれしく思うものだ。
 個人情報保護法の関係で個人情報の公開に関して縛りがかかっているが、サンプルとなっている人も共同研究者の一部分として捉えれば情報公開も可能になるのではないか。

 高校のキャリア教育の中でアルバイトはどう位置づけられているのか。多くの高校ではアルバイトは禁止されているが、キャリア教育の観点から重要ではないか。

 学校側からすると、アルバイト経験者が学校生活に与える影響は生徒指導の観点からすると好ましくない。しかし、悪影響がどれほどかについての数字的なデータはない。しかし、問題のある生徒を調査してみるとアルバイト経験者が多い。しかも、キャリア教育にアルバイトが役立っているかということに関してはどうも役立ってはいない印象を受ける。学校側がキャリア教育にアルバイトを位置づけていないということも要因の一つにあるのかもしれない。

 子どもたちが家庭の事情など色々な理由でアルバイトを行っているのであれば、それをキャリア教育の一環として生かして学校側がきちんと管理して就業体験につながるような指導をしてほしいとも思うが、現場の意見としてはどうも難しいようである。
 また、インターンシップとアルバイトでは企業側の態度も異なり、アルバイトに対しては単なる労働力とみなしている面もある。

 今はフリーター争奪戦の時代である。アルバイトをうまく育てる企業も多く、教育力がある企業も多い。

 報告書(案)第3章のキャリア教育の進め方具体例のA高等学校「3年間の指導計画」で1年生の10月に将来を見えた文理選択説明会があるが、その前に学部・学科研究を行う必要性はないのか。
 また、中・高連携の体験入学などは入れなくてよいのか。

 年間計画例は、高校普通科のキャリア教育の理解を深めてもらうための年間計画として提示したい。
 新入生オリエンテーションではなぜ働くのか、学ぶのかについてやるのではなく、中学から高校への移行について高校への新しい適応について考えさせるのが重要だと思う。その後、なぜ学ぶのかについて考えさせるべきではないか。

 1学年の前に例えば中高で連携した体験入学などが必要ではないか。そうすれば中高の接続を強調できるのではないか。

 2年生は体験入学してくる中学生を指導するなどのことが考えられる。それがリーダーシップの勉強にもつながる。

 「文理選択」ということに関していえば、学習指導要領にガイダンスの機能の充実ということが書かれている。中学校での選択教科は新学期が始まってから選択するが、一番いけないのは生徒が各選択科目で何をやるのか知らないで科目を選択することである。1~2週間かけて様々な教科を体験することを考えてみてはどうだろうか。高校の文理選択説明会というのは大変素っ気なく感じる。生徒はよく分からないまま説明会が終了してしまっているのではないだろうか。

 夏休みに選択科目の模擬授業を体験させて生徒に科目を選ばせるのはどうだろうか。

 総合学科に置かれたキャリアカウンセラーの相談事項で一番多いのが「履修相談」である。コース選択、科目選択の際、生徒は大変悩んでいるのが現状であるため、生徒の相談に応じることは重要である。

 相談は予備校ではしていないのか。

 実態調査では進路相談で一番の相談相手は中学校も高校も学校の教師である。

 保護者は確かに中学校から高校への進学段階では、学校の情報よりも予備校の情報を信じる割合が高い。それに対してきちんと情報を持とうとする学校と予備校と契約して学校に予備校講師を派遣する中学校の2つに分かれる。

 A高等学校は性格検査が多いのではないか。1つの検査を行えば3ヶ月から半年は使えるのに、次から次へと検査をするのはどうか。また、1年生時に実施される性格検査の内容とは何か。キャリア教育との関連性がよく分からない。

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初等中等教育局児童生徒課