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情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて


2 教育課程の改善の方向と具体的展開

  本年7月29日に公表された教育課程審議会の答申では,今後,ますます高度情報通信社会が進展していく中で,児童生徒が,溢れる情報の中で情報を主体的に選択・活用できるようにしたり,情報の発信・受信の基本的ルールを身につけることや情報化の影響などについての理解を深めることは,今後一層重要なものになってくるとしている。そして,児童生徒の発達段階に応じて,各学校段階を一貫して情報化に対応した教育が系統的に行われるようさらに関係教科等の改善充実を図ることとしている。

(小,中,高等学校の各学校段階を通じて)
  小学校,中学校及び高等学校の各学校段階を通じて,各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図ることとしている。このため,学校教育におけるコンピュータ等の位置づけが学習指導要領上により明確に示されることが想定される。

(小学校段階)
  小学校については,「総合的な学習の時間」をはじめ各教科等の様々な時間でコンピュータ等を適切に活用することとしている。

  「総合的な学習の時間」は,各学校が地域や学校の実態に応じて創意工夫を生かし特色ある教育活動を展開する時間であり,具体的な学習活動として,国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題,児童生徒の興味・関心に基づく課題,地域や学校の特色に応じた課題などが例示されている。情報教育の視点から考えた場合,例に示された各学習活動において,コンピュータや情報通信ネットワークの活用をうまく組み合わせて「情報活用の実践力」を養うように計画されることが望ましい。
  例えば,環境に関する学習活動で,課題を追究するために必要な予備知識,実際に調査したい場所などの情報をインターネットで収集する,あるいは課題に対応した情報がデータベース化されている場合はソフトウェアを使って分析したり考えたりする,調査の結果得られたデータを入力してグラフ化したり,描画ソフトウェアやワードプロセッサを使って調査結果をまとめ,発表したりするなどの一連の学習活動が考えられる。

(中学校段階)  
  中学校については,技術・家庭科の技術領域において,コンピュータの基本的な構成と操作,コンピュータの利用など情報に関する基礎的内容を必修とし,発展的内容は,生徒の興味・関心等に応じて選択的に履修させることとしている。

  技術・家庭科では,上述した「情報の科学的な理解」と「情報社会に参画する態度」の基本的な内容が取り上げられ,情報化社会の扱いについては,社会科「公民的分野」と関連が図られることとなる。

(高等学校段階)
  高等学校については,新たに普通教育としての教科「情報」を設け必修とし,生徒が  興味・関心等に応じて選択的に履修することができるように,「情報A」,「情報B」,「情報C」の3つの科目を置くこととしている。
  「情報A」は,コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用に,「情報B」は,コンピュータの機能や仕組み及びコンピュータ活用の考え方や方法の科学的な理解に,「情報C」は,情報通信ネットワークなどの社会における役割や影響の理解に,それぞれ重点を置いて内容が構成されることとなる。
  また,専門教育においては,高度情報通信社会における情報関連の人材の養成の必要性に対応するため,専門教育としての教科「情報」を設け,11の科目で構成されることとなる。

(特殊教育諸学校)
  特殊教育諸学校における情報化に対応した教育については,小学校,中学校,高等学校に準ずるほか,各教科の指導上の配慮事項として,例えば盲学校においては,コンピュータ等の情報機器の活用に関することについて明記すること,また,知的障害者を教育する養護学校の高等部に選択教科として「情報」を設けることとしている。
  また,児童生徒の「情報活用能力」の育成に合わせて,自立し社会参加する資質を培う観点から,コミュニケーションの補助的手段として,ネットワークを含めた情報手段の積極的な活用や,教科指導等におけるマルチメディア教材の活用,訪問教育における情報ネットワークを利用した学習活動の展開等が期待される。

(新しい教育課程の実施に関連する検討事項)
  新しい教育課程への円滑な移行に向けて,情報化に対応した教育の実施のための施設・設備,教育用ソフトウェア,人的体制,教材等の整備が必要である。特に,高等学校における教科「情報」の担当教員の養成・確保が大きな課題である。


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