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不登校問題に関する調査研究協力者会議

2002/12/10議事録
不登校問題に関する調査研究協力者会議(第7回)議事録

不登校問題に関する調査研究協力者会議(第7回)議事録

1.日時 平成14年12月10日(火)  10:00〜12:30  
2.場所ホテルフロラシオン青山  「芙蓉(西)」(2階)
3.出席者
(協力者)荒井委員,石郷岡委員,伊藤委員,大橋委員,尾木委員,下司委員,
近藤委員,斎藤(環)委員,斎藤(八)委員,菅原委員,須藤委員,
相馬委員,藤田委員,松野委員,森田委員
(文部科学省等)尾ア児童生徒課長,鈴木課長補佐,小林課長補佐,
月岡生徒指導研究センター長,
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課
ほか関係官
(ヒアリング対象者)斎藤(環)委員,ピースフルハウスはぐれ雲  代表  川又  直  氏

4.議事内容

(○委員の発言,●事務局の発言)

  おはようございます。定刻となりましたのでこれから第7回不登校問題に関する調査研究協力者会議を開催いたします。よろしくお願いいたします。
  本日の会議につきましても,報道関係者の方々に傍聴を許可しておりますので御承知おきください。
  本日のテーマは,中卒後の諸課題についてであります。まず最初に,本日のヒアリングのためにお招きしている方を御紹介させていただきます。ピースフルハウスはぐれ雲代表の川又直さんでございます。よろしくお願いいたします。
  また本日は,ひきこもりに関連した施策を御紹介いただくために,厚生労働省社会・援護局の精神保健福祉課の方に御出席をいただいております。後ほど御説明いただきますのでよろしくお願いいたします。
  本日は,最初にひきこもりの問題につきまして,斎藤環さんはちょっと遅れておられますので,川又さんからヒアリングを実施しまして,その後斎藤環さんからお話を伺いたいと思います。
  その後に,中卒後に学校等を通じた公的支援を受けていない不登校の児童生徒の状況とその対応策ですね,それから中卒後の課題として社会的自立までを視野に入れた取組や対応策について,あるいはこれに関連した内容について幅広く御議論いただきたいと思っております。
  まず配付知資料について事務局のほうから御説明いただけますでしょうか,お願いします。

  では御説明させていただきます。
  資料1がいつもどおり,議事次第でございます。
  それから資料2が,本日のヒアリング関係資料ということで,2−1がピースフルハウスはぐれ雲からの提供資料。それから2−2が斎藤環委員からの提供資料でございます。
  またそのほかの卓上に別途配られせていただいております斎藤環先生からのレジュメがございます。
  それから資料3でございますけれども,こちらは厚生労働省から御提供いただきました,ひきこもりに対する対策の資料でございます。
  それから資料4,こちらが中学卒業後の進路状況に関するデータ。私ども事務局のほうで用意させていただきました。
  それから資料番号がついてございませんけれども,その後に不登校に関する実態調査結果の概要をつけさせていただいております。
  最後が資料5で,今後の審議予定についてでございます。
  またそのほか,申し訳ございません。今,配付しております論点メモ,中卒後の諸課題について,本日の論点メモを配付させていただいております。
  以上でございます。

  ありがとうございました。
  では,これからヒアリングを実施したいと思います。
  川又さんには,お話を伺った後,ビデオ視聴がおよそ予定では18分ぐらい。それから御説明が大変時間を区切って恐縮でございますけれども12,3分ぐらいということでお願いをしてございまして,そのお話を伺った後,質疑応答をその時点で,毎回そうでございますけれども5分程度とって,その後斎藤環委員からのお話を伺うと。こんな流れで進めさせていただこうと思っています。よろしくお願いいたします。
  では川又さん,よろしくお願いいたします。

【川又氏】    川又です。初めまして。よろしくお願いいたします。
  僕が今やっていることを資料2−1に書いたんですけれども,1つはピースフルハウスはぐれ雲というのは,寄宿塾でありまして,今,子どもたち18名と共同生活しています。そして富山でやり始めたのが1987年からです。とにかく子ども育むのは地域だという考えでやっています。
  それから一応2001年にNPO法人を取っています。
  それからあと,次にあるのは有限会社ファームファーム。これは就労支援のために,今までははぐれ雲から直接アルバイトというスタイル,現在もうちの寮生の半分はアルバイトに行っているんですけれども,過去はそうだったんですけれども,最近いきなりアルバイトに出られないという青少年が増えてきましたので,どうしてもはぐれ雲とアルバイトの間にもうワンステップ必要だということで,以前にこういう会社をつくったんです。ただ,今NPO法人を取ったので,今宙に浮いている状態です。
  それからその下に北陸の郷(くるがのさと)。ちょっと後にします。
  万のうらく。これは万願寺農業を楽しむ会といいまして,これはうちの地域が万願寺というんですよね。そこで地元の農家,兼業農家の方,大体55歳ぐらいの方なんですけれども,まあ,集まってこれからの農業を考えた場合はいろいろな機械を,各家にある機械を持ち寄りながらやろうということでつくった会なんです。
  これがちょっと発展しまして,せっかくNPOもあるし,これから地域の福祉ということを考えた場合,別紙にあるような北陸の郷(くるがのさと)というものを今度つくろうと,今,農地転用の書類を出しています。早ければ来年の8月ごろに完成する予定です。これはもう地域の方が大体中心になっています。
  それから青少年創・世連絡協議会。これは1984年に設立させたんですけれども,例の戸塚ヨットスクールの事件を契機にしまして,これは当時共同生活をしている団体が集まりまして,とにかく1回みんなで交流を持とうということがきっかけです。
  そしてその次,裏になりますけれども,青創協の中で1回本を出版したことがあるんです。その本を出版した後,時代の流れですけれども,1990年前半のころというのは,一番盛んに言われていたのは,不登校,ひきこもりになったらとにかく見守っていればよい,やがて自分の力で立ち直るという説がかなりはやっていたわけです。僕たち現場からすると,それでどうにかなる子もいる,しかし,ほとんどの子にはなじまない。というのは,このまま放っておけばほんとうに5年,10年とこもったままの子がやがて出てくる。そういう危惧があったので,じゃあどうすればいいんだろうということで,草の根運動的に,キャラバン隊というのをつくりまして,全国あちこち回りまして,今25回目をおととい京都でやってきたんです。とにかくこれは,みんなで話す,親御さんたちととにかく膝をつけ合わせて話そうということで定員はあまり多くないです。大体100人ぐらいでやっています。
  ちょっと今日ビデオがあるので,先に見てください。

(ビデオ上映)

  ある番組でやったんですけれども,あれでちょっと1つだけクレームがあったんです。僕がちょっと25歳になったら一生ものと言ったもので,27歳の偏食の子の親から,うちの子27歳ですけどどうしたらいいですかというのがあったんです。あの子の場合だから言ったんですけれども。
  あと基本的には,僕たち,彼らと接していて,とにかく人は十人十色だと思っているわけです。それでアドバイスであっても個人個人全部違います。ですからある子には我慢,もう少し我慢しろよ。ある子にはそんな我慢するなよと,言っていることはまるで正反対ですから。ですから個人個人みんな違うんだというところから接し方も当然みんな違っていくというところです。
  とりあえず。

  ありがとうございました。
  様々な示唆をいただく御発表だったかと思いますが,この時点で御質問があればいかがでしょうか。
  川又さんは,今日の会は終わりまで御一緒していただける,ああ,そうですか。また後の協議のところで御質問がまた出ようかと思いますが,とりあえず進めさせていただきまして,続いて,冒頭申し上げましたように斎藤環委員のほうから,いつもの会のように15分程度ということで時間を区切って恐縮ですがよろしくお願いいたします。

