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3  企業等への要望

  本報告書は、高卒就職者を取り巻く環境が激変していること、また、実態調査の結果を踏まえつつ、高等学校の就職に関する指導や生徒の意識、高卒者の就職をめぐる慣行等がその変化に十分には対応していないことなどを指摘するとともに、それらについての見直しや改善・充実が必要であることを述べ、そのための具体的な方策について提言を行った。
   高卒者の就職にかかわる課題の解決は、その指導に当たっている学校が担うべきところが多いが、ひとり学校の努力だけで行うことができるものではない。インターンシップ一つをとっても、これを受け入れる企業等がなければ実現できないものであり、また、就職慣行の見直しについても、もう一方の当事者である企業等の理解と協力がなければなしえないものである。
   我々は、高卒者の就職の現状を改善するためには、次代を担う若者を育てるという考え方に立ち、関係者が一致協力して取り組むことが大切であると考える。このため、企業等にあっては、新規高卒者に対する求人の確保、公正な採用選考機会の保障などに積極的に取り組むとともに、学校の取組に対する理解と協力が不可欠であると考える。
   以下、いくつかの点について、企業等の協力をお願いし、本報告書を閉じることとしたい。

1  高等学校の教育及び高校生の理解
  進路指導、特に、就職を希望する生徒への指導を充実するためには、指導に当たる教師が、職場や仕事の実情あるいはそこで求められる資質や能力、態度等を十分に理解するとともに、企業等が高等学校における職業教育の内容及び生徒の学習や活動状況などについて理解を深め、それらに改善すべき点があれば、積極的にアドバイスを行うといった取組が必要である。
   本検討会議は、既に、企業の人事担当者等に学校・学科の学習や諸活動を公開することの必要性について提言しているところであるが、企業にあっては、各学校が実施するそのような取組に積極的に参加して、忌憚のない意見を述べるとともに、そうした機会に生徒や保護者に対し、今日の企業が求める職業人としての資質や能力等について話していくことが期待される。

2  高校生のインターンシップへの協力
   これからの高校教育、とりわけ、進路指導の充実を図る上で、生徒の企業等におけるインターンシップの実施、職場見学や職業人の講話等の体験活動は極めて重要な役割を果たすと考えられる。
   インターンシップの教育上の意義としては、a.実際的な知識や技能の学習、b.学校での学習と職業との関係の理解、 c.望ましい職業観・勤労観の育成、d.コミュニケーション能力等の育成などが考えられ、既に実施している学校からは、これらの点で大きな成果をあげていることが報告されている。
   実態調査では、高校生のインターンシップの必要性について、「是非実施すべき」と答えた企業が32.7%、「実施する必要はない」が14.0%で、残り53.3%は「どちらともいえない」としている。また、高校生のインターンシップの受け入れについては、「既に受け入れている」が12.2%、「要望があれば受け入れたい」が10.4%、「要望があれば前向きに検討する」が23.0%となっている一方、「条件によっては受け入れを検討する」が34.8%、「受け入れる余地はない」が19.6%となっている。調査結果からは、高校生のインターンシップの必要性及び受け入れについて、企業の一層の理解と協力が必要と思われる。
   また、その一方で、企業等からは、高卒就職者について、「職業や働くことについての理解が十分でない」「職業観・勤労観の形成が不十分」「言葉遣いやあいさつなどの社会的なマナーやコミュニケーション能力に欠ける」などといった指摘もなされている。こうしたことから、今後、より多くの企業等が、インターンシップ等の体験活動の充実を今日の時代の要請として受け止め、その受け入れ等に積極的に協力していくことが強く期待される。

3  企業説明会等の開催
   企業の新規高卒予定者に対する求人は、ハローワーク、学校を通しての求人票による活動として行われているが、既述のように、新規高卒者の就職に関わる求職活動をより開かれたものにする必要があるという観点から、本検討会議は、7月20日以降の高校生対象の「職場見学会」や「企業説明会」の開催を提案したところであり、企業や団体等の積極的な対応が期待される。また、生徒が企業研究等を行うことができるよう、それぞれの企業等が目指す方向、求める人材や資質、採用選考に当たっての基準等に関する情報の積極的な提供に努めることが期待される。

 

(初等中等教育局児童生徒課)

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