人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(第30回) 議事要旨

1.日時

平成19年7月30日(月曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

ホテルフロラシオン 3階 「クレール」

3.議題

  1. 「第3次とりまとめ」について
  2. その他

4.出席者

委員

福田委員、菅原委員、有村委員、梅野委員、神山委員、神野委員、小島委員、谷口委員、林委員、増田委員、若井委員

文部科学省

木岡児童生徒課長、塩原児童生徒課課長補佐、他

5.議事要旨

指導等の在り方編について

※ 資料3、4に基づき「在り方編」の案について、事務局より説明が、各WGリーダーより補足説明があった後、審議がなされた。

全体関係

【委員】
 「指導の在り方編」は、[第2次とりまとめ]をベースに、【参考】・【参考例】の大半を実践編へと移し替えた上で、必要な加筆修正を加えてできあがってきたものであり、その基本的な考え方において、第2次まとめと変わるところはないということだが、第2次まとめから実際に書き換えられている部分の書き換え理由については、ひととおり整理して、共通理解を図れるようにしてもらえるとありがたい。

【委員】
 「参考」と「参考例」の使い分けに決まりはあるのか。第2次まとめでは、単なる例であるものと、そうでないものとで重みの違いがあるとの整理であったが、もとより両者の境界線は曖昧であり、両者を分けるメリットは乏しいのではないか。

「第2章第1節 学校としての組織的な取組と関係機関等との連携」関係

【委員】
 P8の「【参考】『隠れたカリキュラム』」は、「(2)学校における人権教育の取組の視点」の末尾に置いてあるが、文脈のつながりがわかりづらい。「(2)」は、前半の1~3段落目までで人権尊重の環境づくりに関することを、後半の4、5段落目で学校における身に付けさせる資質・能力に関することを記述しており、「隠れたカリキュラム」につながる流れから言えば、「【参考】」は、2段落目の後ろ辺りに置くのが適当ではないか。

【委員】
 P10の「人権尊重の精神に立った学校づくり」の図では、「学習活動づくり」・「人間関係づくり」・「環境づくり」の3本柱相互の関係に加え、「生徒指導」・「学級経営」・「教科等指導」という3つの活動領域との関係を整理しているが、原案では「学習活動づくり」と「人間関係づくり」の間に「生徒指導」が置かれた上、さらに、「人間関係づくり」と「環境づくり」の間には「学級経営等(生徒指導)」が置かれており、「生徒指導」が2回出てきてわかりにくく、かえって混乱を招く感じがする。むしろ簡略化して、「学級経営等(生徒指導)」は単に「学級経営等」としてしまうか、或いは、整理しきれないのであれば、「生徒指導」・「学級経営」・「教科等指導」の3つの活動領域との関係は、削除してしまってもよいのでないか。

【事務局】
 P9~14の「1.学校の教育活動全体を通じた人権教育の推進」本文の記述は、「(1)人権尊重の精神に立つ学校づくり」(=学習活動づくり・人間関係づくり・環境づくり)が、「(2)教育課程の編成」、「(3)生徒指導」、「(4)学級経営等」といった教育活動全体を通じて進められるとの整理に基づいて記述おり、図は、(1)と(2)(3)(4)との間の“つなぎ”を意識して挿入したもの。
 ○○(まるまる)づくりの3本柱と教育活動の3領域とは、もともときれいな対応関係になく、図に落とし込むため無理をしている面はある。ただし、○○(まるまる)づくりや「人権尊重の理念に立った生徒指導」、「人権尊重の視点に立つ学級経営等」など、いろいろな言葉が踊っているので、これら全体を概括する必要はあるかと思い、原案では、敢えて図を入れている。

【委員】
 P13の「【参考】学級経営の留意点と人権教育」では、「学校や学級での生活等の中で」自他のよさを認め合う態度等を育むこととしているが、第2次まとめの際には、「【参考】学級経営の留意点」として、自己と他者に対する尊敬の念等を、「『人権学習』、『自主的活動』、『学校や学級等での生活』を通して培っていく」としている。第3次の段階で「人権学習」、「自主的活動」が削られたとなると、これらを否定した印象にならないか。検討が必要である。

【委員】
 P13の「(5)」のタイトルは「人権尊重の視点からの学校づくりと学力向上」となっているが、「学校づくり」については「(1)」の「人権尊重の精神に立つ学校づくり」ですでに出てきており、繰り返しになる。(5)は「学力向上」について述べるパートであり、タイトルも、例えば「人権尊重の視点からの学力向上」のように、学力向上だけに絞った方がすきっりとしてよいのではないか。

【委員】
 P13の「(5)」では、学力保証や学習権といったようなアプローチからでなく、「効果のある学校」の論も引きながら、学校という学習の場の在り方が、ひいては学力の向上にもつながっているということを述べている。一番最初の包括的な概念である「学校づくり」にもう一度立ち戻って、それが学力向上にもつながるんだということを言う趣旨であれば、タイトルについても、案のままでよいかもしれない。

【委員】
 P20「(3)校種間の協力と連携」の冒頭で、「子どもは保育所、幼稚園から、小学校、中学校、高等学校へと学習の場を移しながら成長する」としているが、高校以外に進学する場合もあるので「高等学校等」とした方がよい。

「第2章第2節 人権教育の指導内容と指導方法」関係

【委員】
 P22の「1.指導内容の構成」の本文6行目に「学校教育における各教科等やその諸領域」の表現があるが、これはどういう意味か。一般的な用語として「各教科・領域」という場合は、“各教科及びその他の領域(道徳・特別活動)”の意味で使うことが多いが、その意味なら例えば「各教科をはじめとする諸領域」のようにした方がよいのではないか。それとも、「各教科等」の中に「領域」があるという整理か。「1.」の下から2行目には、「各教科、特別活動、総合的な学習の時間等の諸領域」の表現もあり、この部分も併せ、わかりやすい表現に改める必要がある。