【斎藤(環)委員】    斎藤でございます。ちょっと遅れてしまいまして申し訳なかったですが。先に川又さんのほうにやっていただいて,今のように,非常に感動的なビデオなどを見せていただいたことがイメージを持ちやすくなっていただいたのではないかなと思いまして,結果的によかったかなという気もちょっとするんですけれども,まさにおととい,川又さんとはキャラバン隊のシンポジウムで御一緒したばかりなんですけれども,この川又さんの問題意識ですね,つまり,今,かなりの数の関係者,カウンセラーなどが根拠なしに提唱している,放置すれば何とかなる,放っておけば子どもたちは自分たちに備わった自然な力ですべて回復可能であるという図式的な考え方ですね,これに対する異論を提唱していくという立場からも,このひきこもりの問題についてお話しさせていただきたいと思います。
  私の立場というのは,マニュアルをつくったりとか,まさに図式の反復みたいに見えるところもあるかもしれませんが,基本的に私が考えていることは,どちらかといえば思春期的な問題に対しては,図式の押しつけはすべてよくない,諸悪の根源であるという発想が基本にありまして,ですから私は,先ほどのような自然な回復力の,図式的な信奉であるとか,あるいは,不登校のタイプ分類というものは過剰に図式化されることであるとか,これはひきこもりのタイプ分類なんてそろそろ出始めていますけれども,そういった先入観を強化するような方向性に関しては基本的に反対の立場から展開しております。
  ただ,これは半身の,つまり一般に向けての啓蒙的な立場からいえば,図式を示したりとか,マニュアル的な方向でやらざるを得ないところもあったりするものですから,まあ,はた目にはそう見えるかのような姿勢を維持しているということもあります。
  いささか前置きが長くなってしまいましたが,社会的ひきこもりについてお話しさせていただきたいと思います。
  まさに今,ビデオでご覧になっていただいたような,子どもたちのその後の状態。大体出てきたお子さんは20代前半が最年長のようでしたけれども,我々が見ているのは,20代以降のケースばかりでありまして,10代ももちろん少しはいますけれども,大体20代がもっとも多く,30代がそれについで多く,ちらほらと40代がいるというのが今の状況です。
  今NHKが,ひきこもりサポートキャンペーンというのを開局50周年事業としてやっておりますけれども,こちらに寄せられた相談は,実に本人からの相談がきわめて多いという特徴があるのですけれども,ここでも20代が過半数で,それについで30代が多い。まあ,40代以上とか,親からとかの相談という形になります。
  端的に年齢の問題だけとらえても深刻化しているということはうかがえるのではないかと思います。川又さんのほうで,先ほど25歳過ぎたら一生ものということでクレームがついたということですけれども,現場の実感としては,そう言ってしまったらやってられなくなってしまうんですが,でも,やっぱり年長になればなるほど回復が難しいという現実は否応なしにあるわけでありまして,私のほうで特に,この線引きをするということはありませんが,私のほうは少し緩くとって30歳以前と30歳以降という形で一応分けて対応を漠然と考えているというところはあります。これはもちろん,30歳過ぎたら回復不可能という意味ではないのですが,難しくなるのは現実でありまして,おわかりのとおり,履歴書1つとっても,それまで何をして過ごしていたのかとか,端的に年齢制限にひっかかるとか,いろいろな事情で社会復帰の回路がきわめて狭められてしまうということは現実的にありますので,いろいろな点で年齢は,年はとればとるほど,再度の社会参加が困難であるという現実はあると思います。それがいいか悪いかということはとりあえず置くとしましても,困難であるという現実は否応なしに存在すると。
  社会的ひきこもりという,にわかに最近言われていた言葉の解説をいたしますと,まずこれには定義がございまして,これは厚生労働省の「地域精神保健活動のあり方に関する研究班」,内容的には,これは実際にはひきこもりに関する研究の調査班だったわけなんですけれども,各地の保健所,精神保健福祉センターにアンケート用紙を配布いたしまして,これは回収率98%で,大変高い回収率の調査だったんですけれども,そこでいろいろ実態調査を行ったということを2000年度に行いまして,2001年5月に発表を行っておりますが,その調査に際しての定義がここに書いてあるとおりのものです。「@六カ月以上自宅にひきこもって社会参加しない状態が持続しており,A分裂病などの精神病ではないと考えられるもの。ただし,社会参加しない状態とは,学校や仕事に行かないまたは就いていないことを表す」ということになっております。ちょっと解説してみますと,この研究班に私どもの青少年研究センターのスタッフが関与した関係もありまして,一応この定義のベースになったものの1つとしては私が98年に出しました社会的ひきこもりというPHP新書がありますけれども,そこで設けた定義にも一部準拠しているところがあります。
  まず6カ月というところです。それから自宅にひきこもってと書いてありますけれども,これはちょっと誤解を招く表現で,全くこもりっぱなしのひきこもりの人って実は少数派です。部分的には外出できる人が多いです。部分的にはと申しますのは,つまり深夜,近所が寝静まってからなら外出できるであるとか,それから家族と車でだったら外出できるとか,そういう条件が付いた範囲内での外出可能なケースは,むしろ多数派といってもいいと思います。
  6カ月といいますのは,これはいろいろな欧米の診断基準などで採用されている1つの症状が持続する期間の,1つの区切りですから,さしたる根拠はありません。暫定的なものです。社会参加についてもいろいろな言い方があるんですけれども,ここで,学校や仕事に行かない,または就いていないというふうにしたのはちょっとまずかったかなと,個人的には考えます。なぜならば,学校や仕事に籍がないお子さんでも,ひきこもりとはとても呼べない若者が多数存在するという現実が一方ではあるからでありまして,まあ,これは一般にはプー太郎とか,プーとか言われているような,要するに,職場や学校に籍はないけれども,しょっちゅう仲間とつるんで,コンビニとかファーストフードの前にたむろして遊んでいるような若者,グループがありますけれども,彼らとひきこもりの青年たちは全くメンタリティーが両極端と言っていいくらい違いますので,これを一緒くたにしたらこの概念が持つ意味というのはなくなってしまいますので,私はそれは一応区切って,私個人の定義としては,家族以外に親密な仲間関係が存在しないということが一番重要な社会参加の定義に含まれております。つまり友達がいないとか,恋人がいないとか,そういうことです。ここで切りますと,かなりひきこもりというグループが明確な性格をもってイメージできますし,立ち上がってくると考えていいと思います。
  分裂病などの精神病でないというのはいいのですけれども,精神障害でないとなってしまいますと,我々精神科医が関与する理由が全くなくなってしまいますが,このひきこもりの問題の一番難しいところは,本人の意図に逆らって長期化してしまった場合については,いろいろな精神症状が出てき得るということがありまして,これはあとで簡単に解説いたしますけれども,神経症レベルのものはたくさん出できます。ですから我々が治療的な関与をし得るのは,そういう精神症状を呈したケースということに限って精神科的な関与は可能になるし,治療手段が彼らを支援する様々な方法の一角をなすという理由もそこにあると言ってもいいと思います。
  だから社会的ひきこもりという言葉につきましては,これは病名とか診断名ではないということもここでお断りしておきたいと思います。これはどちらかといえば不登校とか,そういう言葉に近い状態像を示す言葉でありまして,不登校に関しては文科省が定義づけておりますように,社会的ひきこもりにもここに書きました定義によって区切られるグループでありまして,この中でも多様なグループがいろいろ入ってくるということは,まあ,念頭において御理解いただきたいと思います。
  共通する特徴としまして,1つはまず,不登校のその後の状態であるということ。OB群であるということ,これを申し上げておきたいと思います。不登校の中の不登校状態が極めて遷延化して,学校に籍がなくなっても長期化してしまったというイメージを持っていただければ,そんなに外れではない。もちろんそうでもないケースもたくさんあります。学校を卒業した途端にひきこもってしまった。学校を卒業して就職したんだけれども1カ月で辞めてひきこもってしまった。私はこういったケースは,不登校からひきこもったケースとそれほど断絶はないと言いますか,連続的に考えて差し支えないと考えております。
  不登校の予後調査,多々あるんですけれども,昨年9月に発表されました森田先生がなさった大規模な調査がありますけれども,あの調査ではもちろんひきこもりという項目はないんですけれども,ひきこもりを含む状態像として,中3で不登校になりましてからの5年後の状態ですか,20歳の状態ということで,23%の人たちが学校や職場に籍がないと,この中にはもちろん既に結婚をして家庭におさまっている女性なんかも当然含まれているわけですから,すべてとは言えないんですけれども,大体これまでの不登校の予後調査というジャンルが精神医学の中にあったのですけれども,この専門家に聞きますと,不登校経験者の15%から20%が長期化するということが一種の常識として流通しておったわけですけれども,それまで言われてきたことと,森田先生がなさった調査結果とはそれほど違和感がない,整合性があると私は受け取っております。違った解釈もあるようですから断定はいたしません。
  ただ不登校との関連性,逆のほうからいきますと,ひきこもりの何%に不登校が含まれるか,私個人が行ったこれは10年前の調査ですけれども,80例にも届いた調査ですけれども,全体の86%に3カ月以上の不登校の経験があるというデータが一方でございます。
  こういったものを考えあわせましても,不登校とひきこもりというのは,私は極めて関連性が高い問題だと。中には教育評論家の尾木直樹さんのように,中学までは不登校,中学過ぎたらひきこもりでいいのではないかという,極めて実用的な区分も提唱される方もおられますけれども,それほど関連性が深いということですね。いろいろな挫折体験,受験で失敗,就労失敗その他がきっかけということが言われておりますけれども,ひきこもりに関して問題なのは,不登校もそうですけれども,必ずしも明確な挫折体験があるとは限らないというところでありまして,極めてあいまいな形で始まるケースが多いんだということをここでは強調しておきたいと思います。
  何となく1日休んでしまった。そうしたら1日休んだら2日も行きにくくなった。2日休んだらますます3日目は行きにくくなった,こういう形でどんどん不登校スパイラル,ひきこもりスパイラルみたいな形で広がっていって,それがおそろしいことに5年10年となってしまうケースが現実にあるということ,これが私は実は問題ではないかと考えるわけです。決して大きな挫折をしているわけではないのに,そういった一種の悪循環によってどんどん広がっていって,極めて抜け出しにくい構造,言い換えますと敗者復活戦が難しい学校システム,教育システムは大分それが緩和されたと思いますけれども,社会システム的には非常に敗者復活戦が困難で,ですからひきこもりの人が就職する際には,私は積極的に履歴書を捏造するように指導しなければいけないという現実が一方ではございます。
  捏造といってもまあ,ひきこもった期間をフリーターをやっていましたと言いなさいとか,家が自営業で手伝っていましたと言いなさいとか,その程度のかわいいものですけれども,そういう現実が一方である。
  性格傾向,家庭環境,これは多い,統計的にとったら多いものを述べましたが,これは不登校と全く同じで,どういう家庭,どういう子どもでもひきこもり,不登校になり得るということは全く,私は,文科省が平成4年に宣言したことと全く同じことがひきこもりに関しても言えるであろうと思います。このことから普遍していったわけではありませんが,ひきこもり予防とか,不登校予防ということに関しては,私は基本的に反対の立場で,それは予防できないからということもありますけれども,大事なことはむしろ,予防よりも対応であると。対応がまだろくすっぽできていない状況で予防を考えるのは明らかに時期尚早ではないかという発想でやっております。
  時間もありませんので少しはしょらせていただいて,次のところにあります放置した場合の,自然な回復が期待できないということ,これは今,ひきこもり人口,一説には50から100万人。一説といっても,私もそれをかなり吹聴して回った立場ですから,一説も何もないんですけれども,ただ尾木直樹さんがやった調査でも,アンケート調査で80万から百数十万というデータが出ておりますので,今のところそれが唯一の資料ですからそういったことを考えますと数十万という数は,もはや大筋ではコンセンサスがあるものと考えていいと思います。これほどの増加に至った結果というのは,要するに蓄積したからということが一番大きいと思います。要するに,何の対応も,何の介入もなされない場合にひきこもり問題というのはずるずると遷延化して,どんどん長期化していくと。ということで,急に増えたわけでは決してない,おそらく70年代ぐらいから徐々に増え始めて今に至って,これは不登校人口の増加と密接に関連していると思いますけれども,だんだん蓄積していって,この規模に至ったというのが現実であろうかと思います。
  ですから,冗談ではなく,私は,あちこちで申し上げているんですけれども,今後20年でひきこもりが一掃される可能性は極めて低い,ほとんどゼロだと思いますので,おそらく20年後にはひきこもり高齢化社会が到来すると。どういうことかといいますと,一度も社会参加をしたことがない60歳の人々が万単位で出現してくるという,これが予言とか何とかじゃなくて確実にそういうことが訪れてくるであろうと。今可能であるとすれば,その数をどれだけ低く押さえられるという程度の対応ではないかという,悲観的といっていいのかわかりませんけれども,そういう見通しを持っております。
  精神症状は時間もありませんのではしょります。言いたいことは要するに,長期化した非行や不登校,対人恐怖,被害妄想,強迫症状といったような,はた目には極めて重篤に見えるいろいろな症状を呈することがあって,これに対しては精神科医も,ほとんどの精神科医も十分対応できていないというのが現実だということを,むしろですから,はぐれ雲さんとかタメ塾であるとか,むしろそういう民間,NPOとか,そういうところでやっていらっしゃる方のほうが,なまじっかの精神科医よりも現場の知識は豊富に蓄積されているというところが,この不幸のギャップをもたらしているのではないかということを考えます。
  ひきこもりシステムについて詳しい説明は読んでいただければおわかりだと思いますからはしょりますけれども,この個人,家族,社会という3つのシステムを考えた場合に,ひきこもり状態というのは,この3つがばらばらになった状態ということを考えていただきたいと思います。
  このばらばらな状態というのが極めてホメオスタティックな,システム理論でいう恒常性が維持されてしまう,極めて高い安定性ができてしまうんですね,ここで。家族が自然に振る舞えば振る舞うほどひきこもりが温存されるといったような悪循環のシステムが構築されてしまって,これをいかに破壊するか,まさに破壊なわけです。破壊的な介入をしないとこの図式が変わらないというところがひきこもりの対応の難しさの一因であろうかと思います。
  悪循環の例を1つ,一番簡単な例を挙げますと,まずひきこもりがありますと家族が不安・焦燥感に駆られて本人に対するプレッシャーを強化していく,本人に対して叱咤激励を繰り返しますと本人が親に向ける視線というのはどんどん不信感に満ちていきまして親子の断絶がどんどん深まっていくと。そういう形で本人の不安・焦燥感が高まりますとますますひきこもると,そういう悪循環の構図が至るところに存在するというのが,このひきこもり問題の難しさです。
  3ページ目の5番目にあります社会的ひきこもりへの対応指針も簡単に述べておきたいと思います。
  私にできるのは治療ですから,治療しかできませんので,今,治療として何をなされているかということを簡単に申し上げます。これは先ほど申しましたように,ひきこもりというのはいろいろな立場の人がいろいろなかかわり方ができる,多様なかかわり方が可能な問題で,我々がやっている治療というのはその中でもっとも重篤と言ってもいいでしょうか。精神医療的に重篤な問題を呈した群に対して部分的に介入ができる,部分的に支援ができるということをやりますから,これがすべてではもちろんありません。治療するとしたらこんな形でやりますよということを申し上げているに過ぎませんけれども,第1番目に大事なことは家族指導です。これが実は,家族対応というのがひきこもり支援,ひきこもり治療の全体の50%以上を占めるといっても過言ではありません。心理問題全般に言うことですけれども,私のモデルというのは大体外堀から埋めていくという形で,いきなり本丸を攻める,つまり本人主義ではないということです。本人はいきなり病院に引っ張ってこいなんて言ったら,これは非常に医原性の,つまり治療によって病気をつくり出すという悪い意味での医原性の問題を,いいも悪いもないんですが,悪いに決まっているんですけれども,医原性の問題をつくり出してしまうということで,本人主義は極めて危険であるということ。家族に介入して,それで問題が消えてしまうんだったらそれがベストで,本人の顔を見ずに済むんだったらこれが一番幸いであるという立場をとっております。ですから,私の立場は,正統的な医学からちょっとずれたところでやっているということになるんでしょうか。
  ただ,家族指導という形で家族に対して,つまり家族というのは,先ほどの悪循環の例を出しましたように,同じところでつまずいている方が非常に多いわけです。同じ悪循環を繰り返して,同じ堂々めぐりを繰り返している。この点に関してはマニュアルで対応できるわけです。あなた方の間違いというのは,これほどありふれた間違いなんですよということを示すことで,気付く家族は気付くわけです。すべての家族が気付くわけではもちろんありませんけれども,そこで引き返すことができれば,さっき言いましたように,1度も本人に会わずに回復するなんていうケースだって十分にあり得るわけですし,そういう話を聞いたことがよくあります。例えば,私がマニュアル本を書いたりしているわけですけれども,それを読むことで家族関係が変わって,快方に変わった,向かったなどいう話も聞きますから,いかにこの問題が同じつまずきで起こっているか。
  普通医療というのは,本来的にケース・バイ・ケースですから,本人に会わずしてできるなんていうことはあり得ないんですけれども,ひきこもりのようなシステマティックな病理といいますか,問題といいますか,こういったものに関しては,まさにマニュアル的な対応が部分的に極めて有効であることの1つの例ではないかと思います。
  基本精神は,本人が安心してひきこもれる環境という,一種の逆説ですね,これをぶつけることによって家族の誤解を解きほぐしていくというのが我々の戦略なわけですけれども,あとははしょります。
  次は個人治療,これが一般の方がイメージする精神科治療になると思います。本人が病院にやってきて,1対1の面接と,場合によっては薬物療法を使うことによって個人治療を継続していくと。
  次のステップ,これはあまり一般的でないかもしれません。私の個人治療,つまり個人精神療法とか,薬物療法というのはほとんどつなぎでありまして,何のつなぎかといったら,家族指導から集団適応へのつなぎなんですね。つまり集団というのは,デイケアとか,たまり場とか,自助グループとか何でもいいわけです。そういう出会いの場,出会いといっても出会い系みたいじゃ困りますけれども,集団の中で,まさに生身の人間が出会うことができるという場を設定いたしまして,そこにどう導入していくかということを腐心しておるわけですね。
  それが最終的な仕上げになるわけで,我々は決して最終的な治療目標,まあ,医療ですから治療目標が大事なんですけれども,治療目標として私が設定しておりますのは,あくまでも親密な仲間関係ができるところまでというのが治療目標です。それができたら治療は成功。あとは本人の自由ということですね。つまりバイトをするとか,学校に戻るとか,そういうことは価値判断の問題です。どういう生き方をするかは個人の価値判断ですから,価値判断ができるところまで何て言うと傲慢かもしませんけれども,私の考えでは,長期間ひきこもっている人ほど,そういう価値判断が難しくなっていく印象があって,自分が何がしたいのかとか,自分がどういうことを価値として生きていくのかが非常に見えにくくなってしまう。仲間関係を持つことで,初めて自分の方向性みたいなものがはっきり見えてくるということがありますので,よくしてもらうと言っていいのかわかりませんけれども,集団適応の構図に乗った方のほとんどは,大体バイトをしたがる。もしくは定時制に行きたがるとか,そういう我々がまさに押しつけがちの方向を自分から選びとっていくことが大変多いです。ただ,当然のことですが,それを我々が口にしたのでは逆効果なんですね。いかに彼らを動機付けるかというのは大問題でありまして,我々があえてそれを口にしないことで,彼らがみずから自分の動機を発見する過程に意味があると。この部分というのは,不登校にせよ,ひきこもりにせよ,共通した問題意識と言っていいのではないかと思います。
  我々がサポーティブに,過保護的にこれはどうか,あれはどうかと方向性を示し過ぎることが逆に彼らの動機の獲得を抑圧している可能性,これについても付言して,一応私からの話はここまでにさせていただきたいと思います。

