今後の国立大学法人等施設整備に関する有識者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成31年1月24日(木曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館 3F1特別会議室

3.議題

  1. 国立大学法人等施設整備に係る委員等からの話題提供について
  2. 科学技術専門家ネットワーク及び各都道府県へのアンケート結果について
  3. 国立大学法人等施設整備に係る今後の論点・方向性(骨子案)について
  4. その他

4.出席者

委員

有信睦弘(主査),上野武,下條真司,鈴木英敬,恒川和久,西尾章治郎,宮浦千里 (敬称略)

文部科学省

木村大臣官房会計課長,淵上国立大学法人支援課長,西井学術機関課長,丸山学術基盤整備室長,小野山企画評価課課長補佐,林科学技術予測センター上席研究官,平井文教施設企画・防災部長,山﨑技術参事官,藤井計画課長,深堀整備計画室長,木村計画課企画官

オブザーバー

一般社団法人国立大学協会 山本専務理事

5.議事要旨

・事務局より配布資料の確認、有識者の紹介。



(1)2019年度文部科学省予算(案)について(報告)


・事務局より、資料1~3に基づき、前回の議事要旨、昨今の高等教育施策等の主な動向、2019年度予算案について説明。



(2)国立大学法人等施設整備に係る委員等からの話題提供について


・鈴木委員より資料4に基づき、「地域における国立大学の役割と必要な施設整備」についてプレゼンテーション。
○ 三重県が期待する三重大学の役割として、以下の5点について説明。
1若者を地域に留め置く機能、2良質な雇用の創出、3県内の中小企業との積極的な連携、4教育機関として地域が必要とする人材の育成、5地域の様々な主体の連携のハブとしての機能
○  大学がイノベーションや人材育成機能を果たしていくためには、老朽化施設や耐震化未完了の施設を改善し、必要な予算措置することが重要。
○  大学が行政あるいは地域の企業と一緒にオープンなイノベーションがさらに促進されるような施設整備が必要。


・一般社団法人国立大学協会山本専務理事により資料5に基づき、「国立大学の将来像と施設整備」についてプレゼンテーション。
○  国立大学の将来像として、以下の5点について説明。
1 教育・研究機能の向上、2 地域の国公私立大学の中核拠点、3 政策的な人材育成、4 基礎・伝統的な研究の維持・継承、5 海外の学術研究交流と発展途上国への支援
○  国立大学が社会において確固とした役割を果たすために必要な施設整備として、以下の3点について説明。
1 安全・安心な教育・研究環境の整備、2 機能強化を促進するための施設整備の充実、3 サステイナブルなキャンパスの形成



(3)科学技術専門家ネットワーク及び各都道府県へのアンケート結果について


・事務局より資料6、7に基づき、科学技術専門家ネットワーク及び各都道府県へのアンケート結果について説明。


【質疑応答・自由討議】
○  県と大学の連携が成功するために、どのような工夫をしているのか。
○  大学側は、学長自身が三重県内のすべての市長・町長とネットワークを作り、企業訪問も積極的に行い地域との連携を重視する姿勢を明確に打ち出し、リーダーシップを発揮しながら進めている。さらに周りの職員が学長の思いを受けて、具体的にプロジェクトを推進している。
 行政側も、人づくりや高等教育機関との施策を総括するポストを作り、高等教育機関と連携する体制を整えることが重要である。

○  COCなど文部科学省の地方創生推進事業の制度は活用しているのか。
○  COC+を活用して、三重大学にリーダーシップを発揮してもらい県内の他大学等と連携し、三重の特徴を深く知り、地域の課題解決に尽力する人材「三重創生ファンタジスタ」の育成に取り組んでいる。

○  COCについて、各大学長からどのような議論が出ているのか。
○  COCは当初、多くの学長から戸惑いの声があったが、その後、国立大学長の地域への関心の持ち方は劇的に変わった。ある知事からも国立大学の学長の認識が変わったとの声も頂いた。ただ、全ての知事が同様の考えではないこともある。

○  三重県の地域戦略センターは、大学が地域と強く連携し、地方創生に貢献するためのハブ機能の好例として高く評価できる。国立大学が都道府県の地方創生のコアとなり、その役割を十分に果たすためには、防災等も関係することから、文部科学省だけでなく全省庁を挙げてその必要性を訴えていくことが重要である。
 また、事務局から説明があった研究者へのアンケート結果では、国立大学の施設には、地方創生への貢献に加え、今後、益々加速する高度情報化社会への流れを見据えると、文理問わず、地域住民も含めたICTリテラシー教育のための先進的なスペースや建築が必要と考える。

○  人口減少による人手不足のなか、活力ある経済を維持するためには生産性を上げなければならず、ICTリテラシーが必要となる。中小企業と大学の人材がマッチングされて、そのリテラシーが高まり、生産性向上につながることが望ましい。

○  これまで、耐震性の確保など安心・安全に重点的に予算配分してきたおかげで施設の安全性は向上したが、これからは新しい状況に対応するような施設を、どううまく運用していくか、利用しているかを議論する段階にきている。施設が老朽化するなか、新しい状況に対応する形に変えていくための施設マネジメントが求められる。