【委員】
 P23の「【参考例】『知的側面に当てた指導内容の構成の例』」は、1.で「社会科等」、2.で「総合的な学習の活動、特別活動及びその他」、3.で「外国語」の名を挙げ、その授業例を示しているが、「道徳の時間」についても、何か1つ入れておかなくてよいのか。

【委員】
 参考例の例示では、必ずしも全部の例を拾うまでの必要はないであろう。

【委員】
 P25の「【参考】『効果的な教材の例』」の「3:生命の大切さに関する教材」の内容として「○ 妊婦をゲストティーチャーとした講話の教材化」が挙げられているが、これでは“ゲストティーチャーは妊婦”と特定することになり、具体的になりすぎないか。

【委員】
 P30.1行目の「高等学校定時制課程など青年中期以上の者を対象とした学習指導」とはどのような意味か。青年中期(高校生)について、定時制と全日制を分ける意味はあるのか。それとも“青年中期より上(19歳以上)”に着目したものか。記述を整理する必要がある。

【委員】
 P30の「【参考】『発達段階に即した人権教育の指導方法』」で、情報リテラシーの育成が青年初期と青年中期に位置付けられているが、携帯電話の普及等によって、中学校・高等学校で起きているような問題が、小学校の段階でも、すでに同じように起きているのではないか。そういうことを踏まえると、「小学校4~6学年」の段階においても情報リテラシーの育成を図る必要があるのではないか。

【委員】
 インターネットによる人権侵害に関する指導は、小学校高学年段階でも必要であり、P30、31の【参考】では、小学校高学年段階における情報リテラシーの指導等についても記述すべきである。その際、「青年初期」・「青年中期」段階の指導とどう書き分けるかについては、工夫が要るだろう。

【委員】
 P32の「4.」「(2)個人やプライバシーに関することへの配慮」中に、「一方、個人情報やプライバシーをどのように捉えるのかという点については、様々な疑問や誤解も生まれている」との一文があるが、これでは、何を言っているのか、わからない。誤解を生じないよう改める必要がある。

【事務局】
 この部分は、もともと、もっと深い意味の記述があったところだが、事務局でまとめる際に簡略化しすぎて、わかりにくくしてしまったようだ。第2WGからいただいた案では、個人情報保護について過剰反応の問題も指摘されていることを念頭に起きつつ、学校における個人情報保護については、単に、“個人情報に触れない・近づかない”といったような形式的な対応だけで事足りることにはならなない、といった趣旨の内容が書かれていた。特に、人権教育の指導に当たっては、例えば「自己開示」を介し他者とつながる経験を積み重ねること等が重視されるといった要素も入ってくることになる。こうした点に言及しつつ、自分の情報をセルフコントロールする力の重要性に関する指摘へとつなげていくことが、この部分の記述の本来の趣旨であった。

【委員】
 P32の「4.(2)」では、なお書きとして、(教師自らが情報モラルを持つことに加え、)子どもに情報モラルを学ばせることの重要性に言及しているが、なお書きという位置付けでよいのか。「4.(3)」という形で、独立させてもよいのではないか。ネット上における誹謗中傷の書き込みなどは、最近では無制限にやられている実態もあり、情報モラル教育等については、やはり、ある程度大事ですよというところを、実践編だけでなく在り方編の中でも、位置付けた方がよいのではないか。

【事務局】
 P32の「4.」は、人権教育の指導内容・方法について、“こうしたことに気を付けなければいけない”という意味での配慮事項をまとめたパートであり、“こうした指導が大事であるから積極的に取り組むべき”といったような、推進すべき指導内容・方法を取り扱うパートではないので、情報モラル教育については、なお書きに止めたもの。

【委員】
 ネットいじめなどについては、本調査研究会議としても関心を持っているというスタンスを、もう少しはっきりと打ち出していってもよいのではないか。

「第2章第3節 教育委員会及び学校における研修等の取組」関係

【委員】
 情報モラルについては、P36、37の「イ.人権尊重の理念の理解と研修を通して身に付けたい資質や能力」の中で、もっと詳しく触れるという方法もあるのではないか。「イ.」の末尾に、「さらにはIT関連の知識・技能など、時代の変化に対応するために必要とされる能力などを兼ね備えることも重要」との記述があるが、例えば、ネット上の人権侵害の実態を知ること等の重要性についても、ここに盛り込んではどうか。

実践編について

資料5、6に基づき「実践編」の案について、事務局より説明が、各WGリーダーより補足説明があった後、審議がなされた。

「1.学校としての組織的な取組と関係機関等との連携」関係

【委員】
 第1WGでは「積極的生徒指導の取組と人権教育」の図も作成していたが、案では、在り方編にも実践編にも採り入れられていない。この図をどこかで生かせないか。

3.教育委員会及び学校における研修等の取組」関係

【委員】
 P84の「事例40」について、「ライフステージに応じた教員研修の全体構想」として、10年次研修等について盛り込まれているが、教員免許更新制の導入に伴う更新講習については位置付けなくてよいのか。

【委員】
 更新講習は、法令に基づく義務的な講習であり、敢えて研修の体系の中に入れなくてもよいのではないか。

実践編(個別的な人権課題に対する取組)について

※ 資料7に基づき、菅原委員(第3WGリーダー)より、個別的な人権課題に対する取組についての資料収集の方針等について説明があり、了承された。

まとめ

※ 第3次まとめについては、意見のあった部分も含め、必要な修正を行った上で、パブリックコメントにかけることとされた。修正部分については、必要に応じ、各委員にも照会するが、パブコメ前の修正の最終的な文言については、座長に一任することとされた。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課