  ありがとうございました。
  この時点で御質問,おありの方どうぞ。
  では斎藤委員さんにもまた後ほどの協議のところで改めて御質問もあろうかと思いますのでいろいろお話しいただくこともあろうと思いますが,ひとまずここでは次に進めさせていただきます。
  最初に御紹介いたしましたように,厚生労働省のほうから資料に基づきまして,ひきこもりに関連した施策の説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。


【厚生労働省】  厚生労働省社会・援護局精神保健福祉課でございます。本日はこのような研究協力者会議にお招きいただきまして非常に光栄に思っております。このような場で,厚生労働省の取組を御紹介できることに感謝しております。
  資料3に沿いまして,簡単に厚生労働省の取組を御説明申し上げさせていただきます。
  斎藤先生のほうからも詳しいお話を聞かせていただきましたけれども,まず,ひきこもりの状態像に対しての取組をしております。先生もおっしゃいましたように,ひきこもりといいますのは,生物的な,また心理的な,社会的な複雑な状態像ですので,まずひきこもりという状態になりまして,それから随伴する精神症状に対して何かできないか,また,ひきこもっている状態の,それに潜む精神疾患に対して何かできないかという切り口での取組になっております。ですので,ひきこもり全体に対する取組というまではなかなかいたらないところでございますけれども,そういった切り口から取組をさせていただいております。
  まず,資料3の1−1ですけれども,思春期精神保健専門家養成研修ということで,別紙1とあわせてご覧いただければと思います。
  ひきこもりにかかわらず,思春期のいわゆる心の健康問題に関するもの,ひきこもり,不登校,家庭内暴力など,心の問題が社会問題化しています現状に対しまして,それに対応できる専門家の養成研修を平成13年度から行っております。
  医師コースとコメディカルコースと2つのコースに分かれていまして,精神疾患等の,かなり専門的な知識から,またカウンセリング等の対応の講義までさせていただいております。
  いわゆる専門家,医師であるとか保健師さんであるとか,精神保健福祉士さん,各公的な機関であるとか医療機関で働いていらっしゃる方々の資質の向上のためにやっている研修でございます。
  こちらの研修修了者名簿というものも作成いたしまして,研修終了後に各機関での地域精神保健福祉活動の充実を図ることを目的といたしまして,都道府県であるとか指定都市,関係機関へ配布しております。
  2番目の思春期精神保健ケースマネージメントモデル事業。これは別紙2とあわせてご覧いただければと思います。
  別紙2の2枚目のイメージ図のほうを見ていただければ御理解いただけると思います。こちらのほうもひきこもりにかかわらず思春期の心の健康問題は,それぞれ複合し合っておりますので,それに対する地域でのケースマネージメントができないかということで,このようなマネージメントモデル事業を平成13年度から7都県,埼玉県,千葉県,東京都,愛知県,岡山県,広島県,山口県の7都県で行っております。
  事業の概要ですけれども,まず思春期精神保健相談窓口を,精神保健福祉センター,または児童相談所に置きまして,援助活動チーム,または事例検討委員会などをつくりまして対応を行っております。従来のものと違いますのは,援助活動チームといいますのが,その事例ごとに結成されると。と言いますのは,こういった事務局に事例の情報が入りますのは,例えば学校教育機関から入るケースもありますし,または児童相談所から入るケースもありまして,それぞれの問題に応じて,どこが主体となって取り組むかというものが違ってきますので,それぞれの事例に応じた援助活動チームによりマネージメントを行っているというような形のモデル事業でございます。
  今年度は2年目ですけれども,3年間モデル事業をいたしまして,ケース事例であるとか,対応方策などをまとめたものを3年目以降に御紹介させていただければと考えております。昨年度の実績は,やはりひきこもりの事例,また不登校問題が多いというような報告を受けております。
  3番目の厚生労働科学研究事業ですけれども,こちらのほうは斎藤先生のほうからも先ほど御紹介してくださいましたものが中に入っております。まず1番目の○のところの,「社会的ひきこもり等への介入を行う際の地域保健活動のあり方についての研究」です。この研究の一環として実施した平成12年度の調査の際には,ひきこもりの定義等に関して斎藤先生から御助言いただきました。ひきこもりの定義ですが,斎藤先生から先ほど御紹介してくださいました定義が厚生労働省の定義というのは,若干誤解があります。と言いますのは,平成12年度に行いました実態調査に便宜的に使いました定義でして,今後も日々刻々と取り巻く環境が変わっておりますし,また,ひきこもりの実態の把握状況も変わっておりますので,今年度行う実態調査に関しましては,若干また定義のほうが変わると考えております。例えば,全国都道府県の県庁にひきこもりをどのような形で考えていらっしゃいますかというアンケートをとりましたら,各県によりひきこもりの定義が違うというのが現状です。
  先ほどの斎藤先生が御指摘くださいました社会参加の意味,例えば,友人をつくるとか,恋人をつくることも社会参加である,そういった概念も入れた形でまた新たな調査をするような予定で現在進んでおります。
  社会的引きこもりをめぐる地域保健活動のガイドラインという暫定版のものを平成13年度5月に各都道府県,指定都市の保健所,児童相談所,精神保健福祉センターなどに対して約2万部を配布して,ひきこもりの対応を始めたところなんですけれども,もう少しもっと配布をすればいいのではないかという,斎藤先生の資料に書いてありましたように,こちらも2万部を配ったあとの反響というものが非常に強うございまして,これほどに皆さんがお困りであるということはひしひしと感じております。
  暫定版ということでしたので,この暫定版のガイドラインの試行を今実施しておりまして,その運用具合を加味した上で,今年度末に最終版をつくってまた公表する予定です。今回は,最終版ということですから,厚生労働省のホームページからもダウンロードできるような形で皆さんに普及していただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  こちらのガイドラインの内容ですけれども,本人に対する対応方策というよりも,やはり家族に対する対応,まず外から攻めていくという話で斎藤先生おっしゃっておりましたけれども,そういう形でまず家族への介入,それからあわよくば本人を含めたファミリーへの介入というような形の対応方策を書いております。
  あくまでも本人に対するガイドラインというよりも,ひきこもりの家族であるとか,ひきこもり本人に対応する専門家,いわゆる地域で働く専門家のためのガイドラインという形になっております。
  こういったガイドラインにより例を示すことで皆さん,公的機関,また私的機関の方々にも知っていただければという意味で,普及啓発も含めた形でのガイドラインの作成を行っております。
  ほかの厚生労働科学研究事業では,次のAについては,ひきこもりの事例がどういうふうになるか。例えばひきこもりの事例が公的機関を使うことによってどのように変化したかというような,コホート的といいますか,前向きの調査をしております。
  また3番目の地域疫学調査に基づくひきこもりの実態把握についての研究といいますのは,日本には地域レベルのひきこもりの実態把握調査がありませんので,まず実態の把握が目的です。WHOの推進する国際的な精神・行動障害の疫学共同研究プログラム(WMH)に準拠した疫学調査がございまして,これは大規模に5,000例近くを地域調査するんですけれども,公式訓練をした面接員による調査でして,今年度,ひきこもりに対する実態調査もあわせて地域でやるような予定です。
  2ページ目なんですけれども,簡単に触れさせていただきます。
  これは家庭福祉課関係のものでして,以前のこの会議でも御紹介してくださった内容があります。まず1番目のひきこもり等児童福祉対策事業です。@はメンタルフレンド訪問援助事業というもので,平成3年から行っているものでございます。Aのほうは,ひきこもり等児童宿泊等指導事業。Bはひきこもり等児童福祉教育連絡会議で,これらは児童という観点からのひきこもりに対する対応策でございます。
  (2)の家庭訪問支援事業の創設といいますのは,平成14年度から始まりましたものでして,市町村で研修を受けました子ども家庭支援員というものが軽度の被虐待経験であるとかひきこもりなどの問題を抱える家庭に対しまして訪問などを行い,育児相談・支援等を行うものでございます。これは地域という視点からの子育てセーフティーネットの推進を図るということを大きな目標としております。
  (3)の情緒障害児短期治療施設家族療法事業というものは,平成6年からやっておりまして,こちらもひきこもりを含んだ情緒障害児を含む家族全体に対する心理療法を行っております。
  (4)の虐待・思春期問題情報研修センターといいますのは,本年度から横浜にできました研修センターでして,情報発進基地というような形で,ひきこもりや虐待なども含む対応策の充実強化を図るために,研修事業などを行っているような研修センターでございます。
  簡単でしたけれども,厚生労働省の取組を御紹介をさせていただきました。以上です。