○  高度成長期に建築された建物は、大体耐用年数が切れている。今までは補正予算で施設整備費が確保されたが、最近は難しくなってきたため、積み残しが先延ばされ、建物もインフラも老朽化が進行している。基盤的なところはやはり公費等でしっかりと補塡していただきたい。

○  予算がないと手が打てないという姿勢で施設の改善を進めていく考え方は、もう限界。施設の減価償却費相当分も手当てされていない現在の国の予算では、根本的に考え方を変えていかないといけない。

○  特に地方創生で農業関係は重要であるため、都道府県を超えた連携も必要ではないか。地域貢献やリカレント教育、分野を超えた広い教育、ICTによる教育高度化と、本当の専門家を作るための教育という側面がある。大学はものづくりだけでなく、人づくりも充実させなければ、留学生に選ばれる大学や国ではなくなる。


(4)国立大学法人等施設整備に係る今後の論点・方向性(骨子案)について


・事務局より資料8に基づき、「国立大学法人等施設整備に係る今後の論点・方向性(骨子案)」について説明。
○  昨今は留学生が欧米に加えて、中国を選ぶ現象が加速している。そのような背景には、例えば上海交通大学では、キャンパスの周りに留学生も入居可能な学生寮が70棟以上も整備されていることがあげられる。このような中で、日本の大学が学生の生活環境の整備に関して国際競争で戦える状況なのかを問い、充実を図っていくことが重要である。
 また、ダイバーシティ&インクルージョンの問題にしっかりと対応することが求められている。その一環として、トイレの設計も含めこうした現代的な要請が、文教施設施策の中で新たな課題として現れている。

○  留学生が2020年には30万人に達するグローバル化の情勢変化も踏まえ、学生寮の環境整備が望まれる。

○  都道府県を超えた地域としての連携が重要であり、地域や都市における連携のハブとして、大学が重要な場所であると同時に、大学自身が地域に出て施設を補充していくことも求められる。
 施設の老朽化や財政難に伴う維持管理の問題については、国立大学も自治体も同様の問題を抱えており、互いの不足や余剰を補い合うなどうまくマッチングさせるべき。
 また、国立大学という枠にとらわれず、国の全体の予算で都市や地域や産業に関わるものも含めて考えることが重要である。

○  これまでは、建物の整備や維持管理に関する話が多かったが、地域との関係に目を向け、大きな地域・社会資源として建物群のキャンパスを一つの街として認識することは重要である。
 また、社会実験の場として大学キャンパスを開放するとともに、自治体が使わない施設の使用、または大学敷地を自治体による活用、企業の参入等を支える制度が必要である。

○  人材・人口が減り、社会が変化する中、大学を中心としたまちづくり、社会の在り方が求められている。

○  日本全体の高度化には人づくりが重要である。都道府県を超えた連携も有効利用し、日本全体を強くすることを考える必要がある。例えば東京都は人口と多くの企業や特色ある大学が複数あるところを整理し、いかに連携していくか考える必要がある。

○  まず、大学の役割・位置付けの再認識が決定的に重要である。次に、誰のためにやるのかを常に意識し、大学と自治体が協働して、選んでもらう地域となるよう、学生が魅力を感じる大学をめざす契機となればいい。
 また、施設のマネジメントを同じエリアで主体を超えて一緒にやっていくことが重要である。

○  国立大学が、社会情勢を先取り、イノベーティブで活力ある地域づくりに貢献していくためには、単にイノベーティブな研究を行うための施設・設備があれば良いというものではなく、そのベースとして、大学にどれだけ学問的な知識の集積があるかも大事だと考える。その際、理系の知識の集積には関心が集まるが、人文系、社会科学系の知識の集積がないがしろにされないか心配である。

○  国立大学がイノベーションを起こし社会に貢献していくためには、大学だけでなく地域全体も見据えた高い次元から施設のマネジメントができる人材を、大学、地域が連携して確保していくことも重要ではないか。

○  施設マネジメント人材は重要であり、三重県では図書館、博物館、美術館を総合文化交流ゾーンとしてまとめてマネジメントする協議会の設置と人材育成を進めている。

○  名古屋大学では毎年研修のような形で、愛知県や岐阜県、三重県の自治体職員へ施設マネジメントのプログラムを提供している。国立大学はこうした側面でも地域のために貢献できる。

○  大学の施設やキャンパス内の空間を有機的に連携させ、効率性、サステナビリティの向上について、管理運用面、デザイン性も含めて提案できる人材が必要である。例えば図書館については、今後、図書館が果たすべき新たなミッションまでも提示できるような人材が望ましい。

○  これから求められる公共サービスの在り方や、大学で起こるべきイノベーションの在り方を考え、その姿に相応しい施設の在り方を考えることもマネジメントである。

○  地域のためのサステナビリティ、アカデミックプランとともに施設整備の方向性を考える評価システムや自己評価システムができるといい。



(5)その他


・事務局より今後のスケジュールについて確認。



―― 了 ――

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