人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(第14回) 議事要旨

1.日時

平成16年11月16日(火曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

経済産業省別館 10階 第1012号会議室

3.議題

  1. とりまとめの方向について
  2. その他

4.出席者

委員

 福田座長、伊藤委員、梅野委員、岡田委員、小島委員、塩委員、志水委員、菅原委員、林委員

文部科学省

 宮川視学官、亀田児童生徒課長補佐、他

5.議事要旨

(1)とりまとめの方向について

事務局から資料について説明の後、自由討議を行った。主な内容は以下の通り。

○ 第一次とりまとめについて、さらに具体的に加筆する事になる。何を加えるかという事だが理論的に考え、それが具体的にどういう場面かを示さなければならない。どういう場面・状況を示していく時に網羅的に、まして全教科的に書いていくのは大変だと思う。しかし、それを入れる事によって内容はより深くなる。だから、とりまとめの方向(素案)は良いと思う。ただ、チェックポイントに関しては学校評価の観点から考えてはどうかと思う。

○ 前回の第一次とりまとめについては教科以外の部分、いわば学校づくり、学級づくりという点をもう少し踏み込むべきであった。児童生徒が生きて行く場所全般を捉え、養った人権感覚が目に見える様な方向性があった。配付資料の中で学級崩壊の件を取扱っているが、「とりまとめの方向(素案)」の中に、体験活動、学級活動等が入っていない。総合的な学習の時間の様に、教科に軸をおいた印象を受ける。バランスが問われると思う。

○ どうやって、学校を作っていくのか。学級についてどう考えていくのか。具体的な実現方法は、国際的に見てもある。

○ 学校現場を指導する時にポイントとなるのが、単発で終わるのか、終わらないのかということ。教員の組織的実践力もあるが、カリキュラムにしっかりと仕立て上げなければ継続しない。人権教育指導のカリキュラムという形で実践事例を取りまとめる事も大事になってくる。松原市でも幼稚園から高校まで11年間のカリキュラム化を整理している最中である。提供性という観点から取りまとめる事も必要である。2つ目として、学校評価が広まってきている。時代の流れとして学校の評価改善システムがあるので、人権教育が尊重されている学校がポイントとして大事になる。学校評価のポイントが第一次とりまとめの第2章8つのポイントで示されていると思う。このような方向性で取りまとめる事によって、一層、第一次とりまとめの具体化に繋がると思う。

○ 人権感覚というのは、個々の子ども達がどのように考え実践していくかという個の問題に繋がる。指導事例集を出していくに当たり、個の問題でなくなり埋没していく気がする。さらにカリキュラム上どうするか、という大きな問題では、ますます個が消えると考える。学校づくりなど大きな動きと共に、それぞれの視点が必要である。私が指導事例を読んでいて感じるのは、個々の子ども達の心の動きなどが埋没しているという点であり重大な問題だと考えている。もし指導事例を出す場合、模範解答を出すのか、葛藤なども含んだ物にするのか提出方法の問題もある。

● 子ども達が教員に対しどういう態度で接したか重要な点である。ただ、単発の事業ではいけないので、まずは指導のねらい、方針に基づいて指導する。その両方が大切である。しかし両方が上手く組み合わさった事例というのは少ない。集めた資料を示す方法は難しいと考えているので、本日議論していただきたい。2つ目の葛藤という部分は、公に示す資料なので上手くいかなかった事例を示すのは難しいとは思うが本日お配りした学級崩壊の例がそれに当たると思う。

○ 公文書が現場に与える威力というのはある。相当注意する必要がある。出した物がどう受け止められるか、考える必要がある。

○ 第一次とりまとめは基本コンセプト。今、議論しているのはどうやって事例を集めるかという事。カリキュラム化、一貫性をもって抽出する方法もあるが、もう一つ違う方法もあると思う。ランダムに汲み上げる方法。色んなアプローチを集める。前者の方法は非常に時間がかかる。

○ 神奈川県で人権教育の指定を受けて実践化されて報告書が上がってくるが、かなり長いスパン、8~10ヶ月で積み上げて最後に講演会、授業実践をして報告している。ある程度、導入する段階でカリキュラム化して構築する。しかし実際、学校は大変忙しい。学校の教育現場の中でどういうふうに、デザイン出来るかが大切である。最低限の短い時間で横断的にやるような事例を示す必要があるのではないか。

○ とりまとめのイメージが難しい。従来型の「教科型」、教科横断の「総合型」、「トレーニング型」のバランスをどう取るのか。長期にカリキュラム化したものと、研究公開型とを、どのような塩梅にした報告書にするのか。