  ありがとうございました。
  ただいまの資料の内容,あるいは今の御説明について,この時点で御質問おありの方,いらっしゃいますでしょうか。お願いします。

  2,3伺わせていただきます。まず先ほどガイドラインの配布に関してなんですけれども,厚生労働省のホームページからダウンロード可能に既になっているのでしょうか。それをまず伺いたいと思います。
  それから2番目に,コホートと,人間関係の希薄をもたらした云々という研究ですが,これはコホートスタディということですけれども,事例数の規模とどのぐらいの期間の追跡調査なのかということを伺いたいと思います。
  3番目に疫学調査,私これ,ひきこもりに関しては極めてプライバシーの問題とそれから普通の疾患よりももっと個人の生き方にかかわる問題なだけに非常に難しいと思うんです。ちょっとここでお話しできる範囲で,方法論について簡単にお聞かせ願えればと思います。

  ちょっと今,第1点に関連して,ガイドラインについて,家庭の立場からいうと,これを手に入れることはどういう方法で手に入れられるのか。2万部作成されていますよね,それについても触れてお答えいただけるとありがたいと思いますが。

【厚生労働省】    御質問いただきましてありがとうございます。先生が御指摘くださったとおりに,3つとも大変大事なことです。まずガイドラインについて,暫定版ということですので,まだ厚生労働省からのダウンロードは現在できない状況なんです。ですが,いろいろなNPOなどがガイドラインのほうを掲載してくださっているような状況でして,そのような形で問い合わせに対してほかのホームページを御紹介させていただいたりとか,現物に関しましては配布をしております。現在も問い合わせに関してはすべてお渡しする形で対応しています。
  ただ,その問い合わせをされる方というのはかなり意識の高い方でして,もっと普及に努めないといけないとこちらも考えておりますので,なかなか暫定版というものが確実性をもって公表できるものかどうかというのは,やはり運用,試行しないことにはわかりませんので,最終版は皆さんの目に触れるような形で公表したいと考えております。
  家族の方がどのような形で手に入れられるかということですけれども,2万部は各都道府県市町村,または児童相談所など全部に配っておりますので,基本的にはそちらに問い合わせしていただければ必ずガイドラインが存在するという形です。
  2番目のコホートということですけれども,私の説明の仕方が非常に稚拙なものだったかもしれないですが,前向きに見ているととらえていただければと思います。ですから事例数は非常に少ない規模ですが,前向きに事例を検討するということです。
  ただ,こういった事例はマスとして大規模なものではございませんけれども,事例をていねいに検証することで何らかの示唆に富む調査結果が出ると考えております。
  3番目の地域疫学調査に基づくひきこもりの実態把握についての研究でございますけれども,御指摘のとおり,やはりひきこもりに対する実態調査というのはかなりアンダーエスティメイトされるものだと思います。この調査対象というものが実質本人は非常に難しい。ひきこもっていらっゃいますから,面接調査員が行きましても難しいと思います。あと家族に聞くことによりまして,家族と,できれば本人に聞くことによってそのひきこもりの数を把握するような形式をとっております。
  この質問の中には,不登校との関連,またひきこもり時期であるとか,ひきこもり期間なども調査項目に入っておりますので,過去に不登校であったかどうかということもデータには出てくるんじゃないかと考えています。
  こちらはWHOが推奨する精神疾患に対する実態調査の日本版というものに,ひきこもりも付随させていただいたという形ですので,調査形態は世界的にもオーソライズされているものだと考えております。
  調査規模ですけれども,とりあえずは何千単位でやらせていただくと。ただ数%の有病率,罹患率であるということであれば,何千人やりましても数十人程度の対象者になってきますので,それがどういう意味を持つかというものはまた考察に注意が必要だと考えております。

  よろしゅうございますか。

  もう1点だけすみません。ガイドラインの決定版の予定はいつごろ出るのでしょうか。

【厚生労働省】    先生がここに紹介くださっています研究班で現在行っておりまして,平成12年から14年の研究班でございますので,平成14年度末をもちましてこの研究が終わります。ですから14年度末にはでき上がっている状態でして,これが公表されるのは来年度になるかもしれないですが,早いうちに公表させていただきたいと考えております。

  ほかに御質問,お願いします。

  家庭訪問支援事業の創設というところで,軽度な虐待体験やひきこもりなどと書いてあるんですが,これにはDVとかネグレクトも含まれると考えてよろしいんでしょうか。

【厚生労働省】    含むという形で考えていただければと思います。

  ちょっと関連で,どうしても厚生労働省さん関係ですと,我々意外と親との直接的なかかわりって機会が少ないんですよね。ですからもう少しこういった部分につきまして悩みを抱えていながらどこに相談しにいっていいのやらわからない。学校側には多少お知らせはいっているのでしょうけれども,我々親同士の関係の中ではこういった情報というのは伝わりにくいという面があるものですから,そういったものをもう少し親の中に伝わりやすいシステムもお考えいただければありがたいかなと。

【厚生労働省】    どうもありがとうございます。

  よろしいでしょうか。厚生労働省さんは今日のこの会は最後までかかわっていただけるのでしょうか。

【厚生労働省】    よろしくお願いいたします。

  そうですか。またあとでこの協議を深めていく中で,あるいはお尋ねをしたり,あるいはまたお話しいただくようなことがあるかもしれませんが,そのときはよろしくお願いしたいと思います。
  ではここで,事務局のほうから配付資料の説明をお願いしたいと思います。

  それでは失礼いたします。今日事務局のほうから御説明いたします資料はこちらの資料4でございます。こちら副主査の森田先生にお取りまとめいただいております,不登校に関する実態調査を中心にいたしまして,卒業後の進路状況に関する主要なデータを取りまとめたものでございます。こちら1枚目の表にございますとおり,大きくは時点といたしまして,中卒時の時点,それから卒業から現在まで大体5年間の追跡でございます,その5カ年の間。さらには,大体は20歳ということになろうかと思いますが,20歳時点,調査時点としては10年度末でございますが,現在の時点と3つの時点に区切って調査をなされている,枠組みになっているわけでございます。
  こちらから示されておりますいろいろな就学,就業等,今日のひきこもりの御議論にもかかわるような進路状況に関するデータをここに列挙しておるわけでございますが,右側には一般の全体の児童生徒,あるいは青少年に関するデータとして学校基本調査等のデータを掲げております。いろいろ詳細な定義等につきましては,例えばパートやバイト,あるいは家事手伝いの取り扱いが含まれているかどうかという点で,違いはございますけれども,おおよその目安として両者を比較してご覧いただければと存じます。
  簡単に申し上げますと,まず中学卒業時点のデータとしましては,比較していただきますとこの不登校経験者に関しましては高校進学,就学というものは65%ということで全体にはかなり低い数字です。逆に,就業,あるいは就学も就業もしないという割合については一般,全体よりは高いという数字になっているということでございます。
  また中卒から現在までの期間を見てまいります。高校中退の経験率が38%ということです。全体の中退率が大体2%程度,3カ年にわたりますと大体その3倍の数字に一般生徒はなろうかと思いますので,これに比べて中退率もかなり高いと言えます。
  一方で大学短大へ入学した者というものは13%ということで,比較的少ないという数字になっております。またこの5カ年の間で,もっとも長く続いた状態として何もしていないという状態を挙げている者が17%ということでございます。そういった意味で,一般の例えば無業者の割合等々と比べますと,高い数字と言えるのではないかということでございます。
  それから,現在20歳ということでございますが,就業しているという者が63%,特段,就学も就業もしていないという者は23%ということでございます。これに対応するデータといたしましては,国勢調査等のデータが比較的,比較する上でよろしいのかなと思っておりますが,平成7年の20歳の場合ですと7%。平成12年の20歳が11.1%がいわゆる無業者等というものに当たるのではないかと思われますので,そういった比率からいたしますと,この23%という数字はかなり高いと言えるのではないかということでございます。ただ,念のため御注意方申し上げたいのは,今日御議論いただきますひきこもりとの関係で申しますと,この調査,当然ひきこもりというものそのものを調査するものではございませんし,あくまで就学や就業をしていないというところのみとらえて調査をしているものでございますので,先ほど来お話のありました対人関係とか,あるいは自宅にこもっているかどうかとか,そういった点について何ら調べているわけではございませんので,この23%という数字イコールひきこもりと御理解いただくとなりますと,正確さを欠くことになろうかと思います。ただ,この23%の中の一部分としてひきこもりというものが含まれてくるのではないかということでございます。
  さらに,この副主査のお取りまとめていただいた報告書におきます分析におきましては,この調査では3つの時点に区切って対象のデータを挙げておりますけれども,それぞれの状態像,状態がどう推移しているかということもお調べいただいているわけでございますが,端的に申しますと,就学なり就業もしていないという場合,次の時点においてもやはり何もしていないとか,あるいは就学も就業もしていないという状態に,比較的つながりやすいような統計,数字が出ておるということでございます。
  また,先ほど申しましたようにこの調査そのものはひきこもりの調査ということではございませんので,不登校との直接の関係をこのデータからは言えないということでございますが,公的な国におきます不登校とひきこもりの関連を多少なりとも示す手だてといたしましては,先ほどの厚生省さんのほうの御紹介があった資料3の7ページにもございますが,ひきこもり相談件数全体のうちに,小中高の不登校経験者というものがどれぐらいいるかという調査がありまして,その中ですとそういったひきこもり相談件数の約4割という数字が出ておるということを御参考に申し添えさせていただきます。
  資料4のこの2枚目以降は,基本的にただいま御紹介した調査の定義でございますとか,あるいは一般の進路状況,一般生徒の進路状況の推移を見たもの,あるいは中退率の推移,あるいは離職率の推移,最後はフリーター数の推計というものを御参考に添付しております。なお,この資料4の補足といたしまして,不登校に関する実態調査結果の概要を抜粋したものをお配りしております。紙1枚のものでございますが,こちらをご覧いただきますと,森田副主査におまとめていただいた調査のうち,中卒後のことを中心に取り上げた第3章と第4章の概要,ここにあるわけでございますが,ただいま御紹介した就業,あるいは就学にかかわるようなデータのほかに,不登校経験当事者の主観的な評価や意識,あるいはそういった当時の施設利用なり支援のニーズ,そういったものに関しての御回答をいただいたものを整理したものでございます。
  重複した部分を省略して申し上げますと,例えばこのページ,第3章のところでございますけれども,中卒から現在までの状況,例えば上から3つ目の○につきましては,主観的評価でございますが,中卒時の進路先,何らかの形で希望どおりでなかったとする者が多いと,そのうち中学校時代の不登校が影響したと考える者が高い割合を占めておるという数字がございます。
  また,それから次の次の○でございますが,中卒後から現在までの施設の利用状況について問うたものでございますが,大体利用者,利用していない者がほぼ半々ずつということになっております。利用者が多いのが病院,ハローワーク等というような数字になっております。一方でこの括弧内,この例示には書いておりませんけれども,このほか,例えば保健所とかフリースクールは2%というような利用状況データが出ているところでございます。
  また,支援の中身といたしまして,約6割の方が支援を何らか求めていると,その中では,項目としては技術指導,心理相談,出会いの場,そういったものを求める声が強いという数字が出ております。
  続いて第4章が,この20歳,現在の状況と今後の課題についての取りまとめたものでございますが,例えばこの中ですと,一番下の○でございますが,大体現在,全体の3割ぐらいの者が学校,あるいはその他の学習支援機関に通っているということで,大学,短大,専修学校,各種学校,高校の順で多いと。その他予備校,サポート校,フリースクール等,これら合計した数字としては,大体5%程度という数字が出でおるところでございます。
  めくっていただきますと,いろいろございますが,一番最後の○でございますが,今後の支援に対するニーズというものといたしましては,技術の指導というものがトップに来るということでございます。一方で何ら支援を求めないという層もあるわけでございます。支援ニーズそのものに関しましては,中3の不登校の時点,あるいは卒業後5年間の時点,現在,3つの時間の軸で見ますと,時間の経過に伴って比較的技術の指導というものに対するニーズが上がると。その一方で,学習指導,あるいは心理相談といった項目についての数値が下がるという傾向があるようでございます。
  事務局からの御紹介でございますが,いろいろと説明の足らざる点,あるいは正確さを欠く点がございましたら,また森田先生のほうから御指摘を賜れればと存じます。以上でございます。

