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情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて


2 教育環境等の条件整備に向けての視点

  文部省が毎年行っている「学校における情報教育等に関する実態調査」によれば,中学校,高等学校におけるコンピュータの量的整備などは着実に進みつつある一方で,「コンピュータ等を操作できる」,「コンピュータ等を用いて指導ができる」と回答している教員がまだ十分とは言い難く,さらに改善充実すべき点も多い。また,情報処理技術者等委嘱事業のように情報教育の条件整備のために採られている各種制度が十分に活用されていない点も見受けられる。今後の条件整備にあたっては,以下のような視点で行う必要がある。

(意識改革の必要性)
  コンピュータの活用能力を教員としての資質に短絡的に結びつけるような評価は慎むべきであるが,社会の情報化の進展を背景にして,子供たちに「情報活用能力」を育成すべきことの必要性や,そのために教員に指導力の向上を求めるのは自然の流れと言えよう。また,「情報活用能力」は,子供たちだけに必要とされるものではなく,教員自身にも当然に必要となってくるものである。情報化は避けて通ることのできない社会現象であり,教員自身が情報化の進展に対応した教育はどうあるべきか,そのために教員として必要な知識や技能はなにかを考え,自ら進んで学んでいこうとする意識と行動が不可欠である。
  また,本協力者会議で行った関係者のヒアリングによると,コンピュータを使ったことのない教員も,校内における研修などによってコンピュータに触れる機会を設けたことにより,以後積極的に使い出すようになったとの事例報告があり,最初のきっかけづくりや動機付けが大切であるとの示唆があった。

(教員の役割の明確化)
  コンピュータは道具に過ぎないのであって,それをいかに効果的に活用するかは,教員の指導上の創意工夫の問題である。教員が多種多様なコンピュータの機能を予めすべて把握し,子供たちにそれを教えこもうとするのではなく,子供たちとともに学んでいくという姿勢も大切である。学習の場面によっては,教員は,子供たちが学習の目的を見失わないように支援する役割を担い,必要ならば技術者などの専門家の援助を受けるべきである。
  また,学校内におけるコンピュータ等の機器や図書資料等の管理に関しても,それらを教員が行うもの,教育委員会や教育センター等の行政が対応するもの,専門技術者等に依頼するもの,ボランティアなどの支援者に依頼するものなどに明確に分類し,教員に余計な負担がかからないように配慮することが必要である。

(コーディネート機能の充実)
  分散する有益な情報は,できるだけ多くの人がその情報を活用できるようにすることが望ましい。例えば,教員が持つ教材,指導法などの情報についても,他の教員が利用したり,授業改善に役立てる意味から,有益な情報を蓄積し共有できるようなシステムの整備が必要である。ネットワーク化により情報の蓄積・共有は容易になってくるが,ネットワークを円滑に機能させていくためには,情報を集約したり,整理したり,提供しやすくして有機的に動かすための機能が必要になってくる。また,冒頭でも述べたとおり,情報化に対応した教育の改善や充実を図るために制度化されている事業などの活用が十分なされていない現状を分析すると,学校現場の需要や要求を受け止め,具体化する過程で必要な連絡や調整がうまくいっていないことなどが問題点として浮かび上がっている。このため,本協力者会議としては,人的・物的資源や財政措置,多くの人の英知を有機的に結びつけるために,教育に携わる人々がかかわる各場面で必要となる,学校の情報化に向けてのコーディネート機能を重視すべきであると考えた。


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