● 必ずしも綺麗に分類して構成することは、第一弾としては難しい。多少アンバランスであっても集まった中で良いものを取り上げようと考えている。

○ 例えば、「自分の大切さをどう感じさせるか」というテーマがあって、幼稚園生と小学校5年生の受けとめ方は違う。もし事例を、幼稚園から集めると発達段階が表れてくると思う。そうすれば自然とカリキュラム化されてくるのではないだろうか。

○ とりまとめの方向(素案)の1.2にもあるように、幼稚園段階で人権感覚を育てるにはどのような能力が必要か。明らかにしていくことが必要である。

○ やはり、きっちりとカリキュラム化するのは難しい。この会議の中で「人権感覚を身に付ける」が一つのキーワードである。第一次とりまとめの5ページ1から3は、人権感覚を身に付けるスキルだと思う。例えば実践的な1(1他の人の立場に立ってその人に必要なことやその人の考えや気持ちなどが分かるような想像力や共感的に理解する力)の事例を集めれば良いのではないか。コミュニケーション能力は人権感覚を培う為の一つの能力である。このような事例が実践的に系統付けられている観点に基づいて構成されると良い。「教科型」、「総合型」、「トレーニング型」に縛られずに、この会議で議論される観点で事例をひとまとめにする方法が現実的と考える。指導方法の研究についても、とりまとめの方向(素案)2ページ45にあるように、一つの観点として考える必要がある。

○ かなり具体的なレベルである「能力」や「技能」、さらに「指導方法」などに一貫性を持たせる必要がある。選ぶからには、フレームワークは必要である。例えば、国語の授業でコミュニケーション能力の、お互いの人権感覚に繋がるような指導を10分間行うというような、具体的スキルを伸ばすような指導もある。

○ 子どもと子どもの間の人権、高齢者や障害者との連携、幼児との交流などの活動などの事例が多くなると考えられる。学校の中で、人権教育を教える事例は一時間の授業の中で教える事例だけでなく、生徒指導の観点から集団指導・個別指導の場面が考えられる。休み時間のちょっとした時間を使ったシンプルな事例も集められるのではないだろうか。事例の最終とりまとめをWEB化した場合、事例の検索のし易さも考える必要がある。

○ 全体の学校づくりのチェックポイントを示すのも我々委員の役目である。

○ 今の子ども達は、自尊感情、自分を大事にするという感情が欠けている。外国に比べ非常に高い率である。自分を大事にするという気持ちを育んでいけば、他人を大事にする心に繋がる。

○ 単なる欲求や欲望を権利と思い込んでいる子どもがいる。子ども達が権利を口にすると教師達が気後れしてしまう。こういう部分が、第一次とりまとめでは不十分であった。

○ 事例収集の前にフレームワーク作りが必要になると思うが、第二次とりまとめの前にいつ、作成するのか。

● 夏を目途に考えている。議論と平行して、指導事例の精選も行っていきたい。

○ 委員が事例を作成、提案することも、非常に意味があると考える。委員の提案は必要だと考える。

● 事務局が考えているのは、委員がこれまで色々な場所で見聞きされた、或いは資料としてご覧になったものなど、情報などを出していただきたい。委員の考えどおりの資料が無い場合は既存の資料を加工するなり、ご提案いただきたい。
 教科に偏るのではなく、学校、学級づくりの事例も当然含まれるべきである。

○ 事例を集めるに当たって、個が埋没してしまう危険性がある。例えば授業を受けた子どもの感想文など子どもの肉声が伝わるようなものがあれば、一緒に提出していただきたい。人権感覚の視点で見た高校の情報教育の事例も是非、提出していただきたい。

○ 例えば社会や道徳の事例のように第一次とりまとめの特徴的な事例が集まってくるのでは。意識的に新しい方向性の事例を分けて集めていかないといけないのではないだろうか。また、先程お話のあった高校の情報教育については、確かに著作権の問題があって人権教育に繋がると思う。しかし、高校の情報教育の先生というのは殆ど理系の先生で事例を集めるのは難しいと思うが、個人的には興味がある。こちらが欲しいものを投げかけるという方法は是非採って欲しい。

○ 教育委員会に依頼する時に授業参観で取り組むような項目を一つ出して欲しい。

○ 教育委員会で事例を収集する以外に教員組合など別のソースから汲み上げる事も考える必要がある。

以上

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課