  ただいまの資料の内容,あるいは御説明に御質問のある方,ありますでしょうか。

【斎藤(環)委員】    この資料は不登校とひきこもりの関連性を考えるときに,必ず引用させていただいているぐらいの重要なものだと思うんですけれども,ちょっと伺いたいのは,全例,たしかサンプル数が3千何例かで,回収率がその50%程度だったと思うんですけれども,我々の悲観論的な立場から勘ぐりますと,うまくいっていない人は答えたくないのではないかみたいな発想がどうしてもあるんですね。ですからこの長く続いた状態が何もしていない17%,あるいは就学,就業していない23%というのは,もし前例が,もしは禁物なのかもしれませんが,全例回答していたら果たして25%とか,30%になったのかもしれないなという疑念がどうしてもあるんですが,これは非常にお答えにくい質問だと思うんですけれども,現場でなさった印象としていかがなものかというか,ちょっとお聞かせ願えればと思います。

  確かに御指摘の点,ひきこもりの方だけの調査ではありませんので,懸念される部分はございます。だから,これを数値で何%というぐらいにお答えできる部分ではございませんが,まず調査のシステム,これは幾段階かの調査をやっております。大きくは今のこういう客観的なデータに基づくアンケート調査,それから,それ以降の聴き取り調査を実施しております。その段階のいろいろなサンプリングの設計等について検討いたしまして,とにかくもとの母集団で長期に不登校に陥っている子どもたち,あるいは軽度,日数で軽いという意味ですが,そういう子どもたちの欠席日数,あるいは不登校日数というものを検討いたしました。各段階のサンプルにおいて,長さ,長期短期という点については全く問題がない。すべてその段階の調査,それぞれが大体,母集団サンプルとほぼ一致しているということは1つは確証を得ております。そういう意味では,大きく特定の集団に偏った,欠席日数に関してでございますが,症状の軽重はこれは我々のアンケート調査でも,それからの聴き取り調査でも,なかなかそれだけでは判断することできませんのでしておりません。しかし,客観的な数字における軽重においては,サンプルにはほとんど揺るぎがないというデータになっております。この点が第1点でございます。
  それからあと,聴き取り調査の段階ですが,そうしますと最終段階ではその状況が極めてわかるわけでございますが,極めて深刻なケースも含まれております。ただそれが全体を反映する数字になっているかどうかということは検証できません。しかし,印象としましてはいろいろな段階でお答えいただいている中には,ひきこもった状態のお子さんもそれなりに含まれているということは事実でございます。

  お願いします。

  中学校卒業から現在までの時点で,大学,短大へ入学したもの,13%というのはどこの数字だったでしょうか。私の手元に持っている,現在どこか大学に通っていますか,学校,大学に通っていますかというのは,比率的には短大1.9%,大学6.6%という形になっているかなと思います。中学卒業時の就学の状況の中身というのもやっぱり問題にしていかなきゃいけないのではないかなと思っております。
  いわゆる森田先生の関係の調査,私もかかわらせていただきまして,全日制の高校で全体の45.9%,定時制高校が25.2%。通信制の高校が11.0%。専修学校,各種学校が17.9%という全体の中での状況かなと思っております。大学,短大に入学した者のこの13%の数字はどこからかなと思ったんですが,お願いします。

  失礼いたします。
  こちらの今御指摘ございましたように,進学,あるいは就業等の具体的な内訳に関するデータ,本日改めてお配りをしておりませんでしたが,お手元の資料ファイルでございますと1回目の基礎資料というところでそのあたりの詳しい内訳を示しておるところでございます。
  本日の議論に関係しますものといたしましては,1回目の資料3の28ページ以降に中卒時点の就業状況,あるいは進学状況等々と続いております。今お話がありました13%という数字については,この中の31ページでございますが,大学,短大への進学状況ということでございます。この中で大学,短大,入学したというものが28%,要は,回答者の中での28%ということでございますので,全体の母数の中ですとこの13%という数字になってくるという整理でございます。ですからこの分母のとり方の問題かと思いますけれども。

  おわかりいただけましたでしょうか。

  はい,確認しました。

  まだ御質問がおありかもしれませんが,これは協議の中で出していただくということで,ちょっと予定よりも時間が押していますので進めさせていただこうと思います。
  今,この不登校の問題自体も様々な側面がありますと同様に,このひきこもりの問題も今お話しいただきましたようにいろいろな面がございまして,こういうお話を参考にしながら,1つは教育行政として中卒後のひきこもりの問題についてどのようにこれをとらえ,考えていくのか。
  それから,御発表の方がそれぞれおっしゃいましたように,ひきこもりの問題と不登校の問題は非常にかかわりが大きいという御説明がございました。その関連性も踏まえまして,不登校をひきこもりにつなげないための支援の在り方とか今後の課題について,それから不登校だった,または不登校状況にある児童生徒の中卒後の社会的自立のためにどういうことを考えなくてはならないのか,あるいは今後の課題は何なのか,こうしたことを中心にしながら議論をしていただければと思っております。
  その際にこれらの問題に対する公的支援の中でも特に,この協力者会議としましては,教育分野では何がどこまでできるのか,あるいはどう考えるべきかということを含めて論議を深めたいと思っておりますのでよろしくお願いしたいと思います。
  では先ほど出されなかった御質問も含めまして,どなたからでも御発言を願いたいと思います。

  よろしくお願いします。
  川又さんにお伺いしたいと思いますが,私は子どもたちの就業体験みたいなもの,またはそれを含めた経済活動みたいなものは自立において非常に大切と思っておりまして,そういったことを含めて,実際にはぐれ雲では,アルバイトをしてきますよね,それに対する報酬というものが当然あるわけですので,それをどう運用されているのかということが1点。
  それから,今,中学生の学校現場では職場体験等が進んでいるんですが,適応指導の場でも実際に不登校の子どもたちにもう少し,労働体験みたいなものは可能ではないだろうかというところを考えています。そういった問題についてなかなか中学校現場ですと,新聞配達等は可能だけど他のアルバイトをするのは非常に難しい許可が必要だというようなことがあります。子どもたちへの理解があるような職場がありましたらそういったところで少し働くと,それと合わせて経済活動も含めたような活動が可能かなと思っておりますので,ぜひそういったことも含めてお話を川又さんにしていただければと思います。よろしくお願いします。

【川又氏】    まずアルバイトへ行っている子が給料をもらって帰ってくるんですけれども,それはやっぱり子どもによって違いまして,やっぱり建設現場に行く連中は結構もらってきますよね,月20万は超えてくる子が多いです。それから1週間,半分アルバイト,半分学校へ行っている子もいますので,午前中学校へ行って午後からアルバイトへ行くという子などはそんな多くはないです。
  それから彼らのほう,いつも生活費をいただいているので,親のほうから。ですからアルバイトへ行って結構もらってくる子はその生活費に一部充てている子もいます。それから次の目的としまして,大体みんな車の免許をとりたいとか,中には車を買いたいという子が出てきますので,それもやっぱり小さな目標を持たせるということは大事なことだと思うので,その貯金に使っている子もいます。簡単に言えば,ちょっと貧富の差は激しいということです。
  それから,中学生の労働に関しては,富山県の場合,14歳の挑戦というのがあるんです。2週間ばかり各職場に行く。ですからそういうのもありますし,それから結構うちに来る子で,校長先生の裁量ではないんですか,アルバイトできるできないというのは,ですから結構,理解のある校長先生なんかは仕事を少しぐらいしてきたっていいということは言われています。ですから中学生でたまに親方のところへ弟子入りするような形で行く子はいます。

  先ほどは川又さんにお尋ねする時間が十分とれませんでしたので,今御発言がありましたので,関連してでもあるいはその他のことでも御発言ありませんでしょうか。

  川又さん,どうもありがとうございました。川又さんのところでつくるお米,すごくうまいんです。私も食べさせていただいたことがありまして,すばらしい活動だと思います。それで,いろいろな子どもたちを受け入れていらっしゃると思うんですけど,また,青創協のほうで,しっかりしたネットワークがあるので,例えばどういう子の場合にはうちで受け入れますよと,あるいはどういう子の場合には別のところを紹介しますよというような何か基準のようなものがありますでしょうか。

【川又氏】  やっぱり10代の中学生,高校生ぐらいになると,青創協というのはいろいろな共同生活をしている団体が中心になっているんですけれども,やっぱり例えばAというところがあって,Aではうまくいかなかったからといって,Bでうまくいく場合もあるわけですよね。またその逆に,BでうまくいかなかったけれどもAにいったらうまくいったと。それは結構あると思うんですよね。ですから基本的には,何が何でもうちで扱おうという考え方はないわけです。ですからあるところは,やはり10代が得意だと,またあるところは20代,30代のひきこもりが得意だと,得意というか多いというところはあります。

  私から1つ教えていただきたいのですが,先ほど川又さんのお話の中で,例えば,地域とのふれあいであるとか,あるいは農業,要するに作業を通じて,あるいは大人とのふれあいの経験を持つ。それからもう1つは子ども同士でもまれるということが非常に重要だというお話があって,確かに,最近の子どもの変化から考えていって,これは非常に重要なことをおっしゃっているなと感じたんですが,そういう川又さんの御経験から考えて,御近所の学校でもいいですし,日本の学校教育全般に対してでもいいんですけれども,学校でこんなことをやることが意味があるのではないかというような,もしお考えがあったら教えていただけるとありがたいのですが。

【川又氏】    ちょっと思うのは,これは実現するかどうかわからないですけれども,やっぱりもうちょっと,教室以外のこと,教室からもっと出るというのが必要ではないかと思うんです。いわゆる勉強でなくて,それ以外のことをもっと取り入れたらいいのではないかなと思うんですけれども。

  すみません。突然大きい問題をお尋ねしまして申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
  はい,どうぞ。

