人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成15年10月7日(月曜日) 15時~17時30分

2.場所

霞山会館 「さくら」

3.議題

  1. 中学校における人権教育の取組について
  2. その他

4.出席者

委員

 福田座長、押谷座長代理、館臨時委員、有村委員、伊藤委員、梅野委員、岡田委員、塩委員、志水委員、高橋委員、仁科委員、林委員、森委員、若井委員

文部科学省

 金森大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、関児童生徒課長、亀田児童生徒課課長補佐、宮川八岐視学官、宮川保之視学官、高田人権擁護調査官補佐(法務省) 他

5.議事要旨

(1)中学校における人権教育の取組について

館臨時委員の意見発表

 館臨時委員から説明の後、質疑応答を行った。主な内容は以下の通り。

 多数決について扱う場合、少数意見をどのようなかたちで尊重するかがポイントになると考えるが、授業ではどのように扱っているか。

 多数決で物事を決めると、自分はやりたくないけど決めたことだからやらなくてはいけない、といった葛藤が生徒達に生じることもあるが、そのような経験自体が大切ではないかと思う。難しい問題であるが、授業では、少数者が同意できるような多数決の在り方について話し合わせるなどの取組をしている。

 どのような教材、資料を意識的に使っているのか。また、権利と対になる義務についてはどのように教えているのか。米国の法教育を日本に生かすためには、どのようにすればよいと考えるか。

 新聞を教材として活用することが多い。また、判例の基となった事件について生徒達に考えさせるなど、なるべく具体的な教材を使うようにしている。生徒達に対し、抽象的な概念をどう定着させるのかについては、難しさを感じる。人の権利とは皆が守るべきものであり、義務についてもしっかり教えていきたいと考え、授業でも扱っている。

仁科委員の意見発表

 仁科委員から説明の後、質疑応答を行った。主な内容は以下の通り。

 思春期の生徒にとっては、一人の先生にゆっくり話を聞いてもらいたい、ということもあると思うが、2人担任制に何か課題はあるのか。また、授業理解度調査とは、具体的にはどのような内容か。
 生徒会活動等における生徒の主体性を尊重した取組の背景には、先生の生徒に対するカウンセリング的な関わりや温かく受け入れる姿勢があるのではないかと思うがどうか。

 1人の先生とじっくり話す、という観点からは、生徒達は話をする先生を選ぶなど、子どもはうまく利用していると感じる。2人担任制の場合、2人の担任同士の関係がうまくいかないと、生徒・保護者との関係や学級経営もうまくいかず、先生自身も試されていると言える。
 授業理解度調査は、無記名のアンケート調査で、各教科について5段階の理解度や自由記述での要望等について調査を行っている。
 主体性を尊重した取組については、生徒に「任せる」前の基礎・基本が大事であり、生徒会担当を中心に、話し合い活動を各学級で指導した。本校では、スクールカウンセラーの他、スクールカウンセラー有資格者の教員が1名、カウンセリングの勉強をした教員が数名おり、カウンセリング的な支援環境がかなり整っている。

(2)その他

 自由討議を行った。主な内容は以下のとおり。

自由討議

 人権教育を進める上で、地域社会、保護者の協力が不可欠であるが、学校評議員以外で、地域の人達の意見をどのように集約したのか。
 また、福祉施設等での体験活動など、地域力の活用については施設側に受入の限界もあるとのことであったが、施設等に対する学校の人権教育の方針についての説明の仕方など、地域社会への働きかけについて教えてほしい。
 生徒による授業評価は、高校でも大きな課題であるが、授業理解度調査の活用方法はどうなっているのか。

 学校評議員制度に先立って、平成9年から、地域の町内会長、青少年委員、民生委員、出張所長、児童館関係者等の地域関係者(学校評議員も含む)50人程度から構成する学校協議会を設置し、青少年の健全育成、防災、地域人材の活用等のテーマに取り組んできたところであり、この学校協議会を通じて地域の人達から意見をもらっている。
 重度の高齢者施設との交流では、デイサービスの交流活動に生徒が体験活動として参加する形で行うなど、ボランティアといっても、難しさはあるが、学校としては配慮を忘れてはいけないと考える。
 授業理解度調査の結果は、各教員に示し、反省材料として真摯に受けとめることとしているが、調査結果は人事考課等には使っていない。公表はしていないが、学校評議員には示している。

 中学3年公民での授業実践を紹介してもらったが、中学3年間の一貫した教材を作成している。

 中学の社会科は地理・歴史・公民の3分野があり、一貫性を持たせるのはなかなか難しいが、小学校段階から、話し合いや多数決に関する一貫した指導は必要ではないかと思う。

小・中・高校に一貫した、発達段階に即した人権教育が課題となるのではないか。人権学習とは、人の話を聞く能力・技能を高めるものでもある、という観点もあるが、そこから、人権学習により学力一般をも高めるという結果が期待されるのだという発想が重要になってくるのではないかと思う。

 人権教育とは、学校の在り方、雰囲気全体の中で学ぶものであり、人権教育は学校づくりの試みと言えると思う。先生が子どもから話を聞こうとしたことによって、生徒も主体的になれたのではないかと思うが、他の学校にも参考になるところを引き出すという観点から、当該中学校でこのような取組が可能であった背景には、どのようなことが重要であったと考えるか。

 荒れた学校を経験している教師が多いことが原動力となったのではないかと思う。何とかしなければ、という思いから、子ども達が活躍する場所を作ろうという方針で取り組んできた。学力も上がってきており、生徒の主体的な取組と教員の力が相乗効果となっているのではないかと思う。

 社会科で多数決について考えさせることにより、判断力等の向上や、自他の意見をどのように尊重していくかについて考えることなどにつながってくると思うが、多数決について授業で扱うことにより、実際に生徒達が変わったと思えるような点は何かあったか。

 教えたことがどこまで伝わり、行動となって現れているかは確認していないが、話し合いを大事にしようという姿勢は感じてくれていると思う。教科指導で教えた理念的なことが行動となって現れるのは学級活動であるが、必ずしも教えたことが定着していないと思われることもあり、生徒達の姿勢に現れるようにという思いで取り組んでいる。

 クラスの雰囲気を気にする子どもが多く、なかなか自分の意見を言わないという問題とも関わってくるが、人権教育によってそこをどう変えていけるのか、という問題がある。

 そのような中学生の問題は、中学生という発達段階上、当然に出てくるものであるのか、それともそれまでの人権教育の問題と考えればよいのか。人権教育の取組によって改善できるのかどうかを見極めないと、どのような指導が必要なのかについての考えがブレてしまう。

 発達段階上の必然のものであるという考えが一人歩きすると、宿命論につながりかねない。しかるべき人権感覚が育てられればそのような問題は出てこないのではないかと思う。

 人権・民主主義に関して重要なポイントになるのは何なのか、自由・平等といっても様々な考えの人がいる中で基本となるのは何なのか、学校の授業で扱うとしたらどういうことが可能であるのか、人権教育の前提として必要であると考える。

 人の生命に関わる問題を学生達にぶつけてみると、ちゃんと反応する学生が多い。世の中が人の生命に対する価値観に反しているようなところはあるが、掉さす視点を示すことにより、今の若者達もきちんと考える。そのようなところに人権教育の可能性が見える。最終的には、人間の価値・尊厳をどう捉えるのか、というところに関連してくるのではないか。

 事務局より次回日程について説明の後、閉会。

(以上)

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初等中等教育局児童生徒課