  本市も不登校全体の中でのいわゆるひきこもり傾向にある子どもたちというのが,小学校でも中学校でも半数以上を占めている現状にあるわけでございます。しかも,中学校に比べて小学校のほうが多いという実情がございます。そういった中で,両先生から御指摘がありました人間関係づくりを大事にしていくということであるとか,それから,労働体験も含めまして,子どもたちが豊かな体験をしていくといいますか,そういった取り組みの中で,子どもたちの中からの内的な動機づけの重要性ということの指摘も,今話を聞いて感じたところでごさいます。特に教えていただきたいのは,私ども,教育行政を預かる立場といたしまして,斎藤先生の御発言の中にもございますように,行政を中心とした良質なネットワークが構築されることがひきこもり支援云々ということの御指摘があるわけでございますが,特に良質のネットワークということにつきまして,もう少し具体的に御指摘を賜れば大変ありがたいということが1点でございます。
  それから,もう1点は,川又先生にお聞きしたいことは,特に合宿所というフィールドで様々な共同生活を通じた体験を通じて子どもたちの自立を促しておられるということでございますが,私ども行政の立場からいいますと,やっぱり学校に復帰をめざすといった観点からしますと,そういった趣旨の活動を学校がどのように取り入れていったらいいのかということにつきまして先生に御示唆を賜ればありがたいなと思います。2点でございます。

【斎藤(環)委員】    ネットワークのことなんですけれども,ひきこもりというのは教育問題,医療問題,福祉の問題,あらゆる領域がかかわる部分については,公的な,つまりお役所だけが全部まかなえるネットワークを構築するのはあまりにも効率が悪すぎて,ほとんどナンセンスではないかと私は考えるわけです。
  現実に動き出しているのは神戸とか横浜とか札幌がありますけれども,行政とNPOのたまり場とか,家族会とか,そういったものが手を組んで,協力し合ってやっていくと。行政的にいろいろ補助金を出したりとか,あるいは積極的に精神保健福祉センター等で家族会を組織したりとか,いろいろな活動がありますけれども,これは1つの骨組みとして,行政面で頑張っていただきたいというのは,1つは地域差があり過ぎるということなんですね。均一では全然なくて,やっぱり中央に偏ってしまうと。関西であれば大阪,神戸,京都はすごく支援団体が集中していますけど,ちょっとはずれると全くそれがない。ここを補うのが行政のネットワークで,均一にそういうものができ上がれば,とりあえず窓口はできると。どこに相談に行けばいいかが全国均一に対応できるということがあります。
  ただ,それだけでどうしてもカバーし切れない領域というのが幾つかあって,特に家族会の問題であるとか,それから本人のそういう事情,グループとかですね,たまり場的な活動に関しては,これはかなりフレームの緩い形で,柔軟な対応を迫られる場面というのが多くて,これはどちらかというと民間の強みというか,民間の組織力とか自発性の強みが生かされる場面だと思うんです。こういった双方向性のもとで,まず官民の協同が理想とするネットワークの1つです。
  それからネットワークの内実をほかにも申し上げると,医療機関の関与ということはやっぱり考えていただかなきゃいけないと。これはどうしても精神障害的な問題が途中から出てくることが多いですから,これに対する対応機関なくしてはどうしても限界があるということで,かかわる人もそういうものが背景にあるとかなり安心してやれると,こんな相談を持ち込まれたんだけれども,とてもうちでは見切れないと,かといって,うちでは見ませんからといって切り捨てるのはどうも抵抗があるといったような立場も,まあ,一応ネットワークがあればこちらはこちらの管轄でというふうに分けることができますから,まあ,医療の関与ということは,私は積極的にあったほうがいい。
  もう1つは,医療の関与のメリットはもう1つコストの問題があって,民間だけですとどうしても,決して高いとは思いません。高いとは思わないんですが,ただ利用者側からするとやっぱり月10万でも高いと思う人はいるわけなんですよ。そういうことを考えますと,保険がきく,きかないというのはかなり大きな問題で,より具体的な提案として私は,厚生労働省さんにお願いしたいのは,将来的に家族相談だけでも保険が使える形を何とかとっていただけないか。今これは,我々自費でやっていますから1回5,000円かかるわけです。大変これは割高感が強くて,これで関係が切れてしまうことが大変多いんですけれども,将来的にはその辺の枠も少し緩めていただかないと,我々も親のカルテで子どもの相談をなんていうことにしなければいけなくなってしまうわけですから,ちょっと脱線しましたけれども,そういう問題があるということです。
  あと民間,ネットワークの内実でいえば,最低限そろえていただきたいのは,家族会と,それから本人の,まあ,自助グループでもたまり場でもこれはいいのですけれども,スペースですね,居場所ですね,その居場所というものを,これをどちらかというと民間向けですけれども,別に公的なものがあっても構いませんし,それから不定期なものとしては,キャンプ活動とか,そういったものがあればなお結構で。
  この実例を1つ挙げますと,多分これは文部科学省の中では生涯教育課の活動になるのかもしれませんけれども,私の郷里の岩手山,公立でやっていた青年の家というところで毎年今キャンプ活動をやっている。2週間のキャンプで,これは国の行事なのでわずか3万円で利用可能というところです。ほとんど交通費の負担だけで行けるキャンプという活動があって,こういったものがもうちょっと全国規模でやってもいいのではないかと考えます。
  ほかにもいろいろありますが,ちょっと長くなり過ぎましたので,私の漠然としたイメージを申し上げました。

【川又氏】    先ほどの学校へ戻す,戻さないという話ですけれども,ある養護学校で,ちょっと社会で生きるという講演をしたんです,子どもたち相手に。最近,養護学校というのは,不登校のたまり場ですので,そこである子の感想なんですけれども,「学校が楽しくて仕方がない。好きでたまらない。そんな場所であれば不登校者はいなくなるだろうか」というところなんですね。多分,どんな楽しいところだって不登校は起こるだろうということだと思うんですけれども,それは1つのところにあるとしますよね。それからもう1つ考えているのは,僕たちは学校へ行けということは言わないです。ただ,例えば現実に高校卒業の資格はほとんどの子が取りたがってて,しかも取っている子がたくさんいるわけです。高卒の資格はいろいろな方法がありますから,ですから何らかの形で高卒の資格を取っている子は多いわけです。ですから大体親のほうが,せめて高卒の資格は,高卒の資格はって私たちに言ってきますけど,それぐらい取らせてくれ,取らせてくれって,それはもっと後の話で,一回社会に出てきてみれば,結構何で高卒の資格が必要なんだろうということは,子どもたちが自分たちでわかるわけなんです。ですからそういうのが僕は大事だと思っていますので,もちろん中学校へ行った方がいい,中学校へ自分で行きたいという子に関してはかなり,今までも230人が経験してきたんですけれども,そのうちの15人は近くの中学校に行っていますから,僕自身は学校へ行けなんていうことは絶対言わないし,行けとも言わないしというところです。子どもたちが自分たちで自覚を持てばそれでいいと思っています。

  すみません。斎藤委員に2つほどお伺いしたいんですけれども,まず,ひきこもりに関しては,今,全国ひきこもりKHJ親の会というのができていまして,急速に各地に支部を広げているという状態です。こういう会との関係とか,あるいはそういう活動,親の会の活動になると思うんですけれども,私どもで調べてもどうもよくわからないという点が多いんです。支部をたくさん開設しているんですけれども,その後の活動というのがどうもはっきりわからない。何をやっているのかという実態がつかめてこないものですから,もしご存じでしたら,KHJに対する見方と活動ですね。
  それからもう1点。先ほど,現在ではひきこもりに対する対応ができていないので,予防は無理ではないかということをおっしゃったわけですけれども,ただ,このままいくと20年後にはひきこもり高齢化社会が来る。このままではいけないということは言えると思うんですけれども,要するに我々も,ではそれを見ていればいいということではないと思うんです。先ほども不登校とひきこもりの関係,非常に関連性があるということがございましたし,私どもの三百数十人の調査でも,ひきこもりの中で不登校であった人は圧倒的に多いです。不登校からひきこもりになった人44%というのが出ておりますが,不登校の期間が長くなるほどひきこもりが増えていくという傾向があるんです。比例してくるような感じがするんです。一人一人細かくは出ていないんですけれども,どうもそういう関係があるんです。とすれば,不登校の問題が少しでも解決方法が見出せればひきこもりに対する予防になるのではないかと考えておりまして,これも非常に難しいことだと思うんですけれども,先ほど御提案のありました親への対応です。親の意識が変わるということによってかなり違うのではないか。これはひきこもりに対する対応でもあり,これは私は予防にもなるのではないかと。要するに,まだひきこもり状態ではない親にとっては全く現実味がないわけです。これは不登校も全く同じなんです。普通の親にとって不登校は,関係ないねという話になってしまう。そういう人たちに対する何らかの呼びかけをしていくというのがまず必要ではないかということで,お考えをお伺いしたい。

【斎藤(環)委員】    KHJに関しての御質問でしたけれども,私は深くはコミットしていないので,現状,正確な指摘になるかどうかはわかりません。ただ,今御指摘がありましたように,全国展開をしておりまして,日本全国各県に1つはKHJ支部,まだ完全でないようですけれども,かなりの程度広がりを示していて,機関紙なども定期的に発行されて私もいただいています。
  存在意義は非常に大きいと思います。1つは圧力団体としての価値が強くて,積極的に国会等に勉強会等で奥山さんが呼ばれたりとか,与党,野党それぞれに別々に勉強会があるやに聞いておりますけれども,ひきこもりについてはそういうところで。まあ,政治のほうに介入をしていって,少しでも対応とか,それから将来的には就労の方向性みたいなことも検討課題になっているのかもしれませんけれども,そういった存在感というのは非常に大きいのではないかということは1つ言えると思います。
  ただ,私の個人的感想を言わせていただきますと,当事者だけででき上がった団体というのは,途中の限界がどうしてもあると思うんです。特にトップの人が当事者性が強すぎるとその活動が,うまく言えませんが,どうしてもいびつな方向にいってしまう傾向があって,そのKHJという名前も強迫神経症とか,心拍生涯とか,ちょっとひきこもりとくっつけてはまずいような,我々から見てまずいものがどうしても入ってくるけれども,これは奥山さん自身のお子さんとか,それからその親御さんとかとの経験から御自分の手でつくり出したということで,そういったまあ,ちょっと我々からすると違和感のある,ただその分インパクトもある名前になっているところはあるかもしれません。その辺は両刃の剣的なところもありまして,それが結局何千団体も,登録しただけで四千何団体,これだけの家族が参加したという時点でひきこもり問題の広さをうかがい知るには十分だと思うんですけれども,そういう家族が一時的にしろ参加したことがあると。それだけ共感をもって迎えられたという点では,有意義な活動であったと思いますけれども,もう少し当事者ではないところの関与も受け入れていきながら,バランスのとれた展開を期待したいというところは,一方ではあります。
  それから,もうここまで広がったらあまり今後全国くまなくということは意識されなくてもいいのではないかというところもあって,既にあったものがKHJ傘下におかれるみたいな,そういう展開もややちょっと強引に感じるところもなきにしもあらずで,そこまでしてやらなければいけない理由は何なのか,ちょっと疑問がないではないです。やや政治的な方向に,活動の性質が傾き過ぎではないかなという印象でちょっと危惧しております。
  予防に関しては全くおっしゃるとおりで,私が予防不可能みたいなことを極論として申し上げたのは,不登校からひきこもりへ行くのを止めることは,私は予防というイメージで考えていないんです。不登校として既に問題化してしまっているわけですから,こういう言い方は問題あるかもしれまんけれども,一応不適応として出ているわけですから,そこからさらにこじれないようにすることは,私は対応とらえている,予防というよりは,予防的対応といってもいいんでしょうか。ちょっとごまかした言い方ですけれども。予防というのは,いかなる不登校もいかなるひきこもりもあらかじめ防ごうとか,起こすまいとか,そういう過度の警戒体制みたいなものですか,そういった形で全体に網をかけるようなことは何とか避けていただきたいと。不登校もひきこもりも自由に起きて構わないと,起きて構わないけれども,むだに長引いたりとか,とりわけ本人の意図を越えて伸びてしまったりとか,こじれていったりとか,そういう過程は何とか防ぎたい。こちらは私の言い方で言えば対応に当たるわけなんです。だから不適応を一切起こさないシステムではなくて,不適応は幾らでも起こって構わないんだけれども,起こってしまったものが無駄に遷延化しないとか,むだにこじれないということを考えたいという点では,御指摘のとおり,不登校からひきこもりに行くことを防ぐということは,私は対応としての活動として大変有意義だと思いますし,まさにその価値があると思いましたのでこういう会にも参加させていただいているというところがあります。よろしいでしょうか。

  ありがとうございます。ただいまの2つ目のことについてお伺いをさせていただきたく手を挙げたわけなんですが,ただいま御回答いただいたわけなんですけれども,そうしますと,いわゆる学校の制度または教育を受ける,義務教育のレベルでの権利であるとか,就学義務であるとか,そういう部分とのかかわりがかなり一方では出てくる内包しているかなと思うんですが,そういうレベルからの観点からは,委員さんはどのように。不適応を起こしてしまったのは仕方がない。ただいまおっしゃったのは。それはどんどん起きても仕方がないんだと。それについての予防的なものではなくて,そういった部分についての対応ということを強調しておいでだったわけなのですが,私ども学校に直接かかわるものとしましては,できるだけ学校を住みよくして,子どもたちが学校は楽しいという部分の中で,一人でもそういうお子さんを少なくしたいということをまずもって考えてしまうんですけれども,その辺はいかがでしょうか。

【斎藤(環)委員】    すみません,言葉が足りなかったです。私がイメージする予防策とはちょっと強権的過ぎるのかもしれません。楽しくして不登校を減らそうということには全く異存はないんです。ただこれは私がイメージする予防とはちょっと違う意味合いになってくるんです。
  先ほど川又委員さんもおっしゃったように,どのように理想的な場所をつくっても不登校とか不適応,それはまさにフリースクールにも不登校があり得るように,そこに適応できない人はどうしても出てきてしまうという限界がありまして,そういったものを完全になくそうとする方向は無意味だということを申し上げたわけです。
  それから,不登校が起きにくい状況とか,魅力的な学校をつくるということは,私のイメージする予防とちょっと違うニュアンスになってくるのですが,それも広義の予防という点で言えるかもしれませんし,そうした意味であれば私は大賛成でありまして,そういう予防策はぜひとも講じていただきたい。ちょっと極論過ぎたかもしれません。

  ありがとうございました。

  厚生労働省にちょっとお聞きしたいのですが,直接厚生労働省のほうで関係した調査ではないのではっきりしないんでしょうけれども,いわゆる社会的ひきこもりについて,6ページのところに社団法人の青少年健康センターの調査があります。私のように相談機関にいる者としては,ひきこもり関係の相談窓口が非常に少ないという現状があるのかなと思っているのですが,その6番目あたりに保健所3,787件,精神保健福祉センターが2,364件,複数カウントがあり得るというのは,これが今回の調査で相談があったということで考えてよろしいのか。
  それとその下のところの,人口1万人あたりのひきこもりの相談件数というのは,保健所平均で0.36。精神保健福祉センターで0.32。平均0.19というような状況をどうとらえればいいのかということです。
  それから川又さんのほうにぜひ聞きたいのは,例えばはぐれ雲のほうに相談に来る方はどのような形で来るのか。先ほどちょっとビデオ等でもありましたけれども,例えば公的な機関からの紹介等はあり得るのかどうかということについて教えていただければと思います。
  斎藤委員さんのほうにはほんとうに申し訳ないのですが,相談窓口の問題について非常に少なく,ほとんど対応できていないのではないかと思うんですが,その辺のことについてあとでまたお答えいただければと思うんですが。

【厚生労働省】    先生が御指摘の点ですけれども,まずこの調査なんですけれども,厚生労働科学研究の中で行われたものでございまして,相談窓口と考えられる精神保健福祉センターに調査をしております。そちらのほうの箇所数ですけれども,こちらに書いていますけとおり,回答率のほうは保健所だと623個所,精神保健福祉センターであれば50個所。こちらの個所から答えがありました相談件数といいますのがこちらに書いてあるものです。
  この数をどういうふうにとらえるかという御質問なんですが,非常に難しいところではございますけれども,まだまだもっと公的機関が相談に乗れるのではないかという可能性はこちらでは考えております。
  その1つの原因といたしましては,この調査自身が平成11年から12年にかけての1年間を調査したものでございますので,現在同じような調査をしますともっと相談数が増えているのではないかと考えているんです。ですからこれはガイドラインを配付する前の調査でして,ガイドラインを配付したあとも同じような,全く同じ調査をまた今年度する予定ですので,相談件数の増加,それがガイドラインの配付効果というふうにダイレクトに考えられるかどうかは別ですけれども,今後の経過というものはこちらも調査していきたいと考えております。

【川又氏】    うちに入る経路ですけれども,基本的には公的機関からの紹介ということはないです。というのは,逆に公的機関が情報を流すというまでをやっても,正式に紹介という形で来た子は今のところいないです。
  昔,風の子学園というのがあって,そこが多分姫路あたりの公的機関が紹介したと思うんです。それ以来,公的機関が民間を紹介するということはなくなったと思うんです。情報を流すまではやるとしても。
  あとは,先ほどビデオでやったんですけれども,あれで問い合わせは600から700件ぐらいあったんです。ただその中で来た子どもというのはだれもいないんです。ほとんどうちに来るのは新聞を読んだとか,一番多いのは口コミです。
  それでよろしいですか。

  はい,ありがとうございます。

【斎藤(環)委員】    窓口の御質問ですけれども,窓口は先ほど厚生労働省の方がおっしゃられたように,ガイドライン配布以降かなり増えたと言っていいのではないでしょうか。配布効果というのはかなり大きなものがあって,配布されて結果的に慌てて対応策を講じつつあるセンターとか,保健所がかなりの数に上ると思います。ただ残念ながら,当然といえば当然なんですけれども,別にガイドラインは強制力はあまりないわけですから,配られたけれども,我関せず的なところもまだまだたくさんありまして,およそ窓口として機能していない自治体のほうがまだまだ多数であろうかというふうに感じますので,これをどのように一般化といいますか,普及させていくのかというのは,やはり家族が,私はむしろ家族側をそそのかして,どんどんセンターに押しかけていって,ガイドラインがあるはずだからもっと苦情を言えと促しているところもあります。
  それによって相談件数が増えて,必要に迫られててそういう活動も広がることもまたあってもいいのではないかということを考えたりしております。
  それから,これは半分質問だったり,お願いだったりするんですけれども,ガイドラインの決定版ですね,これが来年の3月なり4月に出るとした場合に,少なくとも公立の病院であるとか,別に民間でもいいと思うんですけれども,そういったところにもぜひ配布していただきたいというか,やっぱり精神科に最初行くという人のほうがまだまだ多いということがありますし,今回の調査,たしか調査結果,保健所,センターで考えれば六千何例とかになりますけれども,これは正直言ってかなり低い数字と言いますか,低いと言いますか,保健所,センターに限ったにもかかわらずこんなに多いといってもいいわけです。つまり我々の家族会の中で聞くと,問題が起こって,最初に保健所やセンターに相談に行こうと思う人自体が少ないんです。そういう場所を思いつく人の数が限られていますので,この数字はそれにもかかわらず6,000人もいたと,私は見るべきだと思うんです。ですから,やっぱり極めて多いなという感じを持ったわけなんですけれども,幸いガイドライン配布以降,その存在がマスコミを通じて知られるようになりましたので,先ほど御指摘ありましたように,今はこの何倍かの数字に多分なっているだろうと思いますし,自治体を回った感想からいっても,相談件数は着実に増えているという印象を持っています。
  ただ,どうしても行政的に取り組むとすれば,センター中心に活動が展開することは,私は仕方がないと思っていますし,調査にしてもガイドラインの内容,配布時期にしても極めてこれが迅速に適切な対応をなされたケースとして私は非常に喜んでいる面もあるんですけれども,一方で,この非行の問題というのは下のほうから持ち上がってくるといいますか,必要に迫られて動かざるを得ない自治体の職員なんていうのも時々話を聞くことがありまして,具体的例で言いますと,例えば和歌山県,私は何度か行ったことがあるんですけれども,和歌山県の場合は,県の精神保健福祉センター,全く機能していないと。残念ながら。かわって田辺市,第2の都市の田辺市の健康課の職員,保健婦さんですけれども,保健師さんと言うのかな,その方が独自にネットワークを構築して,地元の精神科医とか福祉会とか,それから作業所とかそういったもの一切合切巻き込んで,非常に小回りの利く,良質のネットワークをつくり上げてしまったという実例があります。ほかにもそういう保健婦さんが頑張って,思春期相談の専門の窓口をつくってしまったりとか,そういう活動が多々ありまして,これは全部手弁当でといいますか,ボランティアでやっているわけです。
  当然のことながら,公務員ですから講演会をやってもギャラはもらえませんし,そういった限られた環境の中で,当事者性のない方が頑張ってやっていらっしゃるということがありまして,私はこういう活動はもっと知られるべきだし,もっと評価されるべき,あるいは単純に助成金とかそういうレベルでも評価されてもいいのではないかという印象を持っています。一律に押しつけられる活動というのはどうしてもモチベーションが下がってしまって,なかなか積極的に展開しにくいところもある。一方では,すごく自発的にやりたがっているんだけれども,資金不足や何かであえいでいる人もいるというところで,まだまだ発展途上の段階かという印象は持っております。

【厚生労働省】    先生の御指摘に若干コメントをさせていただきたいと思います。まず最初に先生が御助言くださいました,もっと御家族の方をたきつけて,精神保健福祉センター,保健所なり行くような形でそういう必要性もあるという御指摘に対しまして,こちらもやはり双方の働きかけ,相談の対応者,また御家族の方双方の動きがなければなかなかものは動かないと考えております。今までのガイドラインといいますのは対応者向けのものでしたけれども,御家族の方,また御本人の方に読んでいただけるようなガイドラインと申しますか,パンフレットも現在作成中です。そちらの中に困ったときの相談先や,現在の状況はだれにでも起こり得ることであるというような内容を盛り込んだ家族向け,また本人向けのパンフレットになっています。ですから,先生の御指摘に少しでもお答えできるのではないかと期待しております。
  次に2点目なんですが,医療機関,精神科医の先生方にかなり期待をこちらもしているところなんですけれども,暫定版のガイドラインのほうを医師会のほうにも配布しておりまして,最終版につきましてはさらに医師会,または都道府県の医師会のほうに働きかけて,私立の医療機関,または公的な医療機関にも配布していただくような形でこちらからもお願いさせていただこうと思っています。
  3つ目なんですが,やはり公的な精神保健福祉センターであるとか,保健所の活動は限界があると,こちらも感じております。その1つの対応策といたしまして,例えば,地域のいろいろな資源,例えばNGOであるなり個人のカウンセラーなり,それらを精神保健福祉センターであるとか,保健所がまず情報収集をする。どこに紹介をすることができるかとか,どこを巻き込むことができるかという情報収集をまずした形で,公的機関が情報を持って,それを活用できるような形で促していきたいと,これからも指導していきたいと思っております。

  これはお二方にお伺いしたいのですが,家庭環境,特に核家族化,少子化の影響で,子どもたち自身がそういったコミュニケーション能力が不十分であるという点でこういった状態になってしまったと考えられるのですが,特に親御さんなんかと接触する機会が多いと思いますので,その親御さんたちの,これはまた感覚的な問題になってしまうかと思うんですけれども,特徴的な部分があるとか,我々が一般の親同士の関係をつくる中でそういう方々と関係をどうしていったほうがよいという示唆があったら教えていただきたいという点と。これは厚生労働省のほうに対してのお願いになってしまうと思うんですけれども,そういった親御さんをつくらないための社会的な教育プログラム的なものを厚生労働省さんのほうでは何かお考えになっているのかどうか,その辺ちょっとお伺いしたいと思います。

【斎藤(環)委員】    親御さんの印象についてなんですけれども,たしかに数として多いのはやはり核家族が多いとか,ただ大家族がないかというとそうでもなくて,それは要するに社会の構成率をそのまま反映しているということなのかもしれないと。つまり大家族が減って核家族が増えているという中で,ひきこもりも当然核家族の比率が多いのは当然ということになるのかもしれませし。では大家族にひきこもりが起こらないかというと全く逆で,頑固なおじいさん,おばあさんの存在がますます足を引っ張っているなんていうことがしばしば,地方に行くほどそれは見聞きすることで,逆に大家族のほうが核家族よりも対応を困難にしている面があるのではないかという側面もしばしば見聞きします。
  それから,多い親御さんのパターンで言えば,あとはよく言われますように,母親が過保護,過干渉であったりとか,父親が仕事人間で無関心であるとか,たしかにそういうケースに出くわす機会は多いのですが,ひょっとしたら日本の平均的な家庭だけなのではないかと。そういうこともちょっと考えなきゃいけないと思っています。ひきこもりが特に多いというよりは,やっぱりこれも日本社会全体の問題が,単に比率として反映しただけかもしれない。その証拠にといいますか,いろいろなお嫁さんがいるんです。明治時代の家族みたいな,非常に厳格な父権の極めて強い家庭がいまだにあったりとか,一方でものすごくリベラルな不登校ぐらい全然平気みたいな,びくともしないような家庭があったり,それでもひきこもりが続いていたりするということがあって,私が予防の無効性ということをこれほど言うのは,家庭がどうであってもひきこもりというのは起こるときは起こってしまうということが私の最終的な印象なんです。だからこういう家庭であればひきこもりは起こらないよということは,私は正直言ってあんまり考えたことはありませんし,それに関してはむしろあちこちで言っていることですけれども,文科省がまさに平成4年にいかなる家庭のいかなる子どもにも不登校は起こり得る,これはひきこもりも全く言えると思うんですけれども,これを言った手前,理想の家庭を追及し過ぎるよりは,やっぱり対応のほうが重要なのではないかということをもう一回申し上げたいと思うんです。

【川又氏】    僕が初めて仕事,これはいわゆる不登校児とかかわりだしたのは22年前なんです。そのころの不登校児と今の不登校児は全然違いますから。最近はますます変化して5年前のマニュアルなんか使えないくらい子どもたちが変化してきているわけです。同時に,これは親も変わってきているわけなんです。やっぱりどこが一番変わっているのか,子ども自身も自由とわがままをはき違えている,それは当然親もそういうふうになってきているんですよね。ですから,基本的に親の考え方を変えるしかないわけなんです。その親に考え方を変えろって命令したって,親の,40年も生きているんですからそんな変わるわけないんです。どういうふうにすればいいのかなって,とりあえず子どもに対する期待とか,過剰な期待とか,そういうのをもう少し,考えを休んでもらって,頭の中を少し余裕を持ってもらうしかないと思っているんです。
  ある例ですけれども,例えば,いわゆる不登校児を持った母親がある講演会に行きますよね,ありがたい先生の話を聞いて,ああ私も頑張ろうと思って家へ帰るわけです。そのとき頑張ろうと思っても家に帰れば現実があるわけです。ですからなかなか親も考え方を変えられない。ところが,これは1つの例ですけれども,親子が離れて生活する。そうすると最初は親のほうはあれするとこれは無責任じゃないのかとか,子どものほうからは子捨てをするのかとか言われると思うんですけれども,離れて見るうちに,子どものほうはそれなりに何とか明るくはなってくるわけです,完全にどうにかならないにしろ。ですからそのときにたまたま親のほうは少し頭に余裕が出てくるわけです。この余裕はすごく大事だと思っているんです。親御さんの考え方を少し変えるに当たってね。ですからその余裕が大事だと思っておりまして,うちの子でもこのぐらいできるのかと,何でもいいんです,明るくなった。何でもいいんですけれども,とにかく頭に余裕ができてきた。この余裕をつくることが僕は大事だと,ともかく考え方を変えるというところでね。ですからやはり親も子も,自由とわがままをはき違えるというところはちょっと感じているところです。

【厚生労働省】    委員がおっしゃいましたのは,ひきこもりなどをつくらないための親御さんへの教育ということに対する省の取組ということでよろしいでしょうか。
  その御質問に対しましてはやっていないということになると思います。といいますのは,予防という意味で御家族の方に介入,教育するということは行政的にやるべきことかどうかというのは非常に疑問でありますし,社会教育とか親の教育につながることは厚生労働省としては非常に難しいのではないかと。ただ,もう1つ理由といたしましては,斎藤先生がおっしゃっておりますように,どの御家族にも起こり得る問題でして,非常に早期にこういったケースは起こり得るかもしれないという形での介入というのは非常に危険ではないかと考えております。ただ,やはり問題をお持ちのお子さんを持っている家族の方であるとか,相談される方に対しては,やはり厚生労働省としましては,地域の機関で相談に応じるよう推進する考えでございます。

  ありがとうございました。まだ御意見をお持ちの方もおありかと思いますが,まだこれは次回以降にもこの問題については引き続き協議をすることになりますので,またそこで御意見をお出しいただければと思います。
  今日は社会的なひきこもりということを中心にしてお二方からお話を伺い,また厚生労働省のほうから貴重な資料とともに御説明を伺いましたが,社会的なひきこもりについての1つの,一応の現在における定義はお教えいただきましたけれども,その中でも,例えば社会とのかかわりという部分についてはまだ多少動いている部分があるというお話もありました。しかし,そのお話の中で確認されましたのは,やはりこの問題は非常に重要な意味を持っているということと,それから,ただ見守るだけでは問題は解決しないんだと。周囲からの支援がやはり重要だというお話が私は非常に印象的に承りました。
  社会的な自立を目指すという観点は,この協議会では第1回からずっと義務教育段階,あるいは学校教育,教育行政の段階での不登校対策の点から考えてまいりましたけれども,その点にとどまらない重要な観点でありまして,今後,特に今日斎藤委員さんからこのひきこもりの問題については,教育の面と医療の面と福祉の面があって,ですから行政についていいますと,教育行政,福祉行政,労働行政とのかかわり,それから学校教育にかかわっていいますと学校教育,それから家庭教育,あるいは社会教育とのかかわり,そして今のようなことを視野に入れてかかわることが非常に重要だということが,今日1つ確認されたことであろうと思います。
  それからもう1つは,実は私は先ほど,川又さんにちょっとお尋ねしたことは,私の頭の中には学校におけるカリキュラム開発の問題がありまして,その中に今日お話しいただいた中で,非常に重要なヒントがあるなと思ったわけでありますが,しかしお話の中で,もっとその背後に,子どもの人間的な成熟であるとか,あるいは社会的な成熟ということについては,そこに意味を持つ生活環境とか,教育環境のもっと大きい問題があって,そのことを視野に入れることがもっと重要だということが今日のお話の中で確認されたように思います。
  今後は,そうしたことも踏まえながら,この問題について,特に不登校の問題の延長線上にこのひきこもりの問題があるということを今日確認をされまして,そのことを我々踏まえながら論議をしていき,一体今後どういうことが重要になるのか,また施策としてはどういうことが大事であり,学校としてのかかわりとしてはどういうことが大事かということをさらに論議を深めていくことになろうかと思います。
  特に今,高校に進学してそうした状況にある生徒についてどのような支援をしなくてはならないかという課題も,今日浮き彫りになったということでありまして,次回はその点を議論しながら,また今日話されたことに戻りながら論議を深めていくということで今後進めさせていただこうと思っております。
  今後の審議のスケジュールでございますが,当初の予定では年末を目途にしてこれまでの意見の整理と審議のまとめを行う予定だったわけですけれども,今日の話し合いの中でも確認されましたように,審議事項が,そんな単純なものではなくて,かなり多岐にわたる,そのため当初案では十分に検討を詰めることができない可能性が出てまいりましたので,スケジュールにつきまして多少変更させていただきたいと考えまして,私と事務局のほうで今相談をさせていただいているところでございます。事務局のほうからう,今後の進め方についてお話しいただけますでしょうか。

  資料5のほうを御参照いただきたいのですが,次回は,今主査のほうから御紹介いただきましたように,ここ同じフロラシオン青山にて中卒後の諸課題の2回目ということで,今度は高校での対応ということで東京都立桐ヶ丘高等学校からヒアリングをさせていただきたいと予定しております。
  また本日,体験学習的なものの効果という話も出ましたが,そういったものを積極的に展開されています兵庫県立但馬やまびこの里のほうにもヒアリングをさせていただきたいと考えております。
  またそれ以降,年明けでございますけれども,1月14日にこれまで各委員から出していただきました意見の整理をさせていただきまして,その後,1月,2月と審議のまとめを御審議いただきまして,パブリックコメントを経て3月中に報告案ということを目途に御審議いただければと考えております。
  また本年度といいますか,12月までにヒアリングをさせていただきますと時間がなかなかとれませんで,どうしてもヒアリングに対するQ&A的なところで御議論いただくことが多かったわけですが,もう少し時間をいただくことによりまして,その各委員相互の御意見もまた議論を深めていただければと考えております。よろしくお願いいたします。

  ありがとうございます。今の御説明のように,まず次回は中卒後の諸課題についての2回目で,そこまで一通りのヒアリングを終了しまして,年明けに意見の整理及び審議のまとめについて検討し,これを踏まえてパブリックコメントをお示ししまして,これを経て年度内3月中を目途に報告書の公表というような形で進めたいと思っておりますが,よろしゅうございましょうか。
  それからもう1つ,委員の皆様方に御報告を申し上げたいことでありますけれども,文部科学省のほうから伊藤委員さんの研究室に委託する形で,不登校児童生徒の保護者の状況や行政に対するニーズ等を把握するための調査を実施するということで,今進めていただいております。この調査は保護者を対象とするものであり,本会議の議論を深める上でも有意義なものと考えておりますので,今後調査結果が取りまとめられ次第,本会議でも御報告をいただくことになると思います。そのときには,また伊藤委員さん,どうぞよろしくお願いをしたいと思いますし,委員の方々もちょっとそのことを踏まえて御議論を進めていただければと思っております。
  続いて,次回の会議についてでありますけれども,先ほどから何回か申し上げましたように,中卒後の諸課題等についての2回目として,不登校児童生徒を対象とした高校における対応,体験活動の効果,進路の問題等,今回議論が十分でなかったテーマについて幅広く議論をしていただきたい,そんなことを予定しております。
  その際,また今回同様ヒアリングを実施することを予定しておりますけれども,ヒアリングの対象につきましては,高校における対応の観点からは,東京都立桐ヶ丘高等学校。それから体験活動の保護者の方々への支援等の観点からは兵庫県立但馬やまびこの郷の方にお願いをしたいと思っております。そんなことを御了解いただいた上で次回に臨んでいただければありがたいと思っております。よろしゅうございましょうか。
  また,第6回の議事録(案)につきましては,別途事務局のほうから郵送させていただきますので,御意見等について事務局まで御連絡いただくようにお願いしたいと思います。
  今後の進め方,次回のこと,若干の事務連絡も含めてお話を申し上げましたが,何か今,ここで緊急に御質問,あるいは御発言はよろしゅうございましょうか。
  では改めまして川又さんに,今日はほんとうにお忙しい中を御出席いただきまして,ほんとうにありがとうございました。
  また厚生労働省にも資料を用意していただきまして,貴重な御説明をいただきましてありがとうございました。
  では,予定の時刻になりましたので,本日はこのあたりまでとさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

──  了  ──

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)

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